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Milky Way Library
Milky Way Library(https://club.brokore.com/sunjyon)
「Hotelier」にインスパイアされた創作(written by orionn222)の世界です
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D&J


こちらは、ドンヒョク&ジニョンを中心としたお話の部屋です。
私なりに想像した二人のその後・・・というお話になります。 婚約時代から、結婚後、ファミリーのお話・・・とありますが、時系列がばらばらだったりして、読みにくい一面もあると思いますが、よろしければお付き合いくださいませ。
No 388 HIT数 1130
日付 2013/12/03 ハンドルネーム Library Staff
タイトル Sentimental journey (7)
本文
『 Sentimental journey (7) 』




「えっ!イ・ジュリssi!?」
ジニョンは思いがけないその名前に、一瞬言葉を失った。

「まぁ・・・その・なんだ・・お前がどうしても無理っていうんなら、誰か別の支配人でも・・・」
テジュンが、ぼそぼそと、くちごもりながら、伏せた目をちらっを上げてジニョンを盗み見た。

しばらくの沈黙の後、ジニョンはきっぱりと言い放った。
「問題ないわよ。テジュンssi、VIP担当の支配人は私ですもの。もちろん私が担当するわ。」
「そ、そうか・・いや、助かったよ。なんせ、シフトがタイトだし、いやーそうか、ジニョン、いや、ソ支配人」
急に饒舌になったテジュンに、ひとつ大きく頷くと、ジニョンは社長室を後にした。

バックヤードを足早に歩き、フロントに向かう。
制服に包んだ胸が微かに騒いだ。
それでも、道々にすれ違うホテリヤーたちと挨拶を交わしながら進むうちに、ジニョンの背筋は自然とすっと伸びてくる。
きりっと結い上げた髪に少し手をやり整えながら、ジニョンの心も少しずつ、平静を取り戻していった。
イ・ジュリが、今更、自分に何の用なのだろうと、怪訝に思う一方で、わざわざ、自分を指名するということは、
なんらかの意思表示なのだろうとも思う。
それがなんなのか、わからないけれど、そんな彼女の気持ちには、しっかりと向き合おうと思うジニョンだった。
こうして、フロントの前に立つころには、ジニョンはすっかり心からゲストを迎えるVI担当のソ支配人だった。

イ・ジュリはそこにいた。
大き目のサングラスをかけ、白いカーディガンを肩にふわりとかけ、シックなワンピースに身を包んでソファーに
ゆったと座るその姿は、スターのお忍びというよりは、強烈に「女優」という存在をアピールしているようにも見えた。
ジニョンは、ひとつ深く息を継ぎ心を整えると、にこやかに声をかけた。

「いらっしゃいませ。ソウルホテルにようこそ。」

ジニョンの言葉に、ジュリは、ゆっくりと顔を上げると、サングラス越しにジニョンをゆったりと見上げた。

「どうも、ソ支配人」

ジュリはそう答えると、おっとりとソファーから立ち上がった。

「お部屋にご案内いたします。」

ジニョンの笑顔に促されて、ジュリはピンヒールのかかとで歩き出した。

すれ違う多くのゲストたち・・・
腕を組み、明るい陽射しの庭を見ながらゆっくりと歩く老夫婦
結婚式の下見なのか、あちこちを指差しながら歩く若いカップル
賑やかに行きかう親子連れ、お見合いしたばかりなのか、少しぎこちなく並んで歩く男女の側を、足早に駆け抜けてゆく子供たち・・・
今日もソウルホテルは多くの人々の時間を包み込んで静かに息づいていた。

大勢の人でにぎわうエレベーターホールを抜け、広々とした中庭を横に見て、やがて、二人はそれぞれのヴィラに続く広いエントランスに差し掛かった。

「倒れたって聞いてたけれど・・・」

ジニョンの半歩後ろをいかにも女優らしい優雅な足取りで歩いていたジュリが、いきなり話しかけてきた。

「えっ?」

思わず振り向き足を止めたジニョンの顔を濃いサングラス越しに一瞥すると「元気そうね」
とそっけなく続けた。

「あ・・はい・・」

なんと答えたものかわからずジニョンがあいまいにそう返事すると、

「これでも、一応気がとがめていたのよ。根っからの悪女ってわけじゃないわよ。」と少しぎこちなく笑った。
その姿に、ジニョンは女優という仮面の下のジュリの素顔を見た気がした。

そのまま足を止めたジニョンをゆったりとした足取りで追い越すと、ジュリは外の日差しを受けてきらきらと輝く大きな一枚ガラスの前に立った。

「ね、覚えてる?」

ジュリがガラスの向こうに広がる青々とした芝生をバックにゆっくりと振り向くと、高い飾り天井を見上げながら口を開いた。

「昔、ここで映画祭があったこと」
 
・・・映画祭・・・・ああ・・そういえば・・・

ジニョンの脳裏にもう何年も前のあの華やかな一日がさあ・・と鮮やかに甦った。

街中を走る華やかなラッピングバス、煌びやかに飾り立てられたソウルホテルに、あでやかにドレスアップしたスターたちがあふれ、まさに、百家繚乱、豪華絢爛といった言葉がぴったりだったあのまぶしく目も眩むような芸術の祭典・・・

「私も参加していたのよ。あの映画祭に・・・」

そう言うとジュリは、少し自嘲めいた微笑を浮かべた。
ジュリssiが、あの映画祭に?

ジニョンは、目の前のジュリを見ながら、当時に思いを馳せた。
だとしたら・・・ジュリssiが、まだとても若い頃・・・新人女優さんとして参加されたのかしら・・・

そんな思い出すようなジニョンの視線を避けて、ジュリはくるりと後ろを向いた。
そして、窓の外の中庭の樹木の間から、かすかにその姿を見せるダイアモンドヴィラを、どこか探すような目で
静かに見渡しながら、「もっとも・・女優として、呼ばれたわけじゃないけれど・・」と小さく首をかしげた。

「あるイベントのプレゼンターのアシスタント役・・・」

そこで、少し笑うと「誰でもいい役よ・・・」とため息をひとつ淡くこぼした。
ジュリは、静かに窓際から離れると、もう一度高い飾り天井を見上げた。

「あの時・・・私、華やかな舞台の暗い袖で、ずっと見ていたの。まぶしいスポットライトを浴びて輝くスターを・・・
たった一人を照らし出すその明かりの下で嫣然と笑うスターたちを見ながら・・・そのとき誓ったのよ。いつか、私も必ず、あんなふうに、スポットライトを浴びて、あの場所に立って見せると・・」

「ジュリssi・・・」

まるで、舞台で告白を始めた主演女優を見るような思いでジニョンはジュリを見ていた。

「それが、私の夢」

・・・夢・・・

「でも・・・残念ながら、いまだに、夢はかなえられていないけれど・・・」

ジュリはほんの少しの間だけ、ジニョンと視線を合わせると、小さく笑ってそっと視線を外した。

「ひどい女だと思ってるんでしょうね。なんたってスキャンダルを捏造したんですものね・・」

ゆっくりとした動作でサングラスを外し、再び、高い天井を見上げて静かに語りだしたジュリの姿は、まるでカテドラルの告白のようにジニョンの心に響いた。

「今回の・・件を引き受けたのは・・・相手役がシン・ドンヒョクssiだったからかもね・・」

・・え?・・・それっていったい・・・どういう意味?・・・・

ジュリの思いがけない言葉を聞いて、ジニョンは一瞬戸惑った。

「もちろん、私なりの計算もあったわ。それは否定しない。今話題の人とスキャンダルをおこせば、世間の注目を集めることができる。少なくとも忘れられたままでいることはないわ・・・」

・・・忘れられたまま・・・

ジュリの言葉にジニョンの脳裏には、いつかレオが言った言葉が甦ってきた。

・・・『芸能人にとって一番怖いのはスキャンダルではなく、忘れられることだ』・・・

「結局・・私、どんな形でもいいから、大舞台でシン・ドンヒョクssiから、トロフィーをもらいたかったのかもね・・」

その言葉にふいにジニョンの脳裏にあの映画祭の記憶が甦った。
そういえば・・あのとき・・・ドンヒョクssiがなにかのプレゼンターを務めたとき、アシスタントとしてそこにいたのは・・もしかして・・・

「もっとも・・間違った形だったけれど」

ジュリの言葉がジニョンを今に引き戻した。

「記者会見を開くわ。そこで真実を話す。」

くるりと後ろを振り返るとジュリがきっぱりと言い切った。

「えっ・・でも・・そんなことをしたら・・」

「ええ。私の評判は地に堕ちるでしょうね。女優としては致命傷かもしれない。」

ぴたりとジニョンを見据えながら、ジュリはそう言い放った。

「でも、このままじゃ前に進めない。勝手な言い分かもしれないけれど、たとえ泥にまみれても、まっすぐ前を向いて歩いていきたいの。」

そこには、覚悟を決めた女優の姿があった。


「迷惑をかけたわね。ソ支配人」

そう言うと、ジュリはジニョンから視線を外し、またガラス窓の向こうに目をやった。

「いつか、埋め合わせをするわ。そうね・・・私が主演女優賞でももらったら、このソウルホテルでパーティーを開いてあげる。」

髪を優雅にかきあげながら、ジュリはあでやかに微笑んだ。

「それが、今の私の夢よ。」

そう言うと、鮮やかにきびすを返し、ジュリはまっすぐに背筋を伸ばして歩き出した。
そのいさぎよい背中を見送りながら、ジニョンは、ようやくすべての幕が下りたことを感じていた。

やがて、イ・ジュリは会見を開いた。

多くのマスコミが詰め掛ける中で、彼女は、すべては仕組まれたスキャンダルであったことを告白し、自分もその企みに加わったことを認めた。

ジュリはこの件の黒幕を口にはしなかったが、週刊誌や雑誌の誌上にイ・ウォンソクという名前が何度も取り上げられた。

それから、何年か後に、イ・ウォンソクは巨額の脱税容疑で逮捕された。内部告発だといううわさだったが、
ジニョンはこの一件に、ドンヒョクの冷徹なビジネスマンとしての影を感じていた。
続く捜査で特別背任の罪を受けたイ・ウォンソクは大きな痛手をこうむりビジネスマンとしての致命傷を負った。


その一方で・・・芸能界という世界は本当に不思議なものだ。
イ・ジュリはやれ、稀代の悪女だ、したたかで計算高い女だと、激しいバッシングを受け一時は女優生命も危うく見えたが、どうしたものかTVや映画から多くのオファーが殺到した。
ジュリは世間の批判など気にも留めずに、なりふりかまわず、どんな役にも取り組んだ。自ら犯罪者の役や汚れ役にも果敢に取り組み、着実に実力を発揮していった。

やがて、その演技力がだんだんと世間に認められ、ジュリはスターへの階段を確実に登っていった。そして、まぶしいスポットライトの当たる場所へと躍り出ていった。

そして、イ・ジュリは今では韓国一の演技派女優だ。

気の強い女性上司、不倫に悩む人妻、冷酷な殺人犯、下町のアジュマから、歴史上の女王、コメディエンヌや
滋味あふれる母親役まで完璧に演じ何度も賞を受賞した。

その受賞パーティーが幾度もソウルホテルで華やかに開かれたのはいうまでもない。
今では、イ・ジュリはソウルホテルの超特待VIPだ。


あの人は、夢をかなえたのね・・・

ジニョンとの約束どおり、イ・ジュリの初めての受賞を祝うパーティーがソウルホテルで開かれたとき、ジニョンは、華やかなパーティー会場のバックヤードから、まばゆいスポットライトの真ん中に立ち満場の拍手を受けるイ・ジュリの姿を静かに称えた。



あれから、また幾度もの季節が巡り・・・そして、今・・・

流れる川の水面で溢れる日差しが弾け、きらきらと踊る川沿いのカフェで、微風に髪をなでられながら、思う存分スイーツを堪能したジニョンはジェイとドンヒョクの帰りを待っていた。

目の前では、かれんが食傷気味にアイスティーを口にしている。
そのとき、店の入り口にジェイの姿が見えた。





(2013/3/30 MilkyWay@Yahoo UP  Sentimental journey 27・28・29・30 )


 
 
 

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