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aoiルーム
aoiルーム(https://club.brokore.com/hollyhock)
aoi32の創作ストーリーを集めたお部屋です。 どなたでもご覧いただけます。 どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。
サークルオーナー: aoi32 | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 297 | 開設:2008.03.05 | ランキング:100(3927)| 訪問者:1357217/1894458
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秘  密
大学講師の深沢潤と人気女優の青山優。                                                実は結婚していることは秘密。                                                       そして、優には誰にも言えないもう一つの秘密が…
No 15 HIT数 8115
日付 2009/04/02 ハンドルネーム aoi32
タイトル 秘密 12 プロポーズ
本文

    秘密 12  プロポーズ  

 




 

神妙な面持ちで・・・潤と優はソファに並んで座っている。


絵に描いたような洋館のテラスへと続くリビングルームには明るい日差しが差し込んでいる。
 

クラシックディテールをふんだんに使ってデザインされた部屋は

重厚なイギリス製のアンティーク家具をよりいっそう際立たせている。

 


「・・・朝帰りなんて・・。」

向かい側のソファに座っていた 優の叔母の由紀子がぽつりと言う。


「・・・それに・・一人暮らしの男性のお部屋に無断外泊なんて・・。」

今度は 優の祖母の由梨子が大げさに口に手を当てる。


「ああ・・これでは、亡くなった兄さん達に顔向けできないわ。」

由紀子は派手に嘆くと頬に両手を当てる。


いつも朗らかで笑いの絶えない二人が沈み込んでいる。

 

 

 

 

   ・・・・忘れていた・・。


潤はひどく後悔していた。

優のことを連絡するのをすっかり忘れていた。

昨夜はいろいろあって・・夢中で・・さすがの潤も優の家のことは頭の中から消えていた。


優の寝顔を見ているうちに つい、一緒に眠ってしまった。


あどけない優の寝顔が可愛くて愛しくて 彼女の額に自分の額を合わせてじっと見ていた。


優の長い睫毛が揺れて、小さな唇が少し開いて・・ずっと見てても飽きなかった。


そして 気がついたら・・朝だった。


白いシーツにくるまって眠る優は本当に美しかった・・。


何も身に着けてない彼女の華奢な肩とやわらかな胸は真っ白で

朝の光を浴びて眩しく輝いていた・・・・。

 


    ・・・・・・・・・・

             ・・・・・・・

 

「・・・おばあちゃま、由紀子さん ごめんなさい。

 連絡もしないで・・本当にごめんなさい。」


優の謝罪の声ではっと我に返った潤は慌てて顔を上げた。


    ・・・ぼんやりと昨夜の余韻に浸ってしまった・・・。

 

「・・あの・・ご心配をかけて本当に申し訳ありません。

 僕が・・ちゃんとご連絡すればよかったのですが・・。」

潤はそう言うと頭を下げた。

 

ひたすら謝る二人を見て、由梨子が微笑んだ。


「・・よろしいのよ、潤先生。ただ、何か事故にでも遭ったのではないかと心配してましたの。

 だから、無事でいてくれて安心しましたわ。ね、由紀子?」

 

「そうですよ、潤先生。・・ほら、最近 優ったら思いつめていたでしょう?

 だから、ちょっと心配で・・でも・・これで安心だわね、お母様?」

由紀子はにっこり笑う。

 

「そうね~。 でも・・・潤先生には責任を取っていただかないとね・・。」

 

「そうそう、潤先生が責任を取ってくださるのなら安心だわ~。」

 

「・・・責任・・・?」

潤は訳がわからないというような顔で二人を見た。

 

「・・無断外泊させた責任を取っていただいて・・

 潤先生にはうちの優をもらっていただこうかしら。」


由梨子が明るく言った。

 

「え・・・?」

潤は思わず聞き返してしまった。

 

「そうね・・・潤先生には優を花嫁に迎え入れてもらいましょう!」

由紀子もにっこり笑った。

 

「お、おばあちゃま!・・それに由紀子さんも何言ってるのーー???」

優は真っ赤になって立ち上がった。

 

「あら、優、何をあわててるの? 潤先生のお部屋に泊まったということは

 そういうことでしょう?・・だったら二人は結婚しないと。」

由紀子はにこやかに笑いながら姪を見つめる。

 

「そうですよ、優。 わたくしは古い人間だから

 こうなったからには二人には結婚してもらわないと・・。

 ああ・・こんなに早く優の花嫁姿が見られるなんて思ってもみなかった・・。

 長生きはするものだわね~~。天国のおじいちゃまはきっと悔しがるわね、ほほほ・・。」


こんな時にだけ“古い人間”になる若いおばあちゃまの由梨子が

華やかに笑い声をあげて嬉しそうに孫を見つめる。

 

「ふ、二人とも・・そんな勝手なこと言って・・。

 たった一度、無断外泊したからって・・

 今時・・そんなこと言う人なんて・・いないわよ。

 潤先生が・・びっくりしてるじゃない!」


優は立ったまま二人に言い返し、そして困ったように潤を見た。


「・・ごめんなさい、潤先生。・・あの・・気にしないでね。」

 

頬を赤くして泣きそうな顔の優を見て 潤は思わず笑った。

そして、優の手を引いてソファに座らせる。


潤の大きな手が動揺している優の手を優しく包み込んだ。


「・・潤・・先生・・?」

優は戸惑いながら 潤のやわらかな横顔を見上げた。

 


潤はまっすぐに背筋を伸ばして座り直すと 由梨子と由紀子を見た。

 


「・・わかりました。僕に責任を取らせてください。


     ・・・ゆう・・優さんと僕を結婚させてください。」

 

 


 
「・・え・・・?」 

 


       え・・・・・?・・・今、潤先生は何て・・・?

 


          けっこん・・・? ・・・けっこん・・って・・結婚?

 


                結婚ーーーーーーーー?????

 

  


数秒後 優は気を失っていた・・・・・。

 

 

 


   ――――――   

 

 

 

温かくて大きな手がわたしの髪を撫でている。


その人の手が何度も、優しく、ゆっくりと撫でて 低い声でわたしの名前を呼んでいる。

 

     ・・・誰なの・・・?

 

          ・・・すごく気持ちよくて・・安心できるの・・・。

 


   ・・・パパ・・・?  ・・・パパ・・なの・・・?

 

       ちが・・う・・・。  ・・・だって・・パパは死んじゃったもの・・・。

 

 

   パパ・・どうして・・死んじゃったの? わたしをおいて・・

 

      どうして・・ママだけ連れて行ったの・・・・?

 


背が高くて がっしりしてて とてもハンサムだったパパ・・。


わたしはそんなパパが大好きだった。


優しくて陽気でいつもわたしには甘くて・・よくママに叱られてたわね。

 


“優は嫁になんかいかないで、ずっとパパの傍にいるんだよ” 

 

  パパ・・・その約束は守れないわ。


     ・・・だって・・パパはもういないじゃない・・・・?

 

 


  

   “・・優・・・?  ・・・優・・・・・”

 

誰かがわたしの名前を呼んでいる。


優しくて 低くて 聞くだけで胸が震える・・・大好きな人の声。

 

 


優は泣きながら目を覚ました。

 

ぼんやりした優の視界に 心配そうな顔をした潤の顔が覗きこんでいた。

 

「・・・潤・・先生・・?」

優の声はかすれていた。

 

「・・優・・?どうした?・・・どこか痛いの・・・?」


潤は優の白い額に手を当て

その後 彼女の頬に流れ落ちた涙をそっと指で拭った。

 


「・・・わたし・・いったい・・・。」

優は いつの間にか自分の部屋のベッドで寝ていたことを理解出来ずにいた。

 

「驚いたよ・・いきなり気を失って・・。覚えてない?」

潤はそう言って笑うと今度は優の頬をそっと撫でた。                             

 

    ・・・・・・・・・・・・


        ・・・・・・・・・・・・

 

「あ!!!」


突然、思い出して 優は跳ねるように起き上がった。


「けっ・・けっ・・けっこん・・・・潤先生・・わたしと結婚するって・・・!

 ・・・やだ、わたしったら!・・とんでもない聞き間違いをしてーーー!

 そんなことあるわけないのに・・・つっ、疲れてるのかな・・・・

 ・・昨夜はいろいろあって・・すごく緊張してて・・


 だってだって・・初めてだったんだもの・・!

 おばあちゃまたちが変なこと言い出すから・・わたしったら・・・

 やだもうっ・・は、恥ずかしいーー!・・すごい勘違いだわ!!!」


優は今まで見せたことがないほど動揺して興奮している。

真っ赤になった優は いつもより 一オクターブ高い声で叫んだ後、両手で頬を押さえた。

恥ずかしさで両頬は燃えるように熱かった。

 

潤は目を丸くしたかと思うと すぐに笑い出した。

 

「やだ、潤先生ったら笑わないで。・・ちょっとした聞き違いなの。

 お願いだから忘れて・・。わたし、恥ずかしいーーー!」

優はますます真っ赤になっていく。

 

「・・優・・・。」

潤は動揺している優を落ち着かせるように、彼女の肩に手を置くと静かに言った。


「聞き間違いじゃないよ、優。・・僕は二人の前で 優と結婚したいって言ったんだ。」


「え・・・・・・?」


「でも、肝心なことを忘れていた。・・・冷静なようで舞い上がっていたのかもしれない。

 ・・・まだ、優の気持ちを聞いていなかった・・。」


「・・・あの・・・。」


「・・・・・優・・・僕と結婚してください。」


「あ・・・・。」


「もっと気のきいた事を言えればいいんだけど・・・。」


「潤先生・・・。」


「優はすぐに返事をしてくれるのかな?・・・これはプロポーズだよ。」


「潤せんせ・・い・・・。」


見る見るうちに 優の大きな瞳から涙の泉が溢れ出して

ほんのり染まった頬を伝わって落ちた。

そして彼女は潤の方に手を伸ばし、彼にしっかりとしがみついた。


「・・優・・・?」

潤は肩を震わせて泣いている優を両腕でやわらかく包み込んだ。

 

    ・・・また泣かせてしまった・・・。


         でも・・・かわいい・・・・・

 

「・・優・・? ・・・返事は?」


潤に耳元で囁かれて優の体がビクッと動いた。


優は・・・慌てて潤の胸から顔を上げると 涙で濡れた瞳を向けた。

 

「やっ、やだ!・・潤先生ったら・・冗談はやめて!

 そんな真面目な顔で言ったら、わたし 本気にしちゃうわ!

 おばあちゃま達の言ったことなんて気にしなくていいの。

 二人とも潤先生が大のお気に入りだから無理にでもそうさせたいのよ。

 でもっ・・結婚・・なんて・・無理よ。・・・わたしにはそんな資格は・・・。」


優はそこまで言ってうつむいてしまった。

涙の粒がぽろぽろと落ちて、彼女の白い手を濡らしていく。

 

「資格って・・・。優が僕と結婚するのに何の資格がいる?

 今のままの優で十分だよ。・・それに僕は二人に言われたからそうしたんじゃない。

 本気で優と結婚したいと思ったんだ。・・それだけはわかってほしい。」                    


潤は優の小さな手を両手で包み込んだ。

 

「・・・でも・・だめよ・・。結婚なんて・・できない。

 わたしは・・・潤先生にふさわしくない・・。

 だって・・わたしは・・・・わたしは・・・」


「優・・?」


優はそれ以上言葉が続かず、潤と重ねた手を振り解いた。

そして、彼に背を向けるとベッドの中にもぐり込んでしまった。


白いシーツ越しに優のすすり泣く声が聞こえてくる。

悲しげに声を震わせて泣く優が痛々しかった。


潤は小さなため息をついた。

 

「・・・・わかったよ、優。・・突然、僕がこんなことを言ったから驚かせたみたいだね。
 
 ごめん。・・・・だから、もう泣かないで。」

 

「・・・・・」

 

「・・また後で話そう。

 大学の授業を休講にはできないから・・もう行くよ。

 優は・・ゆっくり休んで。」

潤はそう言うと、シーツに包まったまま顔を見せない優の頭のあたりを優しく撫でた。

 


ドアの閉まる音がした。

 

 

 


    ――――――

 

 

 


名残惜しそうな由梨子と由紀子に挨拶をした潤が 玄関の扉を開けようとした時だった。

 


「・・・待って・・・!! 潤先生・・・!」


優が部屋の中から飛び出して来て 二階の階段の上で叫んだ。

 

潤が驚いて振り向くと、螺旋階段を急いで駆け下りて来る優がいた。

 

「優・・・?」

 

優はそのままの勢いで潤の胸に飛び込んだ。

必死で潤にしがみ付き、彼の大きな背中に手を回し、逞しい胸の中に顔を押し付けた。

 

「・・・優・・?」

潤はそんな彼女を抱きとめると戸惑ったように声をかけた。


優は顔を上げると静かに言った。

 

「・・・ごめん・・なさい・・。・・・潤先生・・ごめんなさい。

 先生が冗談を言ってるなんて・・。本当はわかってるの。

 潤先生は本気だって・・。真剣に考えてプロポーズしてくれたんだって・・。


 ・・わたし・・嬉しかった・・。本当に嬉しかったの。

 だけど・・自信がなくて・・。・・・わたし・・何も出来ないから・・。


 ・・・でも・・わたし・・昨夜 先生と約束したことを思い出したの。

 幸せいっぱいの未来に潤先生と一緒に行くって・・約束したわ・・。

 ・・・わたしがそう言ったのに・・・。」


優はもう泣いてはいなかった。


潤をまっすぐに見つめる鳶色の瞳は 穏やかで静かな情熱を秘めていた。


いつもの・・ただ潤だけを見ている彼女だった。

 

 

優は眩しいほどの笑顔を向けるとはっきりと言った。

 

 

「・・・わたし・・潤先生と結婚します。


 わたしを・・先生のお嫁さんにしてください・・・。」





























                                 
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