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B.S.J.
B.S.J.(https://club.brokore.com/bsj)
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四月の雪せつなさ大賞!
四月の雪せつなさ大賞!
No 34 HIT数 1342
日付 2005/04/24 ハンドルネーム ayu4
タイトル 本番前の偶然。
本文 ayu4です、皆が読むの大変と思ったけど、どしても短くならんとです。。。ayu4です。。。
ミアネー♪ ではいきます!


「本番前の偶然。」                                    ayu4


2006年4月23日

ゲネプロが終わった。
本番までの数時間、今日に限ってスタッフ達と離れて、一人でこの時間を過ごしたくなった。
「あの、キム・インス監督...大丈夫ですか。」 
心中を察してか、スタッフの一人が私の目を覗きこみながら小声で聞いてくる。
「ああ、一人で風にあたってくる。いつもすまないな。」
このチャリティライブコンサートの照明監督を私が引き受けると決断した日から、3人のスタッフ達は 聞きたいことは山ほどのあるという顔をしてはいるが、淡々と仕事をこなしている。本番が無事終わるまで、あまり多くを語るにはまだ早い私にとって、彼らの配慮はありがたく 心も暖かくなれるようだ。

ライブコンサート会場を担当するのは1年ぶりだ。
一年前の春、妻の交通事故の知らせを受けたのは、そう、ライブの本番中だった。
会場をどうやって離れたのかも思い出せないくらい、あの時の私は酷く動揺していたはずだ。
あれからの出来事は、本当に自分の身に起きたことなのか それともあまりにも辛過ぎる現実から私の心が私にみせた、美しい幻だったのか...
夏が始まるころ、妻の容態もやっと安定し私も仕事に復帰した。しかしライブ会場だけは、あの出来事がいやおうなく脳裏に甦り一秒を争う瞬時の判断に支障をきたすのが怖く、この1年 あえて避けて来たのだ。

スタッフから一人離れた私は、音楽堂のインフォメーションでなにげなくなく目にした、別棟のギャラリーへ足を向けてみた。音楽堂は、あらゆる文化を育成する政策によって巨額の国費を投じて建設された一大エンタテイメント複合施設の一角に位置している。 なにげなく火をつけたタバコの煙に向こうには、八重咲きの桜並木に続く美しいギャラリー棟の建物が見える。一人で心を落ち着かせるのにふさわしい場所だろう。

    *   *   *   *   *

ロビーからエスカレーターで上のフロアの展示室へと進んで行く。
引き寄せられるように入ったある展示室。クヮンジュ(広州)の作陶家らしい作品のまえで、ふとインスの足はとまる。
「この、高温焼成でゆがんだ独特の形を持つ灰窯の器・・・。なつかしいな。いつだろう、同じ作風のやきものに私は会ったことがある。作陶家の鬼気迫る気迫と静謐さの両面性をもつ作品だった。子供ごころに好奇心をくすぐられたのだが・・・。そう、あの展示室、あの空間が凄かったのだ・・・。」



1987年4月23日

「インス、わたしのかわいいインス、おかえりなさい! 中学のバス見学旅行は楽しかったの?」
「オモニム!聞いてくれますか!僕、いま、ものすごく興奮しているの。」
「まあ、早く聞かせてほしいわ、インス?」
「ソウルの隣に、クヮンジュ郡っていう所があるんだけれど、オモニム知っていますか?」
「ええ、40分ぐらいかかったでしょう。朝鮮時代の官窯の跡がたくさんあって仙東里窯跡で有名なところよね。」
「うん、先生がそう仰ったような、気はする。その遺跡みたいな場所の近くに、やきものがたーくさん展示してあるところがあってね。」
「まあ、中学生のバス見学にしてはずいぶんとおもしろいところへ連れて行ってもらったのね。」
「うん、朝鮮陶磁器の歴史が、うちの校長先生のお気に入りみたいなんです。それで、やきものを見にいきました。そうしたらね、すごいの!僕、初めのうちはやきものって意外と迫力があって、おもしろいなーと思ったんだ。ユン・チャンホっていう名前の人。オモニムに見せようと思って書き写してきたよ。でもね、わかったんだ、僕。ユン・チャンホっていうひとも凄いけれど、そのやきものの置きかたというか展示のされ方がものすごいから、とてもかっこよく見えたのかなって。」
「へぇー、どんなふうだったのかしら?」

インスが見た展示室は、美術館の中でも特に室内が暗めであった。
墨黒の壁にくり抜かれた50センチ四方の立方体状のスペースに、1,500度以上で高温焼成されたという灰窯酒器が置かれてあった。日本の備前焼に似ているが、釉薬のない部位までが高温によりガラス質化しており、全体もあまりの高温にややゆがんだ形状で、それは確かに他の作品とは異質なきらめきと迫力を備えていた。墨黒とアイボリーの枠にその器はまるで宙に浮かび上がるごとく見え、その空間には凝縮された幽玄の世界が展開されていたのである。
15歳のインスは、照明のもつ限りない力に、このクヮンジュの展示室で出会い、先生があきれるほど興奮し、次の何箇所かの見学地を完全に上の空状態でまわり、帰途についたのだった。迎えたミュンヒは、そんな息子が誇らしかった。




ふたたび 2006年4月23日

あの時の、あの空間の照明は確かに、僕の職業選択に少なからず影響を与えたのだ。照明をあてる対象は陶芸品ではなく、生身の人間にはなりはしたが・・・。
ユン・チャンホ・・・という作陶家だったと記憶している。この展示室で今、私が感じている懐かしさは何だろう。
ガラス張りの展示室内の雰囲気に引き寄せられるように入ってしまったが、作者の名はまだ確認していない。 

    *   *   *   *   *

「ユン・キョンホ 作陶展・・・、まさか?!」 
私の瞳はその名前に釘付けになり、その場に呆然と立ち尽くした。

もう 追憶することもなく心の奥底に封印したはずの名。
妻スジンがかつて愛した男の名。
スジンが交通事故に会った時、運転席にいた男の名。
病院で子供のように泣きじゃくる私をその胸で聖母のように受け止めてくれた、あのひと、ソヨン。その夫。
心が引きちぎられながら、それでも私が愛さずにはいられなかったソヨン。その夫の名であった。

体中の血が加速する鼓動で激流と化すのを、私は止めることが出来ない。早くこの場を立ち去らなければ。
キョンホはユン・チャンホの子弟なのだろうか。重症を負ったが、やはり私の妻ほどではなかったのだろうか。
何のために私はあの出来事の記憶を封印し、この1年を過ごしてきたのか。
今日のこの仕事をどんな思いで引き受ける決心をしたのか。
この仕事を私が出しうる最高の力で成功させれば、明日から大きな一歩を踏み出せると固く信じ、やっと言葉を取り戻した妻にやり遂げた事を真っ先に報告している自分を思い描いていたはずなのに。

震える膝をひきずり、やっとの思いで階下のロビーへとその身を移動させる。

神様、今日の幸せを得るため、妻と私がお互いの罪を抱えながらどんなに大きな山を乗り越えてきたことか。
心の鍵を、あなたはどうしてこじ開けようとする・・・。

    *   *   *   *   *

1階ロビーの打ち合わせパーテーションの向こうへ、さっき降りたエスカレーターを駆け降りてインスを追い越した係員が、静かに近づいて行く。係員はすでに着席している待ち人に一礼し席に着いた。座る場所が必要なほど打ちのめされたインスは、パーテーションの一つ手前に、ぐったりと腰を降ろした。本番まで幸い1時間はある。ここで落ち着けそうだ。一服しコーヒーでも飲み、精神を集中させれば気分を変えてスタッフの待つ現場に戻れるだろう。


「ハン・ソヨン様、でいらっしゃいますね。ご主人様は足と耳がご不自由と伺いましたが。ご盛会になりましたね。ギャラリーの係員一同から心からお祝いを申し上げます。では、作品の明日の搬出について奥様にここで説明をさせていただきますね。よろしくお願いいたします。」

インスはわが耳を疑った。パーテーションで視界はさえぎられはいるが、背後にいるはずの係員の口から、彼女の名が発せられている。わなわなと指先が震え、唇は乾き、タバコの味さえ感じられない。私が片腕を預けていた並びの椅子は小刻みに震えだした。


「ご主人のユン・キョンホさんは、さすがユン・チャンホ先生の実の息子さんだけあって、作風はまるで生き写しのようだと、ギャラリーでも評判です。キョンホさんの作陶活動復帰のこの展示会が決まったあと、チャンホ先生はお亡くなりになったそうですね。残念なことでした。」
そこまで聞き終えて、インスはすっくと立ち上がりロビーを後にした。

    *   *   *   *   *

私は八重桜の並木まで歩いたところで、勇気を出して振り返った。ロビーの窓の向こう側を目で追う。
柔らかな笑顔のそのひとは、紛れもなくソヨンであった。

あの出来事の終わりに、私達は元の場所へ戻ることを確かに選択した。
一年が経ち、今日、計らずもその選択はお互いに誠実に実行できていることを私は知った。
ソヨンは私がそれを知ったことに気づかないだろう。それでいい。

私はあごを少し上げ、散る桜を受けながら、震えの止まった脚をゆっくりしかし大きく踏み出した。
妻とスタッフの待つ音楽堂へ。


Fine.



【生まれて初めての創作劇場 後記】
韓国映画を見ていていつも思うのですが、ストーリーが時空を行ったり来たりする作品、割と多いです。15歳のインスを原点に投稿したいと思って少ない引き出しからむりやりモチーフをヒネヒネしてみました。いま、四月の雪が降る地区にてアクセス中なのですが、ソウルでコンサートの撮影がされているこの週末にアップしたくてNHK総合のオールインを実家の母と見終わってから、約3時間で書きました。
陶器の話は、東京でVOL.1.5のお手伝いをした帰りに別件で新橋のギャラリーKyoへ行き優しいお兄さんのレクチャーから着想、陶器の種類と地域の関連性はありましぇんm(__)m信憑性なし(笑) ラストシーンはやはり1.5の会場でのHiyonnさんとの出会いで彼女の最新作から着想。この場を借りてお礼を申し上げます♪
 
ayu4
学術的にはかなり正確さを欠いてます...インスへの愛でご勘弁を♪anmayuちゃんも投稿アップ間に合って良かったね^^) 2005/05/01 22:15
ayu4
anmayuちゃん☆オソオセヨ~。ギャラリーKyoの係りのお兄さんが韓国の陶器について熱弁を振るう姿にちょっと感動したのです。 2005/05/01 22:14
anmayu
ayuちゃん凄い~かなり勉強されてますね~(*^^*) 2005/05/01 00:12
ayu4
深い愛、男らしい、と言われてコチラのインスも喜びます♪mike86さんオソオセヨ~^^) 一人毛色の違う劇場でした~感想ありがとう! 2005/04/30 23:43
ayu4
winさんヨンでくれて嬉しいよ☆chiwa.さん・daisukibyjさん、こちらのインスにとってソヨンは同じ辛さを乗り越える約束を交した同士。 2005/04/30 23:40
mike86
ayu4さん、すごく独創的でステキですよ~時間の切り取り方、プロみたいですよ☆ 2005/04/29 23:21
daisukibyj
桜をバックにした、すてきなHiyonnさんのインスも、まざまざとよみがえりました! 2005/04/29 23:09
daisukibyj
愛するソヨンに逢わずに(自制心がすごい)、あごを上げて歩いていくインス、男らしいですね。 2005/04/29 23:05
daisukibyj
ayu4さん、インスが照明監督を志すきっかけとなった15歳の時のエピソードも、素敵ですね! 2005/04/29 22:54
chiwa.
それを、凛とした姿勢で踏み出したインスに深い愛を感じます。 2005/04/29 16:01
chiwa.
元の場所に戻ることを選択した二人に神は偶然(あるいは必然だったのかも)を装い、試練を与えようとした? 2005/04/29 16:00
winterna
ayuちゃま。こんな才能があったなんて。チョンマルモシッソヨ。第2のストーリーで見てみたいですね。 2005/04/27 20:13
ayu4
解説文みたいだから、せつなさがまだまだ足りなインスゥ!もうayu4の引き出し空っぽですから~残念。 2005/04/27 19:25
ayu4
映画シノプシス...照れます~誰かヨンポスター貼り放題の穴を持ってきてー!☆okojyoさんtokuさんホメスギです、ホメスギ。 2005/04/27 19:25
ayu4
yukityちゃまfrogandtoaさん、初め瞼の中のスクリーンに桜・子役インス(もち、中学joon)・作陶キョンホ(ムリ?)が浮かびました。 2005/04/27 19:15
toku44
すばらしい~作家ayu誕生ね!一気に読んでしまったわ!素敵すてきステキ!! 2005/04/27 11:59
okojyo
コンサートに行けなかったjoonへの思いをこのストーリーに昇華させたのですね。切ない!でも素敵! 2005/04/27 08:30
okojyo
ayuちゃん忙しいのにいつのまにかネタを仕込んで切な~い短編をものしてスゴーイ!! 2005/04/27 08:30
frogandtoa
映画のシノプシス読んでるみたい、パズルのようにきっちりはまるストーリー、すてきです。 2005/04/26 09:53
yukity
ayu4さーん!コピーして通学電車の中で読ませてもらいました!映画のワンシーンを見てるような気分でお見事! 2005/04/25 18:58
ayu4
ottokke師匠!じゃプロデューサーをウリボスにお願いしなくちゃ(爆)回想シーンのオモニのオーディションを始めよっか(笑) 2005/04/25 12:40
ottokke
この映画みたいですー!チケットはいつ発売?どこで見れます???(笑) 2005/04/25 12:35
ayu4
レス失敗^^;ゆこまるさん韓ドラ何本かインプットでこうなります(爆)☆purinnssiさんのmumu...のおかげで私も思いつきましたよん☆ 2005/04/25 08:07
ayu4
nirinさん魅入って頂き超恐縮です!自分の指も震えるかと・・・(笑)☆hanayoriさんogakoさんこれも愛のなせるワザでインス(照)☆ 2005/04/25 08:03
ayu4
インス(というかヨンジュナ)を想いながらストーリー考えるのって自分でもドキドキします。 2005/04/25 07:49
ayu4
ただいまでーす!雪の国でアップしてから昨夜帰ってきました。評価はさておき皆の感想もっと聞けたらうれしーです! 2005/04/25 07:46
ogako
なんでこんなに素敵なストーリーが浮かぶのか?皆さんの才能に脱帽! 2005/04/24 20:59
hanayori
作家ayuちゃん・・すご~い。一気に読みました。長編小説を読み終わったような気分です。インスの鼓動が伝わりました。 2005/04/24 15:55
nirin
ayuさんの素晴しい想像力に、魅入ってしまいました。特にインスの心の状態が膝の震えに出ているところには、感動です。 2005/04/24 09:27
purinnssi
すごいです!! 興奮してます! 途中の座り込んだインスの愕然とした様子 最後のシーン顔 美しいです。 2005/04/24 07:08
ゆこまる
ayu4さん、おかえりなさい!私はこんな微妙なサスペンスをはらむストーリー展開、好きです。 2005/04/24 07:00
 
 

IMX