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aoiルーム
aoiルーム(https://club.brokore.com/hollyhock)
aoi32の創作ストーリーを集めたお部屋です。 どなたでもご覧いただけます。 どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。
サークルオーナー: aoi32 | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 297 | 開設:2008.03.05 | ランキング:100(3927)| 訪問者:1357253/1894494
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秘  密
大学講師の深沢潤と人気女優の青山優。                                                実は結婚していることは秘密。                                                       そして、優には誰にも言えないもう一つの秘密が…
No 24 HIT数 7257
日付 2009/04/02 ハンドルネーム aoi32
タイトル 秘密 20 慕情 
本文




   秘密 20  慕情 


 

 

「・・・潤先生ってば!」


潤は自分の名前を呼ぶ優の声で はっと我に返った。


「あ、ああ・・何?」


「もうっ、さっきから何度も呼んでるのにぼんやりして・・。」

優は頬を膨らませて潤を少し睨んだ。

すっかり元気になった優と潤は一緒に朝食をとっていた。


寒い冬の朝 窓からはやわらかな日差しが差し込んでくる。


「・・もしかして 真央さんと何かあった?

 わたし・・あの日のこと途中から覚えてないの。・・何か言われた?」

優は一瞬、不安げな顔をすると潤の方を見つめた。


潤はふっと笑うと優の頭をくしゃくしゃっと撫でた。

「何もないよ。そう言っただろう? 彼女はちゃんとわかってくれたよ。だから大丈夫だ。」


「・・そうなの?・・だったらいいけど・・。」

優の脳裏にはもう一つの不安がよぎる。

もしかしたらあの人はわたしのことを気がついてしまったかもしれない。

真央さんは菜々子さんの妹なんだもの。

 

「大丈夫だよ。 優は何も心配することはない。」

潤は明るく笑った。


   ・・・多分そうなのだろう。

      彼女はあれから何も言ってこないし、マスコミに知らせた様子もない。

      優と結婚したとはっきり言ったことで、彼女も納得してくれたのかもしれない。


潤はまだ気になっていたが楽観的に考えることにした。


「それより、優が元気になって良かった。」

切なそうな目をした潤を見て、優はもっと切なくなった。


「・・ごめんなさい、心配かけて。 わたし・・潤先生に迷惑ばかりかけてる。」


「そんなことないよ。 優がいるから毎日が充実してるし楽しいし、何よりも刺激的で面白い。」


「・・刺激的・・・。それって褒めてるの?」


「もちろん。」


潤がにっこり笑ったので優もつられて笑ってしまった。

 

 


「それでね・・潤先生。」

優は気を取り直すと、少し遠慮がちに口を開いた。


「うん?」


「あのね・・。その・・期末試験も終わったから また女優のお仕事に戻らないといけないの。」


「ああ、わかってるよ。今度は映画だったよね?・・優はどんな役なんだろう。楽しみだな。」


「え?・・あの・・先生は見ないで。」


「どうして?」


「・・だって・・またラブシーンがあるんだもの。・・潤先生には見られたくない。」


「もう慣れたから大丈夫だよ。」


「それでも見られたくない。」

そう言ったきりうつむいてしまった優を見て潤はまた笑ってしまった。


「わかったよ、優。 僕はその映画は見ないことにするよ。

 ・・・まだ未熟者だからまた嫉妬してしまうかもしれないし。」


「未熟者なんて・・それはわたしの方かも。

 ・・だって未だにお仕事なんだからって割り切れないもの。

 ラブシーンは苦手・・できることならやりたくない。」


「優・・。」


「相手が潤先生ならいいのに。」


さらりと言った優の言葉に 思わず潤はコーヒーの入ったマグカップを落としそうになった。


「・・・・・」


「・・潤先生、赤くなってる・・。」


「・・・・・」


「・・かわいいーー!」

優は手を合わせて嬉しそうに潤を見つめた


「優!」


「最近の深沢先生はクールな中にも素敵な笑顔を向けるようになったって
 
大学の女の子達の間で評判よ。

 ああ、来月は沖縄ロケが1ヶ月もあるの。・・何だか心配だな~。

 先生、わたしがいないからって浮気しないでね。」


「大人をからかうんじゃない。」


「あら、わたしも大人よ。」


「優のどこが大人なんだ?」

潤は呆れたようにまたマグカップを口元に運ぶ。


「だって、監督さんとかプロデューサーさんに言われたもん。

 “最近の優ちゃんにはオトナの女の色気を感じるな~”って。」


これにはさすがの潤も吹き出しそうになった。


「潤先生のおかげかもね。・・先生にはいろんなことを教えてもらったもの。」


「いろんなこと・・って・・。」


優のあまりの無邪気さに、それとも潤をからかって喜んでいるのか 

反撃することもできなくなった潤は 身体を反らし椅子にもたれると両手で顔を覆った。


「・・先生? どうかした?」

優は立ち上がると不思議そうに潤の顔を覗き込んだ。


「・・何でもないよ、優。 それよりコーヒーが冷めてしまったから新しいのを入れてくれる?」


「はあい、先生!」


「・・・でもその前に・・。」


潤は優の手をつかんで引き寄せると 

彼女の身体を軽々と持ち上げて自分の膝の上に座らせた。

突然、横抱きにされた優は驚いて、きゃっと声を上げた。


「じゅ、潤先生?」


「散々、僕をからかった罰だ。」


「せんせ・・い?」


「優はもう大人だから こんなことしても平気なんだよね?」


「こっ、こんなこと・・って?」


「・・・こんなこと。」


潤はふっと笑うと 優の身体をぐっと抱き寄せ、もう片方の手で彼女の顎を持ち上げた。

戸惑う優の顔が何だか可愛いと思いながら 潤は優の唇を塞いだ。

最初は軽く優しく・・それが次第に熱を帯びてくる。

静かにうっとりと潤の唇を受け入れていた優は その激しいキスに戸惑い始めた。

それは 今までのやわらかく包み込むようなものではなかったから。

息も止まるような潤の情熱的なキスに体も心も震えだした。

唇は密やかに確実に忍び込んでくる・・・・


無意識の内に優は潤のシャツの袖をぎゅっと掴んでいた。


気が遠くなるようなキスがやっと終わり潤の唇が離れると 優は小さく息を吐いた。

優の長い睫毛がふるふると震えて身体中の力が抜けていく。

潤の支えがなかったら、その場に崩れ落ちそうだった。

 

優はやっとの思いで潤を見つめる。

彼女の瞳は今にも涙が零れそうなほど潤んで揺れている。


「優・・?」


「・・・・」


潤は何も言葉が出ない優の頬をそっと撫でた。


「・・大丈夫?」


潤の声を聞いた途端に 優の大きく見開いた瞳から涙が一粒零れ落ちた。


「ごめん、優。そんなに驚いた?」

潤は少し慌てて彼女の頬に光る涙を指で拭った。


「う、ううん、違う・・違うの・・。」


優は首を横に振ると潤んだ瞳で潤を見つめた。


「・・違うの。 ・・ただ、少しだけびっくりして どうしよう・・って思ったけど

 でも・・・愛されてるのかな・・なんて思ったりして

 そしたら・・嬉しくて ああ、わたし幸せだな・・って実感したの。」


優は自分の気持ちを少しずつ確認しながら言った。

体中が熱くなって頬が赤くなってきたのがわかる。

優は潤の首に手を回しその広い肩に顔をのせた。

どうしようもなく切ない思いと愛の喜びで胸が張り裂けそうだった。


二人のやわらかな頬がぴったりと重なると、優は“大好き”と彼の耳元で囁いた。


  “大好きよ 潤先生・・大好き”

  “優・・君は 本当に 何て・・可愛いんだろう、、、” 


潤は安心したように笑うと優の身体を両手で包み込んだ。


優は目を閉じると切なそうに呟く。

「・・・1ヶ月も潤先生と離れるなんて・・わたしに出来るかな・・。

 朝起きた時も、夜寝る時も・・潤先生が傍にいないなんて。

 寂しくて寂しくて・・わたしだめかも。」


   “だって、わたしはもう 潤先生の温もりを知ってしまったのよ”


「優・・・。」


   “まっすぐに僕を見つめる優から目を逸らすことはできない”

 

「ね、潤先生も一緒に行って!・・先生も沖縄に行きましょうよ。

 ちょうど大学も春休みだもん。同じホテルに泊まって・・部屋は別々でいいの。

 わたし、毎晩 部屋を抜け出して先生の所へ行くわ。

 1週間・・ううん、3日間でもいいの。ね、先生 お願い!」


優は必死な顔で懇願してくる。

そしてぎゅうっと潤を抱きしめると彼の首筋に顔を埋める。

大好きな潤の香り、温もりを身体中で感じる。

   ・・・潤先生と離れたくない。一緒にいたい。


優は不安だった。

何が彼女をそんな気持ちにさせるのかわからない。

しかし、今 誰よりも大切な潤と離れることに不安を抑えることはできなかった。


そんな優は以前のような儚げな少女ではなかった。

一途に狂おしく激しく、たったひとりの男の愛を乞う彼女になっていた。


潤は驚いた顔をしていたが、すがるような目をした優を見てふっと笑った。

彼は優の頭をくしゃくしゃっと撫でると、ゆっくりと彼女を見つめた。


   ・・・まっすぐに突っ走る優も魅力的だと思う。・・でもここは・・


「すごく魅力的な誘いだけど、それは無理かな。」


「どうして?」


「そんなことをしたら僕は沖縄の海に沈められるかもしれない。」


「え?」


その時、インターホンのチャイムが鳴り来客を告げた。


潤は明るく笑いながら言った。

 

「噂をすれば・・かな? 優の敏腕マネージャーが迎えに来たみたいだね。」


優は目を丸くして潤を見つめた。

そして少し悲しそうに微笑みながら言った。


「・・そうね・・恭子さんが許してくれるはずないわね。」

 

 


   ――――――

 


「当然でしょう!何言ってるの、優ったら。

 深沢先生も一緒に沖縄ロケへですって? ありえない話だわ!

 TV局も雑誌記者も取材に来る予定なのよ。
 
 そんな中、わざわざスクープを提供するような真似をしてどうするの?

 ・・まあ、わたしに頼み込んでくる優は正直で可愛いけどね。」


恭子は一気に言い放った。


「・・・そうね、失敗したわ。・・恭子さんには内緒にするって方法もあったのね。

 もう、わたしったら、ほんとに何も考えてないんだわ。」

優はぶつぶつ言うと少し悔しそうにうつむいた。


「優がわたしを騙すなんて・・10年早いのよ。」

恭子は楽しそうに笑うと優の顔を覗き込んだ。


優は頬を膨らませた。

「恭子さんの意地悪!」


「はいはい、意地悪でけっこうよ! そうでもしないとマネージャーなんてやってられないの。

 さ、次はスタジオで撮影よ。

 早く終わらせて、さっさと家に・・帰りたいでしょう?」


「うん! 早く帰りたい!」

優はぱっと顔を輝かせると叫んだ。


「・・優ったら・・・」

恭子は呆れて笑った。・・まったくこの子は本当に正直なんだから。

そんなに深沢先生に会いたいの?

たった一人の男にここまで一途になれるなんて・・

羨ましいというか・・ちょっと怖いような気もする。

もし、先生が優の前からいなくなったら、彼女はどうなるんだろう?

深沢先生と別れるようなことになったら 優は壊れてしまうのではないかしら?


恭子はふとよぎった思いを慌てて否定した。


    ・・何考えてるの、わたしったら。・・二人はとても幸せそうじゃないの。


      こっちが恥ずかしくなるくらい甘い新婚さんだわ。

 

    ・・・まったく、もう。

 

      だから そんな事ありえないわね。考え過ぎだわ。

 


優の溢れるような笑顔を見て、恭子も思わず笑ってしまう。


    ・・やっぱり、優の笑顔は最高ね。

    
      優をこんな風に輝かせてくれたのは、深沢先生なのね。

 


恭子は少しだけ悔しそうに微笑んだ。

 

 

 

   ―――――――

 

 


3月になった。


優は映画撮影のために沖縄に来ていた。

すでに桜の花は咲き終わり、毎日、春のようなぽかぽか陽気の日が続いている。

青い空、白い雲、そして エメラルドグリーンの海。

遠浅の海から吹いてくる風は爽やかで心地よい。

そして、中旬ともなれば海開きが各地で行われビーチも賑わいを見せ始めていた。


映画は沖縄のある小さな島にある診療所を舞台にしたものだったが

島での撮影は終わり、場所を本島に移していた。

 


優は潮風に髪をなびかせながら美しい海を見ていた。

 

 

潤と離れてからもう3週間が過ぎようとしていた。

 

 

ここに来る前の夜 優は泣いてしまった。

まるで永遠の別れのように辛く悲しかった。

潤の優しい腕の中で優は何度も“潤先生”と呼んで泣きじゃくった。

潤は困ったように笑いながら彼女の背中を撫でた。


“やっぱり優はまだ子供なんだな”


“子供って言われてもいい。・・先生と離れるのはいやなんだもの”


“じゃあ、明日の沖縄行きはやめる?”


“うん、やめる”


“わかった。じゃあ、今夜はこのまま眠って。 明日の朝、桐原マネージャーに連絡しよう”


“うん、そうする”


“ずっと傍にいるから ゆっくり何も考えずに眠るんだよ、優”

 

泣き疲れた子供のように 優は彼の胸の中で小さな寝息をたてながら眠った。

彼女の細い指はしっかりと潤のシャツの裾を掴んでいた。

 

そして、翌朝 優が目覚めた時は 潤が温かい紅茶をベッドまで運んできてくれた。

優はその紅茶を一口飲んだ。 

大好きなベルガモットの香り。爽やかで芳しい香り。


温かな湯気と甘い香りが胸の奥まで沁みこんでくる。


優しくて穏やかな気持ちが胸いっぱいに広がって、体中にエネルギーが満ち溢れてくる。


優はティーカップを両手で包み込むと潤を見つめた。

 

「・・あのね、潤先生。」


「うん。」


「・・やっぱり わたし・・沖縄に行く。」


「うん。」


「・・ごめんなさい。・・それから ありがとう先生。」


優は恥ずかしそうに笑った。


潤はやわらかく微笑みながらうなずいた。

 


    ・・・・・・・・・・・・

 


           ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「潤先生は わたしの気持ち 何でもわかってるのかな・・・。」


優はそう呟くと幸せそうに微笑んだ。


   ・・潤先生は 迷っているわたしの背中を押してくれる・・・


        いつもわたしを応援してくれる

 


青い空と白い雲 そして エメラルドグリーンの海。


潮風が吹いてきて優の長い髪をなびかせる。

 

潤と離れてまだ3週間。 それなのにもうずっと会ってないような気がする。


毎晩 電話をして優しい声を聞いているのに。

おたがいにその日あったことを話して、笑ったり拗ねたりしてるのに。

 

    ・・・早く 潤先生に会いたいな。

 

 

遥か地平線の彼方に潤の笑顔が見えるような気がした。

 


会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい・・・

 

        この言葉をずっと言い続けていれば潤先生と会える?


        もし、そうなら わたしは何万回だって言えるのに・・・。

 


        ・・・あと何回言えば 潤先生に会えるのかな・・・ 





















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