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Milky Way Library
Milky Way Library(https://club.brokore.com/sunjyon)
「Hotelier」にインスパイアされた創作(written by orionn222)の世界です
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恋の雫
No 6 HIT数 985
日付 2009/03/13 ハンドルネーム Library Staff
タイトル cafe chocolat on Wednesday
本文
            『cafe chocolat on Wednesday』




今日は水曜日

本日の日替わり珈琲はコロンビア  

まろやかな酸味と甘い香りが、週半ばには、ぴったりじゃないかしら


今日も早起きをしてしまったけれど、昨日よりも気持ちが軽い
なんだか、ふわふわと心が浮き立って、レモンスカッシュの中の炭酸みたいに、小さく泡が弾けている。

私は、掃除を終えた店内を見渡した。
さぁ、今日も忙しい一日の始まり
彼も・・・ジノssiも、きっとまた忙しい朝を迎えているのでしょうね

お互い、そんな忙しい一日の終わりに・・・・


カララン・・・コロロン・・・

軽やかに鳴るドアチャイムの音に、はっと我に返る。

ほら、お客様よ。
しっかりして、美尋・・・
すぅ・・・と深呼吸を一つして、私はお客様をお迎えする。

「いらっしゃいませ、ヒロにようこそ」


そして・・・

忙しく立ち働きながらも、ずっと頭のどこかにジノssiの事がある。
夕暮れを迎えるあたりからまた、なんだか、そわそわと心が泡だってきた。

最後のお客様・・・ご近所に住むお話好きの老婦人・・をお見送りして、ドアをぱたん・・と閉じると、
私は誰もいなくなった店内を見渡した。

きっと・・・・もうすぐ・・ジノssiは来てくれる・・・・

今日も忙しい一日を終えて、疲れているだろう彼の為に、飛び切り美味しい珈琲を淹れて待っていよう。

私はミルで丁寧に豆を挽きはじめた。
やがて、あたりに芳しい珈琲の香りが満ちてきて・・・・・

カララン・・・コロロン・・・

ドアチャイムが鳴った。

「こんばんは」
ジノssiがドアを開けて笑顔を見せた。

「いらっしゃいませ」


落ち着いて!私の心臓!
私は高鳴る胸の動悸を静めるように、深く息を吸った。


「日替わり珈琲でよろしいですか?」

私のちょっと・・・うわずった問いかけにジノssiは微笑みで答えると、カウンターの・・いつもの席に座った。

私はすでに香ばしい湯気を立てている珈琲をカップに注いで、ジノssiの前に置いた。
ジノssiは、にっこりと微笑むと「ありがとう」と、カップを手にした。
そして、優雅な手つきでゆっくりと口に運んだ。

「やっぱりここの珈琲が一番だな」
今日も、そう言ってくれた。

嬉しいけれど、なんだか申し訳ない。

「ありがとうございます・・・でも、まだまだ祖父にはかないません。」

ジノssiは、ちょっと目を細めて私に聞いた。

「大変でしょう?一人でこの店を切り盛りするのは・・・」
「アルバイトの子もいますから・・・・確かに常連さんを満足させるのは、大変です。ずっと店を手伝ってはいたんですけど・・」

「ずっと?」
「ええ・・私この店で育ったんです。」

「この店で?」
「お祖父ちゃん子の私は、ここが大好きで学校が終ってもまっすぐ家には帰らず、毎日ここへ寄り道していたんです。
怒られてもいう事を聞かなくて・・・そのうち、両親も祖父も諦めて黙認してくれるようになりました。」

「学校って・・・中学校?」
「いえ・・・小学校です。」

「小学生が下校途中に喫茶店に寄り道か・・・カッコイイな。僕も真似すればよかった。」
「通学鞄を持ったまま堂々と・・・」

二人して笑い出してしまった。

「高校生になる頃には、祖父の手伝いをしてカウンターにも立つようになったんですけれど・・・
なかなか祖父のようには上手く淹れられません。」
「そうかな・・・僕はとっても美味しいと思うけれど・・でも・・」

「でも?」
急に不安になって問い返した。

「でも、珈琲の味だけじゃなく、ここは特別な雰囲気がある。
なんていうか・・・人を惹き付ける何か・・・ふわっと漂う珈琲の香りに包まれていると、心が癒されるような気がするし、とても落ち着く。
自分を取り戻せる時間を与えてくれるように思えるな。」

ジノssiの真摯な口調に息苦しいほど胸がざわめいた。

「祖父が・・・きっと祖父が、そんな店に作り上げたんだと思います。」

ジノssiの持つ柔らかで誠実な雰囲気に、つい私も心のうちを語ってしまいたくなる。

「私がずっとこのお店が好きだったのも、幼いながらもそんな風に感じていたからかもしれません。
まだ珈琲も飲めないのに、ただここにこうして座っているだけで、楽しかった。

美味しそうな香りに包まれて、カウンターで珈琲を淹れる祖父の姿を飽きずにずっと見ていました。
カウンター席には、毎日いろんなお客様がいらっしゃいます。

そんな客様のお話を・・・楽しいお話から、辛い想い出や悩み事、悲しい涙やたくさんの笑い声や・・・
そんなのを聞くともなく聞いて育ちました。

でも、いつも不思議でした。
祖父はいつも皆の話すことを、ただ黙って聞いているだけなんです。
穏やかに微笑んで聞きながら、薫り高い珈琲をお出しする。
ただ、それだけなのに・・・

でも、そうすると、どんなお客様も・・・笑ったり泣いたり悩んだり悔やんだり・・・・していたお客様も、
美味しそうに珈琲を召し上がって、皆満ち足りた顔をして帰っていかれる。

それが子供ながら、とっても不思議でした。
でも、きっとそれがこのお店の魅力なんでしょうね・・・」


「・・・そうだね・・・」
ジノssiが深いため息をついた。

「その魅力は、ちゃんと美尋ssiに受け継がれているんだね。」

えっ?・・・・

一瞬私達は見つめあった。
その時、壁の時計が刻を告げた。

「今日もこんなに遅くまですみません・・・」
「いえ・・」

「そうそう、これをかいておかないと・・・」
ジノssiはそう言うと、バッグから例のスケジュール帖を取り出した。

「今日も美味しい珈琲と・・・楽しい時間が持てたから・・・」

そう言いながら、ジノssiは今日の日付のところに、可愛らしい珈琲カップを描いた。

美味しい珈琲と楽しい時間・・・・
私の心の中は、その言葉で一杯になっていた。

「それじゃ、また明日。」

そう席を立つジノssiを、渦巻く胸の高鳴りを押さえてお見送りする。

ええ・・・また明日・・・
そう心の中で、呟きながら・・・

こうして私達の水曜日が終った。





                                                              to be continued




(2007/05/02 Milky WayUP)

 
 
 

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