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aoiルーム
aoiルーム(https://club.brokore.com/hollyhock)
aoi32の創作ストーリーを集めたお部屋です。 どなたでもご覧いただけます。 どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。
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抱きしめたい
元気で天然な美月、可愛い年下の大学生 航平                                            そして クールな大人の男 永瀬が織成す 明るい(?)三角関係…
No 16 HIT数 4029
日付 2009/10/03 ハンドルネーム aoi32
タイトル 僕の恋人
本文

これは“遠距離恋愛”が始まる一年前のお話。
航平の誕生日のエピソードということで
やんちゃな彼にお付き合いくださいませ^^



 

  僕の恋人

 




今、僕は 自分の腕の中で眠っている美月ちゃんをずっと見ている。

朝の光が差し込む中、真っ白なシーツに包まって
あどけない寝顔で 安心しきったように僕の胸に身を任せている彼女は
僕のいちばん大切な恋人だ。

今でも信じられない時がある、これは夢じゃないのかって…

きっとすぐに覚めてしまうに違いないって。

でも、この滑らかでやわらかな肌の温もりは本物なんだ。

ずっと、ずっと恋焦がれてきた人が僕の傍で眠っている。

その艶かしい肌のどこに触れても 美月ちゃんは拒んだりしない。

これって…すごいことだよね?


一年前の今日
  
僕はまだ 美月ちゃんの家の隣に住む幼なじみという存在だった

そう、美月ちゃんにとって僕はただの弟にすぎなかったんだ……

 

 

 

「みっきーちゃん、ぼくとけっこんして!」

僕が美月ちゃんに初めてプロポーズしたのは幼稚園に通っていた頃だった。

今思えば、かなりませた5歳児だったな。

その頃はまだ舌が回らないくらい幼くて、僕は彼女のことをディズニーの
キャラクターのように呼んでいたのだが 美月ちゃんは睫毛をパチパチさせながら
澄ました顔で答えた。

「やだ、こうへいなんて まだコドモじゃない!
 わたしはもっとオトナのかっこいい人がいいの」

…みっきーちゃんだって まだ10さいのコドモなのに…

僕はそう言いそうになったが、美月ちゃんのつんとした顔を見て慌てて止めた。

それを言ったら美月ちゃんの機嫌が悪くなる事がわかっていたから。

普段はお気楽で天然なのに 怒ると怖いんだよね、美月ちゃんは。

気が強くていつも元気で、でも 本当は涙もろくて優しい…

僕はそんな美月ちゃんのことが好きでたまらなかった。

いつからそんな気持ちになったのか覚えてないし
何かきっかけだったのかもわからない。

物心がついて気がついたら美月ちゃんのことが好きになってた。

それから何度も告白してきた。

美月ちゃんの誕生日にはプロポーズも…

最初のうちは美月ちゃんの驚いた顔を見るのが楽しくて
からかってふざけ半分で面白がってた時もあった。

そして、途中からは冷たく断られるのにも ある種の快感を覚えるようになってた。

キッと睨まれるのも何だか嬉しくて…これって変なんだろうか?

そう、僕は美月ちゃんのムキになった顔も好きだったんだ。

そして、美月ちゃんが出版社に入社して編集の仕事を始めた頃になると
僕は真剣に将来のことを考えるようになっていた。

いつかは美月ちゃんと結婚するのだと…

ずっと二人で一緒に暮らしていくのだと…

無謀にも僕はそんなことを考えていた。

たとえ今は美月ちゃんに相手にされなくても

いつかきっと振り向いてくれる

…僕は真剣だったんだ……。


 



そして…去年の秋の終わり…


“わたしにとって航平はずっと大切な弟だったの”



戸惑うように僕を見上げる美月ちゃんの顔を両手で包んでキスをした。

できるだけ優しく、そっと触れるように唇を重ねていった。


“じゃあ、これからは弟じゃなくて 一人の男として僕を見て”


僕はそう言いながら何度も、何度もそのやわらかな唇にキスを繰り返した。

それは 美月ちゃんの誕生日にしたような強引なキスではなく
濃厚でしっとりとしてて…蜂蜜みたいに甘かった。

初めての経験でもないのに体が震えた。

でも、美月ちゃん 僕は気づいてたよ

美月ちゃんの長い睫毛も体も ふるふる震えていたことを…


…あれは冬も間近の夕暮れ時で 寒かったからじゃないよね?

 

 

 


僕の思いを受け止めてくれた去年のクリスマス・イヴ 

いや正確に言うと 夜明けに近かったけど 
あの日から美月ちゃんは僕だけの恋人になった。


そして、今年の夏 


“今度の航平の誕生日は一緒にいようね…”


綺麗な花がぱっと開いたように笑顔を浮かべながら 甘い声で囁かれて
僕は天にも昇るくらい嬉しかった。


“また、あのホテルを予約しておいたから。
 航平の誕生日になる瞬間にシャンパンでお祝いしようね。
 …その日はホテルにお泊りよ。…嬉しいでしょ?”


子供のように目を輝かせながら 僕の誕生日の計画を話す美月ちゃんが可愛くて
僕は思わず笑ってしまった。


うん、すごく嬉しいよ
じゃあ、その日の夜から翌日までは 美月ちゃんと一緒にいられるね
…何しようかな…?


僕の言葉に反応して、真っ赤になった美月ちゃん。


“あ、あら! その日はわたしが航平をおもてなしするのよ。
 だからわたしに任せて”


ばかだね、美月ちゃんは…大人ぶっても僕には通用しないよ。

結局、僕が美月ちゃんに何でもしてあげることになるんだよね?


美月ちゃんは僕より年上だけど
そんなこと何の障害にもならないような気がしてるんだ。

 

 

今、こうして美月ちゃんが僕の胸の中で眠っている…

それだけで 僕はこんなに幸せになれるんだ。

 




 

そろそろ 寝顔だけじゃなくて綺麗な笑顔を見たくなった僕は
美月ちゃんの髪を撫で始めた。

掌でゆっくりと髪を撫でつけて そのまま真っ白な頬にも触れていく。

優しく大切そうに、何度も何度もそれを繰り返す。

そうしているうちに 美月ちゃんの瞼が微かに動いて
訳のわからない寝言を呟くと そのまま、もぞもぞっと
僕の胸の中へ顔をすり寄せてきた。

その仕草があまりにも可愛くて、すごくいとおしくて
僕は思わず美月ちゃんをぎゅっと抱きしめてしまった。

その途端、くぅっと息がこぼれて美月ちゃんの大きな瞳がゆっくりと開いた。


「………」


まだ寝ぼけている美月ちゃんはぼんやりと僕を見た。

またいつものように睫毛をぱちぱちさせて、目をまん丸にしている。


「…こう…へい?」

「おはよう、美月ちゃん」

「あ、うん おはよう」


美月ちゃんは照れる事もなく さらりと言った。

…昨夜の今朝なんだから もう少し恥ずかしがってくれてもいいのに

そう思った僕は また美月ちゃんの体に腕を回して抱き寄せた。


「こっ、航平」

その時になって初めて美月ちゃんはうろたえて声を上げた。

僕は思う存分、美月ちゃんの髪に顔を埋めその華奢な体をきつく抱きしめた。


「くっ、苦しいわ 航平ーー」

「ああ、ごめん」


僕は腕の力を緩めると そのまま体を下にずらして美月ちゃんの顔を覗き込んだ。

ほのかに頬を染めて、困ったように僕を見上げる彼女を見て
僕の理性はまた吹き飛んだ。

体を起こし 美月ちゃんの上に覆い被さるとその艶やかな唇を奪った。

驚いた彼女は手をバタバタと動かしたが、キスが深くなっていくと
次第にその手は動きを止めて、おずおずと僕の方へ伸びてきた。

戸惑うように、細い指が僕の背中を彷徨いしなやかな腕が僕を抱きしめてくれた。

僕からキスを仕掛けたはずなのに 美月ちゃんの唇のやわらかさと甘さに
何も考えられないほど夢中になって 次第に深みに嵌っていく…

そっと唇を解いて美月ちゃんを見ると…もう完敗だった。

まるで泣いてるように潤んだ黒い瞳が僕を誘っていた。


…ゆっくりと 僕はその甘くてやわらかな恋人に中にとろとろに溶けていった……。

 

 

 

 

「…航平、お誕生日おめでとう」


僕の胸におでこをくっつけながら美月ちゃんが囁いた。

気だるそうな吐息が唇からこぼれた。


…ごめん、美月ちゃん 大丈夫?

 

「ありがとう。 でも、昨夜も聞いたよ」

僕は笑いながら美月ちゃんの乱れた髪を撫でつける。

綺麗な額が少し汗ばんでいる。


「これは朝の分」


「そうなんだ」


「…おめでとうって言う度に 航平の歳が一つずつ増えていけばいいのに…」


「え?」


「それなら、5回言えば航平とわたしは同い年になるでしょ?」


「………」


そんな事を淡々と言う美月ちゃんに 僕は思わず言葉につまってしまった。
 


…美月ちゃんは やっぱり自分が年上だということを気にしてるの?

僕達が付き合い始めてから8ヶ月…

僕はそんなこと考える暇も無いくらい美月ちゃんに夢中で、すごく幸せだった

だけど 美月ちゃんはそうじゃなかったの?

 

「航平ったら何て顔してるの?」


「…だって」


「ばかね、そんな事 ありえないでしょ?
 今のはほんの冗談よ」


「え?」


「ちょっとね 可愛く、しおらしくしてみたの。
 航平ったら、わたしがそんなこと気にしてるわけ無いでしょ?」


黙っている僕を見て 美月ちゃんはくすくす笑っている。


「世の中にはもっと年齢差があるカップルもいるし
 それに、今日から航平とわたしは4歳違いなのよ。
 と言っても2ヶ月ぐらいだけど。
 それでも、ね、何だかいいじゃない?」


いつものように、美月ちゃんが無邪気な笑顔を浮かべている。


僕ははっとして…これなんだ、と思う。 

僕が美月ちゃんのことををずっと好きな理由…

どんな時でも美月ちゃんがいてくれるだけで 僕は元気になれる。

彼女の笑顔が僕を安心させ、不思議なパワーが体中を包んでくれる。


「…航平」


静かに僕の腕を解いて 美月ちゃんが起き上がった。

真っ白なシーツを体に巻きつけて、その後ろ姿はゾクッとするほどセクシーだ。

美月ちゃんはくるっと振り返ると 今度は彼女が僕の体の上にゆっくりと落ちてきた。

その体の重みが心地良かった。

美月ちゃんが微笑みながら僕の髪を撫でてくれたので 僕は気持ちよくなって目を閉じた。

 

「わたしは今、すごく嬉しいの。
 こうして航平と一緒にいて、誕生日のお祝いができて…
 いつも優しくしてくれる航平に やっとお返しができたみたいで。
 …ありがとう、航平」


いつもより穏やかなアルトの声で 美月ちゃんが僕の耳元で囁いた。


じ…んと胸の奥から熱いものがこみ上げてきた。


僕は何とかそれを瞼の奥に閉じ込めて 目を開けないまま うん、と頷いていた……。

 

 

 

甘く濃密な時間を過ごしたホテルをチェックアウトして外に出ると
夏の終わりの日差しが照りつけて、うだるような暑さが僕達を待っていた。

だけど…まだ帰りたくないな。

暑苦しいかもしれないけど、美月ちゃんの手を握って…もっとキスしたい。

何度も何度もキスして…またきつく抱きしめたい!

自分でも不思議なくらい どうしてこんなに求めてしまうのだろう…

美月ちゃんと親密になればなるほど、もっとたくさん触れてみたいと思ってしまう。


僕がこんなことを考えてるなんて美月ちゃんは思いもしないのか
眩しい日差しを遮るように両手をおでこに当てて目を細めている。


「ね、航平」

「うん?」


意外な事に美月ちゃんが僕の腕に手を回してきた。

そして、甘えるような上目遣いで僕を見上げる。


「まだ帰らなくてもいいでしょ?」

「え? うん」

「じゃあ、外は暑いから映画でも観ない?」

「うん、いいけど…何か観たい映画でも?」

「うん、あのね …あれ…」


僕は 美月ちゃんが遠慮勝ちに指で指し示した方向に目を向けた。

 

 

 

“イタリアロケによる壮大なスケールの映像と美しい音楽
 豪華キャスティングと緻密なストーリー
 全てのエンターテイメントの要素が詰まったサスペンス超大作”


「…オールイタリアロケ?」


僕がぼそっと呟くと、美月ちゃんは あははっとごまかすように笑った。

六本木にある巨大なシネマコンプレックス型映画館のプレミアムシートに座って
そわそわしている美月ちゃんを見て 僕は思わずため息をついた。

イタリアだって?

これって、もしかして……

僕の疑いの眼差しに気づいた美月ちゃんは慌てて言い訳をし始めた。


「違うのよ、航平。
 本当に評判がいい映画だから、一度観てみたかったの。
 麻美と来ようかと思ってたんだけど、主役の俳優があまり好みじゃないから
 嫌だって言うの。
 ほら、あの子は航平がタイプだから…涼しげでソフトな感じ?
 だから別にイタリアロケってとこに惹かれたわけじゃなくて…」


「……」


やっぱり、そうなのか…僕は確信した。

イタリア、といえば あの永瀬聡が向かった場所だ。

今年の春、小説家である彼は執筆活動を休止して旅に出た。

世界中を回って視野を広げ、もう一度 初めからやり直すのだという。

今の僕には 美月ちゃんと離れて暮らすなんて考えられない。

美月ちゃんがこの邦画を選んだのは、やはり永瀬さんのことが
まだ頭のどこかに残っているのだと思う。

きっと、美月ちゃんにとっては イタリア=永瀬さん、なんだよね


ほんの数時間前 美月ちゃんの瞳も心も僕だけに向けられていたのに…

まだ 僕だけの美月ちゃんじゃないんだね

 

「……」


どんよりと…落ち込んでしまった僕は、そのまま俯いた。


「ごめんね、航平!
 あの、その…機嫌直して…ね、お願い…」

僕がひどく怒っていると勘違いした美月ちゃんは 慌てて両手を合わせて謝ってきた。


「…別にいいけど…」

僕は怒ってなどいなかったが、その美月ちゃんの様子がやたら可愛かったので
少しからかってやろうと わざと素っ気なく答えた。


「あーん、航平ったら怒らないで。
 何でも言う事を聞くから…何か欲しいものはない?」


「もうプレゼントはもらったよ。ありがとう、美月ちゃん 大事に使うからね」


「うん、良かったわ 気に入ってもらえて。
 …って、そうじゃなくて ね、他にも何かして欲しい事とかない?」


…何かして欲しい事だって?  …それなら …


「…キス100回」


「え?」


「勿論、大人向けの…」


「なっ、何言ってるのーー!」


「それで許してあげるよ」


「航平ーーー!」


今まで以上に慌てている美月ちゃんは最高に可愛い。

そして、そんな彼女を見ていると やっぱり僕は元気になる。

そうだ、いつかきっと美月ちゃんの全てを僕だけのものにしてみせる。

僕は密かに決心していた。
 

「ほら、もう映画が始まるよ」

僕は美月ちゃんに悟られないように言った。


「わかった、いいわよ キスぐらい…100回でも200回でも!
 …航平が嫌になるくらいしてあげる」

真っ赤な顔をした美月ちゃんはすごいセリフを口にしたかと思うと
意地を張ったように僕から目を逸らして前を向いた。

 


…可愛いな、美月ちゃんは…今、キスしちゃおうかな…


映画の上映時間になって…場内の照明が落とされたら…


周りに人がいなければ すぐにでも押し倒したい気分だった。



大型スクリーンの映像じゃなくて 隣に座っている僕を見て…


今、美月ちゃんの傍にいるのは あの人じゃなく この僕なのだから…

 

次第に暗くなっていく客席の中で 僕はそんな不埒なことを考えていた……。

 

 























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