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aoiルーム
aoiルーム(https://club.brokore.com/hollyhock)
aoi32の創作ストーリーを集めたお部屋です。 どなたでもご覧いただけます。 どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。
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シュシュ
兄妹のように一緒に過ごしてきた裕貴と真由。                                             おたがいに思い合っているのに素直になれなくて…
No 15 HIT数 4432
日付 2009/04/04 ハンドルネーム aoi32
タイトル シュシュ -15-(終) いつか王子様が -前編-
本文



 -15-(終)  いつか王子様が-前編-

 

 

「・・・来月、二人でニューヨークへ行くって?
 その前に結婚? 入籍?
 え? 婚姻届の用紙ももらって来た・・・?
 え・・? えーーーー!」


さすがのかおりも唖然として、吸いかけの煙草を指に挟んだまま固まっている。

灰が落ちそうだったので、真由はかおりの手元へ灰皿を差し出した。

ちょうどタイミング良く、煙草の灰がポロッと落ちた。


「あさってからまたツアーに出るから 明日、区役所に出そうと思って。」

裕貴はいつもより神妙な面持ちで言った。


「そうしないと わたしの気が変わるんじゃないかって心配なんだって。」

真由はくすくす笑いながら裕貴の腕に手を回す。


「まーゆ。」

裕貴は真由を少しだけ睨むが、すぐに口元に笑みを浮かべる。


「・・・・・」

かおりは黙ったまま煙草を吸いながら二人を見ている。
そして、呆れたように首を振る。

「まったく・・。昨日、裕貴は飛び出したままで
 真由も帰って来ないし・・
 無断外泊かと思ったら裕貴と一緒にいたって?
 まあ、それは予想できたけど
 でも、それがいきなり結婚?
 もう、一体 あんた達って・・・。」


「・・ママ・・。」

ぶつぶつ呟いているかおりを見て 真由は不安げな顔になる。

「もしかして、ママは反対?
 大事な息子のヒロちゃんの結婚相手は・・わたしじゃだめ?」


「ばかね、この子は何言ってるんだか。
 ・・その逆よ。」


「え?」


「真由は本当に裕貴でいいの?
 鈍感で女心がわからないバカ息子なのよ。」


「うん。ヒロちゃんがいいの。
 ヒロちゃんじゃなきゃだめなの。」


「けな気だね、真由は。本当に素直でいい娘だわ。
 ちょっと裕貴、聞いたでしょう?
 必ず真由を幸せにするのよ。
 泣かしたりしたら承知しないからね。」


「ああ、わかってる。」


「真由、頼りない息子だけど裕貴のことよろしくね。
 必ず幸せになるのよ。
 おめでとう。」

かおりは真由の頭を優しく撫でながら言った。


真由の大きな瞳から はらはらと涙がこぼれる。

今度は裕貴が呆れたように笑う。

 

「また泣いてる。」
「だって・・」


裕貴は真由の頬の涙を指で拭うと 彼女の頭を引き寄せて腕の中に包み込んだ。

真由は裕貴の肩に顔を押し付けると、身体を小刻みに震わせて泣いた。

そんな二人を見ていたかおりは安心したように笑った。


「ところで、裕貴。」

「うん?」

「あれをやってみてよ。」

「あれって?」

「ほら、男が結婚相手の親に挨拶に来た時に言う、あのセリフよ。」




「はあ?」

「ほら・・“お嬢さんと結婚させてください”とか“僕にください”とか
 言うでしょう?あれよ。」

「訳わかんないなー! ・・かおりは俺の母親じゃないのか?」 

「あたしはあんたの母親だけど 真由の親代わりでもあるのよ。
 だから、ちゃんと挨拶してみて。」

「嫌だ。 そんなの恥ずかしくてやってられるか!」

「あ、そう。じゃあ、真由との結婚は認めないわよ。」

「ますますわからない!」


裕貴とかおりのやり取りを聞いていた真由は思わず笑い出す。


「あら、泣き止んだみたいね。
 じゃあ、真由からも裕貴に言いなさい。
 ・・あんたも聞いてみたいでしょう?」


「うん、聞いてみたい。」


「真由!」


「ほらね。さっ、裕貴も観念するのね。
 ・・ところで、裕貴は真由に何て言って求婚したの?
 どうせ、また偉そうなこと言ったんでしょう?」


「あ、それはね・・・」


「真由!それは止めろってば!」


裕貴の慌てた叫び声が響き渡る。

真由がくすくす笑う。

かおりも裕貴をからかって満足そうに頷いている。

 

その夜、阿川家の居間からはいつまでも明るい笑い声が続いていた・・・。

 

 


  * * * * * *

 

 

   ―― 翌日の夜 ――

 

「・・それで、阿川。
 ニューヨークのおまえの住居のことなんだが・・」


『ああ、悪い 北川。
 ちょっと状況が変わったから変更したいことがあるんだ。』


「何だ?」


『単身で渡米するつもりだったが、もう一人増えることになった。』


「・・女か?」


『ああ、嫁さんを連れて行く。』


「よっ、嫁さん~??? 阿川、結婚したのか?」


『今日、入籍したんだ。』


「嘘だろーー?」


『だから、住む所は彼女の希望も・・・
               ・・・・・うん?』


「阿川?」


『・・・明るくて清潔なキッチンと
 大きなバスタブ付きのバスルーム・・が希望だそうだ。』


「・・だそうだ、って・・もしかしてそこにいるのか?」


『それから、できればキッチンは対面式で・・
 え?俺の顔を見ながら料理したいって?
 ・・・可愛いこと言うな、おまえは。』


「・・・・・」


『え? あとは、どんなに激しい動きをしてもビクともしない
 頑丈なベッドだって?

 ちょっと、ヒロちゃん! わたしそんな事ひと言も言ってなーい!!!

 耳元でそんな大声を出すなって。

 何よ!ヒロちゃんが悪いんでしょう!

 やめろって、まゆーーー!!!』


「まゆ・・? お、おい、真由って・・おまえの妹だよな・・?
 え?どういうことだ??? おい、阿川!」


『悪い、北川。ちょっと今取り込み中だから また後でかけ直す。』


「阿川ーーー!」
 
 

北川は訳がわからないまま携帯電話を握りしめていた。

そして、“最も結婚が似合わない男”だった阿川裕貴の
あっけない結婚の結末は数日の内に業界に広まったのだった。

 

 

 

 

真っ白なシーツの上で 真由は睫毛を震わせながら、ふうっと息を吐いた。

うっすらと汗ばんでいる彼女の額を いとおしそうに大きな手がゆっくりと撫でる。

真由はその長い指を握り締めると指先にそっとキスをした。

裕貴はもう一度、後ろから真由を抱き直した。

そして、彼女の滑らかな肩に口づけをすると
真由の唇から甘い吐息がこぼれる。


「真由・・。」


「・・ヒロちゃんがこんなに強引だとは思わなかった。」


「そうか?」


「今までは優しいお兄ちゃんだったのに。」


「俺はもう真由の兄貴じゃない。」


「・・そうだけど。」


「明日からまたツアーに出るから、真由の顔を見られなくなるなと思って。」


「・・2週間・・また会えないのね。」


「2週間なんてあっと言う間だ。そしたら、すぐ渡米の準備だ。」


「ヒロちゃん、ギリギリまで仕事して忙しいね。
 けっこう真面目に働いてるんだ。」


「俺はいつだって真面目だ。」


「はいはい。」
 
 
「だから、返事は一度でいいって。」


「そうだったね。」


「それより真由はどうなんだ。幼稚園の方は辞められそうか?」


「う・・ん。・・明日から幼稚園でお泊り保育があるから 
 その時に園長先生に話してくる。
 9月まであと1ヵ月あるから、後任の先生も見つかると思うし・・・。」


「真由? 何だか元気ないな。」


「・・今、受け持っている もも組の子達は入園した時からずっと見てきたの・・。」


「うん。」


「あと半年で卒園なんだな、と思って。」


「真由。」


「途中で辞めるのはちょっと心残りかな・・って・・

 ・・・・・ううん、違う。
 わたしはヒロちゃんとずっと一緒にいるって決めたんだもの。」


「・・・・・」


「わたしはもうヒロちゃんの奥さんだもの。
 ヒロちゃんが一番大事だわ。」


真由はそう言って身体の向きを変えると 裕貴に抱きついた。

やわらかくて滑らかな胸の感触が裕貴を不思議な感覚に陥らせた。

それは今まで感じたことの無い微かな不安のようなもの。


真由の本心が知りたくて、裕貴は彼女の肩をそっと離した。

何か言いたそうな裕貴の瞳を向けられて、真由は戸惑ったように見つめ返す。


 

「真由。」


「・・ヒロちゃん。」


「だめだ、真由。
 俺はもうおまえを離さないと言ったはずだ。」


「う・・ん。」


真由が頷くと同時に 裕貴は彼女の身体に覆い被さった。

そして声を上げる隙も与えずに真由の唇をふさいだ。

湧き上がる情熱のままに熱く激しく その艶やかな唇を奪う。

しばらくの間、裕貴はそのやわらかくて甘い口づけを味わうと
震える真由の唇に触れたまま呟いた。

 

「・・・俺はもう待たない。」








後編につづく…





























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