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aoiルーム
aoiルーム(https://club.brokore.com/hollyhock)
aoi32の創作ストーリーを集めたお部屋です。 どなたでもご覧いただけます。 どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。
サークルオーナー: aoi32 | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 297 | 開設:2008.03.05 | ランキング:100(3927)| 訪問者:1357299/1894540
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秘  密
大学講師の深沢潤と人気女優の青山優。                                                実は結婚していることは秘密。                                                       そして、優には誰にも言えないもう一つの秘密が…
No 16 HIT数 8116
日付 2009/04/02 ハンドルネーム aoi32
タイトル 秘密 13 大丈夫だよ 優
本文

   秘密 13  大丈夫だよ 優  

 

 

雨上がりの朝は眩いばかりの日差しが降りそそいでいた。

雨に濡れた緑の木々はマイナスイオンを発し、深呼吸をすると

体中にエネルギーが満ちてくる。


大学に向かう車の中で、優は走り抜ける外の景色を眺めている。


座り心地がいい助手席から見える風景は見慣れたものなのに、どこかが違う。


緑の街路樹も、レトロな建物も、瀟洒な洋館もキラキラと輝いている。

 

多分それは 今、隣で車を運転している彼のせい・・?

 

優は・・昨夜からずっと一緒にいる愛しい人に視線を移す。

 

ゆったりとハンドルを握る潤の横顔は穏やかで、静かな微笑が浮かんでいる。


優は 彼の優しい眼差しとやわらかそうな唇や綺麗な顎のラインに見とれてしまう。


潤の優雅な仕草を見ているだけで 自分を忘れてしまいそうになる。

 

 

「・・・僕の顔に何かついてる?」

潤は笑いながら少しだけ優の方を見た。

 

「・・うっ、ううん・・違う・・。

 ただ・・こんな風に一緒に大学に行けるなんて思ってもみなかったから。

 もしかしたら、夢を見てるんじゃないかと思って・・。

 昨夜からのことは全部 夢で・・・ここにいる潤先生も幻じゃないかって・・。」


優は嬉しそうに笑うと恥ずかしそうにうつむく。


潤は 膝の上で握り締めている優の両手に手を置くと優しく包み込んだ。

 

「夢じゃないよ、優。・・・昨夜のことも・・今朝、僕がプロポーズしたことも・・。

 だから今日 大学に行ったら報告する。・・結川教授と学部長・・そして、学長にも。

 いろいろ親身になってくれたから・・。僕は優と結婚するって報告してくる。」

 

「・・・潤先生。」


「あと・・時間が取れたら 今度、鎌倉の実家にも一緒に行ってほしいんだけど。」


「うん、行くわ。・・潤先生のご家族にも会う。

 ・・でも・・ちょっと心配だわ・・・。」


「何が?」


「潤先生のご両親・・わたしのこと気に入ってくれるかな・・。

 ・・・わたし・・まだ学生だし・・女優だし・・何も出来ないし・・。」


「・・大丈夫だよ、優。」


「え?」


「優には 母親の代わりに一通りのことは教えてあるし、厳しく躾けもしたから大丈夫って

 由梨子さんが言ってた。でも、世間知らずだから迷惑をかけるかも・・とも言ってた。

 ・・・僕は構わない・・。今のままの優でいて欲しい。」


「いつの間に・・そんな話・・」


「優が気を失ってる時・・。」

潤はそう言うと笑い出した。

「あの時は本当にびっくりしたよ。

 でも・・もっと時が経てば きっと笑い話になるんだろうね。」


「・・・・・」


「あと何年か経って・・・その時・・優と僕はどうしてるだろう。

 きっと・・こんな風に一緒にいて・・話をしてるんだろうね。」

潤は前を向いたまま遠くを見つめた。

 

「・・潤先生・・。」

優は思わず胸の奥がきゅっとして泣きそうになったので 慌てて言った。


「うん。・・10年後も・・20年後も・・きっと一緒にいて・・

 わたしは・・相変わらず 潤先生に夢中で・・モテまくってる先生に嫉妬して

 拗ねてるんだわ。・・それを潤先生は呆れたような目で見て・・笑うの・・。」


優の未来予想図に 潤はまた笑ってしまう。


そして まるで子供にするように優の頭を撫でると言った。

 

「・・・ばかだな、優は。・・・それは優じゃなくて僕のことだよ。」


「え・・・?」


「きっとその頃は 優はもっと、もっと綺麗になって・・セクシーになってるだろう?

 それで僕は嫉妬しまくって 外に出られないように家の中に閉じ込めるかもしれない。」


「・・潤先生が嫉妬してくれるの・・?・・何だかピンとこないな~!」

優はくすくすと笑い出した。


  ・・・潤先生が嫉妬・・?・・そうなったら嬉しいかも・・。


   “ 他の男なんか見るな。・・僕だけを見て、僕だけの話を聞いて・・”


    ・・・な~んて言われたら・・・きゃ~!どうしようーーー!

 


優が どこかで聞いたようなセリフで妄想して赤くなってると、ちょうど信号も赤になり 潤は車を止めた。


「・・・ここの赤信号・・長いんだよね・・。」


潤はそう呟くと優を見た。


   
   ・・・赤くなってる・・?・・・・かわいいな、優は・・・。

 

潤はシートベルトをきゅっと外すと優のほうに身を乗り出して

あっという間に彼女の唇を塞いだ。

 


「え・・?」

 

しばらくして唇を離した潤は 目を丸くして驚いている優に言った。

 


「・・・優が・・他の男を見ないように・・・。」

 

 

そして 信号が青に変わった。

 

 




   ―――――――

 




 
大学の駐車場に車を停めると二人は同時に降りた。


少しだけ不安げな優に、潤は笑いかけると手を差し出した。


「行こう。」


潤の声に優はこくんと頷いて、彼女もまた潤の方に手を伸ばした。


二人の手が重なり合う直前だった。

 

「・・・ストーップ!!!・・・・はいはい、今すぐ離れるのよ!」


よく響き渡る声が二人の動きを止めた。

潤と優は驚いて振り向いた。

 

「きょっ、恭子さん?????」

 

優のマネージャーの桐原恭子が仁王立ちで立っていた。


紺のスーツを着た恭子の衿元にはストライプのブラウスが覗いている。

いつもより更にきりりとした印象の彼女は、ハイヒールの音をたてながら二人に近づいて来た。


恭子は二人の前に立つと腕を組んだまま潤を見上げた。


「おはようございます、深沢先生。・・昨日は突然お伺いして失礼しましたわ。」

彼女の眼鏡の奥の切れ長の目が光った。


「いえ。・・・あの・・・今日はどうしてここへ?」

潤は 恭子の鋭い視線に少し戸惑っていた。


「・・優の自宅へ連絡しましたら 二人で大学に向かったとお聞きしまして・・。

 それで慌てて車を飛ばして来ましたの。」


「そうですか。・・実はあなたにも報告しようと思っていたので・・ちょうど良かった。」

潤はそう言うと静かに微笑んだ。


優はハラハラしながら潤と恭子の会話を聞いていた。

 

「・・・・何かしら?」

恭子は訝しげに潤を見上げた。


「実は・・優と僕は結婚することにしました。

 それを あなたにも承知していただきたいと思って。」


潤は満面の笑顔で言った。


    
    ・・・・・・・・・・・・・・・

 

          え・・・・・・・・・・・・・・・・?

 

 

「けっ、けっ・・・けっこん??????

 結婚ですってーーーーーーー!!!!!!!

 優と・・・・あなたが・・・結婚ーーーー??????」

 


思わず立ち眩みがしそうになった恭子はぐっと足を踏ん張った。          

 

「・・も、ものすご~くユニークな冗談ですわね。

 真面目な深沢先生でも、そんなジョークをおっしゃるのね?」

恭子は引きつった笑顔を向けた。


「・・僕は冗談は言いません。本気です。 僕は優と結婚します。・・・」


「はあ・・?」


「今日はこれから大学の方に報告します。・・あ、そうだ。

 優のプロダクションの社長さんにも承諾していただかないと・・

 今度、会わせていただけますか?」


「は・・・・。」


サラッと爽やかに言ってのける潤に 恭子はびっくりして言葉が続かない。

 

 

「・・・潤先生・・すごーーい!・・かっこいい・・・。」

 

両手を合わせて、うっとりと潤を見上げる優の瞳はきらきらと輝いていた。

 

恭子はキッとして そんなのん気な優を睨んだ。


驚きの展開に 恭子はまた目眩がしそうだった・・・。

 

 



   ――――――

 



「・・まったく・・信じられないわ! 

 昨日、この世でいちばんの不幸を背負っているような顔をしてたのは、どなただったかしら?」

 

「それを言うなら 周りの反対など押し切って自分のものにしまえばいい・・

 なんて過激なことを言ったのはあなただ。」

 

「まっ、わたしの言葉を真に受けて、そのとおりにするなんて・・

 深沢先生はご自分の意思というものをお持ちになってないのね。」

 

「別にあなたに言われたからそうしたわけじゃない。

 全て、僕の意思です。・・僕が決心したことです。」

 

「それにしたって・・いきなり結婚なんて・・唐突過ぎるわ。

 深沢先生は優よりずっと年上なんだから、もう少し考慮していただいても良いのでは?」

 

「あなただって優よりずっと長く生きてるんだから

 年上らしくもっと彼女を温かく見守ってもいいのではありませんか?」

 

「ま~、年上って何度も強調しないでくれます?
 
 言っておきますけど、あなたとわたしは同い年なんですからね。」

 

「最初に言い出したのはあなたでしょう?」

 

「と、とにかく!・・結婚なんて早過ぎます!・・・いいですか?

 うちの社長にも相談してみますから・・公表するのはもう少し待ってください。」

 

「わからない人だな。・・だから僕が直接、社長に会うと言ってるじゃないですか。」

 

「そっちこそ頑固な人ね!・・・先生は芸能界のことなんてご存じないと思いますけど

 今、うちの事務所は大変なんです。

 ついこの間、うちの19歳のアイドル歌手が突然 “できちゃった結婚”をしてしまって・・

 もう大騒ぎなんです。・・これで・・優まで結婚なんてことになったら・・

 社長はショックで倒れるかもしれないわ・・。・・特に、優には期待してる人なんです。」

 

「・・・19歳・・できちゃった結婚・・・・?」

潤は驚いて目を丸くした。

 

「だからーーー!・・・先生もくれぐれも気をつけてくださいね!!

 これは、思慮深い大人の男なら当然、相手のことを考えて 守るべき義務なんですからね!」


恭子は潤の胸ぐらを掴むような勢いで叫んだ。

気のせいか、少し赤くなっている


「・・・もうーーー・・・なんで女のわたしがこんな事まで説教しなきゃいけないの。

 ・・・だから結婚も遠のくのよ。・・19?・・二十歳で結婚?

 とんでもない話だわ・・・わたしはその頃、大学で毎日焦ってレポート書いてたわよ・・。」

 

恭子の大きな独り言を聞いて 思わず潤は笑い出した。


「何が可笑しいんですか?」

恭子はぐっと潤を睨みつけた。

 

「あなたは・・面白い人ですね。それに正直だ。

 僕の周りにはいないタイプだ。何だか安心します。」

 

「あなたにそんな事言われても、少しも嬉しくないわ。

 どうせ、あなたは 優みたいに・・ふわふわと可愛くて一途な女の子がお好きなんでしょう?

 大抵の男は皆そうなのよね。強気の女は煙たがられるのよ。」


「そんな事ないですよ。・・・僕の友人にはあなたみたいな女性が好きな男もいますよ。」

 

「・・先生のご友人?」

一瞬、恭子の目が光った。

 

「・・・良かったら、今度紹介しましょうか?

 え・・と 桐原さんはどんな男が好みですか?

 職業は・・小学校の教諭・・・証券会社の社員・・ああ、弁護士もいたな・・・。」

 


恭子は 真面目な顔をしていろいろ考えあぐねている潤をぼんやりと見ている。

 

   ・・・どんな男が好み?・・・ですって?

 

   そうね・・。

 

   長身で・・(わたしが172センチだから)・・180は欲しいわね。・・そう、あなたぐらい。


   髪は風になびいて・・サラサラと音がしそうな感じ。


   眼鏡の奥の瞳は理知的で 静かで 思慮深くて 清潔感があって・・・


   わたしがわがままを言っても 穏やかな笑顔を向けてくれる人・・・

 

       ・・・・・・・・・・・・

 


             ・・・・・・・・・・・・・・・

 


恭子ははっとして、慌てて妄想を振り払った。


    まっ、まさかーーー!・・こんなことって!!

 


恭子は真っ赤になって また頭をぶんぶんと横に振った。


   ・・・何てこと・・考えてるのーーわたしったら!!!

 

 

なぜか一人で狼狽している恭子を見て 潤は不思議そうに首を傾げた。

 

 

    
    ―――――― 

 

 

「・・・ねえ、優 深沢先生とずっと話をしてるのは誰?」

優の友人の奈美が尋ねた。

 

「・・・わたしのマネージャーの恭子さんよ。」

優は潤と恭子の背中から視線を外すことなく答えた。

 

「へえ~! 優のマネージャーさんなの?・・スレンダーな美人だわね。

 ふ~ん。・・こうして見ると、深沢先生とお似合いじゃない?

 二人とも長身で・・大人の男女って感じだわーー!

 ・・・あ、もしかして・・先生の恋人ってあの人?」

 

「知らない!」

優はそう言うと 潤と恭子に背を向けて歩き出した。

 

「ちょっと、優ーー? どうしたのーー?」


「もうすぐ次の授業が始まるから行く!」


「優?・・何で怒ってるのーーー?」


「・・・・・」

 


優は唇を噛み締めた。


潤と恭子は ずっと話をしていた。


向かい合って、お互いに視線を外すことなく、対等に話をしていた。


大人の男と女。

 

    ・・・わたしは・・恭子さんみたいにしっかりしてないし・・


    すぐ泣くし・・潤先生を困らせてばかりいるし・・


    ・・・まだ・・幼稚で・・身長も160しかないし(関係ない?)


    きっと 潤先生から見たら・・頼りなくて危なっかしくて・・


    手のかかる子供みたいに思えるんだろうな・・・。

 


    こんなわたしが・・・潤先生のお嫁さんになれるのかしら。 

 

    また・・自信がなくなってしまう・・・。

 

    だから・・・潤先生・・。

 

    もう一度・・わたしを抱きしめて。

 

    “大丈夫だよ、優”

 


     そう言って優しく抱きしめて・・


    
     そのひと言で・・・

 

     わたしは・・・すぐに元気になれるのよ・・・・。 




















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