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aoiルーム
aoiルーム(https://club.brokore.com/hollyhock)
aoi32の創作ストーリーを集めたお部屋です。 どなたでもご覧いただけます。 どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。
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シュシュ
兄妹のように一緒に過ごしてきた裕貴と真由。                                             おたがいに思い合っているのに素直になれなくて…
No 10 HIT数 5024
日付 2009/04/03 ハンドルネーム aoi32
タイトル シュシュ -10- 恋の嵐
本文




-10-恋の嵐

 

真由の瞳から涙が溢れ出し、頬を伝わってソファを濡らしていく。

すすり泣く声が次第に大きくなり、そのうちに嗚咽を上げて泣き出していた。


「真由さん?」

風間は驚いたように真由を見下ろした。

真由は激しく身体を震わせ、ソファに横たわったまま泣いている。


「・・真由さん。」


「・・ごめんなさ・・い、ごめんなさい。」


「・・どうして・・。」


「・・だめ・・なんです。」


「え・・。」


「・・風間さんのこと・・好きです・・。でも、まだ・・だめなんです・・。」


「真由さん。」


「ごめんなさい、ごめんなさい。」


泣きながら詫びる真由を 風間は黙って見ている。


こんな事をするつもりではなかったのに・・
彼女の涙なんて見たくなかったのに・・


風間はソファと真由の背中の間に手を差し入れると 
ゆっくりと彼女を抱き起こした。

そして、ブラウスのボタンを留め 乱れた真由の髪を手で撫で付けた。

優しく、愛しそうに 何度も何度も真由の髪を撫でる。


「風間さん。」


「・・僕が急ぎ過ぎましたね。」


「ごめんなさ・・い。」


「謝らないで。真由さんは悪くない。」


「でも。」


「僕がどうかしてたんです。・・すみません。
 あなたを 怖がらせてしまいました。」


「風間さん。」


「今日はもう帰ります。だから・・ゆっくり休んでください。」


泣き濡れた真由の瞳が風間を見ている。

風間は悲しげに笑うと真由を見つめる。

彼は真由の頬の涙を指で拭うと またそっと抱き寄せた。

そして、ほんの束の間、抱きしめた後 風間は静かに立ち上がった。

 

 

   * * * * * *

 


夜遅くになると雨が激しく降り始めた。

まるで嵐のように強い風が窓ガラスにぶつかって音をたてている。

真由は放心したようにソファに座ったまま動かない。


今、起きたことは現実なんだろうか・・・?

いつも穏やかで優しかった風間を あんな風に激しく
そして、悲しませてしまったのは、真由自身なのだ。

でも、どうしても出来なかった。

彼のことは好きなのに・・一緒にいると安心できるのに・・・・・


また真由の瞳から涙が頬を伝わって落ちた。

真由はそれを指で拭い、ゆっくり立ち上がった。

怪我をした右足をかばうように移動して、向かい側のソファに倒れこんだ。

数日前に裕貴が座っていた場所だった。

真由は静かに目を閉じる。


寂しくて、心細くて、ひどく疲れていた。


真由はそのまま深い眠りに落ちていった・・・。

 

 

 

 

 

大きな温かい手が真由の額を撫でている。

それが気持ちよくて、泣きたいくらい安らかな気分になる。


・・・まゆ・・・まゆ・・


聞き慣れた声が遠くから聞こえてくる。

真由の大好きな 深くて低い声。


その声の主を確かめたくて、真由はうっすらと目を開ける。


「真由・・大丈夫か?」

裕貴が心配そうに真由を見ていた。


「・・・ヒロ・・ちゃん・・?」

これは・・夢? 真由はそう思った。


「こんな所で寝たら風邪引くぞ。」


「ヒロちゃん・・なの?」


「何だ、寝ぼけてるのか。」


「どうして・・ここに・・?」


「携帯もここの電話も繋がらないし 真由がぶっ倒れたんじゃないかと
 心配になって・・来て良かったよ。」


「ヒロちゃん!」

思わず真由は身体を起こすと、裕貴の首に手を回して抱きついた。


「真由?」


「・・わたし・・怖くて・・不安で・・どうしよう・・かと思ってた!
 ヒロちゃんには酷いことを言ったから・・病院であんなこと言ったから
 もう・・来てくれないかと思ってた!」


「ばかだな、真由は。そんなはずないだろう?」


「・・ごめんね・・ごめんね、ヒロちゃん・・。」

真由ままた泣き出してしまった。

もう、自分の気持ちをごまかすことはできない。

やっぱり、ヒロちゃんと離れることなんてできない。


「・・真由? 何だか熱っぽいな。大丈夫か?」

裕貴は真由が熱のせいで興奮してるのだと思った。

「隣の部屋に布団を敷いてやるから、もう寝ろ。」

裕貴は抱きついたまま離れようとしない真由の背中を何度も撫でた。


「ヒロちゃん・・。」

「真由が眠るまで傍にいるから。」

「・・本当に?」

「ああ、だから安心して休むんだ。」

「う・・・ん・・。」

「やっぱり、真由は子供だな。」

「うん。」

「何だ、今夜はやけに素直だな。」

「うん。」


裕貴は笑いながら真由の背中をもう一度撫でた。

そして いつの間にか、その真由の華奢な身体をぎゅっと抱きしめていた。

 

 

 

外は激しい雨が降り続いていた。


居間の隣の和室に布団を敷くと、裕貴は真由をそこに寝かせた。

真由は 裕貴が二階の真由の部屋から引っ張り出してきた
パジャマに着替えると 少し恥ずかしそうにタオルケットを胸まで引き上げた。

そして枕元に座り込んでいる裕貴の顔を見上げた。


「足は痛くないか?」


「うん、ちょっと痛いけど大丈夫。」


「じゃあ、もう寝ろよ。」


「うん。」


真由が目を閉じると、裕貴は彼女の瞼に手をそっと当てる。

そして、また真由の額を何度も撫でる。

真由はくすっと笑いながら呟いた。


「・・・気持ちいい・・。」


「そうか。」

 

激しい雨が窓ガラスを叩きつけている。

風が音を立てて夜の闇の中を嵐のように吹き抜けていく。

 

「・・ヒロちゃん、覚えてる?」

真由が目を閉じたままぽつりと言った。


「何を?」


「わたしがまだ子供だった頃、こんな嵐の日がすごく怖くて
 とても一人では眠れなかったから
 ヒロちゃんの部屋に行って、ベッドの中にもぐりこんでた・・。」


「・・そうだったな。」


「パパやママの所じゃなくて、ヒロちゃんの所に駆け込んだのよね。」


「枕を抱えて泣きながら来るから、嫌だって言えなかったんだ。」


「ふふ・・ヒロちゃんは優しかったし
 ママだったら、しっかりしなさいって怒られちゃうってわかってたから。」


「・・・・・・」


「そんな時、ヒロちゃんは傍にいてくれて・・こんな風にずっと頭を撫でてくれた。
 大丈夫だよって言って 何度も何度も撫でてくれたのよね。」


「真由。」

 

「・・あの頃に戻れたらいいのに。」


「どうして?」


「そしたら、ヒロちゃんとまた一緒に寝られるもの。」


「何言ってるんだ。」


「だって、もうそんな事 出来ないでしょう?」


「そうか?」


「え?」


真由が驚いて思わず目を開けると、裕貴は畳の上に寝転んだ。
そして、寝ている真由の隣に滑るように近寄ってきて、
頭と左肩を布団の上に乗せた。


「・・ヒロちゃん。」

真由は目を丸くして裕貴を見た。
額が触れそうなほど近くに裕貴がいた。


「・・まだ出来るよ。」

裕貴は悪戯っぽい笑みを向ける。


「う・・ん。」


目の奥がつんとしたので、真由は慌てて隠すように
裕貴の肩に顔を押し付けた。


「ほら、もう寝ろ。」

裕貴はさり気なく顔を上に向ける。


「うん。」


「・・・・・」


「・・ヒロちゃん。」


「うん?」


「大好き。」


「知ってる。」


ぶっきらぼうに答える裕貴を見て、真由はくすっと笑う。

もう一度、真由は裕貴の肩に頬を寄せると、ゆっくりと目を閉じた。

嵐の夜でも何の不安もなかった。

裕貴が傍にいてくれるだけで、こんなに安心できる。


雨はまだ降り続いている。

真由の耳にはそれが心地よい調べとなって、安らかな眠りの中へと誘っていった。

 

 

 


裕貴はゆっくりと目を開けた。

すやすやと眠る真由の寝息が聞こえてくる。

肩先に感じる真由の穏やかな息遣い・・・。


裕貴は思わず、ふっと笑ってしまう。

 

 

・・・まいったな。

こいつは・・まったく警戒心というものを持ってない。

完全に無防備。俺のことを男だと思ってないな、真由は。

兄貴として信じ切ってるってことか?

 

 ―― ヒロちゃん、大好き ――


知ってるか?

そう言われると、俺は一歩も動けなくなるんだ。

もう、真由のことを妹だなんて思えないのに

本当は真由にこの気持ちを伝えたいのに、それができなくなってしまう。

この思いを告げて 真由に拒絶されたら

その時 おまえの“大好き”は“大嫌い”になるような気がして。

真由の“大好き”は“信頼”と同じ。

それは 男ではなく兄としての俺への気持ちなんだろう?

 

 


「ヒロちゃん・・・。」

 

その時、真由が寝言で裕貴を呼んだ。

裕貴はゆっくり身体を起こし、寝ている真由の顔を覗き込んだ。

あどけない顔ですやすや眠る真由。

いつもの くるくるっとした大きな黒い瞳は閉じられて
長い睫毛が影を落としている。

額に手を当ててみる。

熱はそれほど上がってないことがわかって 裕貴はほっとする。

 

今はまだ 寝言で呼ぶのはあの男の名前じゃなくて俺なのか。

でも、いつかは俺よりも大事な男ができるんだろうか。

 


真由・・真由・・・

 

裕貴は真由のやわらかな白い頬をそっと撫でる。

彼の指は真由の艶やかな唇に降りていく。

 

  
他の誰よりも愛しい真由。

ずっと前から見つめてきた・・俺の真由。


おまえの兄貴として、一生 見守っていこうと思ってた。

 

でも もう・・限界だ・・・

もう おまえのことを妹だなんて思えない

 

ゆっくりと・・裕貴は真由に顔を近づける。

そして・・その小さな唇にそっと口づけた・・・。

 

 
真由・・愛してる・・・







つづく…













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