「ヨン妻番外編・Ａ型の彼女たち」



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「何のためにこの報道をするのか？

その目的をしっかり考えれば自然と答えは出るはずよ。

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「先輩は記者魂と義理人情、

どちらか、選ばないといけない時があったら、

どっちを選びますか？」と、　　　　　　　　　　　　　

こちらからメールを出しながら 返信がくるのがこわかった。



この質問を先輩に幾度したことか。

報道という命題の前に 私には情という壁がいつも立ちはだかる 。

一度壊してもそれはまた 色を変え形を変え、 私を報道記者のフィールドから

 情に泣くひとりの傍観者へ追いやる 。

そのたび先輩に泣きつき、 時には冷静な先輩にひどい言葉で八つ当たりした。



「 先輩には情がないんですか?」

「なぜ悲しみにくれる人に取材できるんですか?」

「どうしてそこまで冷静なんですか?先輩ってそれでも女なの？」



私の問いに（ 罵倒か?）

先輩はいつも静かに答えた。

「真実はどこにあるかを見極めろ」と

そう話す先輩の凛とした目が、当時の私には憧れだった。と同時にこわかった。

ねえ 里子先輩…

私はやっぱりいつまでたっても 先輩を越えられそうにありません…

ノートパソを開けて、歌島さんにメールの返信を打つ。



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歌島様

先日よりご依頼の情報提供の件、正式にお受けします

まとまり次第送付いたします  



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…送信をクリックする指がかすかに震えた。



ノートパソコンをパタンと閉じると同時に私は、

何か忘れ物をしたような感覚に陥った。

なんだっけ?パタンと閉じる瞬間 みさちゃんの顔が浮かんだ…

…そうか！さっきドアをノックして

「ちょっといい?」て言ってたな。

私なんて答えたかな? ひとつのことに集中すると、

他がどうでも良くなるわたしのことだ。

きっといい加減な返事をしたんだろう。

行って謝ってこよう… 



部屋に行く途中中庭をふと見ると、

みさちゃんがしゃがんで赤くなったフルーツトマトを見つめていた。

みさちゃん！と声をかけようとしたけど、

何だかその横顔がそれと同時に消えてしまいそうな気がして

 中庭に出てそっとみさちゃんの横に私もしゃがんだ 。

「あ、京子ちゃん…」

「ごめん さっきうちに来たでしょ?」

「うん いいの 忙しそうだから」

「何よ 何か用事なんでしょ?」

「ううん そういうわけじゃ…」

「どうした?なんか暗いよ、まさかヨンジュンさんと喧嘩でも？」

「そんなことないよ・・」



「何話してるの?」

頭上から声がして、瞬間みさちゃんと二人で飛び上がるように立ち上がった。

振り向かなくてもわかってる。



私は振り向くタイミングを、わざとみさちゃんより遅らせて振り返った。

だってみさちゃんと同時に振り返ると、

その声の主はみさちゃんにまず微笑んだ後で、

私に視線をむけるとわかっているから。 

その順番にチクッと傷つくのを無意識に避ける習慣が、いつの間にか身に付いた。

私はそうしてみさちゃんより少し後に振り返り、その人に会釈する。

「ヨンジュンさん おかえりなさい」

「ええ ただいま。何か深刻そうに話してませんでしたか?」

「そんな風に見えましたか?トマトの葉っぱに虫がついてないか見てただけですよ」

咄嗟に嘘をつく。

「そうですか」とみさちゃんに視線をうつすヨンジュンさん。

ありゃ、みさちゃん、joonの視線はずしちゃったよ。

どうなってんだ？この二人・・

頭の中のメモ帳にチェックマークをつける。



「今日は乗馬の?」

「いえ、今日は台本の読み合わせでした」

「わあ、台本の!家族みんなほんとに楽しみにしています。

　 順調に撮影が進めばいいですね」

「ええ、そうなるよう努力します」

「やだな、わかってますよ あなたが努力してるのは。

　たまにはサボって欲しいとさえ思います」

joonがクックッと笑うので、三人でクスクス笑った。



私は二人にじゃあねと挨拶して部屋に戻った。

挨拶した後は絶対に後ろを振り向いちゃいけない。

だって、すぐにみさちゃんに微笑みかける、

あの美しい横顔に胸がキュンと悲しくなるから。

もう一度あの綺麗な鼻筋を見たい衝動を抑えながら歩いていると

不意に誰かに腕を捕まえられて ドアの中に引き込まれた。

「わわ! な、なに～?moonさんか～ びっくりするやんか～」

「か、堪忍え～ いま、よんじゅんさんと話してたやろ？

　なんか言うてはった？」

「へ?何を?今日は台本の読み合わせだったって話しかしてないよ 」

「そうなん?そやかてきのうの指輪・・

ヨンジュンさんに誰のか聞くって言ってたやん」

「moonさん、わかってないな～そんなこと、みさちゃんの前で聞けないよ」

「・・てことは京子ちゃんも私と同じ事考えてるん？」

「うん、たぶんね」

「joonに限って、そんなことないと思うんやけど・・」

「moonさんってば、joonだって男なんだよ～。

　もしかしてインスが抜けきってないのかも」

「ち、ちょっとぉ京子ちゃん～なんやしらんけど、

　目つきが悪ぅなってるんやけど・・」

「え？そう？ご、ゴホン！！」



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急に目つきの変わった京子を見て、不安になるmoonさん。



どうするの？どうなるの～～？！！



***************TO BE CONTINUED!!**********************