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D&J |
こちらは、ドンヒョク&ジニョンを中心としたお話の部屋です。
私なりに想像した二人のその後・・・というお話になります。
婚約時代から、結婚後、ファミリーのお話・・・とありますが、時系列がばらばらだったりして、読みにくい一面もあると思いますが、よろしければお付き合いくださいませ。
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No |
331 |
HIT数 |
1017 |
日付 |
2009/03/06 |
ハンドルネーム |
Library Staff |
タイトル |
レオのつぶやき by hant55 |
本文 |
orionnさんの世界を壊さないことを祈って・・・
『レオのつぶやき by hant55』
余計な事を言っちまったな・・・
抜け殻のようなジニョンとそれを庇うソヨンの二人がオフィスを出て行ったあと、俺はN・Y中の知り合いに電話を掛けた。 向こうが何時だろうと構う事はなかった。 本当にボスはキ・ヨンアと二人でN・Yに行ったのだろうか。信じられなかった。 ヨンアは今になって何故、またボスを訪ねてきたのだろう。 ボスもなんで、彼女に会ったりなんかしたんだ。 あの女はもう少しで、俺達を破滅に落とし入れるところだったじゃないか。
ボスの居所は、掴めなかったが、これだけ方々に電話を入れておけば、そのうち誰かが何か言ってくるだろう。 俺はスコッチグラスにいつもより多めに酒を注いだ。
キ・ヨンア・・・ 彼女を初めて見たのは、俺達がN・Yで仕事をしていたずっと、ずっと昔の事だ。__________
ロックフェラーセンターの広場を見下ろすホテルの最上階のパーティー会場。 クリスマスまでまだ、1ヶ月以上もあるというのに広場中央の巨大なもみの木には色とりどりのイルミネーションが瞬き、ニューヨークの中心はここと 宣言をしているかのようにすっくとそびえ立っていた。
現在取引をしている会社の創立記念パーティーに招かれた俺達だったが、日頃からパーティーなどの出席には気が進まないボスも最重要な顧客の招待とあっては、断わりきれなかったのだろう、タキシード姿のボスを久々に見た。 それをまるで普段着のように着こなし、窮屈そうにみえないところはさすがだった。 これだけ多くのタキシードとロングドレスの中にあってもボスの立ち姿はそこだけ、スポットが当たっているように人目をひいていた。
クリスマスを意識したグリーンとレッドの光沢のあるクロスを引き、キャンドルが揺らめくテーブルには、新鮮なシーフードをふんだんに使ってシェフが腕を振るったイタリア料理が並んでいた。 そういえば、この会社のオーナーはイタリア系だったなとブルスケッタをひとつつまみ、ローズマリーのかおりを楽しんだ。 こんな料理を出されたら、ワインだろうと言っても、ボスはマティーニのグラスを取り上げた。
パーティーには、政財界の有力者が顔を揃えていたが、常にボスを中心とした話の輪ができていた。 話題は先ごろ、NY連銀が発表した不動産価格に関する調査報告書を取り上げ、ボスは実需が中心ならば、投機的なものにはならないと自説を強調していた。
彼女の視線に気づいたのは、少し、酔いが回りしゃべり疲れた俺が、壁際のイスを求めてボスの側を離れた時だった。 相変わらず、数人に囲まれ話に花を咲かせていたボスだが、手にしているグラスは既に空になっていた。
その人は、肩紐のない黒いベロアのイブニングドレスを見事に着こなしていた。 ほどよい厚みのドレスがボディラインをきれいに引き立たせ、深めに開いた背中が彼女のセクシーさを更にアピールしていた。 完璧としかいいようのないプロポーション。 東洋系特有の黒い大きな目、アップにした黒い髪がドレスとは又、違った色に輝いている。 美しい・・・。 様々な美女が集うこの場でさえ、彼女の美しさに叶う者は誰ひとりいなかった。 そんな彼女がマティーニのグラスを持ってボスに近づいた。
「おい、あれは誰だ?」 隣に座る、この会社の顧問弁護士のアンディに尋ねた。 「ああ、あれか? 彼女は、キ・ヨンア。コリアンだな。綺麗だろう? ちょっとしたパーティーには必ず顔を出してる。」 「何をやってるんだ?」 「仕事か? さあな、仕事なんかしなくても生きていけるだろう、女はそんな生き物さ。」
彼女はマティーニのグラスをボスに手渡すと耳元で何か囁いた。 ボスの顔に微かな驚きが広がり、彼女の顔を見つめた。
このN・Yの成功者の一人として、その地位や名誉、金を頼りにボスに言い寄る女は大勢いる。 だが、ボスはそんな誘いに乗るようなヤツじゃない。 あの手、この手で近づく女達は、甘い言葉の代わりに返ってくるボスの冷たい一瞥に早々と尻尾を巻く。 堕とすに堕とせない相手と知って。
二言、三言、言葉を交わして彼女はボスの元を離れた。 去っていく彼女の背中をずっと目で追うボス。 彼女はいったいどんな言葉であのボスのハートを掴んだのだろう。
パーティーからの帰り道、車の中でその一言が聞きたくて俺はうずうずしていた。
「レオ、明日の夜の打ち合わせは来週に回してくれ。」 「なんだ、ボス。さっきの彼女ともう、デートの約束か?」 「余計な推測はいい。スケジュールを調整してくれ。」
OK、ボス。だが、俺を甘くみるなよ。彼女の正体くらいすぐ、突き止めてやるからな。
俺はいつもの情報網を駆使して、彼女の身元を調査した。 まず、俺が驚いたのは彼女がボスと同じ孤児院の出身者だったことだ。 キ・ヨンアはボスと一緒に養子としてアメリカへ渡ってきた。 養子先も近く、同じ高校で過ごした二人は当時、有名なカップルだったらしい。 ハーバード進学後、まもなく別れたようだから、10年ぶりの再会か。 ボスの驚きの表情のわけがわかった。
その類まれな美貌は幼いころからのもので、こちらに来てからも数々のミスコンを総なめにしていた。 一時はモデルの仕事をしていた事もあったが、彼女は正当な労働の対価としての報酬よりも、もっと、楽に生きていく道を選んだ。 人形のように整った顔、完璧とも言える見事なプロポーション、ちょっと頼りなげに見える彼女に手を差し伸べる男性は少なくなかったようだ。 自身の美貌の見返りに経済的援助を受けることに何の抵抗もなく、日々華やかな世界に生きることを彼女は選択したのだ。
ボスは彼女の美しさに惹かれたのか、それとも同郷の同じ境遇で育った彼女に懐かしさを覚えたのだろうか。 どうやら、何度か待ち合わせを繰り返しているようだった。
あまりいい噂を聞かないこの女性に対して俺はボスとの違和感を感じていた。 彼女の狙いはなんだ? 次のターゲットにボスを選んだのだろうか。
ホテルのラウンジ・・・といってもカジュアルな店だ。ここのピアニストは客のどんなリクエストにも応えてくれる。 たとえ、今、流行りの曲だろうと。
仕事帰り、一人カウンターでバーテン相手に酒を飲んでいると、友人のレイが隣に座った。 「ひとりか? 淋しいな。」 「余計なお世話だ。どうだ最近?」 「まあまあだな、ところで、お前のボス、フランクだけどこの前、コンチネンタルホテルのロビーで見かけたぞ。一緒にいた女・・・、お前知ってるか? キ・ヨンア。」 「ああ、最近はどうやら俺といるよりそっちのほうが気に入ってるみたいだな。」 「いいのか、あの女はウィリアム・スタインベックの女だぞ、フランクの事だからお前達の情報が筒抜けになるとは思わないが、気をつけたほうが いいぞ。」
レイの言葉に胸騒ぎを覚えた俺はすぐにオフィスに戻り、ウィリアム・スタインベックの最近の取引状況を調べた。 奴はプロといっても相場師だ。まともに株の売買をするわけじゃない。 案の定、最近は疑惑のもたれるような取引ばかりしている。SESCもマークしている。
我々の現在の最重要顧客A&Tロイヤルはホテル事業の他に新エネルーギー産業への進出を視野に入れ、今後発展する分野と目論み、 新進のノーザン・コントロールズとの調整を続けていた。 ノーザン・コントロールズがA&Tロイヤルと合併
、業務上の提携
をする事実を基に発表前の株を取得すれば、儲かることは間違いない。 ウィリアム・スタインベックがどこまで掴んでいるか疑問だがボスから何らかの情報入手を狙っているのだろう。 ヨンアとスタインベックの狙いはそこだ。 これが事実ならボスもインサイダー取引の片棒を担ぐことになるぞ。 冗談じゃない! そんなことで、俺達のキャリアが傷付けられてたまるか!
まさか、ボスが寝物語に株価を左右するような極秘情報を漏らすとも思えないが、パートナーとして確かめてみる必要はある。
翌日、俺はいつものラウンジにボスを誘った。プライベートなこととはいえ、俺達の進退を危うくしかねない状況を見過ごすわけに行かなかった。
「単刀直入に聞く、キ・ヨンアとの関係はどうなんだ?」 ボスのマティーニのグラスを上げた手が止まった。 「プライベートなことだ、レオには関係ない。」 あきらかに不機嫌そうなボスの返事に俺は、 「そうはいかない。あの女がウィリアム・スタインベックの女だと知って付き合っているのか?」 ボスは意外そうな顔で俺を見た。 「ウィリアム・スタインベック?・・・」 「そうだ、奴らの狙いはボスの持ってる未公表の極秘情報さ。発表前に奴が株式取得に動いてみろ、俺達はインサイダー取引の片棒を担ぐことになるんだぞ。 ボス、あの女と寝たのか?」 硬い表情のまま、ボスは黙って返事をしなかった。 答えたくないならそれはいい、俺が聞きたいのはそんなことじゃないのだから。 「情報は漏らしてないだろうな、今、ここで奴がノーザン・コントロールズの株の大量取得に走ったら、今後、内部情報の漏洩を問われかねない。 そうなったら、俺達は完全に信用を失う。M&Aもできなくなるってことだぞ、本当に大丈夫なんだな。」 俺の激しい口調にボスはただ、一言、 「僕がそんなバカに見えるか? レオ。」 判りきったことを聞くなと、ボスの目は言っていた。
そうだな、ボス。ボスはハンターだ。ハンターが獲物になるわけがないか。 俺の取り越し苦労だったようだ。すまない、ボス。 ボスを疑ったわけじゃないんだ、ただ、ボスが女の事でつまづくのではと、ちょっとばかり心配が過ぎたようだ。
2杯目のマティーニを頼んでやると、ボスはそれを断わり、 「レオ、明日は休ませてくれ、いや、夜になったらオフィスに顔を出す、それまで時間をくれ。」 それだけいうと、俺の返事も待たずに、席を立った・・・
SESC 証券取引等監視委員会
(written
by hant55 2005/05/08 サファイアUP)
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