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aoiルーム
aoiルーム(https://club.brokore.com/hollyhock)
aoi32の創作ストーリーを集めたお部屋です。 どなたでもご覧いただけます。 どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。
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シュシュ
兄妹のように一緒に過ごしてきた裕貴と真由。                                             おたがいに思い合っているのに素直になれなくて…
No 17 HIT数 3795
日付 2009/04/04 ハンドルネーム aoi32
タイトル シュシュ その後の二人 ― Mayu's theme ―
本文


シュシュ その後の二人 ― Mayu's theme ―

 

 

さらさらと音がしそうなホワイト・オーガンジーのウェディングドレスが
ふわりと宙に浮いて どこまでも澄み渡る青空に近づく。


きゃっ・・・

軽やかに抱き上げられた真由は声を上げると 慌てて裕貴の首にしがみつく。

純白のウェディングヴェールがそよ風に揺れる。

 

ロサンゼルス郊外の海辺のレストラン

カルフォルニアの眩しい日差しが降りそそぐ3月のある日
貸切の店のテラスでは 結婚披露のパーティーが開かれていた。

 

「ヒロちゃん、恥ずかしいから下ろして。」

真由は頬を薔薇色に染めて 今にも触れそうなほど近くにある
裕貴の顔を見つめる。


「どうして? 皆 喜んでるじゃないか。」

裕貴は悪戯っぽく笑うと 真由にそちらを見るように促した。

すると、その場にいる招待客からどっと歓声が上がる。


“ヒロキー!マーユ! Congratulations!”
“素敵なWeddingだったわ!”


1時間前に近くのWayfarers Chapel(ウェイフェアー教会)で
結婚式を挙げたばかりの新郎新婦に 人懐っこい陽気な
アメリカ人達は親愛を込めて祝福を贈る。


“ヒロキー! 花嫁にKissしなきゃ!”
“そうだな。ヒロキは半年ずっと我慢してたからな”


仲間の助言には素直に従うべきだな・・裕貴の口元が緩む。


裕貴はゆっくりと真由を下ろすと、今度はその白い肩を抱き寄せて唇を重ねた。

その途端、また賑やかな歓声が沸き上がる。

真由は慌てて裕貴の胸を押して離れようとする。


「まーゆ。」

キスが中断されたので 裕貴は不服そうな顔をする。


「だめよ、ヒロちゃん。・・ここにはママもいるのよ。」

真っ赤になった真由が必死で首を振りながら言った。

花嫁と一緒に揺れるさらさらのウェディング・ヴェール・・


綺麗だな 俺の真由・・・裕貴の胸が高鳴る。


「かおりなら あそこでディラン達と映画の話で盛り上がってる。」

見ると、かおりは映画製作の関係者たちと談笑している。

 

「ママ・・・」


真由は楽しそうにはしゃいでいるかおりを見て、思い出していた。

 

 


結婚式が始まる前に控え室に入って来たかおりは 
純白のウェディングドレスに包まれた真由を感慨深げに見つめた。


「おめでとう、真由。本当に綺麗だわ。
 ・・・真理子と由孝さんが生きてたらどんなに喜んだか・・」


「わたしの・・お父さんとお母さん?」


「そうよ。真由っていう名前は両親の名前から一文字ずつ取って付けられたの。
 二人とも真由のことをとても可愛がってたわ。」


「ママ・・」


「真理子は高校生の時からの親友で・・
 あたしたちは性格がまるで違ったけど
 なぜか気が合って15年近く付き合ってきたの。」


真由の大きな瞳がうるうると揺れる。

事故で亡くなった両親のことを 
こんな風にかおりの口から聞くのは初めてだった。

なぜかそのことを聞くのはいけないような気がして、
真由は話題にするのを避けてきた。


「真理子はおとなしくて控えめな性格だったけど、 
 芯が強くて一途な女性だったわ。
 真由もそんな真理子に似てるわ。 
 裕貴なんかよりずっとしっかりしてるもの。」


「ママ・・・」


「真由は真理子の分まで幸せになるのよ。
 あなたの両親はそのことを一番に望んでるはずだわ。」


「うん。・・・ありがとう、ママ。」


「真由。」


「今まで・・大切に育ててくれてありがとう。
 わたし・・パパとママとヒロちゃんのいる家に来られて
 本当に幸せだった。ありがとう。
 それから・・これからもよろしくお願いします。
 ママとわたしは・・これからもずっと一緒よね。」


「ばかね、何言ってるの。」


「ママ・・」


「これから真由は裕貴と一緒に生きていくんでしょう?」


「うん、ヒロちゃんとママと一緒にいる。」


「真由ったら・・やっぱりあなたはまだ子供なのね。」


「え?」


「真理子みたいな大人の女になるのはずっと先だわ。」


「ママ・・」


「本当にこんな甘えん坊の真由とあの頼りない裕貴が結婚して
 二人でちゃんとやっていけるの?」


「・・・ママに助けてもらうから大丈夫。」


「嫌よ。 あたしの役目はもう終わったわ。」


「ママ・・・」


「これから真由は裕貴と一緒に生きていくのよ。
 二人で欠点を補って、お互いに高めあって、
 成長しながら暮らしていくのよ。」


「ママ・・・」


「あたしは遠くから見守っているから。
 いつまでも見守ってるから・・だから頑張りなさい。
 幸せになるのよ、真由。」


「う・・ん。 わたし・・幸せになるから。
 ママ達がそうしてくれたように、これからはわたしが
 ママとヒロちゃんを幸せにするわ。」


「真由ったら・・。」


かおりはそれ以上何も言えないのか、言葉に詰まってしまった。
彼女の瞳は見る見るうちに潤んでくる。


「・・ママ・・泣かないで。」


「泣いてるのは真由の方でしょう?」

かおりは笑いながら真由の頬にハンカチをそっと当てた。

「せっかくの綺麗な花嫁が台無しよ。」


「・・・・・」

真由は黙ったままかおりに抱きついた。

涙は止めどなく溢れてくる。

いつまでたっても泣き虫で困った子ね・・

かおりはそう言いながら何度も何度も真由の頭を撫でていた。

 

 

 


「真由・・泣いてるのか?」


「え?」


裕貴に名前を呼ばれて 真由ははっと我に返った。


「そんなにキスするのが嫌なら今は止めておくよ。」

裕貴は拗ねたように唇を尖らせると落胆したように言った。

そして真由の頬に光る涙をそっと指で拭った。

 

わたしは・・思い出して また泣いてたの?

それにしても・・ヒロちゃんったら

何だかどんどん子供になっていくみたい

 

真由は がっかりしてため息をついている裕貴を見て 思わず笑ってしまった。


兄のように振舞ってきた時はあんなに頼りがいがあったのにね

 

 

―― 婚姻届を出して、阿川真由になって

   真由のこと・・妹じゃなくて嫁さんにしてやるよ ――

 

ねえ、ヒロちゃん

わたし・・あの時のヒロちゃんのプロポーズの言葉が
どんなに嬉しかったかわかる?

他人が聞いたら、何て横柄なプロポーズだと思ったかもね

でも わたしはすごく嬉しかった

わたしは・・阿川真由になるんだなって・・

これで本当の家族になれるんだなって・・・

きっと・・ヒロちゃんはわたしのそんな気持ちを知ってたのよね

 

「ヒロちゃん。」


「うん?」


「わたし・・悲しいんじゃないの。嬉しくて泣いてるの。」


「真由。」

 

そうなんだ・・・嬉しかったのか

それならそうと早く言えばいいのに・・

 

見上げた真由の唇に また裕貴の唇が重なる。

抵抗する真由の身体は裕貴の腕の中に閉じ込められて身動きできない。

また歓声が上がる。

硬く握り締めた真由の両手が裕貴の胸を押す。

 

だめよ、ヒロちゃんったら!


だって嬉しかったんだろう?


そっ、そのことじゃないの


じゃあ何のことだ?


とにかく今はだめなの


嫌だ 半年分なんだから覚悟しろ


はっ、半年分って???


1日1回として180回、2回だったら360回、3回なら・・


きゃー!やめてやめてヒロちゃん!もうそれ以上言わないで


今度会った時は 何でも言うことを聞くって言ったじゃないか


でもでもー!


でも、じゃない


まっ、待ってーー!

 

真由の抵抗に裕貴は待ってはくれなかった。

 

ヒロちゃん・・・


もう待てないんだ 真由

 

何度も繰り返されるキス

次第に深く熱くなるキス

大好きな裕貴の・・とろけるようなキス


体中の力が抜けて崩れそうになった真由は
必死で裕貴の背中に手を回してつかまる。

 

真由・・・


ああ、もうっ、ヒロちゃんったら

 


キスを見慣れてる人々さえも照れそうな二人の口づけに
そこにいた招待客は大袈裟に騒ぎながら祝福の言葉をかけていた。

 

 

 

 

 

「真由、おいで。」


裕貴は真由の手を取ると、レストランの中に招き入れた。

真由は不思議そうに店の中を見回すと驚いて声を上げた。


「まあ・・・。」


優雅で落ち着いた感じの洒落たレストラン。

カリフォルニアの爽やかな風が開け放れた窓から店内を通り抜ける。

店の中央のスペースにあるグランドピアノ。

その傍には 弦楽器を手にした演奏者たちがにこやかに微笑みながら椅子に座っていた。  

 

「・・・ヒロちゃん、これは・・。」

真由は戸惑ったように裕貴を見上げる。


「真由はここに座って。」

裕貴は真由をエスコートするとドレスの裾に気をつけながら椅子に座らせた。

そして真由の頬を撫でながら静かに笑いかけた。


「真由に捧げる演奏会・・ってとこかな。」


「え・・?」


「ちょっと気障かな。」


「ヒロちゃん・・。」


「・・パティシエには負けてられないからな。」


「ヒロちゃん?」


真由は潤んだ瞳で裕貴を見上げるとくすっと笑った。

 

それは・・風間さんのことを言ってるの?

あいつがケーキなら 俺はやっぱりこれしかないだろう?

 


ピアノの前にすっと静かに座った裕貴の指から ピアノの澄んだ音色が流れ始めた。


この曲は・・・“美女と野獣”?

真由は思わず両手で頬を押さえた。


裕貴の静かなピアノソロから始まり、次第にバイオリン、
ビオラ、チェロの弦楽器の音が重なり、絡み合って、
美しいハーモニーを紡ぎ出していく・・・・


裕貴のアレンジによるピアノと弦楽四重奏のコラボのことを
知っていた人々は流れる音楽に引き寄せられるように店内に入って来た。

 

“星に願いを”“Over the rainbow” そして “ いつか王子様が”・・

真由の大好きなディズニーメドレーの演奏が終わると裕貴は真由に告げた。


「・・次は “Mayu's theme(真由のテーマ)” ・・真由の曲だ。
 この俺がわざわざ作ったんだから最後までちゃんと聴けよ。」


わざと乱暴に言う裕貴の顔を見て、真由は黙ったまま何度も頷いた。

また涙がこぼれそうだった。


「偉そうに何言ってるんだか。」
 
いつのまにか真由の傍に来ていたかおりがふんっと笑った。

「風間君が真由にケーキを作ってきたのがよほど悔しかったのね。
 子供みたいに張り合って・・単純な発想だわね。」

 

裕貴だけのピアノソロ。

初めて聴く 真由のために作られた曲。

優しくて、切なくて、透明な泉から溢れ出す水音のように澄んだ音色。

大好きな裕貴の長い指から零れる美しくて繊細なメロディー


思いがけないプレゼントに 
やはり真由は 溢れ出す涙を抑えることができなかった・・・

 

 

 


 ―― Four Seasons Hotel Los Angeles at Beverly Hills ―― 
 

 

真っ白なシーツでラッピングされた真由が 逞しい腕の中でうっとりと目を閉じた。

そして しばらく余韻に浸った後、ゆっくりと目を開けて
その相手の胸元から首筋へと視線を移していく。

顎に辿り着く頃には 彼女の名前をいとおしそうに呼ぶ声が迎えてくれる。


「・・・真由・・」


マリッジリングをした真由の左手は大きな手に包み込まれる。

重なり合う2つの指輪。

 

わたしたち 本当に結婚したのね・・真由の顔にやわらかな笑みが浮かぶ。

「ありがとう、ヒロちゃん わたし すごく嬉しかった。
 あんな素敵なプレゼントは初めてよ。
 世界にひとつしかないヒロちゃんからの贈り物だもの。」

 

可愛いな真由は

やっと手に入れた俺の宝物 

これからは毎日こうして真由を抱いたまま眠れるんだな


裕貴は満足そうに笑うと、愛しい恋人を抱きしめる。


「じゃあ、真由からも何かお礼をしてもらおうかな。」


何しろ半年間も我慢したんだ

周りはみんな自慢のパートナーを連れて来て見せつけるし

気が遠くなるほど長かったな

 

「何をして欲しいの?」

何か悪戯を企んでるように 大きな瞳がくるくるっと動く。

 

「知ってるくせに。」


「なあに?わからないわ。」


その焦らし方・・どこで覚えたんだ?

ちょっと前までは からかうだけで真っ赤になって動揺してたのに

・・・まあいいか こんな真由も可愛いし・・ 


裕貴は体を起こすと、真由の顔を両手で包み込んだ。

からかうような黒い瞳には彼女しか映っていない。

裕貴は真由の唇を指でなぞると 今度はそこに自分の唇を重ねる。

やわらかくて甘い吐息が裕貴を夢中にさせる。

 

 

真由・・


ヒロちゃん・・

 

まだ大人の女を演じきれない真由の頬が染まる。

裕貴の胸は優しく掴まれて 彼女から目をそらすことができない。

 


今度こそ真由を離さない


う・・ん


どこへも行かせない


どこへも行かないわ


真由はこの先もずっと俺のものだ


ヒロちゃんもずっとわたしのものよ

 


もう一度・・・いい?

溢れる幸せを感じながら裕貴が問いかける。

 

真由は返事をする代わりに 羽根のようにふわりと微笑んだ。

そして すうっ・・と両手を伸ばして しなやかに最愛の恋人を抱きしめた・・・。

 


























































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