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B.S.J.
B.S.J.(https://club.brokore.com/bsj)
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四月の雪せつなさ大賞!
四月の雪せつなさ大賞!
No 11 HIT数 2076
日付 2005/04/22 ハンドルネーム ottokke
タイトル 薬局にて・・・・・
本文 ヨロブンアンニョンはせよ~
それでは私もいかせていただきます。
どぞ、よろしくお願いします。
ちなみにまじめに書きました(ほんとうよ!)




ものすごく狭い空間で息をしている感覚に似ている。
頭の中はとりとめのないことばかりが絶え間なく浮かんでは消え、浮かんでは消えていた。
自分の意識とは全くかけ離れた所で・・・
真っ白になれば、真っ白にさえなれば眠ることができるのに、
頭のグルグルと廻る妙な感覚が止まらない為に、
今日も長くて、暗い夜を過ごしていた。
そして、目を開けているか開けていないかわからないほどの闇の中で
色々な音が闇を行き来する。サイレンの音。車のドアがばたんと大きくしまる音。
病院の看護士のせわしなくよぎる足音。妻にとりつけられた様々な生命維持装置の無表情な音・・・・・・・・・
それらが病院をはなれてもなお、頭から離れないのだ。

自分の置かれた境遇を考えると気が遠くなった。現実にはそんな心境にはおかまい無しにあらゆる「片付け事」が押し寄せてくる。毎日毎日ベルトコンベアーに載せてこられる機械にねじを取り付けるように、あらゆる後処理手続きをして行った。なんの感情も交えずに警察に行っては書類にかき込み、病院に行っては様々な書類にサインをし・・・考えなければならないことがありすぎて、逆にすべてからシャッターを閉めるようにして感情を入れることを拒否する自分がいた。

そして夜になると繰り返されるこの息苦しい暗闇。そこから一瞬でも逃れる為に、
インスはふらつく足取りで薬局のドアを開けた。
薬局のききすぎた暖房のせいで薬の強いにおいがからだにまとわりつく。
薬の出来上がるのを待つ患者たちは重たそうに体をイスに預けて目を閉じている。
インスはそこに同じ表情で目を閉じ、ぐったり腰掛けているソヨンに気づいた。
「こんばんわ・・・」
静かに声をかけながらインスはソヨンのとなりに座った。
「もう閉店近いのに混んでいますね」
とつづける。
ソヨンはほんのわずかに表情を和らげながら
「そうですね」
とだけこたえる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

さきにソヨンが呼ばれ薬剤師からカウンターで薬の説明を受けている。
「これは眠れない時の為のお薬です。寝る前にお飲みください。
一週間分でています。続けてみて症状の改善が見られない場合はもう一度かかりつけの先生にご相談してくださいね!」
まるでマクドナルドでハンバーガーを売っているみたいに明るく話す薬剤師の女性に
彼女はやっと聞き取れるかどうかのかすかな声で「はい」とだけ答えている。
「それでは4444ウォンになります!」(すいません、しょーもなっ...)
に、無言で会計をすませると、くるりと向きを変え出口に足を向けた。
座っているインスと目が合う。
黙礼をして立ち去ろうとするソヨンにインスが声をかけた
「・・・・・やっぱり眠れませんか?」
さきほどの薬剤師の違和感あるテンションにややうんざりしていたソヨンは
インスの低くゆっくりした話し方に少し安堵した。
「・・・・・・・ええ。朝まで長くて・・・・・・」
ソヨンはそこでわずかに笑ってみせた。
「そう、朝まで長い。頭の中でいろんなことを考え続けているんです・・・・
考えている内容なんて全く意味のないことばかり・・・・
それが絶え間なく続いているんです・・・・自分の意識とは別の所で・・・・
絶え間なく続いて、めまぐるしく巡って、・・・・・・・・」
インスがそこまでいうと、
「・・・・・これ以上どうしようもないスピードになったときにはじめてはっと
我に返るんでしょう?」
ソヨンの続けて言った言葉にインスは力のない笑いを浮かべた。
「同じですね・・・・・・」
そこまで話してしまったので先に帰るのも何となく躊躇われたソヨンは
再びインスの隣に座った。
「なぜ眠らないと生きていけないんでしょうね・・・・」
と、手に持った薬の入った紙袋を覗き込みながらソヨンがため息をつく。
それには答えず、インスは突然、
「ちょっと手を貸してみて」とソヨンの左手をとった。
ソヨンは驚いて手を引こうとしたが、インスはソヨンの手を握っていないもう片方の手で薬局の壁を指差した。
ポスターだった。不気味な人間の全身の絵が描かれてあり、
あちこちにツボの解説がかき込まれているものだった。
「ここ、痛いですか?」
といいながらソヨンの親指の付け根を少し強く押した。
「・・・・・そんなでも・・あ、やっぱり痛いっ!」
「ちょっと我慢してくださいね」
突然のことにソヨンは最初のうちは緊張で体をこわばらせていたが、
ポスターを見ながら熱心にツボを探すインスを見ているうちに少しだけ表情を崩し、肩の力を抜いた。
暖かく、大きな手から波のように伝わる痛みが次第に心地よく感じられる。
長い間、常に緊張が続いて凍りついていた血液が、ゆっくりと融けて、
静かに体の中を流れ始める。
ソヨンはそのまま静かに目を閉じた。
事故が起きて以来、しばらく味わったことのない暖かいという感覚・・・・
・・・・ゆっくりと・・・大きく・・・・静かな深呼吸をしたあと
ソヨンはそのまま眠ってしまった。
突然、右肩に重みを感じたインスはソヨンの左手から目を上げた。
隣で静かに寝息を立てている。
「睡眠薬まだ飲んでいませんよ・・・」とぼそっといいながら
そのまま、手をとったまま、静かに寝息を聞いていた。
呼吸が乱れることなく一定のリズムを刻んでいるのは、脳が休んでいるのだろう。
ほんのつかの間でもソヨンが何も考えずに眠っていられることをインスも嬉しく思った。
自分の手の中にすっぽりおさまってしまったソヨンの白い細い手を
やさしく静かにさすりながら、
・・・・・こんなほそい、今にも壊れそうな手を持つヒトには今の境遇が耐えられないだろうな・・
とぼんやり考えていた。

・・・・・・そして、いつしかインスも・・・・
ソヨンの立てる寝息が心地よい子守唄となり・・・・・・・
意識が遠のいていった・・・・・


遠くで自分の名前が呼ばれるのを聞いた・・・・


「キム・インスssi~!・・・・・キム・インスssi・・・・・・?
・・・・・・・・いらっしゃい・・・ませんか?・・・・・・・・・」


二人に重くのしかかる暗闇の中の
ほんのすこし温かな明かりがともった瞬間でした。
そして、それは一番つらい時間の中の一番幸せな時でありました・・・・・・・・




*************************************
おそまつでした。
・・・・・・・・・・・・・不眠症経験者です。ちなみに!




 

ottokkeさん ソヨンになってますね~ リアリティあってステキです… 2005/05/02 13:15
daisukibyj
つらいはずの二人が、お互いの肩に頭を持たせて眠れた、ほのかな幸せに、じーんときました。 2005/04/29 13:49
ayu4
親指のつけね...うちのサンヒョク君に圧してもらわなくちゃ。あー、目はつぶっておかないとね。このつらさの中の幸せ...素敵です♪ 2005/04/24 04:21
ishito
ottokkeさん、1冊の本を軽々と書けそうな気がしますね。絵といい文章といい、感動です♪♪ 2005/04/23 22:48
ゆこまる
敵情視察に来ました~(爆笑)う~ん、これよいですね、好きです。不眠症経験者ですか。私は泥酔経験者です。 2005/04/23 07:45
トッポッキ
浮かびます場面が・・・素敵です。難しい漢字(私苦手トホホ))と表現の幅の広さ、もしや文壇デビューですか? 2005/04/23 01:00
サザエ
睡眠薬まだのんでいませんよ・・・せつなさの中で、ちょっとうけちゃいました! 2005/04/22 23:06
花散里
Joonさんの声が聞こえたような気がしました。手のぬくもりが返ってせつなさを際立たせたのでしょうか。 2005/04/22 23:03
ogako
4444ウォンでずっこけてしまいました。やっぱりottokke節は健在ですね。 2005/04/22 15:14
pairpear
師匠!(娘がそう呼んでいます)不覚にも上に乗っかっちゃいました。お恥ずかしいです。やっぱ、全然ちがいますねぇ~。^^ 2005/04/22 12:58
 
 

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