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Milky Way Library
Milky Way Library(https://club.brokore.com/sunjyon)
「Hotelier」にインスパイアされた創作(written by orionn222)の世界です
サークルオーナー: Library Staff | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 732 | 開設:2008.11.22 | ランキング:51(8198)| 訪問者:141255/418666
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Imagination
Cottage
Private
Congratulations
Gratitude
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D&J


こちらは、ドンヒョク&ジニョンを中心としたお話の部屋です。
私なりに想像した二人のその後・・・というお話になります。 婚約時代から、結婚後、ファミリーのお話・・・とありますが、時系列がばらばらだったりして、読みにくい一面もあると思いますが、よろしければお付き合いくださいませ。
No 180 HIT数 1503
日付 2009/03/04 ハンドルネーム Library Staff
タイトル last and first message
本文
『last and first message』









「お客様に緊急のご連絡でございます。

当機は、機材の不具合のため、胴体着陸を試みます。

乗客の皆様は、CAの指示に従い、落ち着いて行動を・・・」



一瞬のうちに騒然となる機内

ただでさえ、悪天候の中、運行しているこの飛行機の中で、

あちこちで叫び声が起こり、子供の泣き声もそれに混じる。

CAたちは、狭い通路を乗客のケアに走り回り・・・



その模様を、どこか人事のように、眺める僕がいる。

時折、機体がひどく揺れ、乗客の不安を煽る。



大声で問い質す者、祈りを捧げる者、落ち着きなく話し合う人々の声


それらを聞きながら、何故かひどく冷静な自分が、我ながら少し恐ろしくなる。


死を間近に感じながらも、僕はどこか無関心だ・・



もし、このまま僕が死んだらどうなるだろう


どうもならない

たぶんそれが正解



取引相手は、僅かに肩をすくめながら、ありきたりのお悔やみを言った後、

ただちに違うパートナーを探しにかかるだろう。

NYの株式市場も滞りなく開かれ、2、3日人の噂にのぼったあとは、誰も僕を思い出さない。

世界は何事もなく続いてゆき、太陽は昇り、明日はやってくる。

そこに僕がいないだけだ。




「お祈りをなさらないの?」

その時、隣の座席から、小さな声が聞こえてきた。

上品な老婦人が首にかけていた十字架をそっとはずすと、震える手で握り締め、小さな声で祈りを捧げ始めた。


相変わらず騒然とする機内で、その老婦人は目を閉じ静かに祈りを捧げたあと、

そっと目を開けると、僕の方を向いた。


「まだお若いのね。わたくしと違って、まだまだ人生でやりたい事、やり残した事がおありでしょう?

大丈夫ですよ。神様はきっと我々をお守りくださいますよ。」

そう優しく微笑んだ。


・・人生でやりたいこと?やり残した事?・・・


僕にあるだろうか・・



仕事をした。金を稼いだ。富も名声も手に入れた。


それで?



黙り込む僕を見て、老婦人は首にかけていたもう一つのネックレスをはずすと、僕の手にそっと握らせた。


「去年、システィナ礼拝堂に行った時、買ったものよ。

これをしっかりと握り締めてお祈りをなさるといいわ」


僕の手のひらには、銀色の小さな円錐形のネックレスがあった。



突然、機体がぐらりと傾き、天井から酸素ボンベが降りてきた。

怒声、悲鳴、泣き叫ぶ声


CAの指示通り、頭を下げて緊急体勢をとる。


「何か、書くものをお持ちでない?」

老婦人が僕に問いかけた。


「ええ・・・これなら・・」

僕はスーツの内ポケットから万年筆とビジネス手帳を取り出し老婦人に手渡した。


「ありがとう」

老婦人は、手帳から1枚、紙を切り取ると窮屈な体勢で何事か書き始めた。


「もしものために・・書いておこうと思って・・・」

ちらっと僕を見て、また書き続けた。



機内を見回すと、老婦人と同じように、何事か書き綴る人たちが何人もいた。


いわゆる「遺言」というものか・・


人生の最後に、大切な人に当てた最後のメッセージ


「どうもありがとう。貴方はお書きにならないの?」


老婦人の言葉にはっと我にかえる。


万年筆を手渡されたが、僕はただそれを握り締めるだけだ。


もしかしたら、人生の最後かもしれないこの瞬間に、僕には伝えるべき大切な人もいなければ、

書き残すメッセージもない。


空っぽの僕の人生・・・



その時、どすんと大きな振動を感じた後、機内にアナウンスが響き渡る。



「皆様、当機は無事、胴体着陸に成功しました。皆様のご協力に感謝いたします。」


わぁーとあちこちでおこる歓声、拍手、笑い声

肩を抱き合い喜び合う人たち。



老婦人は僕の肩をそっとたたくと、「ほら、神様は私たちをいつでもお守りくださいますよ。」


そう、にっこりと微笑んだ。

綺麗な澄んだ笑顔だった。



やがて、人々は機内から退出していった。

僕の隣の老婦人も、「貴方に神様の祝福がありますように・・・」

そう僕に言うと、飛行機を降りていった。


座席に残る1枚の用紙。


たくさんの人の名前とメッセージの後に、「I love you」と記されてあった。

そして、最後に署名

Karen Brown


「あっ・・・」

僕の手の中には彼女から手渡された、小さな円錐形のネックレスが残されていた。






「ドンヒョクssi・・いい加減に名前を決めないと、あのリストの中からジェニーがあみだくじで決めると

言っているわよ。」


僕たちのbabyを抱いた君の声で我にかえる。


どうして、僕はあの時の事を思い出したりしたのだろう?


ふと首に手をやると、そこにはあの時、老婦人から貰ったあのネックレス・・


「貴方に神様の祝福がありますように・・」

柔らかな声が聞こえたような気がした。


「かれん・・・かれんという名前はどう?」

君はちょっと驚いたように聞き返した。

「かれん??その名前、リストにあったかしら?」


そう言いながらも、君はbabyの顔を覗き込むとそっと囁きかける。


「かれん・・・シン・かれん・・・」


にっこりと君が微笑み、僕たちのbabyの名前がようやく決まった。



かれん・・・シン・かれん・・・



もしも今、あの状況になったら、僕は真っ先に万年筆を握るだろう。

今の僕には・・・

伝えたい人がいる。

書き残したいメッセージがある。


そして、何人かの名前を書いた後、きっと僕もあの老婦人と同じように最後に綴るかもしれない。

「I love you」

それが僕のlast message


そして、生まれてきたばかりの君に贈る僕の最初のメッセージも同じ言葉だ。

「I love you」

それが僕のfirst message



僕はbabyを抱いた君をそっと抱きしめる。


神様からの祝福を僕はしっかりと受け取りましたよ。


あの老婦人の綺麗な澄んだ笑顔に僕はそう伝えた。



(2005/12/13 Milky WayUP)

 
 
 

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