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aoiルーム
aoiルーム(https://club.brokore.com/hollyhock)
aoi32の創作ストーリーを集めたお部屋です。 どなたでもご覧いただけます。 どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。
サークルオーナー: aoi32 | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 297 | 開設:2008.03.05 | ランキング:100(3927)| 訪問者:1357233/1894474
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秘  密
大学講師の深沢潤と人気女優の青山優。                                                実は結婚していることは秘密。                                                       そして、優には誰にも言えないもう一つの秘密が…
No 32 HIT数 4722
日付 2009/04/02 ハンドルネーム aoi32
タイトル 秘密 番外編  恋するハイヒール 後編
本文


   秘密 番外編  恋するハイヒール 後編 
        

 


「え?合コンに行ってもいいって、先生が言ったの?」

優の友人の奈美が驚いて優を見た。


「うん。 だから、明日の夜、みんなと一緒に行くわ。
 でも、わたしは合コンがどんなものか観察するだけだからね。」

優がにっこり笑う。


すると、傍にいた他の友人達が口々に話し始めた。


「わかってるわよ。優は一応、既婚者だものね。いいのよ、優はただそこにいるだけで。」

「そうそう、人数合わせだものね。・・でも、相手の男子達は驚くわよね。」

「やっぱり優に話題が集中するわよね。ちょっと誘う相手を間違えたかも。」

「いいじゃない、優にも一度ぐらい合コンを体験させてあげようってことで。」

「そうね。・・でも、深沢先生、よく許してくれたわね。けっこう寛大なんだ。」

「でも、門限とかあったりして・・。“いいかい、優。10時までには帰って来なさい”なんて。」

「そうそう、普段はクールだけど優のことは束縛してたりして。」

「や~ね、潤先生は保護者じゃないのよ。門限なんてないわよ。」

「優ってば、まだ“潤先生”なんて呼んでるの?」

「“潤さ~ん”とか“あなた~”とか呼ばないの?」

「・・・・・」

「きゃー、赤くなってる!」

「優ってばほんとに純情なんだからー!」

「ねえねえ、あたしたちも先生のこと“潤先生”って呼んでいい?」

「だめー! 潤先生って呼べるのはわたしだけなんだから。」

「何よ、ケチー!」

「だけど、何だかいまだに信じられないのよね。ほんとに深沢先生と優って結婚してるの?」

「ほんとよね~。この結婚指輪もカムフラージュだったりして。」

「そんなことない! だって毎晩一緒に寝てるもん!」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・きゃ・・」


数秒後、女子大生の悲鳴に近い叫び声が辺りに響き渡った・・・。

 

 


   。♥。・゚♡゚・。♥。・゚♡゚・。♥。・゚♡゚・。♥。・゚♡゚・。♥。・゚♡゚・。♥。

 

 


「・・・何だか賑やかですわね。」


「そうですね。」


大騒ぎしながら移動して行く女子達の数メートル後を、潤と恭子は並んで歩いていた。

まさか、自分のことが話題になってるとは気づきもしない潤は
楽しそうに笑っている優を眩しそうに見つめた。

彼女を見ながら歩いている潤は自然と歩く速さもゆっくりしてくる。

まだ慣れていないハイヒールを履いた恭子も、いつもより少しゆっくりと歩いている。

 

大学構内の桜は満開の季節を迎えていた。

この春、入学したばかりの新入生も加わり、キャンパス内は活気に満ちている。

サークルの新入部員の勧誘や、次の講義室へ移動する学生達は
桜吹雪の舞い散る中、賑やかに動き回っている。


ゆっくり歩いていた潤は桜の花を眩しそうに見上げ、無意識のうちに掌を上にかざしていた。

淡いピンクの花びらがひらひら落ちてきて潤の手の中で重なり合う。

 

    ひらひら・・・・桜が散っていく・・


      また同じように春はめぐってくる・・・

 

        ・・・でも、僕はもう大丈夫・・・

 

潤は小さく呟くとやわらかく微笑んだ。

 

 

歩いて行くうちに恭子が思い出したように話し始めた。


「・・・相変わらず優は先生に頼りきってますわね。それに、あの子はだんだん無邪気になっていくみたい。
 
 初めて会った頃は大人びた子だと思ってましたけど、先生といる時は子供みたいですわね。」


「それは・・あの時から、優は以前にも増して僕への依存心が強くなったからだと思います。」


「え?」


「一年前のあの事故は、周りの人間が考えるよりもずっと深く優を傷つけてしまったのかもしれない。」


「・・・先生。」


「あれ以来、優は事故現場の近くに行こうともしないし、今でも夢でうなされることがあります。

 家でも大学でも僕の姿が見えないと、ひどく不安になって探し回る。

 今日みたいに、授業が終わる度に研究室に駆け込んで来るんです。」


「そうだったんですか。」


「考えてみれば無理もない。 両親を事故で亡くしたうえに、僕まで事故に遭って

 その時、優はその場にいたのですから。

 悲惨な状態の僕を目の当たりにして、かなりショックを受けただろうと思います。」

 
「それに、あの時は先生が自分をかばって怪我をしたのだとわかってますから、余計にショックだったでしょうね。」


「・・・・・」


「それにしてもわたしは気づきませんでしたわ。仕事の時の優は以前となんの変わりもありませんでしたから。」


「そこが優のすごい所かもしれません。・・きっと女優としての天性の才能を持っているんでしょうね。」


「では、女優でない時の優は深沢先生の負担になりませんか?」


「・・正直なところ、戸惑うこともありますが 負担だと感じたことはありません。」


「先生。」


「優は 何の打算もなくまっすぐに純粋に自分の思いをぶつけてくる。

 だから僕は彼女の思いを 出来る限りたくさん受け止めてあげたい。・・そう思ってます。」


静かにそう言う潤の横顔を恭子は複雑な思いで見つめた。

それに気づいた潤は少し慌てたように言った。


「やだな、そんな深刻にならないでください。

 僕はこの状況をそんなに悲観してるわけではないんです。

 ずっと自分のことを思ってくれる人が傍にいるということは幸せなことだから・・。

 それに、優は以前よりもずっと明るくなった。このまま一緒にゆっくりと過ごしていけば

 時間が解決してくれると思っています。」


潤は恭子を見つめてやわらかく微笑んだ。

恭子も静かにうなずいた。

 

 

「・・二人して何を真剣に話してるの?」


それまで友人達と騒いでいた優が突然、二人の所へ来た。

そして拗ねたように頬を膨らませた。


「恭子さん、早くお仕事に行きましょう。」


「あ、もしかして優ったら妬いてるの?」


「そ、そんなことないもん!」


「はいはい、じゃあ、急いで取材を終わらせて帰りましょうね。」


「うん! ・・あ、そうよね。ね、潤先生 知ってる?

 今夜、恭子さんは陸さんとデートなのよ!」


「な、何で知ってるの。」


「昨日、電話で話してるの聞いちゃったの。・・二人はラブラブなのよーー!潤先生。」


「優!」


赤くなった恭子は慌てて優を止める。

優は楽しそうにくすくす笑うと、今度は潤を見上げた。


「じゃあ、潤先生 お仕事に行ってきます。」


「うん、気をつけて。」


「先生も気をつけて帰ってね。車の運転、気をつけてね。」


「うん、わかってるよ。」


「お仕事がんばってね、深沢准教授!」

 

優はそう言うと背伸びをして、あっと言う間に潤の頬にチュッとキスをした。


「優!」

「優!」


驚いてる潤と恭子をよそ目に、優はまた天使のように微笑んだ。


「さっきのキスのお礼よ、潤先生!」


「もう、しょうがない子ね! ほら、優 行くわよ!」


「きゃ~、恭子さんの意地悪!」


「あ、それから言い忘れていたことがありましたわ。

 ・・深沢先生、准教授になられたんですね・・おめでとうございます!」


「そうよ、潤先生が准教授になったのよー!すごいでしょう、恭子さん。」


優は恭子に引きずられながらも、嬉しそうに潤に手を振っている。

彼女はあふれるような無邪気な笑顔を向けている。

思わず潤も困ったように笑ってしまう。

 

学生達の歓声と悲鳴が沸き起こったのは言うまでもなかった。

 

暖かい春の日差しの中、淡いピンクの桜吹雪が舞っていた・・・。

 

 

 

   。♥。・゚♡゚・。♥。・゚♡゚・。♥。・゚♡゚・。♥。・゚♡゚・。♥。・゚♡゚・。♥。

 

 

 

横浜ベイクォーターにあるカフェのテラス席に恭子は座っていた。

海から吹いてくる風は さすがに夜になると少し冷たく感じられる。

恭子は 深いブラウンとグリーンを基調としたスタイリッシュな外観と
落ち着いた雰囲気のこのカフェが気に入っていた。

恭子は頬杖をついたまま、ぼんやりとベイエリアの美しい夜景を眺め、ずっと遠くにベイブリッジを見つける。


「たまには、こうしてボ~ッと夜景を眺めるのもいいわね・・・。」

恭子は呟くと微かに笑った。

そしてふと気がつくと、バックからコンパクトミラーを取り出して唇のルージュが取れていないか
チェックしている自分がいた。


「・・・・・」

恭子は気恥ずかしくなって、そっとコンパクトをバックにしまった。

 

 


「恭子さん!」


その時、慌てた様子の陸が駆け込んできた。

よほど急いで走ってきたのか、彼は膝に手を当てて屈むと肩で激しく息をした。

恭子は思わず立ち上がると笑いながら言った。


「ばかね・・。そんなに急いで来なくてもいいのに。」


「でも、待たせたりしたら怒って帰っちゃうんじゃないかと思って。」


「そうね、あと5分待って来なかったら帰ろうかと思ってたところよ。」


「・・・・・」


「嘘よ。・・あなたならきっと来るってわかってたし・・それに
 たまにはこうして人を待つのも悪くないわ。」


「恭子さん!」


恭子の言葉にじ~んと感動した陸は、思わず彼女を抱きしめた。

夜の街を走ってきた陸の冷たい頬が恭子の頬に触れる。

恭子は驚いて手をばたばたと動かした。

だが、力強い陸の腕は彼女を離そうとはしなかった。


「ちょっ、ちょっとやめなさい、こんな所で!」


「嫌です。」


「恥ずかしいじゃないの!」


「じゃあ、すぐにホテルに行きますか?」


「ばっ、ばかなこと言わないのーー!」


「恭子さんが うん、と言わない限りずっとこうしてますよ。」


「陸?」

 


   ―― 優は 何の打算もなくまっすぐに純粋に自分の思いをぶつけてくる。

      だから僕はその思いを、出来る限り多く受け止めてあげたい。・・そう思ってます ――
 


陸の腕の中で、恭子は潤の言葉を思い出していた。

そして、その後には出会った頃の陸との思い出がよみがえってくる。

 


“俺は気が強い女はもっと好きです。こう・・眉をひそめてキッと睨まれたりなんかしたら堪らないですね”


“恭子さんみたいな強い女には、このぐらい強引にいかないと”


“うるさい女のお喋りをやめさせるには やっぱり、これが一番だな”


“すみません、あなたの怒った顔があまりにも可愛かったので”


“あれ、場所をわきまえれば、またしてもいいんですか?”


“ものすごく動揺してますね。顔も赤いし・・いいなあ、俺、ますますあなたに惚れそうです”

 


    ホントにこの男は年下のくせに 生意気で、単純で、図々しくて、口は悪いし

    すぐふざけるし、それにあきれるくらい強引な男だわ・・。


    ・・・でも・・・


    まっすぐに自分の思いをぶつけてくる。・・・初めて会った時からずっと・・。

 

観念した恭子は陸の胸の中で目を閉じた。


「・・・恭子さん?」

黙ってしまった恭子に陸は不思議そうに呼びかける。

恭子は陸の耳元で囁いた。

 

「・・ホテルは高いから・・今夜はわたしの部屋に来る?」


「え?」


「ついでに何か食事も作ってあげる。」


「本当に?・・本当に恭子さんの部屋に行っても?」


「でも、冷蔵庫には何もないからスーパーに付き合うのよ。荷物持ちね。」


「もちろんです。・・すごいな、あなたの部屋に行くのは初めてだ。」


「そうよ。男はわたしの部屋にはなかなか入れないのよ。」


「俺は恭子さんにやっと認めてもらえたのかな。」


「・・・そうね。」


恭子は素直になっていく自分に驚いていた。

今、自分を抱きしめている陸の胸の中が居心地が良くて、暖かくて まるで陽だまりの中にいるような気がした。

 

   ―― 恭子にはときめきを感じない ――

 

あの時から 恭子は恋愛することに臆病になっていた。

でも、“強い女”と言われても自分の生き方を変えようとは思わなかった。

だが、この数年間の出会いで 頑なだった恭子の心に少しずつ変化が表われていた。

 

「どうしよう、恭子さん。」


「何が?」


「恭子さんを抱きしめてるだけでドキドキしてきた・・。」


「・・え・・・?」

 

そう・・それはわたしも同じ。

あなたにこうして抱きしめられてるだけで胸が熱くなる。

今日はあなたを思い出しただけで動揺していた。


わたしは・・こんな生意気な年下の男に恋してしまったのかしら・・。

 

・・・でも・・


恭子はそっと陸の胸を押して離れると彼を見上げた。

陸は屈託の無い無邪気な笑顔を向けた。

穏やかな黒い瞳がまっすぐに恭子を見つめている。


恭子は思わずドキンとしてしまう。

「さっ、行くわよ。」

顔の火照りを隠すように恭子は陸にくるっと背を向けると歩き出した。


「待ってくださいよ、恭子さん!」

恭子はまるでそれが聞こえないかのように、ハイヒールの音をたてながら歩いて行く。

 

そうよ、わたしはあなたにときめいてしまったのよ。

まるで初めての恋みたいに胸が高鳴っているわ。


でも、すぐに認めるのは悔しいから・・・もう少しの間だけ秘密にしておこう。


このまま、あなたと一緒にいれば わたしはもっと素直になれるかしら。

 

恭子は足を止め、ゆっくりと振り向いた。


彼女の心は陸に向かっている。

彼女の春色のハイヒールも陸の方を向いている。


陸が慌てて駆け寄ってくる。


その必死な顔を見てるだけで、恭子の顔に穏やかな笑みが浮かんでくる。

 

そして、恭子は またその大きな胸の中へ包み込まれるのを待っていた・・・。

 






 

 


                                           

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