パイライト2008　〜浪速恋しぐれ篇〜

のぞみ７２号は、新大阪発８時１７分、品川着１０時４５分。
品川から渋谷へ出て、NHKまでは....３０分でいけるわね！
これなら、記者会見に間に合うわ！

里子はハブラシを口につっこみながら、研究所のパソコンを切った。
紙がボロボロになったインドの書物にかこまれたアーユルヴェーダ研究所のソファが
里子のここ二日間の寝床だった。

夢のようなドームでのイベントの翌朝から、里子はこの部屋で、1500年前のインドの書物、
アシュタンガ・フリダヤ・サンヒターの翻訳を手伝ってきた。
ヨンジュンは名古屋でパチンコ屋さんのビルにはいったテナントの視察におでかけだ。
ヨン友さん達からの報告メールがバンバンはいってくる。
マイケルジャクソンを思わせるサングラスでのご登場らしい。

そんな中、８０歳に近い老師と一緒に、昨夜は深夜２時までかかって、
生薬のリスト作りに取り組んだ。
サンスクリット語の植物名からラテン語の学名を同定し、
英語の資料から成分などを抜き出して和名を添えるという地味〜〜〜な作業だが、
そのあいまにも、里子の頭の中にはドームで聞いた、
ヨンジュンのやわらかな韓国語の声が響いていた。
素敵だったわあ~~~♡このエネルギーがあるから、がんばることが出来る。

ここ数年、里子の頭の中は韓国とインドでしめられてきた。
韓国とはもちろん、ペ・ヨンジュン。　
インドとはインド伝統医学アーユルヴェーダのこと。
５０００年も前から続く古い科学だが、単なる健康法ではなく、全てのいきものが
幸福になるためのさまざまな知恵にあふれている。
代替医療として厚生省に認められることを目指して
昨年からは、アーユルヴェーダを広めるための会社まで起こしたものの、
基本的な教本さえ、まだ日本語には翻訳されておらず、
この老師達の目が黒いうちに、なんとか翻訳を完成させてもらわなければならない。
そのためだったら、ソファで寝ることくらい、なんてことはない。
関西空港で檻にはいって３０時間すごすことに比べたら、ラクなものである。^^

韓流ミーハー道と、神聖な古代医学というとりあわせは、何がなんだか...と、
はじめて里子に出あう人を混乱させたが、里子の中ではどちらも「人を幸福にするもの」
で、あって、同じライン上のことをやっているだけで、何の矛盾もなかった。

実際、京セラドームには、ヨンジュンにあえる！という幸せなオーラがたちこめていた。
車イスからようやく立ち上がったおばあさんが、トイレでニコニコしていたのが忘れられない。
日本中から集まったヨン友さん達が、地元の銘菓や自作のグッズを交換して、楽しそうにウキウキしている。
せっかく関西に来てくれたのだから、と、自分の生活圏を観光案内してくれるヨン友さんもいれば、
京都の本格的なお茶室に招いてくださったヨン友さんもいた。
ヨンジュンがいなければ絶対に知り合えなかった人達にネットの中で出会い、
もう４年以上も友情が続いている。中学、高校だって３年間なのに、それ以上の年月を
一緒に喜んだり、悲しんだりしながら過ごしてきた。
ヨンジュンが与えてくれた大切なご縁だ。

里子は大きなトランクをひきづりながら、新幹線のホームへ急いだ。
記者会見に遅れてはいけない。

発車ギリギリののぞみに駆け込み、２〜３ケ月海外ロケにでも行くような大荷物をハアハアいいながら
座席の後ろに押し込んで、シートを倒すと急激に眠気が襲ってきた。

だが、寝てはいけない。まだ里子にはやることがあった。
何を着ていこう...それを決めていなかった。

ヨンジュンの記者会見はこれで３度目だった。「四月の雪」の製作発表が行われた台湾と韓国では
ラジオ番組の記者として。そして今回は雑誌の記者としての参加だ。

国会の帯用証をつけていた報道記者時代には、どんな会見でもスーツだったが、
芸能の会見ならば普段着で充分だ。だが！今回はヨンジュンである！
一張羅のドレスでも着ていきたいところだが、それではいかにもカジョクばればれだ。

そして、今回はひとりで行くのではない。B.S.J.の家族ヨロブンからお預かりした１００個もの質問を
届けに行くのだ。そう思うと、何がなんでも質問権を獲得しなければならない。
並みいるレポーター達をかきわけて、手をあげた時に目立つには....、
指名してもらえるようにするには　どうしたらいいだろう？

のぞみのシートに身を沈めながら、里子はトランクの中にいいものがあったことを思い出した！
そうだ！あれでいこう！

同行する編集のノリスケさんにメールを打った。

「１１時着のぞみに乗りました。NHK西門でお待ちしています。
　コムル村の衣装でいきます。ご一緒にどうですか？」

里子の大きなトランクの中には、オフ会でつかったヒョンゴの衣装がはいっていた。

楽しかったなあ...オフ会....
そういえば、最初の漫才はどんなんだったろう？

実は今度のオフ会会場は細長く、メインの宴会場と、ガラスでしきられたテラス席に別れているため
メイン会場はMCにまかせて、変装した里子は隠れてテラス席から突然登場する演出だったため、
冒頭のMCコンビの漫才を見ていなかったのだ。

cranberryさんがビデオを渡してくれたっけ！そうだ、今みちゃおう！

ビデオカメラの画面をあけて、イヤホンを耳につっこんだ。
新幹線の中が、ドームイベントの興奮さめやらぬ、パノラマドームレストランアサヒにワープしていく。

テープは、受付で座席表のくじをひく参加者の様子からはじまっていた。
今回の会場では、１００名からひとりでも多くはいれるように１８０に増席したため、
マイクの声も音楽も届かない、テラス席をつかわなくてはならないが、
そんなところに追いやられた〜と、言う不平が出ないように、
グループ参加の人達にはくじ引きをしてもらったのだ。
団体さんには勝手にもりあがってもらえるいいスペースになるはずだ。

ドームイベントの３０分遅れのあおりをうけて、６時半に場内は暗転し、宴会がはじまった。

♪パラリラッパラ　パラリラッパラ　パラリラッパラ　チャン！
　ホンワカタッタ　ホンワカタッタ　ホンワカタッタッタ〜〜〜♪

と、吉本新喜劇のテーマソングとともに、場内が明るくなって　
MC担当、rosesさんと、Junpeiちゃんの　漫才コンビ,　今　いちか＆　ばちか　の挨拶がはじまる。

いちか「ＢＳＪヨロブン　アニョハセヨ〜〜
　　　　今　いちかイムニダ
　　　　マンナソパンガプスムニダ〜〜」

上品な関西マダムのいちかちゃんと、三つ編みがかわいい　ばちかちゃんだが、メチャメチャ緊張している。

ばちか「皆様、こんばんは　天童よしみ
　　　　ばちかです〜こんばんは〜
　　　　関西弁がしゃべれるとうことで
　　　　前説の大役をおおせつかりました〜
　　　　よろしくおねがいします〜」

「関西弁が喋れるということで、この大役をおおせつかりました」って、挨拶してるけど、
メチャメチャ標準語やん〜〜　緊張して関西弁わすれてはるわ！ワハハハ〜〜〜。

いちか「ばちかちゃん〜〜ヨンさま、めっちゃかっこよかったね〜」

ばちか「いちかちゃん、そないに一生懸命言うたら　青筋青筋〜〜」
　　　　（手は縦すじ方向ではなく、横向きに、首のシワをさす）

いちか「なんで横むきに青筋よ〜〜〜」

ばちか「ごめんごめん、気になったし〜」

いちか「なんでやねん」

ばちか「みなさま、本日はこの会場は貸切となっておりますが、まずは諸注意を　いちかちゃんのほうから
　　　　エドはるみでどうぞ！」

いちか「今日は、みんなでミーティン　グー　なんでやねん
　　
　　　　ばちかちゃんで〜〜鳥居みゆきでどうぞ！」

ばちか「京セラドームで　ヒットエンドラ〜〜ン　なんでやねん〜〜」

吉本新喜劇のテーマにのって、ここまでは台本どおり。mixiにかかれた台本を、保護者会の最中に
たっぷり予習するって言ってたけど、さすが関西人だわねえ、台本よりもフリートークの方が
さらにおもしろい。

「みなさーん　今日のヨンジュンさんは、どのくらいに見えましたか〜？
　親指くらい？小指くらい？大豆？米？ゴマ？塩？」

「車にのってまわってきてくれてよかったですね〜〜
きゃあ〜ヨンジュンシー！　ミッキー！　ミニー！って　ほんまにデイズニーランドを思い出すような〜〜」

おお！ドカンドカンと受けてる受けてる！

「このイベントが終わるまでに、もしかしてヨンジュンシが重大発表をなさるんやないかと、
　いろんなカミングアウトを覚悟してたんですけどお〜、特に〜　もしかしたらジアちゃんかなーと
　覚悟してたんですけど、別の人が発表しはりましたね〜〜」

そうそう、チュムチのことやね。タルビと交際宣言。

「ま、そのイジアちゃん、KYというか、空気読めないというか〜〜！　
　諸先輩をさしおいて...あの日本語はないやろ？と。
　出世したかったら。私やったらいえません。口が裂けても日本語しゃべりませ〜ん！」

場内大爆笑！そうだよね、ひとことしゃべっただけで、おお〜！とドーム内がざわめくような
流暢な日本語で完全に主役をくってましたからね〜！

「ところでさー　ばちかちゃん、昨日のテレビの映像みた？うちの子がワイドショウみて、
「お母さん　なんでみんな檻にはいってんの？」って〜〜」

アハハハ、うまいなあ〜〜　こういうトーク、さすが関西人やなあ〜〜

「私の携帯にも、Junpeiちゃん、空港が大変なことになっている〜〜
　カジョクが檻にいれられてるの〜〜って、どんなんやって思ってたんですけど〜〜　
　夜中に１００人づつ檻にいれるのに１時間かかったとか、３００人檻にいれるのに３時間！
　そのノウハウ、是非　姫路セントラルパークでいかして欲しいやんね〜」

会場にも、実は檻に入っていましたって家族が何人かいたんだったわね〜〜。

「お時間の方は　かなり、おしてまして...誰のせいやといえば、センチュリーの演奏が５曲も！
　〜〜その音質で５曲はないやろう？家かえってCD聞くし〜〜と。その分まきでいかせていただきます。」

あははは、そうなんだよね〜。ひどかったね〜。また演出がヘタクソなもんだから、あの音質で
オケで何曲が聞かせたあとに、東映まんがまつりのシーンを画面で見せながらガンガンとOSTの曲を流すので
そっちの方が音質が整っていて迫力あるから、歴然と差がついちゃって、
生オケの貧祖さを強調しちゃったのよね...。とにかく、今回の演出は　ひどかったわ...。

冒頭の火天会とコムル村の殺陣は、スイッチャーは映像とりまちがえるし、カメラはおいついてないし、
殺陣は間違えるし、長いし、だれるし....舞台の大きさを全然活かせてないんだもの....。
ラストサムライの殺陣チームかなんか知らんけど、なんでコムル村に女戦士おるねん？

ヨン様登場後も、真ん中の大画面はヨン様なんだけれど、そこに照明あてちゃうから、ボケボケで顔見えず、
両脇のクッキリスクリーンにはなぜか司会者の顔。そここそ、ヨンジュンの顔でしょうに〜〜〜！

オーケストラの時のレーザーショウは　田舎の斎場の演出みたいだったし...。
画面の映像は音楽と全くあっていなくてビックリ。
仕事に愛情がないのか、才能がないのか、時間がなかったのか、わからないけど、
とにかく、アリモノを急遽つないだようにしか見えない仕事で、なめられ感アリアリ。

さらに驚いたのは、通訳のマイクがハウッたり、使えなくなったり...と、
信じられないシンプルなテクニカルミスが多すぎて、キムテイさんの機転がなかったら、
ほんとにどうなっていたことやら...。
今回、音響に関しては、オーケストラの冒頭のフルートの出だしに間に合わなくて音が拾えなかったり
球場だから音がまわっちゃって二重に聞こえたり、ありえないミスが続出。

ま、舞台にパイプ椅子が出てきた時点で、なんとなく、雑な演出屋さんがやってるんだな〜、
大阪には良いイベント屋さんはおらんのかい？と、あまりのゆるさにめまいがしたけれど、
それでも、ヨンジュンが出てくればもう何でもOKになっちゃうのは間違いないのよねえ...。
特に今回みたいに近くにきてくれたりしたら、それだけで、どんなミスでも帳消しよね...。
なめられてるなあ、とは思うけど、それでも満足しちゃうから悔しいのよね〜〜。
なんやかや言っても、ヨンが出るなら、次があったら絶対行くものねえ....

今回なんて、まだ足が本調子じゃないのに、あの、重たい鎧をつけて、舞台の中央に立ってくれた！
そのことだけで、もうジーンとしちゃって、満足だったもの...

そんなことを考えて、窓の外を流れる景色を眺めていると、ノリスケさんからメールが届いた。

「ほ、ほんとにヒョンゴで行くんですか？....ご一緒にって...^^;)
 け、検討してみます....................検討するのか？!＞私」

あははは、ノリスケさん、はずかしがってるな？　NHKなんて、何も恥ずかしがることないのになあ...
大河ドラマと子供番組の収録が重なったりすると、NHKの食堂では、薩摩藩のお侍さんとパンダが
となりあわせで和定食Bを食べていたりするのが平気なところなのだ。
コムル村の村人がひとりふたりまぎれていたって、だれも気にはとめないだろう。

のぞみ号は京都をすぎて米原にかかろうとしていた。ビデオはいよいよ里子の登場シーンが近づいていた。

今いちか　「では、みなさま、開会に先立ちましてペヨンジュンさんとみなさまのご健勝をお祈りして
　　　　　　高句麗式の　お祓いからはじめたいと思います。
　　　　　　そのために、今日は高句麗の神壇からゲストをお迎えしております。
　　　　　
今いちか＆ばちか　「神壇さん！　いらっしゃーあい！　オヨヨ」

♪千年恋歌　が流れる中、

テラス席の後ろの方から、籠にはいった花びらをまきながら、
少女時代のキハの衣装をつけたsatoキハが、「ハヌリ〜〜　ハヌラレ〜〜　カウリ〜〜」
と叫びながら、お祓いをして歩いてくる。

テラス席の人々、突然の登場にビックリ。
笑いながらも、「給食のおばさーん！」と声がかかる。
たしかに、かぶりものがそう見えなくもないが....

「ちが〜う！給食のおばさんアニラ〜〜！
　渡る世間は鬼ばかりでもアニラ〜〜！
　幸楽ではアニラ〜〜！
　ハヌリ〜〜　ハヌラレ〜〜　カウリ〜〜！
　鬼は〜〜外〜〜！　福は〜内〜〜！」

と、半ばやけくそで　花びらをまき、お祓いをして歩くsatoキハにみんなが笑いころげている。

テラスからメイン会場にはいって、お祓いがすむと、タムトクに見染められるように
ちゃんとつまずく演技までつけた。芸が細かい。

「吉本NSCに体験入学してきたキハ様でございますー！」

と、紹介する　ばちかちゃん。

「吉本アニラー！
　コクリョ神壇からきたイムニダー！」と、いいかげんな韓国語で胸をはるsatoキハ。

ばちか　「ええとお、今日は高句麗から　ゲストがあと２人くるんでしたよね？」

satoキハ「はい、あとでSatovic劇場でゆっくりご覧にいれまーす」

と、言うと、すかさず吉本新喜劇の音楽がかかる。
いいぞ！音楽係Sandy!　ドームの音響係とは雲泥の差だ。

「ちがーう！吉本新喜劇アニラ〜〜！　Satovic劇場イムニダ〜〜〜！」

と、言いながら緞帳の後ろに消えていくsatoキハ。

そしてお祓いがすんだので、乾杯ということになり、乾杯の音頭には突如として
実況中継の相の手係でみんなを笑わせてくれた「ヨンちゃん」が指名された。

どんな人だろう？ビデオの中でキョロキョロしているのは、スレンダーで想像していた通りの人だ。
突然の指名に驚いている。ワハハハそうでしょう、そうでしょう。
でも、あの「あいのて」の瞬発力があれば、突然の指名でもなんなくこなしてくれるはず。

「毎度毎度あいのてばかりでしたけど、よろこんでいただけたそうで　ありがとうございます。
それではみなさんご起立ください。B.S.J.のみなさとヨンジュンさんの健康と発展を願って
　カンパーイ！」

と、ヨンちゃん　の乾杯で会がはじまった。だがしかし、やっぱりヨンちゃんも、あがっていたのだろう。
乾杯の音頭なのに、手にはグラスももっていない。笑　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（２へつづく）