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aoiルーム
aoiルーム(https://club.brokore.com/hollyhock)
aoi32の創作ストーリーを集めたお部屋です。 どなたでもご覧いただけます。 どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。
サークルオーナー: aoi32 | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 297 | 開設:2008.03.05 | ランキング:100(3927)| 訪問者:1357291/1894532
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秘  密
大学講師の深沢潤と人気女優の青山優。                                                実は結婚していることは秘密。                                                       そして、優には誰にも言えないもう一つの秘密が…
No 21 HIT数 7639
日付 2009/04/02 ハンドルネーム aoi32
タイトル 秘密 18 ふわり、雪の約束
本文

   秘密 18  ふわり、雪の約束  

 


寒い休日の朝には野菜たっぷりの温かいスープを作る。

優は そのスープの中からスプーンでブロッコリーを一つすくって味見をする。

    
「ん~、美味しい。・・潤先生の好きなブロッコリー~~♪」


長い髪をリボンで結び、真っ白なフリフリのエプロンをつけた素顔の優は桜色に頬を染めて

新婚の奥さんという表現以外は思い浮かばないほど初々しい。


そして、朝食の用意ができると 妻はベッドで寝ている夫を起こしに行くと決まっている。


だが、今はそれよりも先に優の身体は 後ろから大きな胸の中に閉じ込められてしまった。


「・・きゃ・・・。」

優は驚いて声をあげるが、その温かい腕にぎゅっと包まれて安心する。

ここでそんな事をするのは一人しかいないからだ。


「おはよう、優。」

優の頭の上で低い声が優しく響く。


「・・おはよう、潤先生。・・いつ起きたの? 気がつかなかったわ。」

優は微笑みながら答える。


「ちょっと前だよ。 優が楽しそうに歌ってるのを聞いていたんだ。」


「やだ・・意地悪ね、潤先生は・・。」


優が頬を膨らませて振り返ると、そこにはパジャマを着て

寝起きのボサボサ頭のまま、眼鏡をかけていない潤が笑っていた。


「・・・・・・」

優は潤のそんな無防備な笑顔に弱い。

たちまち頬を赤くして黙ってしまうのだ。


そして、潤が軽く“おはようのキス”をしてくれるだけで優の胸が高鳴る。

当然、一度では終わらないキスは優の思考をストップさせてしまう。


潤は 震える優を抱きとめると彼女がつけているエプロンの紐を解いてゆく。


「潤せんせ・・い?」


「あっちへ行こう。」


「え・・?」

潤の誘いが何を意味してるかわかると、優は真っ赤になる。

「でっ、でも・・“朝ごはん”・・できてるのに・・。」


「・・“昼ごはん”にすればいい。」


潤は笑みを浮かべながら言うと あっという間に優のエプロンを外し、ふわりと優を抱き上げた。


「きゃ・・・。だめよ、やめて・・潤先生!」」

優は驚いて足をばたばた動かした。


潤は優のささやかな抵抗になど気にも留めずに、彼女の額にキスをした。

眼鏡なしの潤の瞳は無防備で、穏やかで優しい。


「・・・・・・・」


その瞳で見つめられて、優は何も言えなくなってしまう。


彼女は真っ赤になりながらも潤の首に両手を回して“連れてって”と やっと小さく呟いた。


潤は優を抱き上げたまま寝室に向かった。

 

キッチンの床には、真っ白なエプロンだけが残されていた・・・。

 

 

   ―――――

 


「優ちゃん、幸せそうねーー!」

TV局のスタジオ控え室で、メイク担当の玲子が鏡の中に映っている優に笑いかけた。


「え? や、やだ玲子さん、からかわないで。」

優は恥ずかしそうな笑みを浮かべながら鏡の中の玲子に言った。


玲子はくすくす笑いながら優の髪を手ですくい上げる。

その日のTV番組の収録に向けて、優の髪をアップにしてアレンジしようとしていた。

優の結婚式の時には 優の方から額を見せる髪型にしてねと頼まれた。

毛先を可愛くふわふわさせてキュートなアップにしてみたのだが、

これがなかなかの好評で優の綺麗な額は彼女の顔をぱっと明るく見せて愛らしかった。

だから今日も同じように可愛くしてあげようと張り切っていた。

 


「優ちゃんの“潤先生”は優しそうだものね。いい男だし~。

 一度、彼の髪をスタイリングしてメイクもしてみたいな・・眼鏡も外してね。

 スタイリッシュなスーツでも着たりしたら きっとモデル顔負けの綺麗な男になりそうよね。」


「ふふ、でもね・・潤先生は眼鏡を外すと印象が変わるのよ。」

優は嬉しそうに言った。


「え、そうなの? ・・・それって、優ちゃんだけが知ってる彼の素顔・・・ん・・・?

 ・・・あら・・・? ・・・・・・・ああーー・・・

 そうね。 あなたの“潤先生”は 優しいだけじゃなくて、けっこう情熱的かもね・・

 ああ、もう優ちゃんったら、独り者のわたしには目の毒だわーー!」


優の髪をすくっていた玲子の手が止まってしまった。

彼女は一人で興奮して、赤くなったり笑ったり嘆いたりしている。

 

「・・・・???・・・・」


優は何のことかわからずきょとんとしている。


「ゆ、優ちゃん、今日のインタビュー番組用のヘアスタイル・・アップにしようと思ったけど

 このままいったほうがいいと思うわ。後で恭子さんにはうまく言っておくから。」


「え? どうして?」


「・・あのね・・。」


玲子は真剣な顔をしたかと思うと、優の耳元に手を当てて囁いた。


「・・・・・・・・」


「・・・!!!・・・」

その途端に優の頬も耳も、そしてうなじまでもが 見る見るうちに真っ赤に染まっていった。


「ね? 髪をおろして・・毛先に柔らかいウェーブをつけてフェミニンな感じにしてあげる。」

玲子は優をなだめる様に髪の束を少しだけ持ち上げた。


「…ぅ…。」

優は頬を両手で押さえたまま恥ずかしそうにうつむくと、ごめんなさい、と消え入りそうな声で言った。


「可愛いなーー優ちゃんは・・これじゃあ、潤先生も優ちゃんに夢中ね。

 ふふ、今度からはもっと見えないところにしてもらってね。

 恭子さんにでも知られたら大騒ぎよ。刺激が強すぎて卒倒するかも~!」


「みっ、見えないところ・・って・・あの・・。」

優はまた一段と真っ赤になってしまう。

 

 

「・・・見えないところに何をしてもらうって・・?」


「きゃっ!!!!!」

「きょ、恭子さーーーーん???」

 

そこには 優の敏腕マネージャーの桐原恭子が手を腰に当てて仁王立ちで立っていた。


彼女はこれ以上ないというくらいの鋭い視線を二人に向けていた・・・。

 

 

   ――――――――

 

 

「お帰り、優。」

マンションのドアが開くと、潤が笑顔で迎えた。


「ただいま~、潤先生!」

優は部屋に入ると迷うことなく潤の胸に飛び込む。

潤は優の背中をいたわるように撫でる。


「会いたかった~!」

優はとろけるように甘える。


「優。」

潤は 甘い香りがする優の身体をぎゅっと抱きしめる。

 

  ― ゴホン、ゴホン、ゴホン!!! ―

不自然な咳払いとともに、険しい顔をした恭子がドアから覗いていたのだ。


「桐原さん?」

潤が驚いて声をあげる。


「いけない! 恭子さんも一緒に来たことをすっかり忘れてたーー!」

優が慌てて叫ぶが、その彼女の両手は潤の背中に回されたままだった。


恭子は嘆いていた。


    ふ~ん、もう5年以上も一緒にいるわたしのことを忘れたって???

    それに・・会いたかった・・って ほんの数時間、出かけてただけじゃないの?

 

「今日も優のことを送って来てくれたんですか。」

潤はにこやかに恭子に笑いかけた。


「仕事ですから。それに、今日は深沢先生にお話したいことがありまして。」

恭子は 目の前にいるのんびりした二人に呆れながら言った。


    ・・・ったく・・いつまでもベタベタくっついてるんじゃないわよ。

       いい加減、その手を離しなさいってば・・・!


「・・話?」


「あ、あのね、潤先生・・。」

優は真っ赤になって潤を見上げた。

 

「あ、敏腕マネージャーの恭子さん!・・じゃないですかーーー???」

その時、部屋の奥から出て来たのは 潤の弟の陸だった。


「・・また余計な男がいた・・・。」

恭子は思わず呟いた。


「今日はどうしたんですか?・・・あ、まさか新婚さんの二人のジャマをしに来たとか・・

 いくら羨ましくても、そんな事しちゃだめですよーー。」

陸は何の遠慮もなしに言った。


「その言葉、そっくりお返ししますわ! あなたこそ、何しに来たの?

 お邪魔だってことがおわかりにならないの?」

恭子はむきになって叫ぶと陸を睨みつけた。


「お、その目・・最高ですねーー!」

「ちょっと!ふざけるのはいい加減にしてくれません???」

「ふざけてなんかいませんよ、俺は真面目です。」

「どこが?」


ぷりぷり怒る恭子と、それを軽く受け流しながら面白そうに笑う陸。

 

潤と優は そんな二人を呆気に取られたように見ていた。


その手は離れることもなく しっかりとつながれたままだった・・・。

 

 

   ―――――――

 


「桐原さんはコーヒーでいいですか?」

潤はキッチンのカウンター越しに恭子に笑いかけた。


「どうぞお構いなく。話が済んだらすぐ失礼しますから。

 ・・・“新婚さん”のお邪魔をするつもりはありませんわ。」

恭子は冷たい視線を潤に向ける。

 

彼女の言葉に潤は苦笑いをする。

「相変わらず・・ですね。 ・・何だか今日は一段と怖いな。」


「あ、あのね 潤先生。」

ハラハラしながら優は潤を見上げる。


「うん? ああ、優も何か飲む? 紅茶がいいのかな。」


「え? うん、ミルクティーがいい・・って、違う・・あの、自分で入れるから・・。」


「いいから、優は座ってなさい。仕事で疲れてるだろう?」


「ううん、大丈夫、疲れてなんかいない。・・あ、潤先生もコーヒー飲むでしょう?今、入れてあげる。」


「いいよ僕は。・・・じゃあ、優は桐原さんにコーヒーを・・僕は優にミルクティーを入れてあげよう。」


「や~ん、潤先生ってば優しいーー!」

優は蜂蜜色の笑顔を潤に向けた。

 


「・・・・・・」

「・・・・・・・・」


そんな二人をソファに座って見ているのは恭子と陸。

キッチンでいちゃつく二人はマネージャーと弟の存在をすっかり忘れている。

 

「・・恭子さん、すっげー、羨ましそうな顔してますよ。」


「あなたこそ、よだれ垂らさないでよ。」


「しっかし・・人間って変わるもんだな・・あの兄貴があんなとろけそうな顔しちゃって・・。」

   ( 結婚式の写真を届けに来たのに、こんな兄貴を見られるなんて面白いぜ~(@^^)/~~~ )

 

「・・優もあんなにキラキラしちゃって・・・。」

   ( こっちは未だに彼氏がいないっていうのに~!!(ーー゛) )

 

「・・ところで、兄貴に話って何ですか?」


「あなたには関係ないでしょう?」


「あまり無粋なことはしない方が良いですよ。」


「うるさいわね・・本当にお節介な人ね。」


「相変わらずきつい人だな。」

 

恭子と陸の口喧嘩がまた始まりそうになった時だった。

 

「あ・・!・・雪ーー???」


突然、優が叫び声をあげたかと思うと窓の方に駆け寄った。


彼女は窓から空を見上げ顔を輝かせた。


「わあ、雪よ!・・雪が降ってきたわ!・・潤先生、来てーー!」

優はまたキッチンに戻ると潤の腕を掴んで引っ張った。


潤は笑いながら、優に手を引かれるままについて行く。


窓の側に立った二人は寄り添ったまま冬の空を見上げた。


真っ白な雪がふわふわと舞い降りてくる。


今年初めて降る雪だった。


「・・綺麗ねーー。天使の羽根みたい・・・。ね、潤先生 知ってる?

 韓国では “初雪の日にデートした二人は幸せになれる”っていう言い伝えがあるんですって。」


「何でそんなこと知ってるの?」


「おばあちゃまと由紀子さんが大好きな韓国ドラマに出てくるの。ロマンティックでしょう?

 ・・わたしたちもこうして二人でいればデートしてることになるよね。ね、そうよね?潤先生。」


優の必死な顔を見て、潤は思わず笑ってしまう。


「そうだね。」


「・・やった・・!」


優は嬉しそうに顔を輝かせると潤の腕に両手を回し、ふわりと寄り添った。

そして彼女は目を閉じる。

 


「・・・潤先生・・大好き。」


潤は返事をする代わりに優の髪に顔を埋めた。


可愛くてたまらない彼女の髪はいつも甘い香りがする・・。


幸せな幸せな二人だけで過ごす時間。・・って、今は二人だけじゃない。

 

 

   ・・・・・・・・・・・

 

        ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「・・やれやれ、これじゃ恭子さんのコーヒーは永遠にきそうもないな。」

陸は笑いながら立ち上がるとキッチンのほうへ向かった。


「・・・・・」

恭子は大きなため息をつくと首を横に振った。

そしてカウンター越しに陸と向かい合った。


「でも、ま 幸せそうな兄貴の顔を見られて良かった。・・はい、どうぞ。」

陸は白いコーヒーカップを恭子に渡した。

コーヒーの香ばしい香りが立ち込めている。


「・・ありがとう。」

恭子はそのままコーヒーを一口飲んだ。

 

「・・これじゃ、なかなか話ができませんね。」

陸は楽しげに笑いながら恭子を見つめる


「話・・?・・・ああ、そうだったわ。今日は深沢先生に話が・・

 ・・って、もうどうでもよくなってきた・・あまりに馬鹿らしくて。」


恭子はそう言うとぐったりと疲れてしまった。


「じゃあ、これから俺と飲みに行きませんか? あの二人はほっといて。どうせお邪魔だし。」


「・・なぜわたしがあなたと?」


「いいじゃないですか。もう仕事は終わったんでしょう?付き合ってください。」


「わたし、車なんですけど。」


「ここに置いておけばいいじゃないですか。また明日にでも取りに来れば。」


「・・・そうね。」


「よし、決まり! じゃあ、早速行きましょう! 

 じゃあ、兄貴 俺達、もう帰るよ! ああ、優ちゃん、また家に遊びに来て、オフクロが待ってるから。」

 

恭子は陸に手を引かれながらマンションから出て行った。

「ちょっと、手を離しなさいよ!」
「いいじゃないですか。」
「大体ね、あなた年下のくせに強引過ぎるわ。」
「恭子さんみたいな強い女には、このぐらい強引にいかないと。」
「生意気なこと言って!・・それに、わたしを名前で呼ぶなんて100年早くてよ!」
「え? じゃあ、何て呼べばいいんですか? 兄貴みたいに“桐原さん”とでも?」
「それも何だか硬いわね・・ちょっと手を離しなさいってば!」


二人の賑やかな言い争いは絶えることはない。

 

 

「ねえ、潤先生。」


「うん?」


「陸さんと恭子さんも二人で出かけたのね。」


「そうだね。」


「もしかして・・あれも初雪デートなのかな。」


「え・・・・?」


う~ん、と潤と優は悩んでしまった。そして、お互いに顔を見合わせて微笑んだ。

 

「潤先生、大好き。」

優は もう一度にっこり笑うと潤の胸の中に頬を寄せ、彼の背中に手を回した。


「僕も大好きだよ、優。」

潤は彼女の額にキスをした。

それだけで雪のように白い優の頬が淡い桜色に染まる。


「ずっと傍にいてね。」


「うん。」


「約束よ。」


「うん、約束する。」

 

今度こそ二人だけの穏やかな時。


空から舞い降りてくる真っ白な雪を 二人で寄り添って眺めている。


ふわり・・“愛してる”という言葉も舞い降りてくる。

 

 

    この幸せが永遠に続きますように・・・。

 


         優は大好きな潤の胸の中で願っていた・・・。
 

 


 





 

        背景 nimorin


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