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D&J |
こちらは、ドンヒョク&ジニョンを中心としたお話の部屋です。
私なりに想像した二人のその後・・・というお話になります。
婚約時代から、結婚後、ファミリーのお話・・・とありますが、時系列がばらばらだったりして、読みにくい一面もあると思いますが、よろしければお付き合いくださいませ。
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No |
280 |
HIT数 |
1799 |
日付 |
2009/03/04 |
ハンドルネーム |
Library Staff |
タイトル |
love letter |
本文 |
『love letter』
RRRRRRRRR・・・・・
『はい』 『もしもし、ああ・・・ジニョン?』
『あ、ドンヒョクssi?着いたの?』 『ああ・・・無事、NYに到着したよ』
『大丈夫?ドンヒョクssi、疲れてない?』 『心配ないよ。』
『そっちはどう?やっぱりまだ寒い?』 『そうだね、韓国よりは・・・』
『代わって、代わってーーー』 『あ、ちょっと!こら、ジェイ!』
『パパーーージェイだよーーーお手紙、入れておいたからねぇーー』
受話器越しに無邪気なジェイの声が響いてきて、NYのマンションで出張の荷物を解きながら、 家族と離れてこれからの連日にわたるハードワークを思って、 少し疲弊しかかっていたドンヒョクの心を和ませた。
『お鞄の中に、入れておいたからね。お返事待ってるからね』言いたいことだけ言うと、ドンヒョクの返答などお構いなしに、『ママに代わるねー』とジェイはジニョンに電話を渡した。
『ジェイが手紙を書いてくれたみたいだよ』 ちょっと笑いながら、ジニョンにそう言うと、ジニョンもくすっと笑いながら答えた。
『みたいね・・でも・・』 と、側で歌を歌いながら走り回っているジェイを慮って、ジニョンは後の言葉を濁した。
『そうだね』 ドンヒョクも、受話器を肩で挟むと、ネクタイをしゅるり・・と緩めながら、マンションの窓の側に立った。
眼下には、宝石箱をひっくり返したような、華やかな夜景が広がっていた。
少し長い出張になるかもしれない・・・
そう告げたときの、ジニョンの寂しげな瞳の色を思い出し、ジェイの声を聞くまでもなく、すでに、一人の寂しさが身に沁みてきたドンヒョクだった。
『なんだかね、ドンヒョクssiの出張前に、ジェイがスーツケースをがたがたさせていたの。 何をしてるんだろうって思ってたけど、ドンヒョクssiに内緒で『お手紙』を隠したみたいね』
『へぇ・・・』
『ジェイは、「パパにお手紙を送ったー」って満足げだけど・・ ま、きっとドンヒョクssiの顔かなんか、描いたんじゃないかと思うわ』 ジニョンは、小声でそう付け加えた。
『そうだね・・・でもうれしいよ』 その後、ジニョンとあれこれたわいもない話を続けるうちに、長いフライトで乾ききっていたドンヒョクの心も、春雨に打たれたかのように潤ってきた。
『着いたばかりで疲れているでしょう?今日は、早めに休まないと・・・』 そう、心配げなジニョンを何度も引き止めて話を続けたのは、これから続く一人寝の寂しさを思ってのことだったのかもしれない。
やがて『さぁ、ドンヒョクssi、もう寝なさい。』と、まるで、ジェイに言い聞かすように諭されて、ようやく、 ドンヒョクも『それじゃ・・お休み、ジニョン』と、名残惜しげに受話器を置いた。
その後、スーツケースをあちこち探ってジェイの『お手紙』を探してみたが、それらしきものが見当たらない。 封筒も、便箋も、画用紙も、どこにも入っていなかった。
「お手紙」か・・・ カードかなにか、小さなもので、ジェイがわざわざ隠したのかもしれない。
とりあえず今日は寝て、明日また探してみよう・・・と、ドンヒョクは、ベッドに横になった。
まぁ・・・もともと、ジェイの「お手紙」というのは・・・・
と、時差のせいもあって・・・いや、隣にジニョンがいないという紛れもない喪失感に苛まされながら、何度も寝返りを打ち、ドンヒョクはぼんやりと思いを馳せた。
そう、もうすぐ、幼稚園に上がろうという今の時期になっても、ジェイは字が書けなかった。 せめて、自分の名前だけでも・・・と、ジニョンが躍起になって教えても、興味のないことには、落ち着いて取り組めないジェイでは、全く話にならなかった。
それに、なんだか、言葉もあやふやだ・・・ 子供が生まれたら、韓国語も英語もどちらも不自由なく話せるように・・・と、 いわゆるバイリンガルに育てよう・・・と、ジニョンとは共同の認識を得ていた。
その計画は、第一子の「かれん」においては、概ね成功を収めた。
ジニョンが韓国語で、ドンヒョクが英語で・・・と話しかけているうちに、かれんは自然と両方の言葉を覚え、やがて、韓国語で話しかけられると韓国語で、英語なら英語で・・と完璧に返事するようになった。
そのまま、両国語の読み書きも覚えて、幼稚園に上がる頃には不自由なく両国語を使いこなしていた。
きっと、ジェイも同じように成長するだろう・・・と思っていた二人だったが、どうやら、随分様子が違った。
ドンヒョクもジニョンも、かれんを育てたときと同じようにジェイに接したが、ジェイは韓国語も英語もどちらも中途半端に覚えてしまい、その時、その時で、韓国語で話したり、英語で返事したり・・・という事態に立ち至ってしまった。 やがて、両方の言葉をチャンポンで話し出したジェイを心配して「どうしようーー、ドンヒョクssi――」と、 焦るジニョンを「大丈夫だよ。そのうち、ちゃんと話すよ」 となだめてはみたが、左手も、右手も両方使いこなすジェイを見て、少し心配になってきたのも事実だった。
とはいえ・・・
心配しながらも、どこか、自分は親なのだな・・・という確かな実感もして、ドンヒョクにとってはそんな子育ての悩みすら、嬉しいものだった。 さぁ・・・明日は、なんとかしてジェイの「お手紙」を探さないと・・・
そんなことを夢うつつに思いながら、やがてドンヒョクはゆっくりと眠りに落ちていった。 そして・・・
次の日の朝、レオにせかされながら、スーツケースの中を探し回ってみたが、どこにも、「お手紙」は見当たらない。
「あのジェイのことだ。『入れたと思ったけど、忘れてた』 だの 『書いたと思ったんだけどなぁ、夢だったのかなぁ・・』ってなことも、十分ありえるぞ」
多くのクライアントとの交渉に明け暮れた一日を終え、スコッチ片手に夕食を食べながらレオが言ったことも、あながちないことだとも言い切れない。
「ま、内緒でかれんにでも確かめてみるんだな」と、かれん贔屓のレオは、にやっと笑った。
その夜、電話したときに、そっとドンヒョクはジニョンに聞いてみた。
『ジェイの「お手紙」が見当たらないんだ。ジェイはなにか言ってたかな?』 『えー、そうなの?ジェイは、「お手紙―お手紙―パパにお手紙――」ってはしゃいでるだけだけど・・・』 と、ジニョンも困惑気味だ。
『まぁ・・・ジェイのことだから・・・勝手に思いこんでるだけかもしれないし・・・』 と、こちらもレオと同じ見解を示した。
ふぅ・・・
やがて、ジニョンとの電話を今夜も名残惜しげに終えると、淡いため息をつきながら、ドンヒョクはマンションの窓辺に置かれた椅子に腰を下ろした。
ジェイの「お手紙」・・・ さて、どうしたものやら・・・
翌日、ランチの時間を見計らって、ジニョンからメールが届いた。 『私が聞いても埒が明かないから、かれんに確かめさせたら、「パパに春を送ったよ。 これで、パパは春が好きになるよ」ですって・・・意味不明なのードンヒョクssi、何か思い当たることはある?』 春を送った?
ドンヒョクは、ジニョンからのメールを何度も確かめてみた。
春を送った・・・
とはいえ・・・思い当たることといっても・・・
その後、ジェイの謎の言葉を頭の中で反芻しながら、ドンヒョクはマンションのエレベーターに乗り込んだ。 今日は、クライアントの都合もあって、夕方に仕事が終わった。 ゆっくりと、陽が傾きかける中、ドンヒョクは部屋に戻った。
まず、シャワーを浴びる。
その後も、ずっとジェイの言葉の意味を考えながらも、バスローブを羽織り、ドンヒョクは明日の用意を始めた。
明日は、ここNYから、ロサンジェルスに移動だ。
LA・・・
思わず、ドンヒョクの手が止まった。
ジニョンが、僕たちの車に乗り込んできたあの砂漠・・・・ あの時のことを思い出して、独りでに思い出し笑いが零れ落ちる。
砂漠でのヒッチハイク、思わぬ再会、車に乗り込んできたジニョンの破れたスカートからちらりと覗いた、魅力的な脚・・・
そう・・・あの時、きっと僕の人生にも、ジニョンは乗り込んできたのだろう。
そして、僕の心にも・・・ 賑やかに・・・なんの計画性もなく・・・勇敢に? 思わず、ふっと笑いが零れた。
そして、交わり始まった二人の人生。
やがて、かれんと、ジェイが加わって・・・ 今、しっかりと、織り成される僕たち家族のタペストリー 愛を縦糸に、慈しみを横糸に・・・
そんな思いに駆られながら、ドンヒョクはスーツを取り出した。 出張用に何着か用意して、カバーに入れてスーツケースに入れておいたものだ。
明日用に・・・と、その中の一着を取り出し、カバーを外した。
・ ・・・・・・・
思わず、手が止まる。 これは、一体??
立ち上がってスーツを上に持ち上げながら、よく確かめてみた。
どういう訳か、ハンガーにかかっているスーツのポケットが、全部ぱんぱんに膨らんでいる。 何が入っているんだ?と中を探ってみれば・・・・
淡く薄いピンクの一片が、指に触れた。
桜の花びら?
あちこち、ポケットを探ってみれば、淡いピンク色をしたハート型の花びらが、ぎっしりとポケット一杯に詰まっていた。 あっ・・・
ドンヒョクは、はっと思い当たった。 もしかして、ジェイの「お手紙」って、このことか?
はらはらとポケットから零れ落ちる花びらを掌で受けながら、ドンヒョクは、ジェイの言葉を思い出していた。
『パパに春を送ったよ。』 そうか・・・
出立の頃、韓国では、もう桜が咲き始めていた。 それで、一足早い韓国の春を、アメリカまで送ってくれたのかい?
でも・・・
ドンヒョクは、もう一つのジェイの言葉を思い出した。
『これで、パパも春が好きになるよ。』 というのは・・・
もしかして・・ ドンヒョクは、そっと花びらを指先でつまみながら、透けるような薄いピンク色を、まったりとした春の夕日に翳してみた。
もしかして・・・ジェイは・・・何かを感じていたのだろうか・・・ ジェイは、時折、人の心をピンポイントで突いてくるような、どこか動物的ともいえる勘のよさを見せる時があった。
そんなところが、ジニョンと似ているのかもしれない・・・
春・・・ジニョンとの辛い別れを経験した季節 あの桜の樹の下で・・・
もしかしたら、僕は春を迎えるたび・・・桜を見るたび、そんな心の翳りをどこかに滲ませていたのかもしれない。
ジェイは、そんな僕の翳りを感じて、こんな「お手紙」を送ってくれたのかもしれない。
ほら、パパ、桜の花びらって綺麗でしょう?
きっと、家族と離れた遠いアメリカで見ると、パパだって、桜が好きになるよ。 だって、桜の花びらって、ハートの形をしてるんだよ。 仲良しの印だよ。 どこからか、そんなジェイの声が聞こえたような気がした。
ポケット一杯の春の便り 薄桃色のハート型をした「お手紙」 ジェイからのlove letter さぁて・・・
柔らかな笑顔で、ドンヒョクは掌の桜の花びらをふぅ・・と優しく吹いた。薄桃色の春が、ふわふわと部屋一杯に広がって、ドンヒョクの心にも春を届けた。
さぁて・・・
こんな「お手紙」には、一体どんな「お返事」をしたらよいのか・・
はらはらと舞い踊る花びらの中、マンションの窓辺の椅子に座り込み、眼下に広がるNYの春の夕景を眺めながら、ドンヒョクは楽しい悩みに耽りだした。
やがて、ドンヒョクは、溢れるほどのピンク色の春に囲まれて、心から満ち足りたため息をついた。
ありがとう、ジェイ・・・
パパは、春が大好きになったよ。
(2009/03/05 Milky WayUP)
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