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Milky Way Library
Milky Way Library(https://club.brokore.com/sunjyon)
「Hotelier」にインスパイアされた創作(written by orionn222)の世界です
サークルオーナー: Library Staff | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 732 | 開設:2008.11.22 | ランキング:51(8198)| 訪問者:141266/418677
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D&J


こちらは、ドンヒョク&ジニョンを中心としたお話の部屋です。
私なりに想像した二人のその後・・・というお話になります。 婚約時代から、結婚後、ファミリーのお話・・・とありますが、時系列がばらばらだったりして、読みにくい一面もあると思いますが、よろしければお付き合いくださいませ。
No 271 HIT数 1056
日付 2009/03/04 ハンドルネーム Library Staff
タイトル タ・ナ・バ・タ
本文
                  『タ・ナ・バ・タ』




「とうとう、7日かぁ・・・もう明日は帰るのね・・」

ジニョンは、名残惜しそうに、夜になれば100万ドルの夜景に変わる風景を見下ろした。

北海道をドンヒョクと旅して一週間、秘境だ、離島だと脅かされたわりには、
ちゃんとジニョンの喜びそうな観光スポットやらホテルやらがチョイスされていて、
さすがドンヒョクのプロデュースだと感心しないわけにはいかなかった。

・ ・とはいえ・・・メディア関連には、一切触れさせてもらえなかったけれど・・・

でも、あの「お宝グッズ」を、すばやく国際宅配便で送ったのは、我ながら、よくやったと思っている。

といっても・・・・フロントに「先ほど預けた荷物を下記の住所に送り届けてください。
他言無用」と書いたメモをそっと差し出しただけなのだが・・

小さな声で「くれぐれにも、主人には内緒で・・・よろしくお願いします」と頼んだのだった。

フロントのスタッフも、紙袋から溢れんばかりになっている「荷物」の中身に気づいて、
すばやく対応してくれたのには、本当に感謝している。

あのときほど、日本語がしゃべれてよかったと思ったことはない。

・ ・・もっとも・・・スタッフも委細承知の表情だったのは、こういったケースが
多々あるのかしら・・・でも、よかった♪



ジニョンは、満足のため息を洩らすと、ソウルから送られてきたメールに目を通しているドンヒョクに
言うともなく、つぶやいた。


「7日かぁ・・・あと、一月遅かったら、日本で七夕を過ごせたのにね・・」


「七夕?」

ドンヒョクは、すこし怪訝な声音で聞き返した。

「ほら、ホテルのロビーにも飾ってあったでしょう?」

何事にも、季節を先取りするのが、こういった業界の慣わしなのか、ホテルのロビーのイベントスペースには
大きくて立派な笹が、どん・・と設置されていた。
そして、その周りを、七夕の由来を書いたプレートやら、星空の写真やらが飾り付けられ、
辺りは一足先に七夕一色に彩られていた。


「ああ・・・あれか・・・」

ドンヒョクは、パソコンから目を上げると、ジニョンの視線の先を辿った。
ジニョンは、少しうっとりとした表情で、薄暮の西空を眺めている。


「一年に一回しか逢えない恋人同士かぁ・・・ロマンティックで、健気で、お気の毒で、でも究極の純愛よね・・・ね、
そう思わない?ドンヒョクssi」


まだまだ続きそうなジニョンの織姫と彦星の礼賛に、ドンヒョクはため息で返事をした。

ジニョンは、気のなさそうなドンヒョクの返事に、つん・・と顎を逸らすと少し意地悪な目をして言った。

「そんな風な態度だと、ドンヒョクssiだって、神様の罰が当たるわよ。
あの二人は恋愛に夢中で仕事を疎かにしたから、
あんなふうに離れ離れにされて、一年に一回しか逢えない羽目に陥ったのよ。
気をつけないと私たちだって・・・・」


ジニョンのいう事も、あながち間違ってはいないだろう。


本当なら、ドンヒョクはテジュンと共にアメリカへ出張だったはずだ。
出張延期の本当のところはジニョンには、はっきりとは判断できなかったが、
それでも、こんなに長く休みを取るのは、難しかったに違いない。

その証拠に、毎日、ドンヒョクssiに送られてくるメールの数といったら・・・
きっと、レオssiは、大変なのよね・・・
それに、私の休暇だって・・・

「ドンヒョクssi・・・・きっと、また理事特権を振りかざしてテジュンssiと脅かしたんでしょう?」


ジニョンは、疑わしそうな目で、パソコンの画面を追うドンヒョクを見た。

「別に・・・脅してなんかいないよ。それに、そんな事もできないようなら、
ソウルホテルの理事をやっている意味がない。」


・ ・・・もう・・・・

ジニョンは、心の中でため息をついた。


「それに・・・」

ドンヒョクは、パソコンの画面から目を離すと、しっかりとジニョンを見た。


「お互い、神様に褒められるくらいの仕事量だと思う。それに・・」

ドンヒョクは、ジニョンに何も言わせず後を続けた。


「それに・・・今回の件は、思いのほか、テジュンも協力的でね」

ドンヒョクが、一瞬パソコンに落とした視線を上げると、ちらっとジニョンを見て薄く笑った。


・ ・・どきっ・・・


あ、あれから・・・ソヨンssiは・・・


「邪魔しちゃ悪いよ」というドンヒョクの目を盗んで、何度かソヨンにメールを送ってみたが、
「ジニョンssi・・・お帰りになったら、ゆっくりお話しましょう。
でも、せっかくのご旅行なんですから、楽しんできてくださいね」
という健気なソヨンからの返信だった。


・ ・・ソヨンssi・・・あの数々のグッズ・・・もしテジュンssiに取り上げられたのなら、
私の分を分けてあげるからね!!


ジニョンが、心の中で決意表明をしていると、「さぁ、終わった」と、ドンヒョクが、
ぱたん・・とノートパソコンを閉じた。


「待たせて悪かったね。ディナーに行こうか。」

「え、ええ・・・」

ジニョンは、心のうちを探られないように、慌ててソファーから立ち上がった。



とうとう明日帰るのかぁ・・・


当面のアメリカ出張はなくなったけれど、お互い忙しいのには、変わりない。
この休暇の皺寄せもあるだろうし・・・
最後のディナーには、地元の素材をふんだんに使った創作料理のレストランをドンヒョクは選んでくれていた。
ジニョンは、篝火の焚かれたレストランのテラスから、まだラベンダー色をしている空を見上げた。
織姫と彦星とまでは、いかないけれど、私たちも結構離れ離れよねぇ・・・
ジニョンのついた淡いため息が、初夏の北海道の薄紅の風に溶け込んでいった。


ジニョンは、ふと自分の前で湯気を上げている鉄板の上の料理を眺めた。
この地方の名物だというので、追加した一品だった。

「・・・ドンヒョクssi・・・この『ジンギスカン』って、なんのお肉?」

「羊だよ。これは・・ラム・・・仔羊かな」


・ ・・仔羊・・・

ジニョンの脳裏に、数日前訪れた牧場の風景が浮かび上がった。
仔羊・・・かわいかったけど・・・

「それと・・仔ヤギも・・・」

「コ、仔ヤギ?!?!」


あ、あの、ゆきちゃんみたいなのを・・・・


ジニョンの絶句した表情を見て、ドンヒョクはくすっと笑った。


「冗談だよ。ヤギじゃないよ。」

「もう!!」


ジニョンの膨らんだ頬をドンヒョクの指がつついて、最後の夜が薄いラベンダーから紫色へと色を変えていった。





ディナーを終えて、ホテルに帰ってきたジニョンは、ロビーの笹の前で足を止めた。

すでに笹には、願い事の書かれたたくさんの短冊が取り付けられ、ゆらゆらと揺れていた。


「ドンヒョクssi、私たちも書きましょう」

ジニョンは、置いてあった短冊とペンを手に取ると、ドンヒョクに差し出した。

「あのね・・お願い事を書くのよ。ほら、こんな風に・・・」

ジニョンは、手近な短冊を手にとってドンヒョクに見せた。

そこには『○○君と一緒になれますように』だの『来年もまた北海道に来られますように』や
『宝くじが当たりますように』だの、
『受験、合格しますように!!』
果ては『あと、5キロやせますように!』などとありとあらゆる願い事が満載されていた。

「へぇ・・・」

ドンヒョクは、しばらくジニョンが、読み上げたいろいろな願い事の書かれた短冊を見ていたが、
ペンを手にとると、さらっと綺麗な文字で書き込んだ。
ジニョンが覗き込んでみると・・そこには『永遠』と書かれていた。


「ドンヒョクssi・・・・」

ジニョンは、なんだか、胸が一杯になってきた。

ドンヒョクの書いた「永遠」

それには、いろいろな意味が含まれているようで・・・
ドンヒョクの瞳を見上げながら、ジニョンも手元の短冊に『永遠』と書き込んだ。

ふふっ・・と瞳を見交わして微笑みあうと、二人で一緒に笹に短冊を取り付けた。
ドンヒョクの『永遠』が少し高い所で揺れており、ジニョンの『永遠』は、
そのちょっと下のほうで、ひらひらと舞っていた。


やがて、ドンヒョクが、ロビーに鍵を受け取りにいっている隙をみて、
ジニョンはそっとポケットから一枚の短冊を取り出した。
ディナーに出かけるとき、ロビーを通りかかった折に、こっそり一枚持ち帰っていたのだ。
レストランの化粧室で、こそこそと書いた短冊には「次の仕事も上手くいきますように・・・
早くまた映像で動いている彼を見ることができますように・・・」と書かれていた。
ジニョンは、ドンヒョクの目を盗んで、急いで短冊を笹に取り付けた・・・
なるべく隠れるように、多くの短冊の間の奥深くに・・・しっかりと結びつけた。


こういうのって、ひとり一枚ずつなの?
欲張りだって神様に怒られたらどうしよう・・・



 
「わぁ・・・・ドンヒョクssi・・満天の星空よーー」

ジニョンは、部屋のテラスに置かれた長椅子に座って、広大な夜空を眺め回した。


「今日が七夕なら、よかったのに・・・」


ジニョンは、ちょっと残念そうにため息をついた。
ジニョンの声に誘われるように、スコッチを片手にドンヒョクがテラスに出てきた。
シャワーを浴びたばかりなのか、髪が濡れ、ローブの胸元には、いくつかの水滴が光っていた。

どきっ・・・
ジニョンの心臓が音を立てて高鳴った。
不思議ね・・・こんなに一緒いて・・・こんなにドンヒョクと触れ合っていても・・・
ドンヒョクssiを見ると、いつだって、どきどきしちゃうのよね・・
ジニョンはなんだか急に落ち着かない気分になり、うろうろとその視線を夜空のあちこちに走らせた。

「一ヶ月後の夜空の二人が気になる?」

「そ、そうね・・・」

ドンヒョクが、そっと長椅子に腰を下ろし、ジニョンを抱きかかえると寝そべるようにして、横になった。
ドンヒョクの腕に頭を乗せて、星空を眺めると、まるで星が降ってくるような感じだ。

「そうね・・・だって、一年間も離れ離れだったのよ。その間、お互い寂しかっただろうし、
会いたかっただろうし、不安だっただろうし・・・」

ジニョンは、いつしか、ドンヒョクと離れざるを得なかったあの数ヶ月のことを思い出していた。

「彦星は、去年の別れ際、ちゃんと織姫に『愛してるよ。一年間我慢しようね』って言ったのかしら。」

なんとなく、自分たちの事に置き換え始めたジニョンを感じて、ドンヒョクは、
半身を起こすと後ろからジニョンを抱きしめた。
ドンヒョクの逞しい胸に後ろからすっぽりと包まれると、
少し波打っていたジニョンの胸も次第に凪いできた。
その胸に頭を預けて、二人で満天の星空を眺める。

「あれが、北極星・・あれが北斗七星・・・」

博識のドンヒョクが、あれこれと指差して教えてくれる。
ふと、ドンヒョクが、先ほどのジニョンの言葉を思い出したのか、
少し笑いを含んだ声で話し出した。

「男が女性に「愛してる」って言うと、女性は必ず「どのくらい?」って聞くらしいよ。
何かの本で読んだことがある。」


「そうなの?」

ジニョンは、自分のことを思い返してみた。
えっと・・・私はドンヒョクssiに、聞いたことがあったかしら・・・どのくらいって?
ドンヒョクは、体勢を変えると、ジニョンを自分の方に向かせた。
そして、ジニョンの目をじっと見つめると「愛してる」と囁いた。
ジニョンは、嫣然と微笑むと「どのくらいって聞いて欲しい?」と囁き返した。
すぐに、いつものように、激しいキスが振ってくると思っていたが、
ドンヒョクは、いつまでたっても、ジニョンの瞳を見つめ続けるだけだった。


「ドンヒョクssi?」

ジニョンは、不思議に思って聞き返した。
すぐにでも「どのくらい愛してるか、教えようか・・」って、言うと思ったのに・・・
それから、このバスローブの紐を解いて・・・・それなのに・・・どうかした?

ドンヒョクssi・・・


「このまま、一晩中、ジニョンに愛を語ろうかな」

ドンヒョクは、ジニョンの瞳を覗き込みながら、優しく笑った。

「その本には、こうも書いてあったよ。女性と言うものは、わかっていても、
何度でも言って欲しいものだって。だから、ちゃんと想いを言葉にして、伝えなければならない。
男性諸君よ、キスだけでは、伝わらないこともある、愛を語りなさいってね。」


くすっ・・・とジニョンは笑ったが、心が温かい波で満たされていくように感じていた。


そうね・・わかっていても、言って欲しいの
何度でも、何度でも・・・
ジニョンは、ドンヒョクの胸にもぐりこむと、ぴったりと寄り添った。
たまには・・・こういうのもいいかしら・・
ドンヒョクは、ジニョンの肩をぎゅっと抱き寄せると、言葉にならない声で語り始めた。

ジニョン・・・生きていくのに、酸素が必要なのと同じくらい必然的なことでも、
言葉にしないと伝わらないんだね・・・いや・・・わかりきったことでも、伝えて欲しいんだね・・
今も、変わらず愛しているいう事を・・・
そう、永遠というものは、求め続けなければ、ありえないこと
ずっと一緒にいたいと、求め続けるからこそ、永遠になる

でも、人は、一緒にいると、いつのまにかそれが当たり前になって、
ついお互いを求める気持ちを疎かにしてしまいがちだ。
ドンヒョクは、ジニョンをその胸に抱いたまま、夜空を見上げた。

案外・・・案外、夜空のあの二人は、離れることで、永遠にお互いを求め続けられるのかもしれないな・・・
ドンヒョクの胸に沸いた皮肉な真理も、ジニョンの前ではその説得力を失った。
未来永劫、この果てしない宇宙でただ一人・・
ジニョンだけが、そんなドンヒョクのアイロニーを覆す力を持っている
ただ、神様は、そのことを、思い出させるために・・・
一緒にいられることを、当たり前だと思わないように・・・
「七夕」は、存在しているのかもしれない。


「七夕か・・」

ドンヒョクは、小さくそう呟くとジニョンに聞いた。

「日本語では?」


ジニョンがゆっくりと発音した。


「タ・ナ・バ・タ」


「タ・ナ・バ・タ・・・」

ドンヒョクが、ジニョンを真似て、ゆっくりと繰り返した。


「ドンヒョクssi、日本語の発音が上手ね。習ったらきっとすぐに上達するわ。」


ドンヒョクは、ジニョンを優しく抱きしめると、一緒に星空を眺めながら、ジニョンの耳元で囁いた。

「タナバタ・・・」


七夕・・・

1年間募らせた想いを、お互いに伝え合う日。
またとない今日という日が、いかに大切かを知る日でもある。
一月後の、7月7日
二人は逢えたのかしら・・・

一晩中、愛を語るといったわりには、ドンヒョクの手が少しずつ、密やかに動き始め、
違う方法で愛を語り始めた。


んん・・・ドンヒョクssi・・・

来月の7月7日・・
夜空の二人・・・逢えるといいわね・・
そして、今夜の私たちみたいに、愛を伝え合えるといいわね・・・




(2008/07/07 Milky WayUP)

 
 
 

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