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D&J |
こちらは、ドンヒョク&ジニョンを中心としたお話の部屋です。
私なりに想像した二人のその後・・・というお話になります。
婚約時代から、結婚後、ファミリーのお話・・・とありますが、時系列がばらばらだったりして、読みにくい一面もあると思いますが、よろしければお付き合いくださいませ。
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No |
377 |
HIT数 |
1963 |
日付 |
2009/03/31 |
ハンドルネーム |
Library Staff |
タイトル |
ほ の 香 |
本文 |
『 ほ の 香 』
「あ・・・ドンヒョクssi・・・ちょっと待っててもらってもいい?」 「ああ・・・いいよ。」 ジニョンは、門の前に止められた車から一人離れて歩き出した。 そして、立ち止まるとそっと上を見上げた。
目の前には、長年暮らしてきた二人の家が静かに佇んでいた。 この家・・・
ドンヒョクssiと結婚して住み始めたこの家・・・ かれんが生まれて、ジェイが生まれて・・・
春 3月
たくさんの思い出が詰まったこの家から、今私達は旅立とうとしている。 きぃ・・と門扉を開けて前庭を見渡しながら、ジニョンはドアの前に立った。
初めてのクリスマスに二人で植えたあの樅ノ木はもう業者の手で移植されてしまい、庭は今ひっそりとした静寂の中にあった。
ゆっくりとドアを押し開けて玄関に立つ。 いつもここで「ただいま」と元気よく言ってきた。 何百回、何千回、「ただいま」「おかえり」の言葉がここで交わされてきただろう。
靴を脱いで上がると、もうそこには、自分用のスリッパもない。 素足のまま、ジニョンはリビングへと進んだ。
足元にひんやりとした空気を感じながら、がらん・・・と広いその空間を見渡して、「こんなに広かったのかしら」とつい独り言が零れる。
まだ婚約時代、ドンヒョクと一緒に家を選ぶためにここに立ったときよりも、なんだか広く感じる。
あの時は、ここにTVをおいて、ここにはテーブルを・・・とあれこれ想像を巡らせていたからだろうか・・・いまほど、広く感じなかった。
珈琲の香りに包まれて、たくさんの笑顔と笑い声が響いていたこのリビング・・・しばらくその広さを見渡した後、ジニョンは何もない空間を横切ってキッチンへと足を進めた。
いつも食材で溢れていたこのキッチン・・・ジェイが悪戯盛りのころは、ここには柵をして立ち入り禁止にしたっけ・・ かれんとジェニーが楽しくお菓子作りをしたこともあった。 甘くて美味しい匂いがまだ残っているよう・・・ 名残惜しげにキッチンを出ると、ジニョンはバスルームへと進んだ。 婚約時代、ドンヒョクssiとこの家を訪れたのは、まるで昨日の事のようなのに・・・
あれから、もう何年?・・・
そんな感慨に耽りながら、がらり・・・とドアを開ける。
そうそう、このバスルームを見て、この家に決めたのよね・・・ 今日もバスルームの天窓からは、暖かな日差しが差し込んでいる。
ふふ・・・ここにシャンパンを持ち込んで、ドンヒョクssiと二人でパーティをしたこともあったわね・・・ でも、子供たちが生まれてからというもの、ここはまるで戦場さながらの賑やかさだったわね。 石鹸の香りと甘いシャンプーの香りに包まれたこのバスルーム・・・ ジニョンは、バスルームを出ると、ゆっくりと家の中を歩き、一枚のドアの前で足を止めた。
そして、ここはドンヒョクssiの書斎 なんだか今でもちょっと立ち入りづらい。 ここは、ドンヒョクssiの聖域みたいに思えて・・・
ここには、大きなデスクと二人でゆったりと座れるソファーがあって・・ 仕事するドンヒョクssiの背中を見ながら、ここでよくうたた寝をした・・・ たくさんの書籍とPCと書類に囲まれて、ここは厳しいビジネスの匂いがする。
そして、ちょっぴり孤独の匂いも・・・
「ジニョンが夜勤の夜、あのベッドに一人で眠る気になれなくて、結局ここで寝てしまったよ・・・」なんて言っていたドンヒョクssi・・・ 私も、ドンヒョクssiの長い出張の間、何度ここで夜を明かしたことだろう・・・
それから・・・
ジニョンは、ゆっくりと手すりを確かめながら、二階へと上がった。
ここはかれんの部屋
いくら私が女の子らしい部屋にしようとしても、いつのまにか、シンプルなしつらえになっていたわね。
フリルたっぷりのレースのカーテンも、イチゴ模様の壁紙も、かれんのNGにあい、模様替えを余儀なくされた。
全く、あの子ったら・・・ 今度の部屋はどうするつもりかしら・・ とはいえ・・・ほんのりと爽やかなシトラスの香りが、まだそこはかとなく香っているようで・・・やっぱり、女の子の部屋だったのかしら・・
それから・・・
ここはジェイの部屋
なんだか、訳のわからない匂いがあちこちに染み付いているみたい。 粘土の油っぽい匂いやら、クレヨン、絵の具の匂い、勝手に持ち込んだお菓子やジュースの匂いも交じり合って・・・それに、土の匂いとお陽様の香り・・・
すっかり荷物がなくなって空っぽだというのに・・・ ここは、間違いなく男の子の部屋ね・・・
いろんな想いをかみしめながら、ジニョンはゆっくりと家中を回った。
この壁の傷は、ジェイがサッカーボールでつけたもの そうそう、この物置に隠れて、家族を慌てさせたこともあったわね そして、ここには、かれんが貰ったたくさんの賞状を飾ったわ。
あら、この柱の噛み傷はきっとウイッシュね。
ああ・・・この廊下には、よくドンヒョクssiのスーツケースが並んだ。 出張の前になると、それを見るだけで胸が痛んだものよ。 そして・・・
ジニョンは、最後に二人の寝室のドアを開けた。
この部屋で・・・
幾つ夜を過ごし、朝を迎えたことだろう・・・ ドンヒョクssiの大きな胸に包まれて・・・
実業家のシン・ドンヒョクも、ソウルホテルのソ・ジニョンも・・・ ただの一人の男と女に戻って、素顔のままで、愛を交し合った。
ふふ・・・喧嘩したこともあったわね。
でも・・・
むせ返るような薔薇の香りに包まれて愛し合った夜もある。
真っ白なカサブランカの華やかな香り・・・可憐な甘いスイトピーの香り・・・一 夜限りの月下美人の儚げな香り・・・ ドンヒョクssiが、オーダーしてくれた数々の香水だけを身に纏って、燃えるような夜を過ごしたこともある。
熱い吐息と、甘い睦言に、穏やかな寝息が混じって・・・ 私たちの夜を彩った。
愛しくて切なくて恋しくて・・・ ここは、やっぱり愛の匂いがする・・・ でも・・・
ジニョンは、胸を一杯にしながら、そっとドアを後ろ手で閉めた。 そう・・・ この家とも今日でお別れ・・・ ジニョンがあまりにこの家に対して強い思い入れをするので、ドンヒョクがあれこれ動いてくれた。 その結果、今は、仕事の都合で海外にいるジェニーたち一家が、帰国した折にはこの家に住むことになって、どれほどジニョンは喜んだだろう。
自分たちが出て行っても、全くの他人の手に渡るのは寂しすぎる・・というジニョンの意図を汲み取ってドンヒョクが掛け合ってくれたのだった。
ジェニーたちは、二つ返事でその申し入れを受けた。 何度も、この家を訪れたことのあるジェニーたちは喜んで承諾し、帰国してここに住むことを楽しみにしてくれている。 今、ひっそりと静まり返った家の中を歩き回りながら、ジニョンはそっと家に向かって語りかけた。
たくさんの笑い声と、笑顔と・・・たまには怒鳴り声が響いていたわね・・
今日から、当分寂しく静かな日々が続くでしょうけど・・ やがて、また笑顔と笑い声に包まれる日がくるから・・ それまで、待っていてね・・・ やがて、ジニョンは、玄関に立つと、すぅ・・・と息を吸い込んだ。
家のドアを開けたとき、感じる「我が家」の匂い きっと、それぞれの家にもあるはず・・・ どんなに立派な家でも、冷たい匂いがしたり、小さな家でも温かな香りが漂うことってあるもの・・そんなほのかな残りが漂うこの家とも、とうとう今日でお別れね・・・
やがて、少しずつこの香りも薄れていって・・・また新しい家族を迎えるころには、まっさらな空気が流れているのかしら・・・
でも、きっと・・・
ほのかな「幸せの匂い」だけは、どこかに残っているはず・・・ 私たち家族がこの家で紡いできた証として・・・
さぁ・・・そろそろ行かなきゃ・・・ ドンヒョクssiが待っているわ・・・
そして、子供たちは両親と一緒に、一足早く新しい家に着いているはず。
もう一度、玄関に立ち深呼吸すると、ジニョンは、そっとドアを開けて外へ出た。
ぱたん・・・とドアを閉じた小さな音が、静まり返った玄関の空気を微かに揺らした。 振り向いて、名残惜しげに家を見上げる。 長い間私たち家族を温かく包んでくれてありがとう。
本当に、ありがとうね・・・ 車のボディーに寄りかかってジニョンを待っていたドンヒョクの微笑みに迎えられて、ジニョンは車に乗った。
窓を開けて、もう一度家をこの目に焼き付ける。
ありがとう。
そして・・・
また、逢えるその日まで・・・
See
you again
またね・・・
Milky
wayのメンバーの皆様、
長い間ありがとうございました。
愛と感謝を込めて・・・
orionn222
(2009/03/29
MilkyWay UP)
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