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Milky Way Library
Milky Way Library(https://club.brokore.com/sunjyon)
「Hotelier」にインスパイアされた創作(written by orionn222)の世界です
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D&J


こちらは、ドンヒョク&ジニョンを中心としたお話の部屋です。
私なりに想像した二人のその後・・・というお話になります。 婚約時代から、結婚後、ファミリーのお話・・・とありますが、時系列がばらばらだったりして、読みにくい一面もあると思いますが、よろしければお付き合いくださいませ。
No 389 HIT数 856
日付 2014/06/14 ハンドルネーム Library Staff
タイトル Sentimental journey (8)
本文

『 Sentimental journey (8) 』




「ジェイ、ここよ」

ジニョンが軽く手をあげて、ジェイに合図を送った。

「こんなとこにいたのかよ。」

携帯で店を知らされたジェイは、そのラブリーな店内に少し怯みながら、居心地悪そうに席に着いた。

「あら?ドンヒョクssiは?」

ジニョンは店の入り口を伺うように見ながら、ジェイに聞いた。

「あー、父さんなら、なんか、大学で会った女の子となんか話があるみたいだったから、俺だけ先に・・」

ジェイがそこまで言うと、ジニョンが驚いたように声をあげた。

「えーー!?ドンヒョクssi、女子大生にナンパされたのーー!!」

「ち、ちげーよ!!」

ジェイが慌てて、ジニョンを制した。

「ちょっと、ジェイ、わかるように説明しなさい。」

かれんが、アイスティーから口を離すと、じろりとジェイを睨みながら言った。


「だ、だから・・・今年入学した・・えっと・・名前はなんだったかな・・えーーそうだ、エマ、確か・・エマ・ジェイムズ・・・いや、ジョンソンだったかな・・とにかく、その子に校内で声をかけられたんだよ。」

「なんで、その子は父さんに声をかけたのよ?」

かれんがジェイの要領を得ない説明にじれて、先を促した。

「俺も、以前いきなり声かけられてびっくりしたんだけど・・」

「ジェイもナンパされたの?!」

ジニョンがまた驚いたように声をあげた。

「だから、違うって!!なんでも東部の大きなホテルチェーンの孫娘だとか・・歳は・・俺より1個下かな・・・いや、もっと若かったかな・・あーーリックssiみたいに飛び級で入学してたらわかんねーよ。
とにかく、実家がそんなだから、ホテルの仕事にいろいろ詳しくて、なんか、前々から父さんの仕事に興味が
あったらしくて、ネットとか雑誌でよく調べてたんだって。
で、まあ、大学に入って俺を見たとき、顔が似てたから父さんの息子だってすぐわかったんだろうな・・それで、声かけられて・・・まぁ、そんな話をして・・それで、今回、本物のフランク・シンに会えたから、少しお話してもいいですか・・って事になって・・」

「それで?・・・」

ジニョンは、まだどこか疑わしそうに聞き返した。

「なんか、二人して難しそうな話が始まりそうだったから、お先に失礼してきた」

「ふぅーん、あんたと違って頭がいい子なのね。だから二人の話についていけないと判断して逃げ出してきたってわけね。」

「うっ・・・」

かれんが、冷静に状況を分析すると、「あーーよかった。ドンヒョクssiが女子大生にナンパされたのかと、
びっくりしたじゃないーー」とジニョンが無邪気な笑顔を見せた。


・・母さん・・・女子大生にナンパって・・・マジでそう思ったのかよ・・

ジェイの零した淡いため息がふわふわと漂い、店内を踊る光の粒に溶け込んだ。

そのころ・・・

ドンヒョクは、エマ・ジョンソンと名乗った女子大生と一緒にハーバードの校内を歩いていた。

すでにビジネス界において確固たる地位を築いているドンヒョクにとって、こんなふうに、声をかけられることは、それほど珍しいことではなかった。
だが、ドンヒョクがその相手と一緒にその後を過ごすことは、これまでにはなかった。


「もし、よろしかったら、少しのお時間でいいですから、お話できませんか?」

そう、遠慮がちなエマの誘いを受けて、柔らかな日差しの中、二人は歩き出したのだ。

まだどこか少女の面影を残したエマの少し緊張した横顔を、ドンヒョクはちらりと見た。

「本当にすみません。いきなり声をかけたりして・・・息子さんとご一緒だったのに、ご迷惑じゃなかったですか?」

そう、ドンヒョクを見上げたエマの顔を見たドンヒョクの口から思わず

「・・・アリス・・・」

という言葉が零れ落ちた。

エマは一瞬、胸に抱えた数冊の本をぎゅっと抱きしめると、ドンヒョクを見上げ足を止めた。

「うれしい・・母のこと、覚えていてくれたんですね。」

「・・・母・・・」

「ええ・・私の母は、アリス・ジョンソンです。」


・・・君は、アリスの・・娘・・・

一瞬足を止めたドンヒョクは、うれしそうに微笑むエマの顔に目をやった。

そこには、かつてこの校内を一緒に歩いたアリスの笑顔が隠れていた。

「私と母・・そっくりだってよく言われていましたから。そういえば、あなたと息子さんもそっくりですね。
だから、大学に入学して息子さんを見たとき、もしかしてって・・声をかけたんです。
・・・それで、今日もずうずうしくも声をかけてしまって・・・」

「アリスは・・・元気ですか?」

ドンヒョクの問いに、エマはふっと目を伏せた。

「母は・・・亡くなりました。八年前に・・・」

亡くなった・・・アリスが・・・

ドンヒョクは、言葉を失った。

「遺伝子疾患の難病で・・・発覚したときにはもう手遅れでした。それでも、母はすべてを受け入れ、残りの日々を悲嘆することなく明るく生き抜き、穏やかに死を迎えました。母は私の誇りです。」

そういうと、エマは一度だけ、ぎゅっと目を閉じると、また明るい笑顔をドンヒョクに向けた。
微かに悲しみが秘められたその笑顔はドンヒョクの知るアリスによく似ていた。


アリス・・・君はもういないのか・・

ドンヒョクの胸の中を、うつろな哀しみが乾いた風のように吹き抜けていった。
・・・八年前・・・


ドンヒョクは、ゆっくりと記憶を辿っていた。

あのころ・・・確か僕は東部一のホテルチェーン・・・アリシア・ホテルグループの買収に躍起になっていた。
あのホテルグループの会長・・チャールズ・ジョンソンと火花を散らした戦いの真っ最中だった・・

やったら、やり返す。やられては、また策を弄する。

そんな、泥沼のような消耗戦の最中、ジニョンが倒れた。

それを期に、すべての契約を破棄し、一切手を引いた。どんな報復があるかと、向こうの出方を伺っていたが・・・結局、何も起こらなかった。

あのとき・・・ジョンソンssiとの不毛な争いを終わらせてくれたのは・・・アリス・・・もしかして、君だったのか・・・


黙り込んだドンヒョクに歩調をあわせて歩きながら、エマがゆっくりと語りだした。


「どうして、私があなたを知っていたのか不思議に思っているでしょうね。」

エマが、遠い昔を思い出すように、空の彼方に目をやった。


「昔、子供のころ、あなたの写真を見たことがあったんです。
母が大切にしまっていた古いセピア色の写真でした。
『この人、だあれ?』って聞いた私に、母は、懐かしそうに微笑みながら、『私が愛した、たった一人の人よ』って
答えて・・・その時は、幼すぎてよく意味がわからなかったんですけれど、そのときの母の透き通るような微笑がずっと心に残っていて・・・
母が 亡くなった後、遺品を整理していたら、その写真がでてきたんです。
それで・・ずっと気になっていたんです。あなたが誰なのか。

ハーバードに入って驚きました、あの写真にそっくりなひとがいる。思わず声をかけてしまいました。
シン・ジェウォン君・・・ジェイ君はあなたの息子さんだったんですね。
あなたのこといろいろ調べさせていただきました。
フランク・シン・・・シン・ドンヒョクssiは・・・ハーバードで母と同窓だったんですね。」


ドンヒョクは、ゆっくりと頷いた。

エマは、そんなドンヒョクを見て、穏やかに微笑んだ。なにもかも、理解したような笑顔だった。
そしてまた、静かに語りだした。

「母はシングルマザーでした。」


ドンヒョクの胸をまた乾いた風が吹き抜けていった。

アリス・・君はまた悲しい恋をしたのだろうか・・

「父とは結婚という形をとらずにいました。
幼かったので、あまりよく覚えていませんが時折訪ねてきては何日か一緒に過ごす・・という感じでした。
あの人とは同志みたいな関係だからって母は笑っていました。

お互い、一番愛する人と結ばれなかった同志だと・・

ええ父も亡くなりました。まだ私が幼いころでした。事故だという話でしたが、母いわく一種の自殺だと・・

唯一無二の愛する人を失ってあの人は毎日毎日少しずつ死んでいったようだと・・母は言っていました。
父は・・あなたと同じ、韓国系のアメリカ人でした。もしかして母は、どこかあなたの面影を探していたのかもしれません・・」

そこで言葉を切ると、エマは「すみません。こんな話をしてご迷惑かもしれませんが・・・」とドンヒョクを見上げた。

「いえ・・・」

ドンヒョクは、静かに首をふった。

「ありがとうございます。やっぱり・・・母のこと、知っておいてほしいと思って・・」

そうドンヒョクに断ると話を続けた。


「父は画家志望でした。イラストレーターのような仕事をしていたそうですが・・・結局画家としては大成しなかったようです。
何でも生涯に一枚しか絵を仕上げなかったと・・・

母が笑って教えてくれました。母をモデルに描いた絵なのに、出来上がってみたらまったくの別人だったと。」

そうエマは小さく笑った。

「私が覚えている父は、絵の具の匂いをさせた穏やかな笑顔をした繊細な人・・・という姿です。
幼心にも、儚げで、どこかこの世の人ではないような・・そんな気がしていました。今となってはもう・・・輪郭だけしか思い出せないけれど・・・
でも、いつも私に絵本を読んでくれたあの温かな声だけはしっかりとこの耳に残っているんです。
そして・・これだけはわかっているんです。母との関係がどうであっても、父は娘として私を確かに愛してくれていたって・・」

エマは、大きな樹の下で足を止めると、その高い梢をまぶしそうに見上げた。

ドンヒョクとエマの間を、漣のように静かに時間が流れた。


「今、君は?」

ドンヒョクは、静かに問いかけた。

エマは、にっこりと微笑んだ。

「祖父と一緒に暮らしています。祖父はチャールズ・ジョンソンといってかつては東部一のホテルチェーンのオーナーでした。豪腕で知られたビジネスマンで・・・
母の離婚以来母と祖父は長い間絶縁状態だったようで・・病気になっても、母は祖父の援助を決して受けようとはしなかったんです。
病気のこともちゃんと伝えていなかったようで・・・・あのころは、祖父も勝手にシングルマザーになった母を頑なに拒んでいましたから・・

でも、祖父とは母の死をきっかけに和解しました。祖父は、母の死がとてもショックだったと思います。

覚えておいででしょうか。ジーン・ゴーウェン・・・ええ、ハーバードで一緒だった・・母の唯一とも言える友達でした。私のことも、とってもかわいがってくださって・・

そのジーンおばさまが親身になって間を取り持ってくれました。」


ジーン・・アリス・・ドンヒョクの胸の中を懐かしい面影が走馬灯のように駆け抜けた。


「今では私が祖父の唯一の生きがいのようです。

祖父はホテルの事業からは一線を退きましたが、今でも精力的にメッセやフィランソロピーに取り組んでいます。母を奪った難病支援や苦学生の支援に情熱を傾けています。

きっと・・祖父も後悔していたんだと思います。自分の生き方を母に押し付けたことを・・

そのせいで、母を不幸にしてしまったと思っているようです。」


エマは、高い梢から目を離すと、そっとその木肌に触れながら、ドンヒョクを見た。

「でも、私はそうは思いません。」

きっぱりとそう言い切った。

「確かに、私たちは母と娘として過ごした時間は短かったかもしれませんが・・私たちは幸せな親子でした。

母はずっとずっと私に愛を伝えてくれました。愛しているわ。あなたに出会えてよかった。

エマ、あなたに会うために私は生まれてきたのよ・・・あなたを生むために私は生きたのよって・・私は、自分が愛されてこの世に生まれてきたこと、愛されるべき人間であることを、母からしっかりと教わりました。
短い人生だったかもしれませんが、母は決して不幸ではなかったと私は思います。」

エマのその言葉に、ドンヒョクも穏やかに頷いた。

「母はもういませんが・・・寂しくはありません。だって、鏡を見れば、母に会えるんですもの。
それほど、私と母はよく似ているんです。もっとも瞳のcolorだけは父譲りだそうですけれど・・
それだけでも、私の中には、確かに父と母が息づいているんです。だから、私は大丈夫です。
この先もしっかりと生きていけます。この中に、両親の愛を携えて・・」

そう言うと、エマは自分の胸をぎゅっと抱きしめ、微笑んだ。


「そうそう、さっき言っていた父が生涯で一枚だけ書き上げた絵が、この街のどこかのお店に飾ってあるという話も聞きました。
もう何十年の前のことですから、本当かどうかわかりませんが、ゆっくりと探してみたいと思っているんです。」


そう言うとエマは悪戯っぽく笑った。

その後、アリスによく似た柔らかな微笑みを見せて、ドンヒョクと握手をした。

「今日は、本当にありがとうございました。これも母の導きかしら・・」

そう瞳をきらめかして、明るく微笑んだエマの中に、確かにアリスがいた。

アリスによく似たエマの後ろ姿を見送りながら、ドンヒョクは晴れ渡った空を見上げた。


・・・神様の宿題・・・

不意にドンヒョクの脳裏に、昔ジェイによく読んでやった絵本のタイトルが浮かんだ。

人は、みな、神様からの宿題を携えてこの世に生まれてくる・・・


ドンヒョクは遥かな空の彼方を見上げた。

アリス・・

ドンヒョクは、空の彼方に語りかけた。

アリス・・・君は、神様からの宿題をきっちりとやり遂げたんだね・・・

アリス・・・君は幸せだったんだね・・・


澄み渡った高く青い空に向かって、梢がさわさわとその身を揺らしていた。

透き通るようなアリスの微笑みが、ふわりと浮かびあがり、さぁ・・と風に揺れる梢の中に溶け込んでいった。


ドンヒョクは、アリスの面影を静かに見送ると、エマの優しい笑顔をそっと胸に刻んだ。

あの高い空で揺れる梢色をした、深く濃い緑に輝く瞳に彩られたエマの笑顔を・・・




(2013/5/5 MilkyWay@Yahoo UP  Sentimental journey 31・32・33・34・35 )







 
 
 

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