ブロコリ サイトマップ | ご利用ガイド | 会員登録 | メルマガ登録 | 有料会員のご案内 | ログイン
トップ ニュース コンテンツ ショッピング サークル ブログ マイページ
Milky Way Library
Milky Way Library(https://club.brokore.com/sunjyon)
「Hotelier」にインスパイアされた創作(written by orionn222)の世界です
サークルオーナー: Library Staff | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 732 | 開設:2008.11.22 | ランキング:51(8198)| 訪問者:139998/417409
開設サークル数: 1238
[お知らせ] 更新のお知らせ
Imagination
Cottage
Private
Congratulations
Gratitude
容量 : 39M/100M
メンバー Total :732
Today : 0
書き込み Total : 898
Today : 0
D&J


こちらは、ドンヒョク&ジニョンを中心としたお話の部屋です。
私なりに想像した二人のその後・・・というお話になります。 婚約時代から、結婚後、ファミリーのお話・・・とありますが、時系列がばらばらだったりして、読みにくい一面もあると思いますが、よろしければお付き合いくださいませ。
No 380 HIT数 2430
日付 2009/11/03 ハンドルネーム Library Staff
タイトル count down rain
本文
『 count down rain 』






「ボス、今日は風が強いな」
クライアント先からの帰り、車のドアを開けながらレオが言った。
僕は少し目を細めながら、立ち止まる。
「風?」
辺りを見回すと、NYの街並みを彩る街路樹が激しく梢を揺らしている。

風・・・・
僕は、車に乗り込むと、シートに深く身を沈めた。
風・・か・・・
風なんて、今まで特に気にしたこともなかった。
風が吹こうが、雨が降ろうが、嵐に見舞われようが、大雪に閉ざされても、僕の毎日に変わりはない。
ただ、仕掛けて、見極めて、賭けて、勝負して・・・獲物を仕留めるだけだ。
稼いで、儲けるだけの・・・僕の毎日。
それが、フランク・シンの人生だ。

この先も・・ずっと?

僕は、鈍い痛みを訴えるこめかみを指でほぐしながら、目を閉じた。

ジニョンssiと・・・・君を別れて・・遠く・・こんなところで僕は一体何をしているんだろう・・・

ふと、窓の外に目をやると、いつの間にか小雨が降り出し、走り去る街並みを淡く煙らせていった。

雨・・・・
ふいに、あの夜のことがまざまざと甦ってきた。
君と向かい合って座ったあのハンバーガーショップ
窓越しの激しい雨
僕のことは少しも意識しないの?そう問いかけたくなるくらいの君の食べっぷり
ひとつのコートを傘にして、走ったあの駐車場
かすかに触れた君の柔らかな体と甘い吐息
夜の雨の匂いと足元を濡らした冷たい水しぶき
雨粒に濡れた君の髪の甘い香り・・・

あの夜のことは、なにもかも、こんなに鮮明に覚えている。
覚えているのに・・・・

君とともに過ごしたあの日々・・・
あの眩しくて短い日々の間だけ、僕は本当の人生を生きた。
シン・ドンヒョクとして・・
風を感じ、雨に打たれ、空を見上げ、川を見渡し、海の音を聴いて・・・
そして、僕は初めて夢を見た。
儚くて切ない・・・・

今となってはそんな夢の欠片が・・・虚しくて恋しい夢の記憶だけが、空っぽの胸の中にひらひらと舞い散っている。
決して積もることのない海に降る雪のように・・・

僕は目を閉じて、こめかみの痛みが、次第に強さを増して、全身に広がっていくのを感じていた。
今は、この痛みだけが、かろうじて僕が生きている唯一の証だ。

窓の外では雨は勢いを増し、NYの街並みを白く静かに消していった。

「レオ、止めてくれ」
バックミラー越しに僕の表情をちらっと盗み見ると、レオは黙って車を止めた。
「ちょっと寄るところがあるから、ここでいい。」

レオの小さなため息と、もの問いたげな視線をやり過ごして、僕は車を降りた。
NYに帰ってからというもの・・・まるで魂をどこかに置き忘れてきたかのような抜け殻の僕をよく知っているレオは、そのまま何も聞かずに走り去っていった。

しばらくの間、そのままそこに立ち止まって、車を見送った後、僕はゆっくりと歩き出した。
別に寄るところなんかない。
ただ、あのまま、じっと座っていられなかっただけだ。
なにかが・・・僕の体の中に・・・まるで爆発の時を待つ時限爆弾のように、息を潜めて宿っているようで・・・いたたまれずに、雨の中、僕は歩き出した。


ぽつり・・ぽつり・・・
雨粒が僕のスーツを濡らしていく。
冷たいというこの確かな感触だけが、唯一、君とのつながりのように思えた。

小さなため息をひとつ・・・
あの夜・・・
僕はまたしても、あの雨の夜に引き戻される。
忘れることも、乗り越えることも、ましてや、振り切れるはずもない、君という存在
なのに・・・

あの雨の夜・・・
渋滞する車の中から降りしきる雨を見て、君がついた淡いため息
ジニョンssi・・・今の君のため息は、もっと深くて哀しいのだろうか・・・

通りかかった橋の上から、水かさを増す川の流れを見下ろす。
一粒、一粒が流れ込み、やがて、この川は奔流となって、海に注ぎ込むのだろうか・・・
そして、僕の胸の中にも、なにかが、次第に水位を増しつつあった。

びしょ濡れのまま、NYの街を歩き回るなんて、僕には考えられなかったことだ。
でも・・・そうせずにはいられない。
少しずつ僕の胸の中に降りしきる雨粒は、次第に水位を上げ、荒れ狂い、渦を巻きながら、
僕を飲み込んでいく。
愛という激流となって・・・
僕は、泳ぎ方も知らないまま、このまま、愛に溺れていくのだろうか・・・

胸の奥で、何かが時を刻み始める。
10、9、8、7・・・・
ますます激しさを増す雨の勢いのように、その音は、次第に大きくなり、僕を焦燥させる。
6,5,4,3・・・・
まるで、count downの雨音だ。
濡れた髪をかきあげて、僕は灰色の雨空を見上げた。
まるで、君の部屋の窓を見上げたときのように・・・

ジニョンssi・・・
君は、別れるとき、僕の胸の中に時限爆弾を仕掛けたのかい?
時がくれば、僕の胸の中で爆発するように・・・
ふっ・・・
僕は、ジニョンssiと別れてから、初めて小さく笑った。

count down rain
小さな雨の一粒が、時をかけて石を穿ち、大河となって全てを流し去るように・・・
きっと、僕の心は、もうすぐ危険水域を越えてしまうだろう
もう限界なのは、自分でも分かっていることなのに・・・
僕は、何を待っているのだろう・・・

僕は橋を渡りきると、その先の見えない明日を探した。
そのとき、強い風がひと吹きして僕の頬をぴしゃりと叩くと、雨雲を連れてどこか遠くへ走り去っていった。
やがて、雲の切れ間から、うっすらと覗く淡い光
僕の心にも、微かな陽が差し込んだようだ。

僕は、濡れて重くなったスーツを脱ぐと、ゆっくりと歩き出した。
まだ、行く先は、はっきりとは分からないけれど・・・
でも・・・
ジニョンssi・・・
もう少し待っていて・・・
僕は、必ず、二人の明日を見つけるから・・・

空から届けられる僅かな光に導かれ、僕は歩き続ける。
今は、小さな歩みでも・・・
いつか、君の元へと辿り着けるように・・・
今は、ただ歩き続けよう。

そう・・
きっと・・・ずっと・・・永遠に・・・君の側にいるために・・・



***



ぽつり・・・
うわっ!
なんだよ、雨かよ!

俺は、首筋に感じた水滴の冷たさに悪態をついた。
今日の降水確率は0%じゃなかったのかよ!
あのWeather newsのやつー
全く当てにならないな!
俺は、大学の帰り、バイト先に向かう道で、どこか雨宿りできる場所を探した。

ったく!
バイトに遅れたらどうしてくれんだよ!
小さなparkの中にある、藤棚の下にようやく落ち着いた俺は、雨空を見上げて荒い息をついた。

まじかよー
最初小雨だった雨足が、だんだん強くなって、どうやら本降りのようだ。
まいったな・・・
しばらく、ばしゃばしゃという雨音を、聞くともなしに聞いていた。
まだ時間はあるけど・・・
このままっていう訳にもいかないし・・・そのうち止むか?
俺は、はぁ・・・と今度は長いため息をついた。
じめじめした俺の苦手な湿気が、じわじわと足元から立ち上ってくるようで、俺はうんざりと辺りを見回した。
ふと、雨に濡れた葉っぱの上に、カタツムリがいるのに気がついた。
・・・・・
大きな声じゃ言えないが、俺は虫関係に弱い
あの殻の下に、ぬめぬめとしたナメクジ系がいるのかと思うと・・・
うぇ・・・・
俺は、藤棚の下をじわじわと慎重に移動すると、カタツムリとの適度な距離を保った。

はぁ・・・
止まねぇかな・・・

降りしきる雨に閉じ込められて、進むことも戻ることもできない立ち往生の俺は、どこかここ最近の俺の心中を思わせた。
とはいえ・・・特に問題が生じているわけじゃない。
一応勉強もなんとかついていけている・・・・多分にあのMr.リスキーのおかげでもあるが・・・
バイトも問題ない、まぁ、ここハーバードでの学生生活は概ね順調だ。

でも・・・
俺は、今日の天気のように、いきなり大雨でも降らせそうな何かが・・・もやもやとした大きな暗雲が俺の中に巣食っているのを感じていた。
らしくもねぇな・・・
俺は、足元の水溜りをばしゃりと蹴飛ばした。

今まで・・・いろいろと思い悩むことがあっても、こんなふうに、もやもやと胸を痛め思い煩うようなことはなかった。
しかも・・・「恋愛」なんかで・・

そう・・・喧嘩なら怖いもの知らずのこの俺が、たったひとりの女の子の言動に一喜一憂するなんて・・・
情っさけねぇなぁ・・

でも・・・
電話がないとそわそわし、受話器越しの声に元気がないとおろおろし、笑顔の写メールににやにやして・・・
全く・・・・
「恋」ってのは、自分でも知らなかった自分を知ることでもあるんだな・・・
こんな俺を、俺は知らない・・・

たまらなく逢いたくなったり、どうしても声が聴きたくなったり・・・
でも、時差のせいでままならない時もあり・・
この俺が、眠れない夜を過ごすなんて、誰が想像した?
どれだけ親父ともめようが、姉貴にどれだけ罵倒されようが、ベッドに横になれば、たちまち眠れた。
姉貴に、「単純馬鹿」と呼ばれる所以だ。
それが、この有様だ・・・
ったく!!

俺は、思わず携帯に伸びそうになった手を、ジーンズのポケットに突っ込んだ。
ふつー、この時間なら寝てんだろ・・・

でも・・・
あいつも・・・ユミンも俺を思って眠れなかったりすんのかな・・
ふと、不安になる・・・
あいつは、結構・・・大丈夫そうだ・・・
なんてーか・・
そりゃあ、「逢いたいね」とか、「オッパの声を聞くと(まだこの呼び名だよ!)元気になるよ」とか・・いろいろ言ったりするけど・・・
基本的に、ユミンは、できもしない約束をねだったり、ぐずぐずと言い募るタイプじゃない。
ある意味・・俺より肝が据わってるというか・・・
・・・・・・

あーあ・・・・まだ止まねぇなぁ・・・
俺は、樹木の隙間から零れ落ちる雨粒を避けながら、灰色の空を見上げてみる。

今度の休みには、帰省しようかな・・
でも・・・こんな、もやもやした気持ちのまま、ユミンに会ったりしたら・・や、やばくないか?俺・・・
いきなり、押し倒したりして・・・・
いや・・・いくらなんでも、それはやっぱりまずいだろ・・・でも・・・付き合ってるカップルなら、別に自然のことともいえるし・・・いや・・・しかし・・・でも・・・やっぱり・・・

あーーーー!!なに考えてるんだよ!!俺は!!
俺は、堂々巡りをする自分に嫌気がさして、またも足元の水溜りを蹴飛ばした。

でも・・・ずっと・・・俺は待っていた気がする・・・

いつの頃からか、俺は自分の中の体内時計の音に気づいていた。
俺たち二人は・・・俺とユミンは、小さい頃から、気がつけばお互いの存在が当たり前で 
ほとんど一緒に育ったともいえる。
その頃から・・・いや、生れ落ちたその瞬間から、俺たちは来るべきX dayに向けて、歩いてきたような気がする。

お互いに出逢うために、生まれてくる・・・
・・・それって、ありかもな・・・

俺は、まるで時を刻む漏刻のような雨の音に耳を澄ませた。
なぁ、ユミン、お前には聞こえないか?このcount downの雨音が・・・

ちぇ!止まねぇな・・・
俺は、藤棚の下から、雨に煙る街並みを掠めた目で見渡した。
うじうじと、こんな所でいつまでも雨宿りなんかしてられるかよ!
俺は、意を決すると土砂降りの中に飛び出した。
たちまち、激しい雨に打たれて、全身びしょ濡れになる。
冷てぇーーー
一瞬、立ち止まるけど・・・
俺は、水溜りを蹴散らして、闇雲に走り出した。

そうだ、今はまだ、ただの無鉄砲な暴走でも・・・
立ち止まってるより、走り出したほうが、俺らしい。
土砂降りの街を、疾走する。

きっと・・・ずっと・・・永遠に・・・君の側にいるために・・・



***



あれ?雨か?
思わず足を止めて青く晴れ渡った空を見上げると、ぽつり、ぽつりと雨粒が陽気に舞い落ちてきた。

天気雨か・・・
俺は、青空から零れ落ちてくる雨粒たちを掌で受けながら、また歩き出した。
きらきらと降り注ぐ雨に、ここ数日の暑さに萎びていた構内の緑が、心なしか生き返ったように瑞々しく光った。
晴れ渡る空から、ここそこに零れ落ちる幾千の雨粒たち・・・

その光景に、思わず思い出し笑いが浮かぶ。
「降るのか、晴れるのか、はっきりしなさいよ」
かれんなら、そう言うかな・・・
空を見上げながら、そう憤るかれんのしかめっ面が思い浮かんだ。

Black or white
何事もはっきり決めたがるかれんの性格

でも・・・なぁ、かれん
このシュチュエーションって、まるで今の俺たちみたいだと思わないか?

sunny or rain
晴れか雨か・・・はっきりとは決められない今日の天気
青空から、雨粒なんて、どっちもありの、この天気は・・・
どこか今の俺たちに似ている・・・

そう、逢えなくて寂しい思いもするけれど、俺たちは確実に前へと進んでいる。
永遠に結ばれるその日に向かって・・・・

俺は、ぱらぱらと楽しげにアスファルトの降り注ぐ雨音を聞きながら、歩き続けた。
構内では、傘をさす人もいれば、濡れるのも気にせずに歩き続けるやつもいて・・

それに・・・
俺は、もう一度青空を見上げながら、雨粒で少し湿った髪をかきあげた。

それに、こういうと状況だからこそ、知り得たこともある。
かれんが、案外寂しがりやだったりすることや、人前ではめったに泣かないかれんが見せる一筋の涙や・・・

そう・・・かれんが俺にだけ見せるあの涙のわけは・・・
あのsurpriseの時にも、短い休暇の夜にも・・・
俺のgreenの目を見つめるかれんの瞳から、零れ落ちる真珠の雫
まるで・・・今日の天気雨のようだ
悲しいわけじゃない、やっと逢えた喜びだけでもない。
晴れた青空から降るこの雨のように・・・相反する想い・・・切なくて嬉しい・・・

お天気雨か・・・
俺は、もう一度青空を見上げて、目にかかる雨を手でぬぐった。

こんなふうに・・・かれんを想うだけで幸せな気持ちになるのに、やっぱりどこか涙の匂いが混じる俺たちだけど・・・
今日の天気のように、泣き笑いを繰り返しながらも、俺たちは明日へと近づいている。

俺には、聴こえているよ。
count downの足音が・・・

だから、俺たちは天気雨の中を歩き続けよう。

きっと・・・ずっと・・・永遠に・・・君の側にいるために・・・





(2009/7/20 MilkyWay@Yahoo UP)


 
 
 

IMX