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Milky Way Library
Milky Way Library(https://club.brokore.com/sunjyon)
「Hotelier」にインスパイアされた創作(written by orionn222)の世界です
サークルオーナー: Library Staff | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 732 | 開設:2008.11.22 | ランキング:51(8198)| 訪問者:141175/418586
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D&J


こちらは、ドンヒョク&ジニョンを中心としたお話の部屋です。
私なりに想像した二人のその後・・・というお話になります。 婚約時代から、結婚後、ファミリーのお話・・・とありますが、時系列がばらばらだったりして、読みにくい一面もあると思いますが、よろしければお付き合いくださいませ。
No 156 HIT数 1284
日付 2009/03/04 ハンドルネーム Library Staff
タイトル 今夜海の底で
本文
『今夜海の底で』




送信    シン・ドンヒョク
受信    ソ・ジニョン
件名    Re:ドンヒョクssiへ・・


ジニョンssi、先ほどアメリカに着きました。
ジニョンssiからのメールが届いていて、とても嬉しかった。
PCはやっと直ったのかな。
一人で帰国した事はとても寂しい事だったけれど、ジニョンssiの気持ちは理解できます。

いや・・・理解したいと思っています。

僕達は今お互いが出来ることをひとつずつ進めながら、二人で同じ場所を見つめていきたいと考えています。

ジニョンssiも同じ気持ちかな・・



「hello」
「ドンヒョクssi?」
「・・ジニョンssi・・」


そっちは・・久しぶりのアメリカはどう? 
問題ないよ。ジニョンssiも、仕事は順調?

ええ・・・相変わらず毎日忙しくしているわ。ドンヒョクssiも?
そうだね。僕もいろいろ忙しいかな。

レオssi・・・お元気?
ああ・・レオも僕と一緒に忙しくしているよ。

身体に気をつけてね・・・ドンヒョクssi
ジニョンssiこそ・・・



送信 ソ・ジニョン
受信 シン・ドンヒョク
件名 電話できなくてごめんなさい。


夕べは電話できなくてごめんなさい。
急な夜勤が入ってしまって・・・

ドンヒョクssiも相変わらず忙しい日々を過ごしているのでしょうね。
この前言っていたお仕事は順調ですか? 

またNYを離れるのかしら・・
こちらはずいぶん暑くなってきました。そちらはいかがですか?

季節の変わり目は体調を崩しやすいから、ドンヒョクssiも気をつけてね。
また電話します。やっぱり声が聞きたいから・・・



「はい。ソ・ジニョンです」
「ジニョンssi?」
「ドンヒョクssi・・」


ごめん、もう寝ていたかな?
ううん、大丈夫よ・・・ドンヒョクssi今どこ?

今日はNYにいるよ。
自分のマンションに?

いや・・ホテルに・・・
お仕事?

いや・・・なんだかあの部屋に帰りたくなくて・・・・
ジニョンssiと一緒だったらって、つい思ってしまうから・・

ドンヒョクssi・・・ごめんなさい・・
ジニョンssi・・もう謝らないで・・・

今はこうして離れ離れでいるけれど、僕たちの心は一緒にいるよ。そう思ってもいいかな。
ドンヒョクssi・・・ええ、一緒にいるわ・・私たちの心はずっと一緒よ・・

ジニョンssi・・・・・僕たちは・・・・・・・いや・・・ジニョンssi、遅くにごめんね。
もう寝ないとね。明日も仕事だろう?

ええ・・

ジニョンssi、おやすみ
おやすみなさい・・ドンヒョクssi

先に切って・・・
ええ・・・おやすみなさい・・ドンヒョクssi・・



深い深い海の底で僕達は出会う。
文字や声が海底ケーブルの中を行き来して、僕達は想いを伝え合う。
だけど・・・本当に言いたい事や聞きたい言葉は、いつもお互いの胸の底だ。

どうにもならない僕達の今が錘となって、僕達を深海に引き止める。

すぐには動けない僕達の現実・・・

暗い海の底で僕達の言葉や文字がクロスして、お互いの胸に届けられる。
言えなかった言葉や、書けなかった文字は海の泡のように海底に散らばって、揺らめいて、僕達の海を深くする。

君と確かめ合った束の間の永遠は、光の溢れる海面の、まだ遥か彼方だ。

今はその欠片さえ届かない。

いや、君への愛だけが唯一の羅針盤となって、僕を導いてくれるのだろうか。

いつか、君の元へ・・・



アメリカに戻ってからの僕は、まるで何かを恐れるかのように、ただ働き続けた。

数着分のスーツの他に、かろうじて残っていた僕たちの信用と、レオの決死の売り込みと才覚のおかげで、なんとか運命の女神から見放されずにいた。

いつもなら断るような仕事や、以前の僕ならつまらないプライドに拘って蹴っていたような仕事もすべて引き受けた。

空白の時間が怖かった。

引き潮の海にさらわれそうな僕の心を、かろうじて引きとめていたのが、ジニョンssiからのメールや電話だ。
おずおずといつもどこか遠慮がちにかかってくる君からの電話が気になって、バスルームにまで電話を持ち込む始末だ。

夜中に何度も確かめる、you got mail の文字。
それでも、お互い何も決定的な事は口にしない。

いや、できない。

君から聞いたソウルホテルの社長の事は、事実としてお互いの胸の奥深くに仕舞い込まれた。

君の今はそこにあるのだろう。
今、君をもっとも必要とする場所・・・ソウルホテルに・・
でも、君の明日は僕の側だ。

それだけは、譲れない。

そのために今はお互いにできることを探そう。
そう、自分に言い聞かせて過ごしたここ数週間。

でも、僕の心は自分が思っていたより、ダメージを受けていたようだ。
傷ついた事なんて、本当に久しぶりだったから・・

仕事上のmissなら、1秒とかからず、次の手を打つはずの僕が、君との明日を明確に描けない。

情けない事に・・・

I miss you

僕に言える事はただそれだけだった。

君とホテル。
切り離しては考えられないその関係に、僕はどう答えを出すべきだろう。

本音を言えば、全てを捨てて僕の元へ来て欲しかった。
僕だけの君になって欲しかった。


ホテルならこのアメリカにもたくさんある。
でも、君にとってホテルといえば、ソウルホテルしかないのだろう。

ソウルホテルのホテリアーでいることが、君が君らしく生きるための唯一の選択肢で、君の今も明日もそこにしかないのだろうか・・


君と僕とソウルホテル。
まるで、宿命のようだ。

宿命には逆らえないのかな。
ソウルホテルを愛する君ごと、愛し抜くその覚悟が僕にあるのか、それが今試されている。

All or nothingだった僕の人生のラストディール

君が僕の元に来る日・・僕が君の元へ戻る日・・

生涯で唯一のbetting
運命が僕に問いかける。




迷い悩む日々を過ごしながらも時間は流れてゆく。

眠れない、食べられない、ついアルコールに手が伸びてしまうそんな日々の中で、感じる事を避けるように、ただ黙々とレオが取ってきた仕事をこなす毎日。

僕の心はいまだ深海を彷徨っていた。
目的地は決まっているのに・・・・

そんなある日、打ち合わせの為に訪れたホテルの会議室で、僕は一人でクライアントを待っていた。

今回の案件は、アメリカに帰ってきてから初めてとも言える大きな仕事で、数度の打ち合わせを経て、もうすぐ契約に至るはずだった。

相手はもう30分の遅刻だ。

いらいらと時計を確かめていたその時、いきなりドアが開いて他のクライアントと打ち合わせに行っているはずのレオが入ってきた。

「レオ?」
「ボス、今日は、クライアントは来ない。」

「なんだって?」
「この取引は中止だ。」

「どういうつもりだ。これは大きなプロジェクトだろう?勝手な事を・・」

「ボスの言う通り、今回の取引は久しぶりにでかい仕事だ。
できれば、俺だってやりたい。でも無理だ。ボスにはできない。」
できないといわれた事に腹が立った。

心の中はどうであれ、仕事はちゃんとやっているつもりだ。
険しく変わった僕の顔色を見て心中を察したのだろう。

レオが言った。
「今のボスには無理だ。自分の顔を見てみろ。
思春期のガキのような情けない顔をして、こんなでかい仕事をやり切れるのか?
きっと失敗する。俺は、巻き添えはごめんだ。」

レオが僕の顔を見て、きっぱりと言い放った。
いつもなら、こんな事は言わせておかない。

「レオは手を引けばいい。僕一人でやる。」
そう言いながらも、何故か僕はレオの視線を避けて目を伏せた。

「ボス!まだわからないのか。」
レオが大声を上げた。

「確かに今度の仕事はあの一件以来久しぶりに大きな仕事だ。
今の俺たちにしてみれば、喉から手が出るくらい欲しい仕事だ。
でもな、ボス。だからこそ失敗は許されない。
一旦始まってしまえば少なくとも2年はかかる。
その間ずっとこっちに足止めだ。
ボスにそれができるか?」

僕は答えられなかった・・・・

僕とレオ
ここにも、もうひとつの宿命があった。

兄のような父親のような、たった一人の僕の親友・・・・レオ・・

「僕には・・・・わからない・・・今、言えることは・・」
レオは僕に最後まで言わせずに、1冊のファイルを僕の手元に滑らせた。

「何だ?」
「いいから見てみろ。」

そこには多数の韓国企業の詳細なレポートとオファーの数々、そして、
企画書や取引相手の調査書類までが入っていた。

「レオ・・これは一体・・」

僕の目をまっすぐに見てレオが言った。
「ボス、韓国へ行け。」

「韓国へ?」
「ボスの未来はここにはないだろう?違うか?」

「レオ・・・」

僕が韓国へ行く・・・ジニョンssiの元へ・・・
韓国・・・

僕が捨てたはずの祖国
ずっと昔、僕を捨てたあの国

それでも、僕の心の霧の向こうにずっとあったその答え。

だけど・・・レオはどうする?
僕はレオに聞けなかった。

しばらく沈黙が続いた後、レオが大げさなため息をついた。

「ボス、俺も行く。」
僕ははっとレオを見た。

「ボスの横にはいつも俺がいただろう?違うか?」
「レオ・・・」

言葉に詰まって俯く僕にレオは明るく言い放った。

「いいか、ボス。何も俺はボスと心中しに韓国へ行くわけじゃない。その反対だ。生き延びるためにボスと一緒に行くんだ。
確かに、韓国でのビジネスはこっちと違って何かと面倒だろう。
あんな事件を起こした俺たちにとってはゼロからの・・いや、マイナスからのスタートだ。
もちろん風当たりはきついだろう。
新参者の上、クライアントを売った経歴のある俺たちだ。
だが、そんな俺たちが韓国でどこまで通用するか、チャレンジしてみるのも面白いだろう。
なぁ、ボス、難しいゲームほど燃えるのが俺たちじゃなかったのか?
ブッチ&サンダースと呼ばれた俺たちの実力を韓国のやつらにも思い知らせてやろうじゃないか。」

「レオ・・・」
やっと顔を上げてレオの目を見た僕に、レオはにやっと笑ってみせた。

「条件は一つ、fifty ― fifty それだけだ。」
「レオは本当にそれでいいのか?」

レオはアメリカでも有数の弁護士だ。
なにも、僕と組まなくても、レオならパートナー希望者はごまんといるだろう。

住み慣れたアメリカで、培ってきた信用で、いくらでもやっていけるはずだ。
それなのに・・
尚も言い募ろうとする僕を制してレオは言った。

「黒髪にブラックアイ。俺の幸せの選択肢がまたひとつ増えたってことさ。」

レオ・・・・

僕の目から一筋の涙が流れ落ちた。
わがままな僕を、いつも支えてくれていたその大きな手が、今僕の背中を押した。
涙に気づかれないように、目の前に置かれたファイルを取り上げてみる。

ずしりと重いそのファイルは、レオの友情の重みだった。


ルートさえ決まれば、あとは前に進むだけだ。
僕たちはまた、最強のタッグを組んだ。
より深く結ばれた絆を確かめ合いながら・・・

見違えるように精力的に韓国企業との仕事に乗り出した僕を見て、
ずっとぼんやりと開かれていたボスの目にやっと光が戻ったとレオが笑った。

そして、ジェニーがまるで、スパイのように、ジニョンssiの毎日をリポートしてくる。

「表面上は元気にしているわ。ちゃんと仕事もしているし・・
でも、妙にハイテンションな時があると思えば、急に黙り込んだりして・・・
やっぱり寂しいのよ。兄さん。」

「今日は社長のお別れ会だったの・・・ええ、ホテルの従業員皆が出席して・・
オンニはずっと泣いていたわ・・・テジュンssiが慰めていたわよ・・」

「指輪はずっとしているわ。仕事の時ははずしたりもしているけど・・・
でも、最近は仕事中にもはめていることが多いわ。
今日のレセプションでもずっとはめていたし・・まるでお守りみたいにね。
ちょっと、聞いてるの?兄さん!」

「オンニは今日第一新聞社との打ち合わせだったわよ。
相手はなかなかのハンサムボーイよ。
兄さん、早く迎えに来ないとオンニをさらわれても知らないわよ。」

「兄さん、仕送りありがとう。いつか外国へ勉強に行くために貯金しておくわね。」


「ジェニー、頼みがあるんだ。」

そして、僕は君との連絡を絶った。
少しばかり意地悪だったかな。
でも、君のところにチェックインするその時まで、じりじりと僕を待っていて欲しい。

せめて、そのくらいの間は、君の心を独占したい。

僕の事で、君の心をいっぱいにして、仕事中も、休憩中も、食べる時も、話す時も、笑う時も、怒る時も、
起きている間中、いや、眠る時も、できれば夢の中ででも、僕の事を想い続けて、片時も忘れないでいて欲しい。


深い深い海の底に、つもり積もった僕たちの愛の欠片達。
やがて、君への想いが僕の胸を満たし、溢れ出し、膨れ上がって僕は地上を目指しだす。

暗い海の底で、君の文字や声を抱きしめるだけじゃなく、僕は君の温かな体を抱きしめたい。
遥か彼方の明るい君のいる場所へと、僕は津波のような想いに乗って君を目指す。

光の溢れる明るい場所で、君の瞳を見ながら伝えたい事がある。
テジュンから届いた、僕の地上へのinvitation card

それを手に僕は光を目指す。
胸には君への愛を抱いて・・・




(2005/10/17  サファイアUP)

 
 
 

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