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aoiルーム
aoiルーム(https://club.brokore.com/hollyhock)
aoi32の創作ストーリーを集めたお部屋です。 どなたでもご覧いただけます。 どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。
サークルオーナー: aoi32 | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 297 | 開設:2008.03.05 | ランキング:100(3927)| 訪問者:1357407/1894648
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秘  密
大学講師の深沢潤と人気女優の青山優。                                                実は結婚していることは秘密。                                                       そして、優には誰にも言えないもう一つの秘密が…
No 17 HIT数 8091
日付 2009/04/02 ハンドルネーム aoi32
タイトル 秘密 14 潤先生の嫉妬
本文




   秘密 14  潤先生の嫉妬

 

 

 
「ごめんなさい、先生。わたし・・今、気づいたの。

  わたしが本当に愛してるのは・・健ちゃんだったの。

 ・・幼なじみで・・ずっと一緒にいたから気がつかなかった。

 ・・ごめんなさい・・ごめんなさい・・。

 だから・・わたし・・先生とは・・結婚できな・・・い・・。」

 

「・・・知ってたよ。

 彼が君を見る時も・・君が彼を見る時も・・同じ目をしていた。

 ただ・・二人が同時に見つめ合う時がなかっただけだ・・・。

 いいよ・・行きなさい、彼の所へ・・。

 僕は大丈夫だから・・早く行くんだ・・。」

 

「・・ごめんなさい・・。

 でも・・これだけは信じて・・わたし・・先生のこと好きだった・・尊敬していた・・。

 ずっと憧れてた・・これは本当の気持ちです・・。

 ありがとう・・先生・・。」

 

純白のウェディングドレスを着た彼女は教会から飛び出した。

そして 彼女の幸せを願いながら去って行った健の後を追いかける。


ドレスの裾をつかみ必死で走る花嫁。

 


「待って!健ちゃん!!」


「・・・どうして・・・!」


「やっぱり、健ちゃんが好きなの!」


彼女は彼の胸に飛び込んだ。

二人は しっかりと抱き合った。


そして・・・二人の唇が次第に近づいて・・・・・・



   ・・・・・・・・・・・・・


       ・・・・・・・・・・・・・

     
     

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

 

 

 

 


突然、潤の視界が塞がれた。

しなやかな白い手が 眼鏡とともに彼の目を覆った。

 

「・・・・・・・」


「・・・これ以上、見ないで。」

優が困ったように潤の耳元で囁いた。


「・・・いい場面だったのに・・。」

潤は楽しそうに笑い出した。


優はリモコンでTVの電源を切ると、今度は潤の目の前に座り込んだ。

「・・・全然、いい場面じゃないわ。・・わたし、この結末、納得できない。

 なぜ、彼女は先生じゃなくて幼なじみの所へ行くの。先生はこんなに優しくて魅力的なのに。」

優はそう言うと頬を膨らませた。


「ヒロインが本当に好きなのは 新しく現れた男ではなく、ずっと傍にいた幼なじみだった。

 そうか・・このドラマの中の先生は振られてしまうのか、気の毒に。

 ・・・・・僕は大丈夫かな。」


潤は優の顔を覗き込むように言った。


「もう、そんな事言わないで。

 潤先生・・今まで わたしが出てるドラマも映画も見たことないのに・・

 どうして今回に限って見るの?・・しかもこの最終回を・・。

 潤先生には見られたくなかったのに・・・。」


優はまた頬を膨らませる。

 

「・・一生懸命、女優の仕事をしている優を見てみたかったんだ。

 そしたら、学生達が“今度の月曜9時が最終回!”って騒いでたから・・。

 ・・・人気あるんだね、優は・・。」

 

潤は静かに優の手を引いて抱き寄せた。


今、ここにいる彼女は女優ではなく、潤のたった一人の恋人だった。


優は潤の胸の中に包まれて、うっとりと目を閉じた。

 

「・・・人気があるのはわたしじゃなくて・・共演した“健ちゃん”役の男の子よ。

 ジョニーズ系のアイドルなの。」

 

「・・ふ~ん・・。」

優の頭の上で潤がぼやいている。

 

「ふ~ん・・・って・・・・先生、何だかつまらなそうね。

 ・・・・・・え・・・? もしかして、潤先生・・嫉妬してるの?

 ・・・って、そんなわけないわね。

 嫌だわ、わたしったら・・変なこと期待しちゃった・・。」

 

「・・嫉妬してる。」

潤がぽつりと言った。

そして 彼女の髪に顔を埋める。

 

「・・・え・・・」

 

「・・ものすごく嫉妬してる・・。

 たとえ芝居でも、他の男とキスなんかするな・・って言いたくなる・・。」

 

「・・・潤先生。」

 

「でも言わない。・・・・それだけは絶対言わない。」

 

「・・今、言っちゃったじゃない?」

 

「・・・・・・・・」

 


優は微笑みながら 思わず黙ってしまった潤の首に手を回して抱きしめる。


潤の頬に 彼女の長い髪が触れる。・・・甘くて切ない香り・・・。


優は潤の髪を撫でて、彼の肩に顔をのせる。


潤は目を閉じて優にされるがままになっている。

 

   ・・・嫉妬してる潤先生・・・何だか・・・かわい・・い・・・・・


        こんな事言ったら・・怒られるかな・・・

 


 

「・・優・・。」


「なあに?」


「・・・優には “幼なじみの健ちゃん”はいないよね?」


「・・・・・」


優は思わず吹き出しそうになった。


   何てことかしら。・・・潤先生はそんなことを心配してるの?

 


優は潤を抱きしめながら言った。


「・・・健ちゃんなんていないわ。・・わたしには“潤ちゃん”だけよ。」


「・・・・・」


「潤先生こそ・・“幼なじみの杏ちゃん”はいないわよね?」


「・・杏ちゃん?」


「やだ、今のドラマの中でのわたしの名前よ。」


「・・優だけを見て、優のセリフしか聞いてなかったから気がつかなかった・・。」


「・・・・・」

優は頬の火照りを隠すために潤をぎゅっと抱きしめた。

 

「・・・もう・・潤先生・・少し性格が変わってきたみたい・・。

 そんなことを照れずに言えるなんて・・・。」


そう言いながらも優はとても幸せそうに笑っている。

 

「優・・。」


「ん?」


「・・・優にウェディングドレスを着せたのはドラマのほうが先だったね。」


「・・え・・?」


「すごく綺麗だった。」


「潤先生。」

 

潤は 優の身体を腕の中に包み込んだ。 今度は潤が優を抱きしめる時だった。


優は潤の胸の中で言った。


「いつか・・潤先生のためだけにウェディングドレスを着るわ。

 何万人の人よりも潤先生一人だけに見てほしい。 きっとその時・・わたしはすごく幸せだわ・・。」

 

 

 

   ―――――

 

 


ベッドの中で 少しまどろんだ後、潤は腕の中にいる優に囁いた。


「優・・そろそろ帰らないと・・。  送って行くから起きて・・。」


「う・・・ん・・。」

優はすっぽりと潤の胸の中におさまり、目を覚ます気配はない。


「・・・優・・起きて・・服を着るんだ。」


「・・・ん・・・。」

優は起きるどころか、ますます潤の方に寄り添い彼の身体にしがみついてくる。

 

「優・・。」

潤は彼女の背中を優しくたたいて目を開けるように促す。

 

「・・・・・帰らな・・い・・。」

優は半分眠りながら答える。

 

「え?」

 

「・・朝まで・・一緒にいる・・・の。

 ちゃんと・・言ってきたから・・だいじょう・・ぶ・・・。」

 

「優。」


「・・大丈夫よ・・じゅん・・せんせ。」


優はそう呟くと、まるで幸せな夢を見ているように微笑んだ。

そして、潤の胸に頬を寄せてしっかりと彼の身体をつかまえる

ふわり・・優のやわらかな温もりを感じると、穏やかな気持ちになる。


潤は優の滑らかな細い肩を抱き寄せ、彼女の白い額にそっと唇を押し当てた。

優は目覚めることもなく、小さな寝息をたてながら眠っている。

 

「・・仕方ないな・・・。」

潤は苦笑いすると 手を伸ばしベッドサイドのテーブルに置いてある受話器を取った。


基本的に真面目な潤は 何とも決まりが悪い連絡をするために

優の自宅の電話番号を押していた。                                   

 

 






    ――――――

 

 





二人の結婚の話は 結局 優の事務所の社長に泣きつかれ延期することになった。

同時に、二人が交際してることも当分の間、伏せることになった。

同じプロダクションのアイドルの“できちゃった結婚”の件が響いて、タイミングを逃したのだった。


ただ、潤は教授の結川にだけは報告することを忘れなかった。

彼は二人が結婚することを聞いて驚いていたが、すぐに喜んでくれた。


「そうか。ついに深沢君も結婚するのか。・・・良かった、良かった。

 ・・また、飲みに行こう。お祝いだ。

 私がいたら邪魔かもしれないが 二人だけでは外も歩けないだろう?」


「そうですね、教授が一緒なら大丈夫ですね。

 でも、そうなると彼女はまた飲みすぎてしまうかもしれませんね。」


潤の言葉に結川は笑い出した。

4ヶ月前、三人で元町のビアカフェに行った時のことを思い出していた。

 

あれから、まだ4ヶ月しか経ってないのだ。

まさか自分が優と結婚するようになるとは思ってもみなかった。

短い間に色々なことがあった。

いつも、ひたむきで純粋な優に助けられてきたような気がする。


ぼんやりと物思いに耽っている潤を見て、結川はまた笑い出した。


「まったく・・。いつも言ってるが、そんな切ない顔をしてるとバレバレだよ、深沢先生。」


「え・・?」


「それじゃ、君達は青空の下、人ごみの中で会うなんて出来ないだろう?

 うーーん・・。・・青山君も外でデートしたいだろうね・・。

 ・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・お・・・。いい事を思いついたよ!・・うん、これはいいかもしれないよ。」


結川はぱっと顔を明るくして潤に笑いかけた。

 

「・・・・・」


もう10年以上も付き合ってる結川が思いついた“いい事”


潤は少しだけ嫌な予感がしていた・・・・。
                                            

 

 

   ―――――――

 

 

東京六大学野球の秋季リーグ戦が 東京新宿の明治神宮球場で行われていた。

9月の初旬から開催した秋季リーグ戦は天候に恵まれ日程も順調に消化されていた。

そして、10月に入ったこの日 伝統のSK戦が行われていた。

 

「ねえ、潤先生。・・もしかしてK大は負けてるの?」


バックスクリーンの上にあるスコアボードをじっと見ていた優は、隣に座っている潤に話しかけた。

観客席で初めて野球の試合を観戦する優は あちこちを興味深そうに見ている。


「・・もしかしなくても負けてるよ。

 今までのKS戦の通算成績は 164勝198敗10引き分け。六大学の中で、K大は3位なんだ。

 今年は・・相手のW大にすごい新人投手がいるからね。」


潤は のんびりした優の顔を見て思わず笑ってしまう。


KS戦 ― K大関係者はこう呼ぶが「携帯やパソコンで変換できない」などの理由から、

K大でも「SK戦」と呼ぶ人の方が実際は多い。しかし、潤は「KS戦」と呼ぶ・・・

 

「あ、今、あそこで投げてる人でしょう?スポーツニュースで見たことあるわ。

 え・・っと・・W大の佐藤投手・・ハンカチーフプリンスって呼ばれてるのよね。

 すごく人気があるのよね。・・・へえ、本当にいるんだーー!」

優は手を叩きながら無邪気に笑っている。

彼女は潤の思い入れに気づいていない・・。

 

「優、相手チームのピッチャーなんてどうでもいいから、こっちのチームを応援しなさい。

 君は一応、K大生なんだからね、」

ほんの少し不機嫌になった潤は前を見たまま言った。


え?っと驚いた優は、無表情の潤の横顔をまじまじと見る。

そして笑いながら叫んだ。


「は~い、深沢先生。わかりました!・・そうね。先生はバリバリのK大OBだものね。

 もう、ず~っとK大にいるんだものね。・・じゃあ、わたしは先に立って応援しなきゃ!

 あーー、チアリーダーに志願すれば良かった! あの超ミニのスカートかわいいーー!」


「・・超ミニスカート?」


「・・・フリフリのスカートに華麗なダンス! 素敵だわーー!

 ・・あ、潤先生 もしかして、わたしには無理だと思ってるでしょう?

 でもね、こう見えてもわたし・・3歳からバレエを習ってたし、映画ではバレリーナとか

 フラダンサーの役もしたのよ。ダンスは得意なの。」


「・・・フラダンス?」

 

・・鮮やかなハイビスカス模様のフラダンスムームーを着て プルメリアの花を髪に飾って踊る優


  すらりと伸びた綺麗な手足や華奢な腰がしなやかに動いている・・・。

 

「・・・かわいいかも・・・。」


潤は思わずつぶやいた。

 

 


「はいはい、深沢先生。 そんなデレッとした目で優を見ない!

 それから、二人とももっと離れて!」


潤を挟んで隣に座っていたマネージャーの恭子が言った。

 

「・・まだいたんですか。」

潤は呆れたように冷たい視線を向けた。


「失礼ね。 わたしだって、こんな所にいたくありませんよ! でも、仕方ないでしょう?

 そちらの結川教授に頼まれたんですから!」

恭子は不機嫌な顔で睨み返す。


「はいはい、マネージャーさん、そんなに怒ってはいけません。

 せっかくの美人が台無しですよ。」


今度は 優を挟んで隣に座っていた結川がニコニコしながら言った。


「こうして 二人の両脇に私達がいれば、誰も不審に思わないでしょう?

 それに、今日は伝統のKS戦・・皆、応援に夢中で目立たない。

 青空の下で野球観戦・・健康的でいいでしょう。」


「まあ、確かにマスコミの取材も今日はW大の佐藤投手に集中していて、

 優には気づいていないですわね。

 でもっ・・、なぜわたしが、ここに居なくてはいけないんでしょう?

 他の女性・・結川教授の奥様とか・・ご都合が悪かったのでしょうか?」


「おや、マネージャーさんは知らないんですか?

 深沢先生の恋人はあなただと・・学生達の間では噂になってますよ。」


「え?」
「え?」


潤と恭子は同時に声を上げた。

 

優はむっとして頬を膨らませて立ち上がり叫んだ。


「がんばれ、K大!!! そんなピッチャー、どうってことなーーい!!!」

日々、ボイス・トレーニングを欠かさない優は見かけと違い声が大きく響き渡る。

それに、怒っている時は誰でも大声になる。


K大応援席の周りにいた観客が、大声を出した優に気がついて驚いて振り返った。


そして優の応援に奮起して k大の応援合戦はさらに熱を帯びていった。

 

その後、相手の佐藤投手はなぜか調子を崩し 

K大の4番バッターに逆転サヨナラホームランを打たれたのだった。


翌日のスポーツ新聞の一面に その時のうなだれている佐藤投手の姿と

K大チアリーダーと一緒に応援をしている優の写真が大きく掲載されていた。

眩いばかりの笑顔の優は楽しげで光り輝いていた。


そして 佐藤投手は実は優の大ファンだということも記事に加えられていた・・・。

 











 








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