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aoiルーム
aoiルーム(https://club.brokore.com/hollyhock)
aoi32の創作ストーリーを集めたお部屋です。 どなたでもご覧いただけます。 どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。
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シュシュ
兄妹のように一緒に過ごしてきた裕貴と真由。                                             おたがいに思い合っているのに素直になれなくて…
No 14 HIT数 4762
日付 2009/04/04 ハンドルネーム aoi32
タイトル シュシュ -14- キスの続き
本文



-14- キスの続き

           


もうすぐ日付が変わる時間だった。

阿川の自宅の前で 裕貴と真由は向かい合ってたたずんでいる。


「じゃあ、入って。」


「今夜は泊まって行かないの?」


「かおりの勝ち誇った顔なんて見たくも無い。」


「もうっ、ヒロちゃん 子供みたい。」


「ほっとけ。ほら早く入れ。」


「うん、じゃあ気をつけて帰ってね。」


「ああ。」


「今度はいつ会える?」


「明日電話する。」


「うん。」

最高に嬉しそうな顔をする真由。


裕貴は“じゃあな”と手を上げると車に向かって歩き出した。

そして、途中で振り返る。

まだ、真由は門の前に立ってこっちを見ていた。

恥ずかしそうに笑いながら手を振っている

裕貴は胸が締め付けられるような気がした。


今までずっと 真由は俺のことをあんな風に見ていたのだろうか

俺も真由のことを見ていたはずなのに なぜ、気づかなかった?

 


「真由!」

衝動的に・・裕貴は真由に向かって走り出す。

そして、真由の身体を引き寄せて胸の中に閉じ込める。

きつく抱きしめられて真由は驚いて声を上げる。


「・・ヒロちゃん?」


「真由・・。」


「どうしたの?」


「真由は俺のものだ。」


「う・・ん。」


「誰にも渡さない。」


「うん。」


「もう離さない。」


「うん。」


「・・・今夜も帰さない。」


「ヒロちゃん。」


「このまま俺の部屋へ来い。」


「え・・?」


裕貴の熱いまなざしを感じて 真由は驚いて裕貴を見つめ返す。

その大きな黒い瞳は揺れて、うっすらと涙で濡れ始めていた。

 

「う・・ん・・今夜はヒロちゃんと一緒に・・いる・・。」

真由は声を震わせながらやっと答えた。


見つめ合った二人の瞳には もうお互いの姿しか映っていなかった・・・。

 

 

 

 


シャワーを浴びた真由は 素肌に裕貴の白いシャツを着ているだけだった。

彼女の濡れた髪から ほのかにシャンプーの香りがしてくる。

裕貴も同じものを使っているのに 真由のそれは違うような気がする。

切ないほど甘くて どこか懐かしい香り。

決して溺れてはいけないと自分に言い聞かせてた密やかな香り。

裕貴はその香りを深く吸い込むように 艶々と輝く長い髪に顔を埋め
いとおしげに何度も何度も真由のそれを手で撫で付ける。

綺麗な額に口づけて 繊細な瞼に口づけて 滑らかな頬に口づけて
待ちわびていたその唇に口づける。

 

ずっとこうしたかったんだ・・・裕貴が囁く。

わたしも・・・真由も答える。

 

やわらかくて、優しい唇の甘さに真由は震えそうだった。 

口づけは一度では終わらない。

何度も何度も その熱い唇で塞がれて、包まれる。

息もできないほどぴったりと重なり合うと
もっと甘くてやわらかなものが真由の唇の中に忍び込んできた。

真由は震えながらそれを受け止める。

熱を帯びたように激しく絡み合う二人の口づけ。

頭の中が真っ白になって、体中が痺れたような感覚になる。


熱いキスの合間に 真由の唇から甘い吐息が洩れる。

裕貴を見上げる真由の瞳はまるで透明な泉のように濡れていた。

 


ヒロ・・ちゃん・・


何?


わたし・・もう・・だめかも


まだキスだけなのに?


だって・・


・・・これからだよ 真由

 


耳元で低い声で囁かれただけで 体中の力が抜けてしまいそうだった。

裕貴の熱い視線がまっすぐに真由に向けられている。

眼鏡を外した深くて黒い瞳。

今は真由だけを見つめている瞳。

 

真由・・・


大好きよ ヒロちゃん 愛してる・・・

 

溢れる思いに耐え切れなくなって 真由は裕貴の胸の中へ崩れ落ちる。

裕貴はそんな真由を受けとめると また包み込むように抱きしめた。

そして、軽々と真由を抱き上げるとそのままベッドに運んで行く。


真由の揺れる瞳が裕貴を見ている。

 


ヒロちゃん・・・


これからだ・・って言っただろう?

 

裕貴のその言葉に真由は気が遠くなりそうだった・・・。

 

 

 











 

 


カーテンの隙間から差し込む光で目が覚めた。

純白のアッパーシーツに包まれながら 真由は逞しい腕の中にいた。

真由はその相手を確かめようと少しだけ視線を上げる。


・・・見覚えのある綺麗な首筋と顎のライン。


もしかしたら これは夢?

だって・・こんなことあるわけないもの

・・でも・・

これは 大好きなヒロちゃんの匂い?

ずっと恋焦がれてきた腕の中なの?

 

裕貴の肌のぬくもりに包まれて目を覚ますなんて 
永遠に無いことだと思ってきた。


真由は裕貴の裸の胸に顔を押し当てる。


ヒロちゃんの心臓の音が聞こえるわ

この世で一番大切な人が生きている証

昨夜 その人はわたしを愛してくれた

何度も口づけて、抱きしめて、ゆっくりと初めての場所へ誘ってくれた

 


夢じゃ・・ないのね・・

 

甘くてとろけるような記憶がよみがえる。

恋しくて、切なくて、いとおしい思いがこみ上げてくる。

真由は 隙間の無いくらいぴったりと裕貴に身体を寄せた。

 


「・・・真由・・起きたのか?」

 

突然、頭の上から声がしたので 真由は驚いて顔を上げた。

シーツの衣擦れの音とともに 

裕貴は身体を下にずらして真由の顔を覗き込んだ。

睫毛が触れそうなほど近くに裕貴の顔があった。

 

「ヒロちゃん・・。」

あっという間に真由の頬が染まる。

真由は慌てて視線を外すと 逃げるように下へ動く。

 

「何してるんだ?」


「だって・・恥ずかしいんだもの。」


真由はまた裕貴の胸に額をくっつけて顔を隠す。

温かい裕貴の素肌に触れて 胸の鼓動が速くなる。


「何が?」

裕貴は 負けずにまた身体を下にずらして 真由の顔を見る。

からかうような瞳が真由を見ている。


「やだ・・。」

また真由が下に移動しようとした。


だが、今度は追いかけることはしないで 裕貴は反対に上に向かった。

 

  !!!!!


息が止まるほど驚いた真由は 
声も出せないまま 物凄い勢いで裕貴の胸の所まで戻ってきた。

真由の顔はまるで、トマトのように真っ赤だった。


「どうした?」

裕貴は肩を震わせながら笑っている。


「・・なっ、何てことするのーーー?」

真由は興奮して叫んだ。


「え? 俺、何かした?」

裕貴はとぼけたように真由の顔を覗き込む。


「もう、知らない!!!」

真由は怒ったように両手で顔を覆うと くるっと回転して
裕貴に背中を向けてしまった。

うなじまで赤く染まっていた。


「まーゆ。」

裕貴はなだめるように真由を後ろから抱きしめる。


「やだ、もう! ヒロちゃんのばかー!」

真由は火照った顔を押さえながら首を振る。

そんな真由が愛しくて 裕貴は彼女をぎゅっと抱きしめると耳元で囁く。


「俺の顔を見るのが恥ずかしいって言うから。」


「だからって・・だからって・・!」


「そんなに興奮するな。昔は一緒に風呂に入ったんだから
 もう見慣れてるだろう?」


「見慣れてない!」


「まーゆ、そんなに怒るなよ。」


「いやっ・・もう嫌いよ! ヒロちゃんなんて大嫌い。」


「大嫌い?」


「嫌いよ。」


「本当に?」


「本当に嫌い。」


「・・・それは困ったな。」


「・・・・・」


「俺はこんなに真由のこと好きなのに。」


「・・・・・」


「たった一日で破局か・・」


「・・・・・」


「でも、もう兄妹には戻れないし・・」


「・・・・・」


「顔も見たくないほど嫌われたのなら、俺が遠くに行くしかないかな。」


「いやっ!」


真由は慌てて体の向きを変えると裕貴に抱きついた。

やわらかな真由の胸が裕貴の逞しい胸と重なり合う。


「だめよ!どこにも行っちゃだめー!」


「・・真由。」


「嫌いなんて嘘よ。だから、どこへも行かないで。」

裕貴の首筋に額を寄せながら 真由は肩を震わせた。


「可愛いな 真由は・・」


裕貴は真由を抱きしめると 滑らかな白い背中を何度も撫でる。

その顔にはやわらかな笑みが浮かんでいる。


「どこへも行かないから安心しろ。」


裕貴は静かに言うと 真由の髪にそっと顔を埋めた。

 

 

 


テーブルの上にある 裕貴の携帯電話が鳴っている。

その時、裕貴はシャワーを浴びている最中だった。

真由は気になりつつも、ただそれを見ていた。

携帯の音が止まったかと思うと、今度は部屋の電話が鳴り出した。

真由は躊躇いながら電話に出た。


「もしもし・・。」


『あれ?・・えーっと、AXレコードの北川ですが・・。』


「あ、北川さんですか? ・・あの、わたし・・真由です。
 Y2のライヴでお会いした・・」


『真由ちゃん? ああ、阿川の妹の・・
 やあ、久しぶりだね。元気でしたか?』


「はい。」

北川の“妹”という言葉に複雑な思いがしたが
何と説明したらいいのかわからなかったので、真由は黙っていた。


『阿川はそこにいるのかな。携帯にもかけたんだけど出なくて。』


「あ、はい。今、シャワーを浴びてるんですが・・。」

真由はそう答えて顔が熱くなった。

 

『そうですか。 実は、ニューヨーク行きの詳しい日程が決まったんで
 それを知らせようと・・。』


「え、ニューヨーク?」


『あれ、阿川から聞いてない? 
 今度、あいつ ハリウッド映画の音楽を担当することになったんだ。
 だから来月渡米するんだよ。それが29日に決定して。』


「来月・・8月29日・・?それって、ヒロちゃんの・・」


『真由ちゃんも寂しくなるね。
 でも、3年もうるさい兄貴がいないとなると
 真由ちゃんも安心して彼氏が作れるかな。』


「・・3・・年・・?」


真由は受話器を握り締めたまま 呆然と立ち尽くした。

 

 


ひっそりと・・肩を落として真由がベッドに座っていた。

シャワーを浴びた裕貴は 髪をタオルで拭きながら声を掛ける。


「真由、もう昼だから何か食べに行こうか。」

裕貴の明るい声に答える事もなく、真由は背を向けたままじっと座っている。


「真由? どうした?」

裕貴は訝しげに真由の顔を覗き込んだ。


「・・泣いてるのか?」

真由の白い頬が涙で濡れているのを見て、裕貴は驚いた。


「どうした。・・・どこか痛いのか?」


「・・嘘つき・・・。」


「え?」


「嘘つき! ヒロちゃんの嘘つき!」


「真由?」


「どこへも行かないって言ったのに! さっき、そう言ったのに!」
 
真由は叫ぶと肩を震わせて泣き出した。


「やっと・・傍にいられると思ったのに!
 ずっと一緒にいられると思ったのに!
 ヒロちゃんはまたわたしから離れて行くのね。」


「真由、どうしたんだ。何があった?」


「北川さんから電話があったの。
 ・・ヒロちゃんが・・ニューヨークに行くって・・
 もうすぐ行っちゃうって・・3年間も・・。」


「真由。」


「ひどい、ひどいわ ヒロちゃん!」

真由は両手で顔を覆うと、声を上げて泣き出した。


しばらくそれを見ていた裕貴は小さくため息をついた。

そして、真由の前に屈みこんで、彼女の両手を手の中に包み込んだ。

真由の頬には涙の筋がいくつも光っている。


裕貴は真由の頬の涙を指で拭うと、手を引き寄せて一緒に立ち上がった。


「・・・ヒロちゃん・・」

真由は涙でいっぱいの瞳を裕貴に向けた。

悲しくて悲しくて 涙は止まりそうもない。

 

「真由は昨日から泣いてばかりいるな。」


「・・・・・」


「これじゃ心配で置いていけないな。」


「え・・・?」


「一緒に行くか?」


「え?」


「婚姻届を出して 阿川真由になって ニューヨークへ行くか?」


「・・ヒロちゃん・・・。」


「それから、あっちへ行って落ち着いたら、
 かおりを呼んで教会で式を挙げて・・。」


「・・・結婚式もするの・・?」


「真由のこと・・妹じゃなくて嫁さんにしてやるよ。」


「ヒロちゃん。」


「俺はもう待つのは嫌だから、さっさと決めろ。」


「・・ヒロちゃ・・ん。」


また真由の瞳から涙が溢れ出す。

彼女は裕貴に抱きつくと、その胸に顔を押し当てた。

 

「ほら、泣いてないで さっさと返事しろ。」

裕貴は笑いながら真由の背中を何度も撫でる。


「う・・ん。 わたしも一緒に行く。
 ヒロちゃんのお嫁さんになって、阿川真由になって、ニューヨークへ行く。」

真由は顔を上げて目を潤ませながら返事をした。


「わかった。」

裕貴はにっこり笑うと真由の髪をくしゃっと撫でた。


「でもね、ヒロちゃん。」


「うん?」


「ヒロちゃんのこんなオレ様プロポーズにOKする人なんて
 わたしぐらいしかいないと思うわ。」


「そうか?」


「そうよ。」


「真由ならYESに決まってるからいいんだ。」


「わたしがNOって言うかもしれないって少しは思わなかった?」


「・・・・・まさか。」


「やだ! ヒロちゃん、やっぱり少しは思ったんだー!」


「そんなわけないだろう。」


「嘘よ。“真由が行かないって言ったらどうしよう”って
 顔に書いてあるもん。
 無理して自信があるような振りをしてたんじゃない?」


「ああ もう、うるさい真由! 少し黙れ。」


「ヒロちゃんって・・ほんとに横暴なんだ・・・・・・」


真由のお喋りな口は裕貴の唇でふさがれる。

突然の出来事にばたばたと抵抗していた真由の両手は
次第に熱を帯びていくキスで魔法をかけられたように動かなくなる。

 


ああ、そのとおりだよ 真由

俺はいつだって真由には強気になれない

最後のところで臆病になってしまう

きっとそれは永遠に続くんだろうな

 

 

ゆっくりと裕貴の背中に回る真由の華奢な手。

真由をきつく抱きしめる裕貴の大きな手。


二人は熱い口づけを交わしながら“愛してる”と何度も囁いていた・・・。


 


つづく…


























































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