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B.S.J.
B.S.J.(https://club.brokore.com/bsj)
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四月の雪せつなさ大賞!
四月の雪せつなさ大賞!
No 59 HIT数 2004
日付 2005/04/28 ハンドルネーム ゆこまる
タイトル 甘美な悪夢
本文 柔らかに輝くパステルカラーの光に包まれて、海を眺めていた。
ここはどこだろう。いつか行ってみたいね、と妻と言っていた南の国の島だろうか。
海を渡る温かな風に髪がなびく。椰子の木の間を、見知らぬ蝶が飛んでいる。

「インス、どうしたの? 何してるの? せっかくここまで来たのに、ぼ~っとしちゃって」

楽しげな妻の声が聞こえる。

いつの間にか、妻が私の前に立っている、着心地のよさそうな生成りのワンピースをふわりと着て、手招きしている。彼女の髪も風になびいている。逆光で、顔はよく見えないが笑っているようだ。

「ねえ、あしたは絶対に海で泳ぎましょう、水も温かいわ」

「でも、水着持ってないじゃないか」

「平気よ、私が後で家から取ってくるから」

えっ、ここは外国じゃないの?どうして家に簡単に帰ったりできるの?
いや、スジンがそうするというのなら、きっとできるのだろう。彼女はいつだって楽しいことを見つけることの天才だから。好奇心旺盛で、活動的で…
彼女に任せておけば、いつも楽しいことが起きるんだから、今度もそうすればいいんだ。

僕たちは指を絡ませて、パステルカラーの光に包まれた南国の庭を散歩した。

突然目の前にテニスコートが現れた。
テニスなんてやったことないけど、こんな場所でならちょっとやってみてもいいかな。

いつの間にか、スジンがラケットとボールを手にしていて、僕にいたずらっぽく笑いかけた。

「やってみましょうよ」

コートに立つと、スジンは少女のように見えた。
冷たい感じの美人、という人が多いけど、それは彼女のこんな表情を見たことがないからなのだろう。

初めてなのに、不思議なほどラリーが続いた。打球感は余りなく、テニスにしては二人の距離が近すぎるような気もするが。
こんなにすぐに上手にボールを打てるなんて「僕って天才?」ああ、これはテレビドラマで聞いたせりふだ。

いつの間にかスジンが僕の背後に立って首に両腕を回してきた。彼女の髪を頬に感じる。

「ねえ、夕日を見ながらカクテルを飲みましょう。ステキな場所を見つけておいたの」

夕日?もう夕方になったの?
あいかわらずパステルカラーの光が満ち溢れ、時間の感覚がない。
でも、スジンがそう言うなら、きっと今は夕方で、今日は夕日がきれいで、そこはステキな場所なんだろう。
いつもそうして、愉快なことに僕をいざなってくれる君。僕はいつだって気が利かなくて、何にも思いつかないのにね。僕は、なんて幸せ者なんだろう。

「はははは」
不思議な多幸感の中でスジンとの一体感を感じ、僕は心から笑っていた。


自分の笑い声で目が覚めた。口の端には、まだ笑顔の痕跡が張り付いていた。

真っ暗な部屋のベッドの上。
自分がどうしてここにいるのか、感覚を取り戻すのに時間がかかった。

そうだ、ここはソウルの自分のアパート。服を着たまま寝ているのは、夜遅くにここに着いて、仕事の連絡をして、必要な書類をさがして、妻に必要なものを整えて…

妻に必要なもの、妻は病院にいて、事故で、意識が…!

真っ黒な恐ろしい現実があっという間に心に広がり、インスは恐怖のあまり身震いした。
悪夢を見て目覚め、それが現実でなかったことに安堵したことは何度もあったが、現実の方がこんなに恐ろしいという逆転した気持ちは初めてだった。そして、この悪夢から目覚めることはもう決してないなんて!
急いでもう一度目を閉じてみたが、夢の断片はぼんやりとした残像だけを残して遠ざかっていった。

心臓がドキドキした。真っ暗な部屋の空気全体が耐えがたい重みで自分にのしかかってくるように感じられた。もうこの恐怖の檻からは逃れられない…

怖くて、思わず嗚咽が漏れた。
胸が苦しく、自分がしばらく息をしていなかったことに気付いた。
あわてて息を吸い込もうとすると、涙がぱらぱらぱら、と流れ落ちた。

一瞬、呆然とした後、インスは恐怖におびえる子供のように自分の体を抱えて大声で泣き始めた。
全身を震わせて。そうしなければ気が狂いそうだった。


インスの悲鳴のような慟哭が、いつまでのソウルの夜の帳を揺らし続けた。



☆☆☆

やっぱり号泣インスをあきらめきれず、最後の投稿です。

昨日エアロビクスをしながら細かな部分を考えていたら、まあ、ふりを間違うこと、間違うこと。
いつもは結構優等生なのに、ソンセンニムに「体調悪いですか?」なんて聞かれちゃいました。
まずい、まずい!



 
ゆこまる
daisukibyjさん、本編では明るく「はははは」と笑う場面はあるのでしょうか?哀しい表情と涙だけでは可哀想~ 2005/04/29 18:52
daisukibyj
楽しい夢の中の「はははは」が聴こえてきそうです。夢の中で幸せそうだった分、悪夢のような現実に泣き叫ぶインスがかわいそう! 2005/04/29 18:31
ゆこまる
ayu4さん、いつもありがとう!「恐怖感」を作ってみたかったので、分かっていただけて書いた甲斐がありました! 2005/04/28 23:10
ayu4
本当に悪夢の逆バージョンですね...これは。せつないし、怖い~。ヨンでるこちらもザザーっと鳥肌がたちました。。。ブルッ! 2005/04/28 20:56
ゆこまる
motto1967さん、一緒に号泣してあげて!彼の隣は空っぽだし(涙) 2005/04/28 19:34
motto1967
インスの切ない想い・・・一緒に号泣したい気分@@@ 2005/04/28 18:03
motto1967
楽しい夢から…目覚めた時の現実の悪夢。インスのスジンへの愛が十分に感じられ、余計に辛い。 2005/04/28 18:03
ゆこまる
pairpearさん、インスと一緒に泣いてくれてありがとう!fairwindさん、妻への愛を感じ取って下さってとてもうれしいです! 2005/04/28 16:42
ゆこまる
purinnssiさん、いつもコメントうれしいです。逆バージョン、思いついたら書かずにはいられなくて。 2005/04/28 16:40
ゆこまる
ogakoさん、実はエアロ中に考えたのは主に夢のシーンでして~。号泣シーンはさすがに厳しかったです。 2005/04/28 16:39
fairwind
暗闇で慟哭するインス、切ないです。 2005/04/28 15:19
fairwind
インスはスジンを心から愛していたのね…。夢にその気持ちが現われて、でも現実はあまりに残酷で、苦しくて…。 2005/04/28 15:18
pairpear
・・・・苦しいです。 両目をカッと見開き恐怖に慟哭するインスが目に浮かびます。 2005/04/28 14:40
pairpear
ゆこまるさんの号泣インス、くぅぅ・・・、暗黒の現実にのみこまれるインス、もう、くっ・・ 2005/04/28 14:33
purinnssi
やってくれますねぇ。 実際 逆バージョンは 経験有るけれど 悪夢より現実の方が恐いなんて・・・かわいそうで・・(涙) 2005/04/28 12:54
ogako
エアロビしながら考えるなんてすごい!明るいリズムに乗って、号泣するインスを想像するって、どんな感じかしら。 2005/04/28 11:29
 
 

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