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Milky Way Library
Milky Way Library(https://club.brokore.com/sunjyon)
「Hotelier」にインスパイアされた創作(written by orionn222)の世界です
サークルオーナー: Library Staff | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 732 | 開設:2008.11.22 | ランキング:51(8198)| 訪問者:141257/418668
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Imagination
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D&J


こちらは、ドンヒョク&ジニョンを中心としたお話の部屋です。
私なりに想像した二人のその後・・・というお話になります。 婚約時代から、結婚後、ファミリーのお話・・・とありますが、時系列がばらばらだったりして、読みにくい一面もあると思いますが、よろしければお付き合いくださいませ。
No 311 HIT数 767
日付 2009/03/05 ハンドルネーム Library Staff
タイトル レオのつぶやき by hant55
本文
 orionnさんの世界を壊さない事を祈って・・・




   『レオのつぶやき by hant55』




ホテルの部屋に戻ると、俺は真っ先にTVの前へと向かった。
NBA プレーオフ。ファイナルへ向け、今夜のN・Yニックスの試合は絶対に見逃せないものだった。

「それは録画を放映しているんだろう?結果だったら、さっき・・・」
「ボス!その先を言うな。もし、いったら長年のコンビも今夜で解消だ。わかったな!」
ボスの胸元に詰めより、まあ、見上げてはいたが、精一杯凄んでみせた。

新たなプロジェクトの出資者との顔合わせのため、俺達は久しぶりにN・Yを訪れていた。
昼間の利益配分の説明、役員選出の手続きを巡っての緊迫したミーティングとは打って変わって、
夕食を共にしたステーキ・ハウスは終始、ジョークとビール・ジョッキの乾杯が飛び交う、和んだ雰囲気だった。


RRR~~~

「わかった、レオ。電話に出てもいいか?」
降参したように両手を挙げたボスに電話を任せ、俺はいそいそとTVの前に座った。

「はい・・・、わかりました。ご連絡ありがとうございます。はい・・・、すぐ、病院に向かいます。
ご迷惑をおかけしました。では、・・・」

病院?

「レオ、ヨンアが手首を切ったそうだ。弁護士からの電話だ。
僕は病院に行って来る。レオはいい。そのままTVを見ててくれ。」

今、脱いだばかりのスーツの上着に袖を通しながら、ボスは俺の顔を見ずに言った。

最初に彼女が自殺企図したのも、俺達がこちらに来ている時だった。
ヨンアは助けて貰いたいのだ、俺達に。いや、ボスに救いを求めているのだ。

「俺も行く。」
何か言いたそうなボスよりも先にドアへと歩いた。


病室のベッドの上でヨンアはただ、泣くばかりだった。
左手に巻かれたギプスの大きさが彼女の身体の細さを更に際立たせていた。

「一番見たくない顔だわ。
心の中では笑っているでしょう。バカな奴だと。
もう、いいの、私を愛してくれる人はいない。必要に思ってくれる人もいない。
たくさんの友達がいても、私が本当に必要な時に誰もそばにはいてくれなかった。」

彼女を必要だと思っていても、彼女が困っている時、必要としている時、助けてくれる人はいなかったわけだ。
薬物依存から必死で抜け出そうとそする彼女に本当の友達はいなかったのだ。
そんな人間関係しか築いて来れなかった彼女が憐れだった。

「死なせてもくれないのね、私にこのまま生き続けろというのは、死以上の苦しみだわ。
死ぬことも出来ないなんて。」

ボスは何も言わず、彼女を泣かせたいだけ泣かせた。

救急車のサイレンの音。廊下を誰かが走っていく足音。
静かな病室にはいろいろな音が届いたが、ただ、彼女の嗚咽だけが白い壁に吸い込まれていった。

少し、落ち着いたところでボスが初めて口を開いた。

「ヨンア・・・帰ろう・・・。」

「私に帰るとこなど、どこにもないわ。」
真っ直ぐに向けられたヨンアの濡れた瞳は、ボスの言葉をきっぱりと否定していた。


「覚えているかい?僕たちの・・・ホームの庭にあった楡の木を。

あの木の下は僕が唯一、安心できる場所だった。
本を読むのも、何もせず何も考えず佇むだけでも、あの木の下でなら安心できた。
木の幹を抱き、眠ってしまった事もあった。
届かない思いを木に向かって叫んだ事もあった。

何も答えてくれない木だったが、そこに立っていてくれるだけで心が安らかになった。

今、ホームは僕達がいたころとは、生まれ変わった。
今でも様々な事情で親と離れて暮らさなければならない子供は大勢いるが、誰からも愛されていないと感じていた僕達とは違う。
心優しい、シスターや支援してくれるたくさんの人の愛に包まれて暮らしている。
もう、寒くてお腹が空いて泣く事も、迎えに来るはずの誰かを待って、それでも誰も迎えに来ないと泣く事もない。
温かくて優しい場所に生まれ変わったんだよ。

僕達が暮らした建物は何も残っていないが、楡の木だけはあの時のまま、今でも何もかも包み込むように枝を広げ、聳えたっている。
僕達がふるさとと呼べる唯一の存在だ。
ずっと昔から変わらず立ち続ける木は、きっと、君を温かく迎えてくれる。

帰ろう・・・ヨンア。」


思い出したように再び泣いていたヨンアだったが、泣き笑いの顔を上げると、
「ねえ、フランク、覚えてる?あなたが読んでくれた本。
楡の木の妖精の話。

私、言ったわね。楡の木の妖精になって、楡の実をお金に変えてあなたにプレゼントするって。
そして、あなたのお嫁さんになる、って。」

ボスも思い出したように微笑んだ。

涙をすっかり拭うと、ヨンアはボスに今度こそウソはないとでも言うように、
「昔から貴方には叱られてばかりなのね・・・

帰ります。あの木がこんな私を許してくれるなら、また、あの木に見守られて生きていきたい。」





ホームが一番美しい表情を見せるこの季節にたとえ、仕事半分とはいえ、ここを訪れる日は、俺の殺伐とした日々の中の心の休日と言っても
いい。
自然のままに植え、育てられた薔薇の花は誰に媚びるでもなく、最上の香りと安らぎを運んでくる。

このホームの改革をボスから告げられたのは、かれんが生まれて間もなくだった。
ボスは自分では何も語らないくせに、俺が何もかも知っているをわかっていた。
俺が幼い頃のボスを調べるため、ホームを訪ねた事も知っているようだった。

ホームの運営権を手に入れると、まず、俺は二代目園長、先代の園長の息子を解任した。
ホームには形ばかりの教会が隣接していた。ホームの改革は経験豊なシスターを迎え入れ、そこを建て直すことから始まった。

それまで、自分を価値のない、捨てられた人間だと思っていた子供達に愛情を持って接し、生まれてきただけでも価値があると教えた。
ホームはすっかり生まれ変わった。
もう寂しくて惨めな場所じゃない。温かくて優しい場所に生まれ変わった。


「パパの育ったホームに連れていって。」
かれんの頼みを俺が拒むことができないのは何故だ!
でも、あの時は5日も抵抗した。5日も!最高記録だ。

かれんがこの場所で何を感じ取っているのか、それはこれからのアイツの生き方が見せてくれるだろう。

ボスはここにくる事には、抵抗があるのか名ばかりの理事で、実際に動いているのは俺だ。
イースター、ハロウイーン、クリスマス、いつだって俺の出番だ。
とうとう家族を持たなかった俺にとってもここの子供達は、かれんやジェイと同じように、我が子のようにかわいい。
一人ひとり抱える事情はあれ、無邪気に笑う子供達の笑顔を守らなければいけない。
この笑顔を見つづける事ができるのも、「シスター」のお陰だ。

薔薇の小道をかれんと連れ立って歩くヨンアが振り返り、小声で俺に囁いた。

「『まことに主がこの場所におられるのに、わたしは知らなかった。』
聖書の言葉です。教えてくれてありがとう、とフランクに伝えて下さい。」
「伝えますよ。今度はぜひ、ボスと一緒に来なくては。
その時は、必ず、ヤツを叱ってくださいね。」

ホームで彼女を向かえたシスターは何も言わず、しっかりとヨンアを抱しめた。
それに答えるように彼女は、一心に祈りを捧げ、子供達を慈しんだ。
求めてばかりだった彼女の人生は、与えることで本来の美しさを取り戻し、輝くばかりの笑顔が今の幸せを物語っていた。

「レオおじさん!エデンの園ってこんな所かしら?」

神が最初に創った楽園か?
さあな、かれんにとっての楽園はまだまだ、見えない先にあるはずだ。
探しておいで。時間はたっぷりあるぞ!

俺は大きくクラクションを鳴らしながら、野薔薇の咲き乱れる丘の小道を猛スピードで走り下りていった。




(written by hant55 2005/06/05 サファイアUP)

 
 
 

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