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aoiルーム
aoiルーム(https://club.brokore.com/hollyhock)
aoi32の創作ストーリーを集めたお部屋です。 どなたでもご覧いただけます。 どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。
サークルオーナー: aoi32 | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 297 | 開設:2008.03.05 | ランキング:100(3927)| 訪問者:1355030/1892271
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抱きしめたい
元気で天然な美月、可愛い年下の大学生 航平                                            そして クールな大人の男 永瀬が織成す 明るい(?)三角関係…
No 13 HIT数 4375
日付 2009/04/05 ハンドルネーム aoi32
タイトル 抱きしめたい -13- プールサイドから愛をこめて
本文




-13-  プールサイドから愛をこめて  

 




「やっぱり…二人して朝帰りはまずいわよね…」

「朝帰りじゃないよ、美月ちゃん。 もう夜だよ」

「そうよね、もうどっぷり日も沈んで…って、違うでしょ!
 その、航平は昨夜は何て言って家を出て来たの?」

「僕は美月ちゃんとホテルに泊まるって」

「え???」

「でも、誰も信じてくれなかった」

「あっ、あのね 航平~」

「美月ちゃんは?」

「わたしは…麻美たちと夜通しでパーティーするって…」

「…嘘ついてきたんだ」

「だって…本当のことなんて言えないわ」

「どうして?」

「どうしてって…だって今まで 航平なんて眼中にないわって
 言ってきたから 今さら …それに!
 男の人とホテルに泊まるなんて、普通 親には言えないわよ!」

「…僕は言ったけど」

「航平は普通じゃないのよ。
 やっぱりまだお子ちゃまなのね~。ああ、かわいいー!」

「また可愛いって言った!」

「だってホントに可愛いんだもの。航ちゃん、かわいいー!」

「子供扱いするなー!」


航平は頬を膨らませて反撃を始めた。

そして 笑いながらふざける美月の腕を掴むとぐっと自分のほうに引き寄せた。

…なあに? と甘く抵抗する美月の唇は 
あっという間に塞がれてそれ以上は何も言えなくなる。


あ…ん もう… 


熱っぽくて強引なキスは美月をすぐにとろけさせる。

気がつくと 
美月も夢中で航平の背中に手を回して航平の甘いキスに酔いしれている。

昨夜から何度 こうして口づけを交わしただろう……


しばらくして二人の唇が離れると 
航平は美月を見つめたまま微笑んだ。


これでも子供扱いする?


…ずるいわ 航平


言葉と裏腹に美月の唇は薄く開いて航平を求めている。


何だか色っぽいね…  航平を誘う美月の潤んだ瞳。 


もう一度…二人の唇が重なろうとする瞬間だった。


ゴホン、ゴホン!!!

不自然な咳払いが周囲に響き渡った。


え?
あ?


美月と航平は寄り添ったまま その方向に顔を向ける。

二人は忘れていた。

そうだった、ここは美月と航平の家の前だったのだ。

しまった、場所を考えるのをすっかり忘れていた
…美月は後悔した。

 

そこには 口をあんぐりと開けて頬を両手で押さえている母二人と
複雑そうに苦笑いをしている父二人が揃って佇んでいた。

 

あはは…皆さんお揃いで~ と美月はごまかし笑いをしながら
もじもじと後退りをした。


そして …やだ、もう!と叫ぶと 美月は恥ずかしさから逃げるように
航平の後ろに隠れるとその広い背中に こん…とおでこをくっつけた……。

 

 

 

 

「じゃあ、結婚式は航平君の卒業後ということで」

「そうすると 3月の終わりぐらいになるかな」

「まー、それじゃ 急いで二階のリフォームを始めなくちゃ!」

「結婚式場も探さなくちゃね。 そうだわ、お父さん
 確か知り合いにブライダルサロンに勤めてる方がいたわよね」

「うん、早速連絡してみよう」

「まー、よろしくお願いしますね。
 えっと あとは 引き出物と そうだわ ウェディングドレス
 ああ、それから新婚旅行!」

「決めることがたくさん!
 ああ、忙しくなるわねー!」

「お部屋は寝室と…そうだわ 航平君の書斎、いえ研究室 あ、実験室?
 それも作らなくちゃね!どんな風にすればいいのかしら。
 それと…そうそう 将来のために赤ちゃんのお部屋も ああ、楽しみね~」

「それは いくら何でも気が早すぎるんじゃないか?」

「あらっ、何言ってるの、お父さんったら。
 あたしが美月の歳の頃には もうとっくにこの子を生んでたのよ」

「だからって まだ婚約もしてないのに」

「やだ!そうだわ、まずは結納じゃない? 日取りを決めなきゃ~!」

「年が明けたらすぐだわね。 ええっと 1月の大安っていつ?」

「カレンダーを持ってくるわ!」

 


………………

 

    ………………

 

 

…… すごい …


美月は息を呑んでその様子を眺めていた。

美月の両親と航平の両親がソファに座って テーブルを囲んで
ああでもない、こうでもないと騒いでいる。

しかも その話題は美月と航平の結婚のことなのだ。

つい数十分前、この美月の家の玄関先での出来事をしっかり目撃された
美月と航平は 引きずられるように家の中に連れて来られた。

 

「こっ、航平!
 あなた、昨日言った事は本当だったの?
 美月ちゃんとホ、ホテルに泊まるってーーー!」

「だから本当だって何度も言ったじゃないか」

航平は頬を膨らませてぼやく。


「美月! あんたは嘘ついたのね?
 麻美ちゃん達と一緒だなんて!」

「ごっ、ごめんなさい! でもっ、本当のことなんて言えないわよ~」

美月は小さくなって母親を見上げる。


「いいわ。 とにかく、こうなったからには責任を取らなきゃね」

「責任って …普通は男性側に使う言葉じゃないの?」

「美月は黙ってなさい!
 …あんたは今までにも航平君にひどいことしたんだから
 責任を取るのが当然なのよ」

「そんなぁ…」

「ごめんね、航平君。
 こんなどうしようもない娘だけど、お嫁さんにしてもらえる?」
 
「そんな…美月ちゃんがどうしようもないなんて…
 でも、僕でよければ…」

「ちょっと航平!
 どうしてそこで受け入れるようなことを言うの?」

「だって、僕はずっと美月ちゃんと結婚したかったから」

「だからって、どうしてお母さんに言われたまま結婚なんて!」

「美月ちゃん?」

「なっ、何よ!」

「そうか… まだちゃんとプロポーズしてないから…」

「え?」

「それで怒ってるの?」

「ちっ、違うーーー!」

「じゃあ…」

「だって! まだ たった一度、いえ違う 何回かだけど
 …って わたし何を言って… だから!
 一晩一緒に過ごしただけなのに なぜすぐに結婚なんて…!」

「…そうか やっぱり美月ちゃんにとっては大したことじゃないんだ…」

「どうして そこで航平が落ち込むのよ」

「美月! あなた航平君を弄んだの???」

「ちょっとお母さんは黙って…」

「お黙りなさい、美月!
 純粋な航平君を騙したらお母さんが許さないわよ!」


母親の物凄い剣幕に さすがの美月も黙ってしまった。

そして それ以上の抵抗をするのは無理だと諦め
美月は親達の話し合いを静観することにしたのだった。
 

 

 

カレンダーを見ながら騒いでいる親たちを呆然と見てると
隣に座っている航平が美月の手をそっと握る。


…航平?

大丈夫だよ 美月ちゃん
さっきの光景を見て 親達は興奮してるだけだから
きっと一晩過ぎれば熱気も冷めるはずだよ

どうしてわかるの?

それは…長い付き合いだから

…そうね

それに…美月ちゃんはまだ結婚する気なんてないんだろう?
その気がないのに結婚しろだなんて
おじさんもおばさんも言わないよ

そうよね

…僕は残念だけどね

航平

だから待ってる…美月ちゃんがその気になるまで
今までもそうだったんだから どうってことない

…航平…

 

穏やかに笑う航平を見て 美月は戸惑ったように笑い返す。


…結婚… 航平とわたしが…?

わたしもいつか 航平と結婚したいと思うようになるのかしら?

航平のこと好きだし…愛してる…と思ってる

でも 結婚なんて…  まだ考えられない……

 


親達の話し合いはまだ続いていたが
美月にはその声がだんだん遠のいていくような気がした。

聞き慣れた親しみのある声は 美月の耳元で心地よく響く。

美月の手は航平の大きな手に包まれている。
 


…何だか…眠くなってきちゃった

部屋は暖かいし 航平の手も温かくて気持ちいい

昨夜はあまり寝てないし…今朝も夜明け前に起こされて…

その後 映画館と遊園地に行って…ずっと遊んでいたのよね

さすがに…疲れた…   …… …

 

 

 


「…二人とも寝ちゃったわ…」

「…よほど疲れてるのね…」


思わず赤くなる母二人。

航平と美月はソファに座ったまま お互いに寄り掛かりながら寝てしまっていた。


「しばらくこのまま寝かせておいて 航平君が起きたら帰るように言うわ」

美月の母が二人に毛布を掛けながら言った。


「それにしても 熟睡してるわね」

「可愛い顔して。まだまだ子供なのね」

「…まさか 昨夜も二人でホテルで熟睡しただけってことじゃないわよね」

「まさか…」

「そうよね、いくら何でも」


二人の母親は顔を見合わせて まさかね、と言いながらまた赤くなった……。

 

 

 


   * * * * * *

 

 

 

永瀬が部屋の中を歩き回っている。

そして、時々 立ち止まっては顎に手を当てながら考え込み
しばらくするとまた歩き出す。

そして、くるっと振り向くとガラスウォールに目を向ける。

真冬の街は夕暮れ時を迎えて 深いオレンジ色に染まっていた。

物憂げに…永瀬は外の景色を眺め 深いため息をついた。

 

…新年早々 永瀬先生は ついに スランプに突入 ……


さっきからずっとその様子を眺めていた美月は小さく頷いた。


先生でも書けなくなる事があるのね……

って そんなのん気な事を言ってる場合じゃないわ

どうしよう

今までこんなことなかったのに

いつも余裕たっぷりで締切日の数日前に原稿は
出来上がってたのに、こんな時 気が利く編集者としては
何をすればいいのかしら

そうね 何か気分転換にでも…


せん…美月が声をかけようとした時、突然 永瀬が振り返った。


「ちょっと泳ぎに行って来ます」

「はい?」

永瀬の唐突な言葉に美月は聞き返す。

「泳ぐって、どこで?   …あ、待ってください!
 先生っ… わたしも  お供します!」


美月は 車のキーを取ってそのまま部屋を出て行こうとする
永瀬の後を追いかけるがコートと鞄を置いたままだと気づいて 
慌てて戻ってきた。

「先生!置いていかないでくださいねーーー!」

美月はそう叫ぶと テーブルの上に置いてあった携帯電話をがしっと掴んだ。

…いつもと何かが違う? 一瞬、美月の胸に微かな不安が過っていた…。

 

 

 


…… すごい!

うわあ、バタフライ? クロールじゃなくてバタフライよ!

すごいすごい どうして あんなに速く泳げるの?

先生が水泳が得意なんて…意外だわ

あ、でも そうよね ご実家は鎌倉の海岸の近くだもの

きっと子供の時から泳いでたのよね

そうそう 小椋亭の葉子さんも言ってたわ

昔、先生と深沢先生と小椋さんはサーファーで
高校生の時は 3人でよくサーフィンしてたって…

信じられなくて 優さんと二人で大笑いしたけど

だって あの顔でサーフィンなんて…ね? 

…それにしても ずっと泳いでるわね

タフだなあ……

 

そう思っているうちに 永瀬はプールの縁まで来ると泳ぐのを止めて
水の中に立ち 水しぶきを上げながらプールサイドに上がって来た。

美月は慌ててデッキチェアーに置いてあるタオルを手に取った。

ポタポタと水を滴らせながら永瀬が歩いてくる。


!!!

思わず美月は息を呑む。

普段の物静かな容姿からは想像もできないほど 
逞しくて均整のとれた永瀬の体は水に濡れて艶やかに輝いている。

その眩しいまでの光景を目の当たりにして 
美月は慌てて目を逸らした。

そして うつむいたままタオルを永瀬のほうに差し出した。

永瀬はゴーグルを外すと 怪訝そうに美月を見ながらタオルを受け取る。


「…水泳もお得意なんですね」

「子供の時から海で泳いでましたから」

「このジムにはよくいらっしゃるんですか?」

「週に2,3度くらいは」

「そうなんですか、知りませんでした」

「夜に来る事が多いので…というか なぜ下ばかり見てるんですか?」

「あっ、はい! ……!!!」


思わず顔を上げた美月の目の中に 
ゴーグルを外した永瀬の顔が飛び込んできた。

額にかかった濡れた髪がぞくっとするほどセクシーなのに
眼鏡無しの黒い瞳はとても無防備で無邪気な印象さえ受ける。

美月は何も言えずに永瀬を見ている。


「…どうかしましたか?」

「あ、いえ… ただ、眼鏡をしてない先生を見るのは二度目だなと思って…」

?… 永瀬は黙ったまま首を傾げた。


「一度目は…最初にお会いした時です。
 突然の雨でびしょ濡れになった先生が 
 マンションのエントランスに駆け込んできました」

ああ、あの時の…永瀬は思い出したようだった。


「…まだ9月の終わりだったのに 雨に濡れた先生は何だか寒そうで…」

「………」

  …… とても寂しそうに見えたんです…

 

「…僕は … 最初からあなたには素顔を見せていたんですね」

「え?」

「だから あなたのことが気になってしかたなかったんだ」

「先生?」

「……大野さん」

「はい」

「僕は 今の連載が終わったら しばらくの間 
 執筆活動を休止しようと思っています」

「え?」

「一年か二年か、もっと長くなるかもしれませんが
 違う世界を見て回っていろいろな事に触れてみたいと
 もっと視野を広げて もう一度やり直したいと思っています」

「先生…」

美月は目を見開いて永瀬を見つめる。


「もしかしたら あなたは最初から感じていたのかもしれない。
 僕が迷い始めていたことを…
 だから 今は 再出発する時期が来たと思ってます」

「永瀬先生…」


そんな… 先生がいなくなるなんて

書くことをやめるほど迷っていたなんて…


永瀬の突然の言葉に美月は激しいショックを受けていた。


動揺して言葉が出てこない美月に追い打ちを掛けるように
永瀬は静かにもう一つの告白をする。

 

「…… あなたもついて来てくれませんか?」


 え…?


「僕と一緒に……」

 

 

 















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