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aoiルーム
aoiルーム(https://club.brokore.com/hollyhock)
aoi32の創作ストーリーを集めたお部屋です。 どなたでもご覧いただけます。 どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。
サークルオーナー: aoi32 | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 297 | 開設:2008.03.05 | ランキング:100(3927)| 訪問者:1355637/1892878
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抱きしめたい
元気で天然な美月、可愛い年下の大学生 航平                                            そして クールな大人の男 永瀬が織成す 明るい(?)三角関係…
No 11 HIT数 4939
日付 2009/04/05 ハンドルネーム aoi32
タイトル 抱きしめたい -11- ごめんね 航平
本文

 



-11-  ごめんね 航平 

 

 

今夜は友人の麻美と一緒に ちょっとお洒落な和風レストランに来ていた。

揚げ出し豆腐を食べながら麻美は美月を睨んだ。


「美月ったら! そんなこと言っちゃったんだ…
 かわいそうに、きっと彼はすっかりその気よおー!」


「うん、あれから わたしを見つけると抱きついてくるの。
 それで “約束覚えてるよね?”て聞くの。
 …それが可愛くて…つい、うんって返事しちゃうのよね」


そうすると 航平は嬉しそうに笑って まるで子犬がじゃれつくように
体をすり寄せて美月を抱きしめるのだった。

最初はうっとおしいと思うこともあったが 何度か抱きしめられる度に
慣れてきて、航平の広い胸も、長い腕も、石鹸の香りがする綺麗な首筋も 素直に心地よく感じられるようになっていた。


「だから航平は家庭教師のバイトも増やして 毎日 帰りが遅いみたい。
 そんな無理しなくてもいいのに」

 


高級ホテルじゃなくていいのよ
最近のラブホはなかなかお洒落らしいし(う、わたしも露骨~)


そんな所で美月ちゃんを抱きたくない!


そ、そんな生々しく……


初めて美月ちゃんが僕のものになるんだ
だからそれは…神聖で奇跡的なことなんだよ


しっ、神聖???


そうだよ
僕にとって美月ちゃんは大切な存在なんだ


航平はロマンティストね……


美月ちゃんと一緒にいる時だけだよ

 


航平が真剣な眼差しを向けながら熱く語る言葉に
美月はくすぐったいような気分になる。

 

「…それって、ウブな航平君を弄んでるんじゃない?
 うう、ますます気の毒な航平君…」


「もっ、弄んでるだなんて!そんなことないわよ」


「でも、きっと航平君は 美月に愛されてると思い込んでるわよ」


「間違ってないわ…だって わたし、航平のこと好きだもの」


「本当に? ……じゃあ、例の作家先生のほうはどうなの?」


「永瀬先生は……憧れの作家で、とても尊敬してる人よ」


「会社を早退してまで追いかけて行ったのに?」


「あれは……心配な事があったから」


「でも、会いたかったんでしょ?」


「それは…そうだけど……」


「結局 美月は二人とも好きなのね。 二人の間でフラフラしちゃって…」


「麻美~!」


「美月、やっぱりこれは……二股じゃない?」


「え?」


「しかも、美月はそれに気づいてない。それって、もっとひどいかも
 …こういうのを小悪魔みたいな女って言うのよね」


「ひどいわ、麻美!」


美月は興奮して立ち上がった。

今まで全然考えもしなかったことを麻美に言われて 美月は動揺していた……。

 

 


麻美と別れて帰路についた美月は 電車から降りて改札口を出た。

そして、力なくため息をついたその時 携帯電話が着信を告げる。

航平からだった。


「航平なの?」


『うん。 美月ちゃん、今どこ?』


「電車から降りて、これから家に帰るところよ。
 …航平は?まだ家庭教師のバイト?」


『もう終わったよ。僕も帰る途中なんだ』


こんな遅くまで……?

美月の胸の奥が痛む。

思わず立ち止まった美月は話し始める。

 

「あのね、航平」


『うん?』


「わたし…航平に酷い事してるかも」


『何が?』


「二股かけてるって」


『ふっ、二股???』


「…そうなのかな…」


『美月ちゃん 本当に二股だったら、僕には言わないんじゃない?』


「あ…」


『ホントに天然だね、美月ちゃんは。 …そんなところが好きなんだけど』


「航平」


『それに…美月ちゃんは 僕の事をもう弟じゃないと言ってくれたから
 今はそれで十分だよ』


「航平ったら」


『だから、そんな落ち込んだ顔しなくていいよ』


「え?」


驚いて顔を上げた美月の目の前を 航平がゆっくりと歩いてくる。

彼の顔には穏やかな笑顔が浮かんでいた。

 

「航平」


「僕もちょうど家まで帰るところだったんだ」


「それでまた引き返して来たの?」


「うん。美月ちゃんと一緒に帰ろうと思って」


「………」


「帰ろう」


航平はそう言うと手を差し伸べた。

美月が躊躇うこともなく航平の大きな掌に自分の手を載せると
航平はその手をやわらかく包むように握り締めた。

そして、二人は手を繋いだまま歩き始めた。

途中、外壁や庭にクリスマスのイルミネーションで飾り付けをした家が
あちこちで見られる住宅街を通って行く。

ツリー、サンタクロース、トナカイが鮮やかな電飾で縁取られ
冬の夜空の下で色とりどりに輝いている。


「見て、航平!
 あのサンタ、家の中に入っていくところなのね!」

美月は 二階の窓から下げたロープにつかまっているサンタクロースを指差しながら笑った。

航平は 目を輝かせながらはしゃいでいる美月の横顔に優しい眼差しを向ける。

“航平”と名前を呼ばれるだけで胸が熱くなってくる。

美月の涼やかな笑顔を見るだけで幸せな気分になる。

その全てを自分のものにできたら どんなに幸せだろう。

 

 

「美月ちゃん」


「ん?」


「今年のクリスマス・イヴは僕と一緒に過ごしてくれるよね?」


「…え…?」


「…クリスマスの朝まで…」


「…航平…」


美月は驚いて目を大きく見開いたまま彼を見つめた。

そして ほんの少し考えた後、ゆっくりと頷き 自分の気持ちを告げる。


「う…ん …イヴは航平と一緒にいる。
 次の日の朝まで…  ずっと一緒にいるわ」
 


ふわり…と航平は最高の微笑を浮かべると 美月をそっと抱きしめる。

そして 美月の髪に顔を埋めて やった!…と嬉しそうに呟いた。

美月も照れたように笑うと 航平の胸の中でゆっくりと目を閉じた……。

 

 

 

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12月24日 クリスマス・イヴ


六本木けやき坂通りは 降りそそぐ雪のような純白と鮮やかなブルーのイルミネーションが光り輝いていた。

二色のLEDによる幻想的な光の結晶が 道行く人々の足を止め
その雪の森の前で待ち合わせをする恋人達で溢れていた。

ロマンティストな航平は もちろんその中の一人だった。

彼は夜空を見上げた後、ゆっくりと光のツリーを眺め
眩しそうに目を細めながら やわらかく微笑んだ。

そして、寒さを感じることもなく 待ち焦がれた人はやって来る。


「航平!」

よほど慌てて走ってきたのか 彼女は息を弾ませながら航平に笑いかける。


「ばかだな、美月ちゃんは…そんなに急がなくてもいいのに。
 まだ約束の時間じゃないよ」

そんなことを言いながらも 航平は嬉しそうだ。


「だって、きっと航平は早く来て待ってると思ったから。
 …実際、そうだったでしょ?」


「そうだね」


「もう、しょうがない子ね。
 寒いんだからギリギリ間に合うように来ればいいのよ」


「そう言う美月ちゃんだって早く来たじゃないか」


「わたしは…思ったより早く仕事が終わったから」

美月は言い訳するように呟く。

「あ、それから 明日なんだけど、有休取ったから」


「ホントに?」


「うん。昨日、休日出勤したからね」


「すごいよ、美月ちゃん!
 じゃあ、今夜はホテルに泊まって 
 明日もずっと一緒にいられるね!」


「そ、そうね」 …うう、そんな大声で言わないで~


「美月ちゃん!」


喜びを抑えきれない航平は 思わず美月に抱きついた。


ちょっ、ちょっと航平、やめなさいったら!

こんな公衆の面前で…! 恥ずかしいじゃないの!


まるで、空から純白の雪のようなイルミネーションが舞い降りてくるようだった。

 

航平は 抵抗してじたばたと手を動かす美月などお構いなしに

嬉しそうに笑うと ぎゅっと最愛の恋人を抱きしめた…。

 

 

 

 

ゆっくりと…航平の唇が降りてくる。

額にその熱い唇が押し当てられた途端、美月は目を閉じる。

最初 航平は唇にそっと触れるようなキスをしてくれる。

その後 唇が重なって優しく包まれるとやわらかな舌が入り込んでくる。

美月はそれに応えてそっと受け止めて絡ませる。


何度も何度もキスをする。

短いキスをした後 見つめ合う。

長いキスをした後 抱きしめ合う。

航平の綺麗な瞳が美月を見つめている。

航平のやわらかな抱擁が美月を幸せにする。


ホテルの部屋の中はしんと静まり返っていて
二人の唇が重なり合う音と吐息だけが聞こえてくる。

 

こう…へい


うん?


航平はキスが上手ね


そう?


航平にキスされると体中が痺れたようになるの


美月ちゃんのことが好きだから


え?


僕の気持ちがこもってるから そう感じるんだよ、きっと


あ…


どうしたの?


いけない、これは永遠に秘密にしておこうと思ってたんだわ


え?


つい喋っちゃったじゃない…もう、わたしったら

 


航平は もう自分の気持ちを抑えることはできなかった。

ぼやいている美月が可愛くて、可愛くてどうしようもなかった。

正直な美月が愛しくて、愛しすぎて胸が痛くなりそうだった。


きゃっ! 突然、美月が声を上げる。

ふわり、と航平に抱き上げられた美月の体が宙に浮く。

航平は 大切な宝物を扱うように美月をそっとベッドに下ろすと
跪いて彼女を見上げる。

そして、黙ったまま美月が履いているブーツをゆっくりと脱がせていく。


「航平…?」


いつもと違う真剣な眼差しを向けられて、美月は少し戸惑っている。

そんな美月を安心させるように 航平は彼女の髪をゆっくりと撫でて

掌で白い頬を包み込んだ。

 

「ずっと…美月ちゃんが欲しかったんだ」


「航平……」


航平はゆっくりと美月の体をベッドに押し倒した。

キラキラと潤んだ航平の瞳が美月を見つめている。

美月はやわらかく微笑むと そっと航平の肩に手を伸ばした。

しなやかな細い腕が彼を優しく抱き寄せる。

航平は 美月の艶やかな唇にキスしようと顔を近づけた。


その時だった。

部屋のどこかで電話の着信音が鳴り響いた。


「え?」 …思わず航平の動きが止まる。
「あ…」

「…ごめん、わたしの携帯だわ。…電源切るの忘れてた」


決まり悪そうに謝る美月を見て 航平は困ったように笑う。

仕方なく美月はベッドから起き上がると 航平の側をすり抜けて
テーブルの上に置いてあったバッグの中から携帯電話を取り出した。


「もしもし? 編集長?どうしたんですか?
 …え? 今からですか? …あの  …いえ
 ……はい、わかりました」 


携帯を切った美月は大きなため息をつくと ゆっくりと振り向いた。

そして、泣きそうな顔で言った。


「ごめんね 航平 …わたし 仕事で行かなくちゃいけないの…」


「えーー!」


航平は大声を上げると拗ねたように頬を膨らませた…。

 

 

 

 

その日、取材を終えた編集部の秋山が 札幌から東京へ戻ってくるはずだったが 吹雪が原因で空港で足止めされ その彼の代わりに美月が 作家の阿川かおり宅を訪ねるように連絡があった。

原稿の締め切りはまだ先だったが、翌日 彼女は渡米することになっていたので 急遽、美月は原稿のチェックをすることになった。


何とか修正を済ませて 原稿を会社の警備室に預けた美月が
再びホテルへ戻ってきた時には もうすでに日付が変わっていた。


「航平、ごめんね!」

美月は慌てて部屋に駆け込んだが、笑顔の航平が迎えてくれることはなく部屋の中はしんと静まり返っていた。


「…航平?」

一瞬、不安がこみ上げてきたが すぐにそれは打ち消された。

美月の顔にやわらかな笑みが浮かぶ。


待ちくたびれた航平は ベッドの上でうつ伏せたまま眠っていた。

シャワーを浴びたのか 航平は純白のローブを羽織っただけで 何も掛けずに寝ていた。

テーブルの上にはシャンパンと二つのグラスが置いてある。

美月はそれを手に取って驚いた。


やだ、これ、空じゃない! …航平ったら一人で一本空けちゃったの?

美月はまじまじと航平の寝顔を覗き込んだ。

あどけない少年のような寝顔だった。


「航平? 酔っ払って寝ちゃったの?」

美月が声をかけても つん、とやわらかな頬を軽く押してみても
航平は目を覚ます気配なはい。

しょうがないわね…… 美月は航平に毛布をかけると
いとおしそうに彼の髪を撫で付けた。


そうよね もう4時間も経っちゃったんだもの

今夜は一緒に過ごすって約束したのに……

航平はひとりで待っててくれたのよね


美月は目の奥がつんと痛くなる。 

そして、今にも泣きそうになるのを堪えながら呟いた。

 

「航平… 遅くなって、ごめんね…」

 

 

とりあえずさっぱりしようとシャワーを浴びた美月が戻って来た時も
航平はまだ眠り続けていた。

 

シャンパン一本飲んじゃったんだもの 仕方ないね

こんなに気持ちよさそうに眠ってるから、無理矢理 起こすのもかわいそうだし…


…でも 本当に熟睡してるわね


…わたしも 少しだけ横になろうかな… 何だか疲れちゃったし…


航平の安らかな寝顔を見て、緊張感が解けた美月は ほんの少しだけ休もうと ベッドの毛布をめくって航平の隣にそっと滑り込んだ。


いいよね ソファじゃ寒いし……


美月は少しずつ航平の傍に擦り寄って ぴたっと体をくっつけた。

航平はうつ伏せのまま、美月のほうに寝顔を向けている。

美月はまた 航平の髪を撫でて、やわらかそうな頬をそっと押さえた。

 

 …… 航平ったら 本当に可愛い顔してる…

 このままずっと見ていたい…かも

 


美月は 航平の肩先に額を寄せて温もりを確かめる。


航平の規則正しい寝息を聞きながら 美月もゆっくりと目を閉じる。




静かにクリスマスの夜は更けていく。

 


大好きよ 航平 

だから 早く目を覚まして

そして またたくさんキスをしようね

そしたら…わたしは航平をぎゅっと抱きしめてあげる

今まで航平がしてくれたように今度はわたしが航平を抱きしめてあげる

 

 


静寂が漂う部屋の中

そこには いつの間にか睡魔に負けてしまった美月と航平が

二人一緒に純白のシーツに包まれて 寄り添うように眠っていた……。

 
















 




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