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書き込み |
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No |
9 |
HIT数 |
1014 |
日付 |
2009/03/13 |
ハンドルネーム |
Library Staff |
タイトル |
cafe chocolat on Saturday |
本文 |
『cafe chocolat on
Saturday』
今日は土曜日
本日の日替わり珈琲はブラジル
適度な酸味とソフトな風合いが週末の土曜日には適していると思うの。
今朝も早くに目が覚めた。
浅い眠りの後で、いろんな想いが交錯して、なんとなく心が落ち着かない。
結局今日も、こんなに早くお店に来てしまった。
あの写真集を手に・・・・
「空の写真館 photo
by
チャン・ジノ」
私は、夕べからもう何度も見た写真集をまた見返していた。
朧に霞む春空・・・入道雲の湧き立つ夏空・・・抜けるような透き通った秋空・・・凍て付いた冬の夜空にかかる三日月・・・
どれも、心に残る写真ばかりだ・・・
ふぅ・・・・
私は、カウンターに座ってぱらぱらとページを捲りながら、自分の為に珈琲を淹れ始めた。
今日の日替わり珈琲はブラジル
少し濃い目に淹れてすっきりと頭を冴え渡らせて、一日を始めなきゃ・・・
熱い湯気を上げている珈琲をカップに注いで、ことん・・とカウンターの上に置く。
私は少し躊躇いながら、いつもジノssiが座っている席にそっと腰を下ろした。
ただの席なのに・・・・他のお客様も座ることがあるのに・・・
私の中では、すっかりジノssiの指定席のようになってしまっている。
椅子に座ると、どことなくジノssiのぬくもりが残っているようで、ほわっと体が温かくなった。
カップに口をつけようとしたその時
カララン・・・コロロン・・
いきなりチャイムが響いてドアが開いた。
そこには・・・
ジノssi!!
私はカップを手にしたまま、驚いて目を見開いた。
「ごめん・・・まだ開いてませんよね」 「あ・・・あの・・・ど、どうぞ・・」
私は慌ててカップを置くと席を立ち、カウンターの上にあった写真集を厨房の棚に隠した。
「今日は今からロケで、ちょっと遠出するので遅くなりそうなんだ。」 「あ・・ええ・・・」
「いつもの時間にはこれないと思ったので・・もしかしたら前みたいに開いているかなと思って、寄ってみたんだけど、開いていて良かった。」 「あの・・ええ・・」
「実は、明日も一日中ロケで・・・」 「・・・ええ・・・・」
カウンターの前に立ったまま、そういい募るジノssiに、なんて返事していいのか分らない。
ジノssiは、ちょっと息を継ぐと、ふとカウンターの上にある珈琲に目を落とした。
「これ、日替わり珈琲ですか?」 「・・え、・ええ・・・」
「貰ってもいいかな」 「えっ?」
「日替わり珈琲を制覇しないと、クーポン券がゲットできない」
ちょっと悪戯っぽい口調でジノssiはそう言うと、私に目で了承を求めた。
「あ・・ど、どうぞ」 「それじゃ、遠慮なく」
ジノssiは、カップを取り上げると、立ったまま珈琲を口にした。
「うん、美味しい。朝に飲む珈琲もなかなかいいな。」
そう言って、珈琲を飲み干すと「これで、今日の過酷なロケもなんとか乗り切れそうだ。」と、爽やかに笑った。
「デリバリーをやってましたよね!」 「はっ?」
いきなりそう言われて、言葉に詰まる。
「ほら、昨日は、弟さんの所へ珈琲をデリバリーしたでしょう?」 「あ・・えっと・・・そうですが・・・」
「じゃ、明日珈琲のデリバリーをお願いします。」 「えっ?あの・・・」
「こちらの都合のいい時間でいいです。車を寄越しますね。 カップなんかはこっちで用意するから、美尋ssiは珈琲だけ持って来てくれればいい。大体・・そうだな、30名分くらい・・」
「あ・・えっと・・その・・」 「何時くらいがいいかな?」
「あ・・・えっと・・それじゃ・・4時くらいなら・・・」 「OK!これで、決まりだ。」
ジノssiは、そう言うと、慌しくドアのほうへ向かった。 レジを済ますと、ふとドアの手前で足を止め振り返る。
「明日の珈琲、美尋ssiが持ってきてくださいよ。絶対」 「あ・・はい。」
「それじゃ、遠慮なく特別料金を請求して下さいね。」 「あ・・いえ・・それは・・・」
「もっとも・・・美尋ssiの珈琲はいつも特別だけど・・・」
そう微笑むと、ジノssiは軽やかな笑い声を残して、ドアを開けた。
「おーい、ジノーーー」
声のする方を見ると、路上に止められた大きなロケバスの窓からいくつもの好奇の目が覗いていた。
「先輩――――、早くしないと遅れちゃいますよーー」 「へぇ・・ジノの奴、こんな所に彼女を隠してたのか!」
「お安くないですよーー」 「うわーー美人だーーー!!羨ましいっす!先輩―――」
「くーーージノーーー!いちゃいちゃしてると置いてくぞーー!!」
口々にかけられるからかいの声に、ジノssiは頭をかきながら「すみません、口は悪いけど、気のいい奴らなんです。」と苦笑をもらした。
「それじゃ、明日、待っています。」
そう言い残すと、騒々しく続くからかいの嵐の中、バスへと走っていった。
・・・特別なのは珈琲だけですか・・・・
遠ざかっていく大きな背中に問いかける。
私の胸にときめきと切なさと・・淡い期待を印してジノssiは去っていった。
こうして、私達の土曜日が始まった。
to
be continued
(2007/05/05 Milky WayUP) |
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