ブロコリ サイトマップ | ご利用ガイド | 会員登録 | メルマガ登録 | 有料会員のご案内 | ログイン
トップ ニュース コンテンツ ショッピング サークル ブログ マイページ
aoiルーム
aoiルーム(https://club.brokore.com/hollyhock)
aoi32の創作ストーリーを集めたお部屋です。 どなたでもご覧いただけます。 どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。
サークルオーナー: aoi32 | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 297 | 開設:2008.03.05 | ランキング:100(3927)| 訪問者:1367334/1904575
開設サークル数: 1238
[お知らせ] 更新のお知らせ
容量 : 30M/100M
メンバー Total :297
Today : 0
書き込み Total : 957
Today : 0
秘  密
大学講師の深沢潤と人気女優の青山優。                                                実は結婚していることは秘密。                                                       そして、優には誰にも言えないもう一つの秘密が…
No 5 HIT数 7532
日付 2009/04/02 ハンドルネーム aoi32
タイトル 秘密 5 告白
本文

  



  秘密 5  告白






 


   ・・・大胆な事をしてしまった・・・。


スタジオの控え室で、優は鏡に映る自分を見てため息をついた。


そして・・・そっと自分の唇に指を当ててみる。


昨夜のキスを思い出すだけで体中が熱くなってくる。

夢中だったのでよく覚えていないが 潤の唇の感触だけは忘れてはいなかった。


四月といってもまだ肌寒く、花冷えをしそうな夜だった。

重なり合った唇だけが熱くやわらかだった。


    ・・・・・・・・


  ・・・今になってドキドキしてきた・・・。


        ・・・・・・・・・・・・・

 

「・・優ちゃん、どうかした?」

ぼんやりしている優に メイク担当の玲子が声をかけた。

優より7歳年上の玲子は 優が芸能界に入った頃から担当してくれているので
長い付き合いになる。
色々な悩みも聞いてもらってる頼りになる存在だ。


「あ、ううん。何でもない。」

優は慌てて鏡の中から玲子に笑いかけた。


「そう?・・ならいいけど・・。・・優ちゃん、相変わらず綺麗な髪ね。
 ちゃんとアドバイスどおりお手入れしてるのね。」

玲子はそう言うと 優のさらさらとしたストレートの黒髪にブラシを入れた。


「うん・・。・・すごく綺麗な髪だったの・・・あの人も・・。」

優は遠くを見つめながらぽつりと言った。


「え?・・誰のこと?」


「あ、ううん。・・ね、玲子さん・・それより・・わたしって・・二十歳に見える?

 ・・子供っぽく見えたりしないよね?」


「う~ん、優ちゃんのことは15歳の時から知ってるから、よくわからないけど

 最近、すごく綺麗になったし大人っぽくなったと思うわ。」


「そう?・・それが本当なら嬉しいな。」


「ふふ・・優ちゃん・・もしかして恋してる?」


「え?」


「だって、お肌も艶々だし目も輝いてるもの。・・ね、そうでしょう?」


「・・・うん・・初恋・・してる・・・。」


「初恋?・・ほんとに?・・・ちょっと遅いんじゃない?」


「そうね・・ちょっと遅いよね~。」

優はおどけたように笑った。

鏡の中でからかうように笑う玲子は 優の言葉を冗談交じりで聞いている。

 


優は静かに微笑むとまた遠くを見つめた。

その瞳は大人びていて、深い湖のように澄んでいた。

 

優は心の中で呟いていた。

 

    ・・・本当は遅くなんかないの・・。


        だって・・・14歳の時から・・・ずっと初恋してるんだもの・・


             ずっと、ずっと・・大好きだった人だもの・・・。

 

 

 


    ひらひらと桜の花びらが舞い降りる・・・


      満開の桜の木の下で 彼は泣いていた・・・。

      ・・・声を押し殺し肩を震わせ泣いていた。

      身体の奥底から絞り出すように その魂を震わせて泣いていた。


      男の人でも あんなに悲しそうに泣くのだと あの時初めて知った。

 


優の記憶の中で 彼の姿はあまりにも鮮明で、美しく、儚げだった・・・。


どんなことがあっても忘れられない人。


・・・忘れてはいけない人・・。

 

彼が笑顔を見せてくれるのなら、どんな事だってする。

 

そして・・優はゆっくりと目を閉じて彼女を思い浮かべる・・・。


   ・・・・胸が痛くて痛くて痛くて・・・苦しい。


ベッドに横たわる彼女は まるで眠っているように安らかだった。

艶やかな黒髪がシーツの上で綺麗に波打っていた。

 

・・やっと・・・優はあの時の彼女と同じ二十歳になっていた・・。


  優は あの時から自分が二十歳になるのをずっと待っていた・・・。

 

 

 

   ―――――――

 

 


あの突然のキスの夜から三日たっていた。


その日の講義を終えた潤は 研究室の窓から夕陽を見ていた。


キャンパス内の木々や校舎が赤く染まって行く。

学生達が寝そべる芝生も、噴水の水も鮮やかなオレンジ色の夕陽が降り注いでいる。

 

季節ごとに変化する風景を眺め 茜色の夕陽を見つめ静かに過ごしてきた。

混乱を望まず、ただ平凡で穏やかな毎日を送ってきた。


しかし、あの青山優が目の前に現れてからは驚きの連続だった。


   ・・・いったい彼女は何を考えてるんだ・・・?

 

ある日突然現れて 静かな日々が一変した。

いつの間にか彼女は近づいてきて 気がついたら傍にいた。

まるで、眩しさに目を閉じて・・次に目を開けたら飛び込んできた・・というような感じだった。


優はまっすぐに潤を見つめ 躊躇うことなく感情をストレートにぶつけてきた。


初めはからかって楽しんでるだけだと思っていたが 本当に真剣なのかもしれない。

彼女の目は澄んでいて嘘をついてるとは思えなかった。

 


・・・だが・・


彼女の思いが真剣だとしても 今の潤にはそれを受け止める気にはなれなかった。


彼女はこの大学の学生で 自分は一講師にすぎない。

 


   ・・・もう誰かを好きになったりしない・・。その気持ちは変わらないはずだった。

 


   ――――――

 

ドアがノックされたので開けてみると そこにはうつむいた優が立っていた。


「・・今日の講義は欠席してたはずだが?」

潤は怪訝な顔をして優を見た。

動揺することなく、思ったより事務的に話せたので彼はなぜか安堵した。


あの夜、言ってたように 優はドラマ撮影のためにここ数日間、大学には来ていなかった。 

 

「・・・何だか・・先生の顔が見たくなって・・。」

優は小さな声で言うと静かに潤を見上げた。

 

部屋の中に差し込む夕陽を浴びて 彼女の白い顔もオレンジ色に染まっていた。

それに紛れて 恥ずかしさに頬を染めても気がつかないだろう。

 

「え・・?」

潤の胸が微かに動く・・・。

 

「・・どうしても先生に会いたくなって・・撮影の途中で抜け出してきたんです。」

心細げに言った優の瞳は 心なしか沈んでいるように見えた。

 

「何かあったのか?」

いつもと違う優の様子に潤は少し戸惑っていた。

そう・・。 青山優はいつだって元気で物怖じなどしないはずだった。

 

「・・いいえ・・何もないです・・。」

優は慌てて首を横に振った。

「・・もう大丈夫。・・・先生の顔を見たら元気になりました。

 ・・やっぱりすごいな。先生はわたしにエネルギーを充たしてくれるの。

 ありがとう、先生。・・・わたし、お仕事に戻ります。」

彼女は そう言ってにっこり笑った。

 

「・・・君・・。」


「・・君、じゃなくて優って呼んでください。」


「・・・・・」


「ふふ・・先生って本当に真面目というか不器用というか・・固いですね~。

 でも・・そんなところがいいのかも。・・でも・・もう少し心を開いてくれたら

 いいのに・・なんて思うこともあるけど・・。」


   ・・・・・・・・・


          ・・・・・・・・・・

 

・・・そう言ってるうちに、優の大きな瞳から涙が溢れ出してきた。

彼女の目から涙の粒が落ちてきて、白い頬を伝わっていく。


「・・どうしたんだ?」

潤は動揺して優の顔を覗き込んだ。

 

「・・・大した事じゃないんです・・これからドラマの撮影があって・・

 キスシーンを撮る予定なんです。・・・わたし・・そんなシーンは初めてで・・

 でも・・こんなこと何でもないことで・・女優なんだから・・仕事だから

 みんなちゃんと演技してるのに・・でもわたしは・・ばかみたいに悩んじゃって・・ 

 本当にどうしようもなく甘いってわかってるんですけど・・。」

 

優はぽつりぽつりと告白する。

白い頬には少しだけ涙が光っている。

潤は黙ってそれを聞いている。

 

「・・ふふ・・。でも・・ファーストキスがドラマの中じゃなくて良かった!

 だって・・それは・・先生とだったもの。・・初めてのキスは先生とできてラッキーだった。

 ・・でなきゃ悲惨だったわ。・・そう考えるとまた先生に助けてもらっちゃったのね。

 あ、でも・・あれはわたしから無理矢理だったから・・キスとは言えなかったりして・・

 そうね・・先生はわたしのこと・・何とも思ってない・・・・・・。」

 

      ・・・・・・・・・・・

            ・・・・・・・・・・・・・・

 

     

無理に明るく振舞う優が痛々しかった。


もっと泣きたいはずなのに、気持ちを押さえて自分に言い聞かせる優がいとおしかった。


本当は不安でしかたないのに、大人の振りをして平気そうに振舞う優を守ってあげたいと思った。


そして・・・


いつの間にか 自分の閉ざされた心が少しだけ開いて、そこに優がいることに気がついていた。


それは 春風のように優しく暖かく心地よいものだった。

 


潤は優を静かに引き寄せると その華奢な身体をやわらかく包み込むように抱きしめた。


突然の出来事に優は言葉も出なかった。


潤は戸惑う優の髪に顔を埋めて その甘い香りを確かめた。


   ・・ああ、そうだ・・この香り・・。


        初めて会った時も この胸の中で同じ香りが漂っていた・・・。

 

       ・・・初めて会った時から 彼女に惹かれていた・・・。

 

        でも・・誰かを愛して・・・また失う事が怖かった・・。


      
        だから・・自分の本当の気持ちを抑えてきた・・・。

 

        僕は・・・傷つくのを恐れていた・・ただの臆病者だ・・。

 

 


        
        今・・告白するよ・・僕は 君を・・・

 

 

 

潤は優の頬に残っている涙を指で拭うと そっと彼女と唇を重ねた。


「・・・せ・・・。」

優は驚きのあまり目を見開いたまま立ちすくんだ。

 

「・・・目をつぶって・・・。」

潤はそう囁くと 両手で優の顔を包み込んだ


そして・・静かに優しくやわらかなキスを重ねていく・・・。


ゆっくりと・・・優は目を閉じた。


長い睫毛が小刻みに震える。


また涙が溢れてくる。


それでも優は 潤の情熱的なキスを必死で受け止めようとしていた。


彼女の震える手が潤の背中に回って、彼の白いシャツをぎゅっと掴んだ。


潤への一途な思いが満ち溢れ、思いが叶った喜びで優の胸は震えた。

 

   ・・・ほんと・・・に・・・?


         これは夢じゃないのね・・・?

 

   ずっと、ずっと好きで憧れていた人が・・わたしを抱きしめている。

 

     何度も何度も・・優しいキスをしてくれる・・・。

 

 

 


     ・・・先生が・・大好きです・・。


         先生は・・・?・・先生は・・わたしのこと・・好き・・?

 

 

     ・・うん・・・。

 


     うん・・じゃなくて・・ちゃんと言ってください・・・。

 

 

     ・・・好きだよ・・・・・ゆ・・う・・・。

 

 

     ・・・・やっと・・・。

 


     ・・・え・・・?

 


     ・・・やっと・・ゆう・・って呼んでくれた・・・・・。


 

























背景  ゆとゆと







前の書き込み 秘密 6 愛が育まれる時 前
次の書き込み 秘密 4 初めてのキス
 
 
 

IMX