酒屋の女将のパソンが、開店準備中の
居酒屋『玄武』に配達にやってきた。
パソンは居酒屋『玄武』の裏口のドアを開けると
「こんにちは。まいど~。注文の品を持ってきたよ。」
店の奥からスジニが顔を出して
「パソンオンニ、ありがとう。そのへんに置いといて。」
「あいよ、このへんに置いとくよ。 スジニ、こんなものをもらったんだけど、 行ってみるかい?」
「えっ、オンニ何もらったの? 見せて、見せて。。。」
スジニは、パソンが差し出したチケットを覗き込んだ。
「ヨガ無料体験チケットねぇ。 オンニ、ヨガって体に良さそうだね。 タダなら、行ってみようよ。」
「スジニが、行きたいなら行ってみようかね。」
「うん、うん。いつ行こうか?」
「明日の午後は、どうだい?2時からのクラスとか?」
「オンニ、明日の2時からのクラスでもいいよ。 お店の開店までに戻ればいいからさ。」
「じゃあ、決まりだね。明日の1時過ぎに迎えにくるよ。」
「うん、わかった。オンニありがとう。 明日が楽しみだなぁ。」
~翌日~
スジニとパソンは、スポーツクラブの受付で
ヨガの無料体験チケットを見せて、
ロッカールームの鍵をもらった。
2人は、ロッカールームで、トレーニングウエアに着替えた。
着替え終わるとフェイスタオルを持って、
トレーニングスタジオに向かった。
スタジオに入ると、スタジオのすみに置いてある
薄いヨガマットを敷いて、その上に座って、
ヨガの先生が来るのを待った。
少しして、ヨガインストラクターのキハが
スタジオに入ってきた。
キハは、生徒達の顔を一通り見渡して
「はい、それではレッスンを始めます。 初めての方がいらっしゃるようですが 無理をせずに、できる範囲でついてきてくださいね。」
と言った。
スローテンポの曲が流れる中で、
1時間のヨガレッスンを終えたスジニとパソンは
心地よい汗をかいた。
2人は、シャワールームで、汗を流した後に
ロッカールームで着替えた。
「ねえ、オンニ。ヨガの先生なんだけどさ、 どこかで逢ったことがあるような気がするんだけど。。。」
「そうかい?商店街じゃ、見かけない顔だけどね。。。 スジニの店のお客さんかい?」
「お客さんじゃないと思うんだ。 でも、昔どこかで逢ったことがあるような気がするんだ。 でもさぁ、もし知り合いだったら、 ヨガの先生も気づくはずだよね。 そうしたら、話しかけてくるよね。 やっぱり、気のせいかなぁ。。。」
「そうだねぇ。よくわからないけどさ、 縁があったら、またどこかで出会うはずだよ。 話は変わるけど、スジニ何かいいことがあったのかい?」
「えっ。オンニ、するどいなぁ。ばれてたか。。。 うちの常連のタムドクさんがね、 この間お連れさんと飲みに来てくれたんだ。 そのお連れさんは、うちの店は二回目なんだけどさ、 見るからに高級そうなものを身につけていて、 パリッとしていて、爽やかでかっこよかったんだ。 うちの店には、不釣合いなんだけどさ、素敵だったの。 きっと、すごいお金持ちだよ。」
「スジニ、その人に惚れたのかい。 目がハートになってるよ。」
「やだ、オンニったら~。」
スジニは、照れながら、パソンの腕を軽くたたいた。
「また、うちの店に来てくれるといいなぁ。」
そのころ、ホゲは会議を終えて、
副社長室に戻ったところだった。
デスクの前に座ると、携帯電話を取り出して、
タムドクにメールを打った。
『よっ、元気か?最近、俺ストレスが溜まってるんだ。 週末にでも、空手の稽古をつけてくれないか?』
タムドクは、取引先の病院の待合室から外に出ると
携帯電話を開いて、メールを読んだ。
そして、
『ホゲ、大丈夫か? 空手の稽古なら土・日のどっちでもいいよ。 夕方子供達の稽古が終わった後に 相手してやるよ。 それとも、時間があるのなら、 午後からの子供達の稽古を手伝ってくれないか? 気晴らしになるかもよ。 そのあとに、じっくりおまえの相手してやるよ。』
と、ホゲにメールの返事を返した。
『そうか、じゃあ早めに行って子供達の稽古を手伝うよ。 今度の土曜日、何時ごろ行けばいい?』
『そっか、ホゲありがとう。助かるよ。 そうだなぁ。3時には始めたいから 3時15分前くらいに来てほしいな。』
『タムドク、了解した。 その頃行くから、よろしくな。』
『ホゲ、土曜日楽しみにしてるよ。 こちらこそ、よろしくな。』
ホゲは、携帯電話を閉じると
オフィスの窓辺に立ち、外の景色を眺めた。
~つづく~
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