ブロコリ サイトマップ | ご利用ガイド | 会員登録 | メルマガ登録 | 有料会員のご案内 | ログイン
トップ ニュース コンテンツ ショッピング サークル ブログ マイページ
aoiルーム
aoiルーム(https://club.brokore.com/hollyhock)
aoi32の創作ストーリーを集めたお部屋です。 どなたでもご覧いただけます。 どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。
サークルオーナー: aoi32 | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 297 | 開設:2008.03.05 | ランキング:100(3927)| 訪問者:1357343/1894584
開設サークル数: 1238
[お知らせ] 更新のお知らせ
容量 : 30M/100M
メンバー Total :297
Today : 0
書き込み Total : 957
Today : 0
秘  密
大学講師の深沢潤と人気女優の青山優。                                                実は結婚していることは秘密。                                                       そして、優には誰にも言えないもう一つの秘密が…
No 23 HIT数 7410
日付 2009/04/02 ハンドルネーム aoi32
タイトル 秘密 19 忍び寄る影 後編
本文



 秘密 19  忍び寄る影 後編

 





潤のマンションのエントランスで 水野真央は彼を待っていた。

真央は潤の恋人だった菜々子の妹だ。

彼女は姉が亡くなった後も こうして時々潤のマンションを訪れていた。

潤は留守のようだったのでホールで待つことにした。


一つ違いの姉の菜々子が亡くなって、もうすぐ7年になろうとしていた。


菜々子が大学一年生の時、初めて紹介されたのが潤だった。


“同じ学部の4年生なの。素敵な人でしょう? ・・今、つきあってるの”


菜々子は嬉しそうに頬を染めながら言った。


高校3年生だった真央は、少し年上の物静かで穏やかな瞳をした潤を見てひと目で好きになってしまった。

同級生の男子とはまったく違うタイプの大人の男の人・・。

憧れだったのかもしれない。


潤は姉の恋人だったが 少しでも近づきたくて、両親と姉に頼み込んで彼を家庭教師にしてもらった。

ちょうど受験を控えた真央にとってそれはたやすい事だった。

優しくて穏やかな菜々子と違い、勝気で積極的な真央は潤に強引にせまることも躊躇わなかった。


だが、真央のそんな誘いにも潤は応じることはなかった。

彼は真面目でクールだったが 何よりも菜々子のことを大切にしていた。

潤は決して菜々子を裏切るようなことはしなかった。

そのことは、真央の潤への思慕を募らせることになっていった。


そして 突然の菜々子の死・・。

二人がつきあってちょうど一年が過ぎた頃、事故は起きた。

横断歩道ではない道路を渡ろうとした菜々子に車が衝突したのだ。

 

あの時の潤の悲しみは 見ているだけでも辛かった。

彼は菜々子の両親にひたすら謝り続けた。

菜々子が死んだのは自分のせいだと、自分が菜々子を急がせたせいだと・・。

両親はそれは違うと、潤を責めることはしなかった。


傷ついた潤を慰めたくて、真央は彼の傍についていてあげたいと思った。

潤の苦しみを少しでもなくしてあげたいと思った。


だが、潤は真央のそんな懇願に応えることはなかった。


彼は言った。

“真央ちゃんは菜々子の妹だ。今までも、これからもそれが変わることはない”

 

亡くなってからも菜々子のことを思い続ける潤。

 

潤のことは忘れようと、真央は他の男性ともつきあってみた。

だが、彼以上に愛せる人はいなかった。


菜々子のことを忘れられない潤。

潤のことを忘れられない真央。

でも、いつかきっと彼は振り向いてくれる・・真央はそう思っていた。


その潤に恋人ができた。

真央がどんなに思い続けても受け入れることのなかった潤の前に突然現れた恋人の存在。


幸せそうに二人で並んで写った写真を見て、真央は落胆し激しく嫉妬した。


   ・・あんな子供っぽい可愛いだけの子のどこがいいの?


真央は唇を噛み締めた。

 

 

    ―――――

 

 

優を抱きかかえるようにして潤はマンションに戻って来た。

真央は驚いて二人を見た。

ぼんやりと虚ろな目をした彼女の顔には見覚えがあった。

写真を見た時には 似てるとは思ったがまさか本人だとは思わなかった。


「潤さん・・その子・・写真に写ってた・・え・・?・・・青山優・・だったの?

 その子があなたの恋人なの・・?」


「・・真央ちゃん・・?どうして?・・またここに来たのか?」


「・・どうして・・その子のどこがいいの?・・なぜ・・ここに?

 もしかして・・一緒に暮らしてるの・・?」


「真央ちゃん・・前にも言ったはずだ。 もうここには来ないで欲しいと・・。」


「やっぱり・・その子と一緒に暮らしてるのね?」


「・・優は・・彼女は大切な人なんだ。・・だからもう僕のことは忘れて欲しい。」


「嫌よ!」


必死に首を横に振る真央を 潤は憔悴した様子で見た。

そして傍でぐったりしている優をもっと強く抱き寄せた。


「ごめん、真央ちゃん。・・今日はゆっくり話してる時間はないんだ。

 また今度にしよう。だから今日は帰ってくれ。」


「そんなこと言っていいの?・・二人のことをマスコミに売り込むこともできるのよ。

 でも、そんなことをしたらその子も潤さんも困るんじゃないの?」


「真央ちゃん、君は・・・」

動揺した潤は驚いて真央を見た。


「・・潤先生・・わたしは・・大丈夫だから・・真央さんと話をして・・。

 わたし・・先に部屋に行ってるから。」

それまで黙っていた優が小さな声で言った。

そして優は彼女を支えていた潤の腕をそっと外し、歩き出そうとしたが

すぐに目眩がして身体がゆらりと揺れた。


「優・・!」

潤は慌てて崩れかけた優を支えるとその場で抱き上げた。

彼は 気を失ってしまった優の名前を必死に呼びながら彼女の髪に顔を埋めた。

 

「・・潤さん・・。」

真央にとってそれはショックな光景だった。

 

「真央ちゃん・・君がそうしたいなら好きにすればいい。

 でも、これだけは言っておく。

 僕は困ることなど何もない。もし優が辛い目に遭ったら、彼女のことは僕が守る。

 その覚悟はできている。・・だから結婚したんだ。」


「・・結婚・・・?」


真央は驚きのあまり言葉をなくした。

潤はそんな彼女に背を向けると 優を抱き上げたままマンションの中に入っていった。


後に残された真央は呆然と立ちすくんでいた。

 

 

   ―――――

 

優はベッドで眠り続けていた。

潤は彼女の傍に座って、じっと何かを考えていた。

優の長い睫毛は伏せられたままで目が覚める様子はなく、時折苦しげな顔をしながらうわ言で潤を呼んだ。

 

   ――・・・先生が・・急いで帰って来る・・って言ったから・・

    でも、だめなの・・急いじゃいけないの  そんなことしたら・・先生まで・・

     ・・・いやよ  そんなの・・絶対 だ・・め ――


潤は優が言った言葉を思い出していた。

 

研究室の前で倒れた優を 結川教授に導かれながら車に運んだ。

幸い駐車場に人影はなく、誰かに気づかれることも無かった。


優を助手席に座らせ、帰ってくる途中 目を覚ました優ははっとして顔を上げた。

そして、隣で運転している潤を見つけて安堵したように息を吐いた。

 

その時、優の両親が残した最後の言葉・・その話を聞いた。

事故の時のことを思い出した優は居た堪れなくなって、必死で潤の元へ来てしまったのだった。

 

   ―― ごめんなさい、また潤先生に迷惑をかけちゃった・・――

 

今にも泣きそうな優を責めることなどできるはずもなかった。


優も・・両親を事故で亡くした彼女も傷ついていた・・。

 

そんな当たり前のことに気づきもしなかった潤は後悔していた。


こんなことで 僕は優のことを守っていけるのだろうか。

自分の覚悟はまだ足りない。僕はまだ甘すぎる。

 

「ごめん、優・・。」


潤は優の額に手を当てると、何度も何度も彼女の頬を撫でた。


  


そして 優の小さな手を両手で包み込んだ・・。

 

 

 


   ―――――

 

 

凍えそうなほど寒い二月の夜だった。


道行く人々の足取りも心なしか急いでいるような気がする。


茫然自失の真央はふらふらしながら歩いていた。

潤が結婚したということはかなり彼女に衝撃を与えた。

直接本人の口から聞いたことは紛れも無い事実に違いない。


   潤さんが・・ずっとお姉ちゃんのことを思っていた潤さんが結婚した。


   それも、あの女優の青山優と・・。


   ああ・・そういえば彼女はK大の学生だったっけ・・・。


   可愛くてふわっとしてて・・お姉ちゃんと雰囲気が似てるのかも・・・。


   ・・・結局 わたしはお姉ちゃんにはかなわない・・そしてあの子にも・・

 

   青山優・・青山・・ゆう・・・あおやま・・・? 

 

        ・・・・・・・・・・・・

 

              ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 


   偶然かしら? ・・・・確か お姉ちゃんが事故に遭った時の相手も・・・

 

   そうね、青山っていう姓は珍しいわけじゃないし・・本名とは限らないし

   ・・・ただの偶然ね。


 

 

真央は気を取り直したように歩き出した。


・・・が、しばらくして足を止めた。


そして ゆっくりと振り向き、背後に見える潤のマンションの方を見上げた。


暖かな明かりがついたあの部屋で、二人は一緒に住んでいる。

   
こんな夜の寒さなど感じられないくらい二人は寄り添って暮らしている。


真央がどうしても手に入れることが出来なかった 潤との幸せなひと時。


   
潤と初めて会った時から、もうすぐ8年になろうとしていた。


その長い年月など関係なく 突然現れたあの子に潤を奪われてしまった。

 

それも 姉の事故に関係した“青山”と同姓の彼女に・・。

 

     
      ・・・・・・・・・・・・


            ・・・・・・・・・・・・

 


・・・真央の脳裏にまたある事が浮かんだ。 

 

 

「・・・・まさかね・・・・・。」

 


真央はそう呟くと じっと潤の部屋の窓の明かりを見つめた・・・。

 

    


 













                                           背景 nimorin





前の書き込み 秘密 20 慕情 
次の書き込み 秘密 19 忍び寄る影 前編
 
 
 

IMX