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D&J |
こちらは、ドンヒョク&ジニョンを中心としたお話の部屋です。
私なりに想像した二人のその後・・・というお話になります。
婚約時代から、結婚後、ファミリーのお話・・・とありますが、時系列がばらばらだったりして、読みにくい一面もあると思いますが、よろしければお付き合いくださいませ。
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No |
329 |
HIT数 |
1178 |
日付 |
2009/03/06 |
ハンドルネーム |
Library Staff |
タイトル |
happy birthday 3 砂上の薔薇 |
本文 |
『happy birthday 3
砂上の薔薇』
その後も、彼女が消えた方向を呆然と見つめ続けるジニョンの腕を、ウンギョンが軽くつついた。
「先輩まで・・どうしちゃったんですか?」 「・・・ごめんなさい。なんでもないわ。」
ジニョンはやっとの思いで、視線を彼女が消えた方向から引き剥がした。
オフィスに戻っても、ジニョンの胸には、もやもやと得体のしれない黒雲が広がっていくようだった。
本当にあの人がドンヒョクssiの幼馴染のキ・ヨンアssiなんだろうか・・ あんな綺麗な人がドンヒョクssiの幼馴染? 私の知らないドンヒョクssiを・・・知っている人・・・ もしかしたら・・ドンヒョクssiの初恋の人?
「ジニョン」 「ドンヒョクssi」
ジニョンはドンヒョクが迎えに来てくれることをすっかり忘れていた。
「どうかした?」 どこか、ぼうっとしているジニョンをいぶかしげに見ながら、ドンヒョクが尋ねた。
「・・ううん・・なんでもないわ。ちょっと待っててね。」 あわてて、退勤の用意をしながらも、ジニョンの頭は混乱していた。
あの人が・・・あの薔薇のプリマドンナがドンヒョクssiの幼馴染のキ・ヨンアssiだとしたら・・・ 彼女はもしかして、ドンヒョクssiに会いに韓国へきたの?
それとも・・・ただの旅行? もしかして、ドンヒョクssiはもう、彼女と会ったのかしら?
でもドンヒョクssiの様子に、いつもと変わったところなんかなかったし・・ そうよね・・・たとえ昔好きだったにしても、あれからもう何十年もの歳月が流れているのよ。 会ったところで何かが始まるわけじゃない。
私だって・・・ ジニョンは、以前参加した中学の同窓会の事を、思い出した。
私だって何年かぶりに初恋の人に会ったけど・・・ 確かに当時を思い出して、ときめきもしたし、会えて嬉しかったけど・・・
だからと言って、何かが始まったわけじゃない。 ドンヒョクssiを裏切るような気持ちは、1ミリだって沸き起こらなかったわ。
もし・・・あの人が・・あの薔薇のプリマドンナが、ドンヒョクssiの幼馴染のキ・ヨンアssiだったとしても・・・ 何も変わらないはずよ。
ドンヒョクssiは、もう彼女になんの興味のないと言っていたわ。 私達の間はこれまでと何一つ変わったりなんかはしないはず・・
頭ではそう理解していても、何故かざわめく心を落ち着かせる術もなく、 迎えにきてくれたドンヒョクの車に乗り込みながらも、いつもより口数の少ないジニョンだった。
そんなジニョンの様子を、疲れているのかと思ったドンヒョクは、優しくジニョンの頭にひとつキスを落とすと、 ゆっくりと車を発進させた。
そんな二人の様子を、夕焼けが少し眩しいティールームからじっと見ている人影があった。
「あの・・・」 話しかけられて、ユ主任も思わず緊張した。
「は、はい。なんでしょうか。お客様」 「今・・・そこから帰られた方って・・」
彼女の視線をたどった主任は丁寧に説明を始めた。
「ああ・・あれはソ支配人と旦那様のシン・ドンヒョクssiですよ。 ドンヒョクssiはうちのホテルの理事でもあるんですが・・・ とても仲のおよろしいご夫婦で、ああやって時々奥様であるソ支配人をお迎えにこられるんですよ。」
「そう・・・」 ヨンアの美しい瞳がさっと陰りを帯びた。
翌日から、ジニョンはヨンアの事が、気になってしょうがなくなってしまった。 ヨンアを見かけると、視線をはずすことができない。
これじゃ、私も男の人のことは言えないわね。 ジニョンは軽いため息をついた。
夕べ、あれからドンヒョクに変わったところなど、微塵もなかった。 いつものように、ジニョンと会話し、家族と触れ合って過ごしていた。
ドンヒョクssiはヨンアssiが今韓国にいる事を知らないのかしら・・・ もっとも、そもそも、あの人がドンヒョクssiの幼馴染のヨンアssiだと決まったわけではないけれど・・・
ジニョンは悶々とした思いに悩まされながら、次第に自己嫌悪の波に襲われていった。 もっと、素直にドンヒョクssiに聞いてみることだってできたのに・・・
私ったら、一人で何をこだわっているの・・・ その時、ジニョンの目がロビーを歩くヨンアの姿を捉えた。
・
・・綺麗・・・・
胸のざわめきを一瞬、忘れてしまうようなヨンアの美しさだった。 もし・・もし、あの人がドンヒョクssiの幼馴染だとしたら、年齢だってドンヒョクssiとそう変わらないはずだ。
それなのに、あの美しさはどう? ジニョンの胸に女らしい悲哀が浮かんでくる。
あの人のほうが、ドンヒョクssiとはお似合い? もう、私ったら、いまさら何を考えているんだか!
ソ・ジニョン!つまらない事をうじうじと考えてないで、ほら、仕事!仕事!
ジニョンはそう自分を軽く笑うと、気持ちを切り替えて、勢いよくヨンアに背中を向けた。
それから、2、3日後の久しぶりの夜勤の日、相変わらずホテリアーたちの噂の的は変わらなかったが、 ジニョンは随分落ち着いて、ヨンアを見る事ができるようになっていた。
ドンヒョクの様子は、全く変わらない。 今夜は、ジニョンの両親が孫達に会いに家に泊まりに来ていた。
ジニョンの中を変わらぬ日常が流れていった。
そう・・あの瞬間までは・・・
「ソ支配人。お客様がお呼びですよ。」 無線でそう連絡を受けたジニョンは、自分を呼んでいるというVIPの部屋に向かおうとして、 ふと足を止めた。
このお部屋に宿泊されているのは・・・・
軽くドアをノックしたジニョンの前で、ゆっくりとドアが開き、キ・ヨンアの美しい顔が現れた。
「貴方がソ・ジニョンssi?」 か細い声で彼女は尋ねた。
「ええ・・・そうですが・・」
やはりこの人は、あのキ・ヨンアssiなんだろうか・・ ドンヒョクssiの・・・
「私をお呼びだと聞きまして、うかがいました。お客様。ご用件はなんでしょうか?」
少し、緊張してそう尋ねるジニョンの顔から視線をはずすと、ヨンアは落ち着きなく、部屋の中を歩き回りだした。
「私・・・貴方にお願いがあってここにきたの。」
まるで、人形かと見まごうような顔をした、ヨンアの眉が軽くひそめられた。
「こんな事・・・お願いする立場じゃない事は、よくわかっているわ。 貴方にお会いするのを何度も迷ったの・・・でも、私・・」
・・・ヨンアは誰かに頼らずには生きていけない人なんだろうな。
その時、昔、ドンヒョクが彼女について言った言葉が、ジニョンの脳裏にふっと甦ってきた。
確かに、人形のように綺麗で、ちょっと頼りなげで、男じゃなくてもつい助けてあげたくなるような、 まさに女らしい風情がヨンアには感じられた。
どちらかと言うと、姉御肌のジニョンもつい引き込まれて、困った様に言葉を探しているヨンアの為に、何かをしてあげたくなる。
「何か、私にできることでしたら、なんでもおっしゃってください。」 そんな言葉が自然と口から出てくる。 途方にくれた子供のようなヨンアがどこか痛々しかった。
でも・・美しい!!
整った顔はまるで精巧な人形のようにも見えるし、透き通ったしみひとつない白い肌と、 ストレートの腰まである長い黒髪、モデルと見まごう様な完璧なプロポーションを持ったヨンアが今、 その細く長い指を所在なげに組み直しながら、艶のあるピンクの唇で何かを言い出そうとしている。
うっとりと、見とれるほどの美しさだった。
もし、この人がドンヒョクssiの幼馴染のヨンアssiなら、確かドンヒョクssiと同い年のはず・・・ ありえないほどの美しさね・・
「私・・なんて言ったらいいのか・・・ソ・ジニョンssiに私を助けていただきたいの」 「助ける?」
「ええ、私を助けると思って彼を・・・フランクを私に下さらない?」 「えっ?」
「こんな事、お願いするなんて、筋違いもいい事なのはよくわかっていてよ。 フランクに知られたら、また怒られてしまうわ。 私ったら、昔からフランクには怒られてばかりだったから・・ でも、それでもお願いしたいの。ねえ、ソ・ジニョンssi、私にフランクを譲っていただきたいの。」
ジニョンはヨンアの言っている意味が今ひとつ、つかめずにいた。
フランクを譲る?
という事はこの人はやっぱり、ドンヒョクssiの幼馴染のキ・ヨンアssiだったのね。
でも・・・譲るって・・ドンヒョクssiを? それって一体どういう意味?
「ねえ、お願いよ。私を助けていただきたいの。お願いよ。」
咄嗟にヨンアはジニョンの手をつかんだ。 よく手入れされた爪が、ジニョンの手の甲に食い込む。
「あの・・それは一体どういう・・」
ジニョンの戸惑いの言葉に業を煮やしたのか、それまでの口調と打って変わって、 突然激しい言葉がヨンアの美しい唇から飛び出てきた。
「だって、貴方は何でも持っているじゃない!仕事も友人も家庭も子供も! 全部持っているじゃない!みんな私の持っていない物ばかりよ! 昔からそうだったわ。私の本当に欲しい物は、みんなこの手の中から零れ落ちていってしまうのよ・・・まるで砂のように・・・」
ヨンアの完璧なアーモンドアイから、一筋の涙が零れ落ちた。
夕日の中を、その雫が煌いて床に落ちていく様を、ジニョンはまるで映画のワンシーンを見るように、魅入られて見ていた。
「そう・・・私の人生はまるで海岸に作った砂のお城みたいなのよ。 どんなに立派に出来上がっても、一瞬で波がさらって消してしまう・・・」
ヨンアはジニョンをきっと見据えた。
「貴方は、なんでも持っているじゃない・・・そんなのは不公平よ!」
ジニョンはその美しい瞳に、一瞬ある意味狂気じみた激情をみて背筋がぞっとした。
・
・この人は・・今、正気を失っている?・・・
ヨンアにつかまれたジニョンの手に、血が滲み始めた。
・・痛い・・・
「だから、お願いよ。フランクを私に頂戴! 貴方はたとえフランクがいなくなっても、仕事もお友達も、それにフランクの子供だっているじゃない。 だから、フランクを・・・フランクだけは私に頂戴!」
ヨンアは、最後はまるで搾り出すような声で、ジニョンに懇願した。
「お・・お客様・・」
やっと思考が追いついてきたジニョンは、まるで子供に諭すように取り乱したヨンアに話しかけた。
「お客様・・・譲るとか譲らないとか・・・人の気持ちをここでやり取りすることはできません。 それにこれは私が決めることではありません。ドンヒョクssiが・・・もし、ドンヒョクssiが貴方を愛してしまったのなら、 どんなに私が止めようと、どうしようもないことかもしれないし・・・
でも、私はドンヒョクssiを愛しています。仕事があっても友人がいても彼の子供がいても・・ ドンヒョクssiは私にとってかけがえのない人です。自分から彼をあきらめる事はできません。 たとえ、お客様のためでも・・・お客様の力になりたいという言葉に嘘はありませんが、出来る事と出来ない事があります。
こんなところで勝手にドンヒョクssiをやり取りする事はできません。 申し訳ありません。お客様」
ジニョンは我ながら、驚くほど冷静に対処していた。
何故か心は乱れなかった。それよりも目の前のヨンアの様子が気がかりだった。
この人は何かがおかしい・・・
ジニョンの冷静な対応に、激して取り乱していたヨンアに、少しずつ落ち着きが戻ってきた。
「・・・そうよね・・・ごめんなさい・・・ソ支配人・・・ あなたの言う通りよね・・私が間違っていたわ・・」
急にヨンアが弱々しく、生気が抜かれたような虚ろな瞳になった。
「・・私ったらいつもこうなの・・大事な事ばかり失敗するのよ・・・ だから皆私から離れていくのかしら・・・ジェームズもトミーもトーマスも・・・誰も彼も・・・・ 私から離れていくの・・」
そこでヨンアは、またジニョンをつかむ手に力を込めた。
「ねぇ・・どうしてなの?どうして私だけ気がつけば一人ぼっちなの? いつもそうなのよ。昔からそうなの・・皆私を捨てていってしまうの・・・
私の両親ですら、私を捨てたのよ。どうして私だけがこんな目に会わないといけないの? ねぇ・・・教えてよ。ソ支配人!」
その言葉が終わると同時にヨンアの身体が大きく崩れて、ジニョンに倒れ掛かってきた。
「お客様!」
慌てて支えたジニョンの手に、ヨンアの高熱が伝わってきた。
身体ごとヨンアを受け止めながら、ジニョンは懸命に無線で応援を呼んだ。
「テジュンssi!私よ。お客様が大変なの!」
駆けつけたテジュンや他のスタッフによって、ヨンアはベッドに寝かされた。 「お医者様をお呼びしましょうか?」というテジュンの問いかけに、ヨンアは激しく首を振ると、 「このまま寝かせておいて下さい。」と力なく言い、静かに眠りに落ちていった。
「今夜は俺がそれとなく気をつけておくから、お前は仕事に戻れ。 まだ、打ち合わせが残っているんだろう?」 「・・・・ええ・・」
何かを思い悩むようなジニョンの様子を見て、テジュンがそっと聞いてきた。
「あのお客様と何かあったのか?トラブルでも?」 「・・いいえ・・そうじゃないわ・・・」
ジニョンはふぅと大きなため息をつくと、一瞬テジュンに何もかも話してみようかと思ったが、 そんな迷いをぐっと心に押しとどめると、少しだけ硬い笑顔を貼り付けてなんとか仕事に戻っていった。
翌朝、フロントに寄ったジニョンは、夜明け前、ヨンアがチェックアウトをした事を知った。
なんとも言い難い複雑な心を抱えたジニョンの耳に、無線から緊急の呼び出しがかかった。
「ソ支配人、まだいらっしゃいますか?大変です!社長が怪我を・・」 えっ!
ジニョンは慌てて、テジュンの元に急いだ。 テジュンは、地下のボイラー室で、足を怪我していた。
ジニョンが駆け付けた時には、ヒョンチョルに支えられて、なんとか立ち上がったようだったが、 それでも、一人では歩けないようだった。
「一体、どうしたの?テジュンssi」 「全く、我ながら情けないな。ちょっと調子が悪そうだったから、点検に来たんだが、 そこの階段で足を滑らせちまった。」
テジュンは、そう言ってボイラー室の入り口近くの階段を、悔しそうに見た。 ジニョンは、スタッフの肩を借りながら歩くテジュンに寄り添って歩きながら、小さなため息をついた。
「もう、テジュンssi・・こういう事は、これからは若い人に頼むべきね。 テジュンssiだって、そう若くはないんだから・・」 「何を言う!ジニョンお前なぁ!」
勢いよく、そう言い返してみたものの、捻挫して腫れ上がった足首の痛さにテジュンは思わずうめき声を上げた。
「・・・そうかもな・・俺も、もうそんなに若くはないという事か・・」 テジュンのちょっと悔しそうなため息が、朝の空気の中に消えていった。
その後は、テジュンの代わりにあれこれと仕事を片付けながら、ジニョンはそのままホテルに残った。 なんとなく忙しくしていたいジニョンだった。
そんなジニョンの元に、ドンヒョクからメールが届いた。
・
・・ジニョン、急な仕事で今日の夕方アメリカに行くことになった。また、あちらから連絡をするよ。 子供達の事を頼むよ。それとジニョンのご両親に謝っておいてほしい。 ・
・・・・・・ドンヒョク
・
・ドンヒョクssi・・
急な出張は今までだって、よくあったことだ。とりたてて特別なことではない。 でもなんだか、ジニョンの胸に急に寂しさがこみ上げてきた。
夕方ね・・
ジニョンはアメリカへの出発時刻を確かめると、ドンヒョクの見送りに行こうと思い立った。 ちゃんと行ってらっしゃいが言いたい。なんだか、このままドンヒョクssiが行ってしまうのは嫌・・・
そんな思いに突き動かされてジニョンは空港へ急いだ。
混雑した国際空港の中を、ドンヒョクの姿を探して、ジニョンは人ごみをかき分けて歩き続けた。 やっと、出発ゲートの手前で、ジニョンはドンヒョクの後ろ姿を見つけた。
・・・ドンヒョクssi・・
その時、そのまま声をかけようとしたジニョンの足が止まった。
・・ヨンアssi!
ドンヒョクの横には、今朝早くチェックアウトしたヨンアの姿があった。 そのまま、二人は寄り添うように出発ゲートの中に消えていった。
ヨンアの細くて白い手が、ドンヒョクの腕にそっと添えられていた。 ジニョンは、凍りついたように、ずっとその場所に立ち尽くしていた。
(2005/05/07 サファイアUP)
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