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aoiルーム
aoiルーム(https://club.brokore.com/hollyhock)
aoi32の創作ストーリーを集めたお部屋です。 どなたでもご覧いただけます。 どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。
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ホテリアー創作
妄想爆走!ホテリアー二次創作。                                                     大好きなドンヒョクと 可愛いジニョンの物語…
No 116 HIT数 8653
日付 2011/03/04 ハンドルネーム aoi32
タイトル あなたの瞳に映る私 -3- 青いドレスの女
本文






-3- 青いドレスの女

 






「や・・めろ・・っ!」


ドンヒョクは 彼女の手をぐっと掴んで押し退けた。
強い力に押されて、彼女の身体はドンヒョクから離れた。
そして、バランスを崩した彼女の 青いドレスの裾がふわりと揺れた。


「・・あの夜は あなたからキスしてくれたのに・・・。」
彼女はそう言うとドンヒョクに笑いかけた。


ドンヒョクは 彼女を睨みつけると自分の唇についた赤いルージュを手で拭った。

「・・君は、一体誰だ!・・なぜ・・こんな事を?」

ドンヒョクは低く絞り出すような声で言った。
彼の目は 激しい怒りで満ちていた。

 

「・・・ドンヒョクさ・・ん。」

その時、白い手が伸びてきてドンヒョクの腕を取った。


「・・・ジ・・ニョン・・。」


ドンヒョクは、はっと気がついて振り向いた。

彼の目に飛び込んできたのは ジニョンの青ざめた顔だった。

彼女の瞳は悲しみでいっぱいだった。

ドンヒョクの胸が激しく痛んだ。


「・・ジニョン。」


ドンヒョクは 彼女の名前を呼ぶしかなかった。
何と言えばいいのかわからなかった。

胸の奥がきしんで 揺れて 不安がこみあげてくる。


ジニョンは わずかに微笑んだように見えた。
そして、じっと悲しげにドンヒョクを見つめると
彼の方へすっと手を伸ばし、その先にある彼の唇に手を当てた。


「・・・え・・?」


・・ジニョンの桜色の細い指先が ドンヒョクの唇を撫でる。

彼女の震える指が 何度も、何度も ドンヒョクの唇に残っている
赤いルージュを拭おうとしていた。

全て拭い去ろうと・・何もなかったのだと自分に
言い聞かせようとしていたのかもしれない。

 

「・・ジニョン・・。」

ドンヒョクは堪らなくなって、ジニョンの細い手首を掴んだ。

ジニョンの手の動きが止まる。

ドンヒョクは ジニョンの手を取ると 彼女の掌にそっと口づけをした。


・・・掌へのキスは懇願のキス。


  “ ・・ジニョン・・ジニョン・・・・僕を信じて・・。

           僕だけを信じて・・・ 

       ジニョンに拒絶されたら 僕は生きてはいけないんだ ”


ドンヒョクの声にならない叫びが ジニョンに向けられる。

ドンヒョクの深い悲しみに満ちた瞳が ジニョンを見つめている。

 

ジニョンは優しく微笑んで ドンヒョクを見つめ返した。

 

「・・・ドンヒョクさんを信じてるわ。」

ジニョンは静かに言った。


しかし、次の瞬間 ジニョンの身体がゆらりと大きく揺れた。
まるで スローモーションのように二人の手と手が離れていく・・。

そして、彼女は その場に崩れるように倒れてしまった。


「・・・ジニョン!!」

華やかなパーティー会場に ドンヒョクの悲痛な叫び声が響いた。

 

 


   ―――――

 

 

「・・・ハン・ユリじゃないか?」

コンベンションホールのロビーで カン・レウォンは声をかけた。


「・・・レウォン・・?」

ユリは 振り向くとレウォンを見て驚きの声をあげた。


「・・やっぱり、ユリか。・・久しぶりだな。元気だったか?」

レウォンは懐かしそうにユリを見ると 屈託のない笑顔を向けた。


「・・レウォンこそ元気だった?
 あなた、今、NYにいるんじゃなかったの?」

ユリは どこかぎこちなく笑った。


「うん、クリスマス休暇でこっちに戻ってたんだ。
 で、本社で少し資料収集して準備して また明日NYに発つ。
 だから、ボスに挨拶して行こうと思ってさ。」


「ボス・・って シン・ドンヒョクさん?」


「ああ、そうか。 ユリも知ってたっけ。
 俺のボスとボスの奥さんが 今夜ここでパーティーに出席してるんだ。
 ・・・ジニョンさんのドレス姿・・きっと綺麗なんだろうな~!!」

レウォンは 憧れのジニョンを思い浮かべて嬉しそうに言った。


「・・・・・」

ユリははっとしてレウォンを見つめた。


「そう言えば、ユリもパーティーに来てたのか?
 テハングループの会長秘書だったっけ? 会長のお供か?」


「え? ええ、そうよ。」


「そうか、がんばってるんだな、ユリ。」

レウォンはしみじみと言った。


「・・じゃあ、わたし急ぐから、もう行くわ。」

ユリはそう言うと背を向けて歩き出した。


「・・ユリ!」

レウォンが呼び止める。


「え?」


「・・・綺麗になったな・・いや、昔からそうだったけど。
 よく似合ってるよ、その青いドレス。」

レウォンはそう言うと お日様のように明るく笑いかけた。

 

ユリは レウォンに背を向けると早足で歩き出した。

彼女の顔は青ざめ、大きな瞳は揺れて、赤い唇は震えていた・・・。

 


   ―――――

 

「え!!! ジニョンさんが倒れたって・・本当ですか?」

コンベンションホールのパーティー会場で、レウォンは驚いた。


「そうなのよ。貧血をおこしたみたいで・・顔が真っ青だったわ。
 まだ不安定な時期だから心配だわ!!」

イ・スンジョンが早口でまくし立てた。


「そ・・それで、ジニョンさんは?」


「理事が抱きかかえて運んで行ったわ。・・あたくし、あんなに動揺した理事を見たのは
 初めてよ。何て言うか・・悲痛な顔で・・まあ、あんな事があったから
 仕方ないんだけど・・。」

「あんな事・・?」


「あ・・。」

スンジョンはあわてて口を押さえた。


「それって、何ですか。・・教えてください!」


「あの・・その・・どこかの見知らぬ女が・・突然、理事にキスしたのよ・・。
 それも、ジニョンが見ている前で・・。それで、ジニョンはショックを受けて・・。」


「そんな・・。」


「もう、会場は大騒ぎで大変だったわ。
 まったく人騒がせな女よ。・・でも、なかなか綺麗な子だったわ。
 目の覚めるような青いドレスを着て・・女優の キム・・ええと、何て言ったかしら?
 彼女に、ちょっと似てたわね。若くてちょっと気が強そうな・・
 でも・・とんでもない女だわ。」


「ちょっ、ちょっと待ってください。・・その女って・・青いドレスを着てたんですか?
 ・・似てる女優って・・もしかして・・キム・テヒ・・じゃ・・。」


「そうそう! キム・テヒよ!・・ん?・・何でレウォンさんが知ってるの?」

スンジョンのお喋りが終わらないうちに、レウォンは突然、背向けて走り出した。

「ちょっ、ちょっとレウォンさん!!
 理事たちはサファイアヴィラに・・ちょっと、どうしたの~?」


スンジョンの叫び声を背中で聞きながら、レウォンは唇を噛み締めていた。

レウォンの頭の中で、青いドレスを着たユリの姿がぐるぐる回っていた。


・・・まさか・・ユリ、おまえなのか・・?


信じられなかった。


明るくて、社交的で、美人で、聡明な ハン・ユリ・・。

気が強くて我儘なところもあったが、輝くように美しかったユリ。         

 

・・・ハン・ユリは レウォンの恋人だった。

二年前の夏、運命の人 ソ・ジニョンに出会うまでは

レウォンにとってはかけがえのない大切な女性だった・・・。            

 

 

   ――――― 

 

 

ハン・ユリは 自宅のマンションに戻ると床の上に崩れるように座り込んだ。

まさか、あそこで、ジニョンが倒れるとは思わなかった。


彼女は妊娠中だったはず・・。

もしかして 自分はとんでもない事をしてしまったのだろうか。

 

   ・・・・・・・・・

         ・・・・・・・・


いいえ、そんなことないわ。

それだけの事を あの人は・・ソ・ジニョンは・・したのだから。

ユリは唇を噛み締めた。

 

 

五年前、ユリは同じ大学で同じ学科の カン・レウォンと出会って
意気投合した二人は すぐに付き合いだした。

明るくて、太陽のような笑顔のレウォンが好きだった。
レウォンは いつも元気でまっすぐで少年のように純粋だった。
彼は いつもたくさんの友人達に囲まれていた。

その頃、同じ大学の学生が女優としてデビューしたことがあった。


「何だかユリに似てるな、彼女。でも、ユリの方がずっと美人だ。」

レウォンは屈託のない笑顔で言った。


ハンサムで陽気なレウォンと 美しくて聡明なユリ。

人気者の二人は、大学の中でもお似合いのカップルだと評判だった。


大学を卒業して それぞれ就職してからも二人の関係は変わらなかった。
週末になるとデートして、このままいけば結婚するのかも・・と
漠然と思っていた。

しかし、レウォンが突然、それまでの仕事を辞めて
今のオフィスに転職した頃から 何かが少しずつ変わり始めた。

新しいオフィスでの仕事は大変だが、レウォンは張り切っていた。


「ユリ、今度のボスは本当に凄い人なんだ。俺、あの人に逢えた事、
 神様に感謝する。ボスみたいになれるように頑張るよ!」

理想に向かって突き進むレウォンの瞳は きらきらと輝いていた。

それからは 会う度に レウォンのボスの話を聞かされた。
あまりの レウォンの彼への崇拝ぶりに ユリは軽い嫉妬さえ感じていた。

 

シン・ドンヒョクという名前は 彼女にとっても
強烈に印象的な名前になっていた。

 


しばらくして、レウォンの様子がおかしくなった。

・・・レウォンは何かを考え込んでいるようだった。

ユリとデートしてる時でも、切ない瞳で遠くを見つめる事が多くなった。


そして、忘れもしない 二年前の夏。

レウォンは悲痛な顔でユリに告げた。


「・・・ごめん、ユリ。・・俺、好きな人ができたんだ・・。
 だから、もう、おまえと付き合えない・・。」


ユリは 思わずレウォンの頬を叩いていた。

「・・いいわ、別れてあげる。あなたみたいな男、こっちからふってあげる!」

プライドが高いユリは それしか言えなかった。


本当は、“別れるなんて嫌よ!”と泣いてすがり付きたかった。
“好きな人って誰よ?”と問い詰めて取り乱したかった。
               

でも・・そんな事は絶対に言いたくなかった。
惨めな姿を、誰にも見せたくなかった。

 

レウォンと別れて数ヵ月後、友人達の噂で 彼がNY勤務になった事を知った。

ユリは レウォンに会って “元気で”と伝えようと思った。

レウォンと別れても、自分はこんなに元気でいるのだと見せつけたかった。


レウォンが勤務しているオフィスビルに行って、エントランスホールで待っていると 
彼がエレベーターで降りてきた。

ユリは声を掛けようとして、立ちすくんだ。

レウォンは ユリではない別の女性を見つけて嬉しそうに笑った。

久しぶりに見た、太陽のように眩しいレウォンの笑顔だった。


   ・・・誰なの・・・・?


ユリは訝しげにその女性を見た。


ふわりとした艶やかな黒髪 大きな黒い瞳 やわらかな笑みを浮かべている彼女は
レウォンを見つめている。

二人は向かい合って話をしていたが、突然、彼女がレウォンの頬にキスをした。


ユリは驚いた。


   ・・・もしかして・・あの人がレウォンの好きな人・・?

        きっと、そうね。

     彼女にはそんな とろけそうな笑顔を見せるのね・・。


       ・・・レウォンは幸せなのね。


そう思うと、ユリは自分が惨めに思えてきた。
ここにいても仕方ないと帰ろうとした時、レウォンが彼女に背を向けて足早に歩き出した。

 

  ・・・レウォンは泣いていた。


ユリは 彼の泣き顔を初めて見た。

いつだって彼は陽気で楽しい カン・レウォンだったのに・・。

ユリは驚き、複雑な気分で ふと彼女の方を見た。


   え・・・・・?


彼女は・・すらりとした長身の男に、後ろから抱きしめられていた・・。

男の顔は見えなかったが 彼は彼女の髪に顔を埋め、両手で彼女の身体を
包み込んでいた。

傍目でもわかるほど、情熱的な抱擁だった。


  
   ・・ばかみたい、レウォンったら・・。 片思いなのね・・。

       レウォンの好きな人には 恋人がいるのね。

 

  ・・・ユリは その時に初めて泣いた。

 


それから 一年。

ユリは レウォンのことを忘れかけていた。
秘書という仕事にやり甲斐を感じ、彼女の聡明さと明るさは
徐々に周りに認められるようになっていた。

しかし、数日前に シン・ドンヒョクが テハングループの本社に
初めて訪れた時に事態は急変した。


その時の事が原因で ユリの中に “復讐”という感情が芽生え始めたのだった・・。 

 

 

   ――――――

 


   サファイアヴィラ 午後10時

 

ドンヒョクは まだ目を覚まさないジニョンの傍を離れようとしなかった。

彼はベッドの側の椅子に座り ジニョンのしなやかな手を両手で包み込んでいた。

時折、ドンヒョクはジニョンの額に手を当て、青白い頬に長い指を滑らせた。


「・・ジニョン・・。」


ジニョンを見つめるドンヒョクの瞳は切ない。

彼は 眠っているジニョンの胸に静かに顔を寄せる。

ゆっくりと目を閉じて ジニョンの身体の温もりを確かめる。

耳をすませて ジニョンの静かな寝息を聞いている。


しばらくして、ドンヒョクは顔を上げ、ベッドの上で肘を付き 手を組んだ。

そして じっとしたまま考え始めた。


目を閉じて ゆっくりと記憶の糸をたどってみる。


無くした万年筆   青いドレスの女   挑発するような目


・・どこかで 彼女と面識があったはずだ・・でも、どこで?

 

  ・・・万年筆を無くしたことに気づいたのは三日前の夜・・。
         その前日には確かにドンヒョクの手元にあった。


   青いドレス・・青い・・?


      三日前は確か・・・テハングループの会長に会って・・。


         ・・・青い・・・? 
 

        明るいクリーム色のスーツと・・青い・・・スカーフ・・?


  ドンヒョクの脳裏に 鮮やかな青いスカーフが浮かんだ。

 

ドンヒョクは思わず立ち上がった。

ベッドで眠っているジニョンをじっと見た。

そして 身を屈めるとジニョンの額に、そっとキスをした。

 

ベッドルームから出ると、ドンヒョクは携帯電話を取り出した。


「・・・レオか? 至急、調べて欲しい事がある・・・。」

 

不気味なほど静かで、抑揚のない声がサファイアヴィラに響く。

 

 

      ジニョンを傷つける者は許さない。

        たとえ それが どんな相手でも。

              あらゆる手を使って叩き潰す。

 

 

ドンヒョクは 部屋の窓から外を見た。

さっきまで降っていた雪は すでに止んでいた。

辺りは 全てが沈黙したような孤独と静寂に包まれていた。

夜の暗闇の中に 青白い三日月がぼんやりと浮かんでいる。


それを見上げるドンヒョクの横顔は険しく、ゾクッとするほど冷ややかだった。

少し前までの 切ない瞳の彼は微塵も感じられなかった。

 

サファイアヴィラの薄明かりの中で ドンヒョクの目が鋭く光った・・・。     
































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