~土曜日~
ホゲはタムドクと約束した時間に
空手道場にやってきた。
「やぁ、タムドク久しぶり~。」
「ホゲ、久しぶり。時間通りに来たな。」
タムドクとホゲが挨拶を交わしていると
そこへ空手道場の奥の更衣室で
道着に着替えたキハがやってきた。
ホゲとキハの目が合った。
驚いたホゲが、キハに声をかける。
「キハなのか? 久しぶりすぎて顔を忘れるところだったよ。 俺のこと覚えてるか?」
「ええ、もちろん覚えてるわよ。 ホゲ、久しぶりね。 元気そうでよかったわ。」
「キハは、綺麗になったな。 ヨガを教えてるんだって? タムドクから聞いたよ。 頑張ってるんだな。 そうだ。俺の連絡先を教えておくよ。 名刺受け取ってくれよな。」
「ありがとう、ホゲ。 ちょっと待っていて、私の名刺を持ってくるわ。」
更衣室に名刺を取りに行くキハ。
ホゲとキハの会話を、そばで聞いていたタムドクに
ホゲが話しかける。
「タムドクは、人が悪いなぁ。 びっくりしたじゃないか。 キハが今日来るって 事前に教えてくれよな。」
「ハ、ハ。。。 悪かったな、ホゲ。 でも、感動的な再会ができて よかっただろ?」
「まあな。。。」
「ホゲ、お待たせ。 これが私の連絡先よ。」
キハがホゲに名刺を渡す。
「ありがとう。キハ」
タムドクは、子供達を集めると
ホゲの紹介をした。
「今日は、特別にホゲ先生に来てもらいました。 これから、時々ホゲ先生に指導してもらうから みんな、よろしくな。」
「ホゲです。 毎週来れるといいのですが 仕事の都合でたまにしか ここに来れませんが、 みんなと楽しく空手をやれたらいいなと 思ってますので、よろしく。」
「ホゲ先生、かっこいい~。」
ホゲは、女の子達から人気があり、
黄色い声に、ちょっと照れくさそうに微笑んだ。
「はい。じゃあ、そろそろ稽古を始めるぞ。」
タムドクが声をかけ、稽古が始まった。
ホゲは、高学年を担当した。
稽古中、ホゲは低学年を教えてるキハに
目線を送った。
きびきびと形を教えるキハは
かっこよくて、ホゲの心がときめいた。
夕方、空手の稽古を終えて
着替えたキハが、道場を出ようとしていた。
ホゲが、キハに歩み寄り声をかけた。
「キハ、もう帰るのか? 食事でもどうかな?」
「ごめんなさい。 これから、ヨガのレッスンがあるの。」
「そうなのか。じゃあ、しかたないな。 また今度、3人で食事しようぜ。 メールしてもいいかな?」
「ええ、いいわよ。 じゃあ、そろそろ行かないと。。。 お先にね。」
「ああ、キハ、気をつけてな。 じゃあ、またな。」
タムドクもキハに声をかける。
「キハ、お疲れ。明日もよろしくな。」
「ええ、じゃあ。」
キハは、片手を軽く挙げて、
挨拶すると自分の車に乗り込み
スポーツクラブに向かった。
「キハも帰ったことだし、 ホゲに稽古つけてやるよ。」
「タムドク、久しぶりだから お手柔らかに頼むよ。」
「ああ、手加減してやってもいいけど それじゃ、つまらないだろ。 真剣勝負しようぜ。」
「それもそうだな。じゃあ、始めようぜ。」
タムドクとホゲは、久しぶりに向かい合い、
技を掛け合って、心地よい汗を流した。
ホゲは、無心になって、
全力でタムドクに向かっていくうちに
心の靄が晴れていった。
「タムドク、ありがとう。 ずい分、すっきりしたよ。」
「そうか、よかったな、ホゲ。 すっきりしたところで、 飯でも食いに行かないか?」
「そうだな。俺も腹が減ってきたよ。」
「じゃあ、近くの居酒屋でもいいか?」
「満たされれば、どこでもいいよ。」
「それじゃ、晩飯は居酒屋に決まりだな。」
タムドクとホゲは、居酒屋『玄武』の隅のテーブル席で
酒を飲みながら、お腹を満たすことにした。
「なぁ、タムドク。キハはすっかり大人の女になって 綺麗になったよな。」
「そうだな。仕事を持って、自立して いきいきしてるよな。」
「学生の頃は、かわいかったけど ちょっと陰があったよな。 近づきにくい感じがしてたな。」
「ああ。。。」
そんな会話をしてる二人を
店のカウンターの中から
スジニが静かに見つめていた。
タムドクが連れてきたホゲのことが
気になって仕方ないスジニ。
注文の品をテーブルに運ぶ時も
ちらっとホゲを見てしまう。
名前も知らない憧れの人に
ドキドキするスジニだった。
お腹を満たしたタムドクとホゲが
会計を済ませて出て行くと、
スジニは、テーブル席を片付けた。
憧れの人が座っていた席の前に
携帯電話が置いてあるのを見つけた。
ホゲの忘れ物に気づいたスジニは
携帯電話を手に取ると
居酒屋の外へ飛び出し、
タムドクとホゲの姿を探しに
灯りのともった商店街の中を走った。
~つづく~
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